これまで4回に分けて記してきた姫路の魅力。最終回である第5弾は姫路の課題とさらなる振興施策について考察してまいります。


若年層・富裕層を取り込み都市圏強化を

姫路の街はミドル以上には強く支持されるもののF1、F2層(20歳〜49歳)に響く商業・サービス集積が薄すぎるという欠落点は指摘せざるを得ません。都市圏分布で見ても姫路都市圏は北・西には一定距離の広がりをみせているものの、姫路市と市境を接する加古川・高砂両市も神戸都市圏に包含されているのが現状。

課題のF1、F2対策としては「ピオレ姫路」が年間200億円ほどの売上を叩き出し一定程度の流出阻止には繋がっているとみられるもののターゲット顧客を姫路に呼び込むまでのパワーは認められません。



JR姫路駅と姫路城を繋ぐ約800mの長さの大手前通りは国交省の「ほこみち」指定1号を受けており、広い歩道が確保されたりオープンカフェなどの有効利用が積極的におこなわれていますが、世界に誇る姫路城の城下に相応しい、世界的にも風格あるまちなみ形成が待ったなしであります。

90年代に山陽百貨店が館内にラグジュアリーブティックの誘致を進めようとしたものの頓挫した歴史は承知しておりますが、大手前通りへの路面店誘致となれば話は変わるでしょう。100万人都市圏の実現とともに、富裕層に向けた本格的なアプローチにより、東(神戸・大阪)に流れる顧客層のなお一層の取り込みが待たれるところです。



画像は京都・三条通のブティック集積のようす。京町家を活用した独特の佇まいを維持していまして、これらもひとつのモデルケースとなりうるでしょう。城郭や蔵屋敷をイメージした低層部にブティックが並ぶ景観美を形成すれば、姫路の街のイメージは大きく変貌することでしょう。


姫路らしい滞在体験の提供



本稿その❹にて姫路市の宿泊施設をご紹介しましたが、もっと姫路を体感できる宿泊機能が必要です。求められる機能としていくつか箇条書きで記します。


ウェスティンナゴヤキャッスル(解体済)は、

名古屋城が一望のスイートが自慢のホテルだった。


    

①姫路城をはじめ、まちなみが一望の客室

②姫路城が見えるスパゾーン

③姫路・播但の食材を活かしたレストラン

④姫路の蔵元の日本酒を集めたバー

⑤宴会から国際会議まで対応のバンケット

⑥浴衣を着て夜の姫路城下を散策できる周辺環境


画像のウェスティンナゴヤキャッスルのキャッスルスイートは眼前に名古屋城天守と城郭の緑、立派な堀まで見下ろすことのできる見事な景観美で、以前宿泊した際には大変貴重な滞在体験になりました。雨は降るし、この日観に行ったドラゴンズ戦は負けるし、おまけにロビーの大理石の床で滑るし、個人的には踏んだり蹴ったりでしたが笑。

閑話休題、姫路城を見て終わりではなく、姫路城が紡ぐストーリーの「つづき」を滞在体験で演出する仕掛けができれば、姫路の魅力はさらに増幅することでしょう。


姫路に向けた観光列車を!



たとえば大阪からだと京都へは阪急の「京とれいん雅楽」(↑上掲画像)や京阪のダブルデッカーを備えた「楽洛」、伊勢志摩へは近鉄の「しまかぜ」、和歌山・白浜へはJR西日本の「くろしお」、高野山へは南海の「こうや」「天空」といった観光輸送メインの特急が走ります。姫路へもJR西日本の新快速、阪神電気鉄道と山陽電気鉄道が共同で運行する直通特急がありますが観光ニーズを満たしているとはいえず、あくまで通勤電車です。新快速・直通特急ともに15分ヘッドでの運行で利便性は高いとはいえ、旅のワクワク感は演出できておらず、到着地への期待感は薄らいでしまいます。そこで移動時から期待を持たせる観光列車を大阪・神戸から姫路に向けて走らせるなどで、関西大都市圏居住者および滞在者をおもなターゲットにして姫路への関心を高めて頂く工夫があっても良いと感じます。


まとめ


姫路の街はターミナル駅と姫路城が約1kmと近接していて一直線で繋がっていて、その半径500m以内に都市機能を集積させるというコンパクトシティを早くから実現してきた街であり、都市計画上の評価は非常に高いうえに、播磨地区の肥沃な土壌をバックボーンに魅力的な食文化の形成がみられる地域であります。これらのコンテンツを武器にした滞在時間・日数の延長および客単価の上昇に向けた取組が必要です。姫路城は世界的照明デザイナー・石井幹子さんによる新しいライトアップがはじまりました。昼に姫路城に訪れた観光客は夕方までに姫路を発ち、別の観光地へと移ってしまうという現状において、昼とはまた違った美しい夜の景観を、多くの来街者のみなさんに見ていただきたいものです。


(了)


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