街中に活気が戻りつつある中で、インバウンド客の流入が加速度的に進んでいます。東京・羽田空港では国際線専用の第3ターミナル(T3)の利用者が飛躍的に回復していて、そのT3の隣接地には住友不動産による「羽田エアポートガーデン」が今年1月に開業しました。同施設は2020年の東京五輪に合わせて開業を予定していたので、ほぼ3年遅れでのグランドオープンとなりました。施設の中身についての論評の詳述は控えますが、日本をテーマにした外国人ターゲットの施設であることはすぐに理解することができます。館内には同社の子会社が運営するホテル「ヴィラフォンテーヌ」。有明などでも展開する「グランド」業態のほか、海外の富裕層をターゲットに据えたという「プレミア」を新しく展開、トータルで1717室を擁するマンモスホテルが誕生しました。
はっきりと申しておかないといけないのは、インバウンド客の急速な増加は、波及する一部の業種を除き、多くの方が全く望んでおられないということであります。
まず第一にオーバーツーリズムによる観光公害。
観光客が殺到することで生活圏内の交通機関やショッピング施設などが混雑し生活に影響を及ぼすうえに、文化の異なる国の観光客によるマナーやモラルの問題からかポイ捨てや写真撮影等における交通障害等、観光公害とひとくちに申してもさまざまな弊害を生んでいます。
第二に国内旅行費用のダンピング。
円安に乗じて外国人がホテルを押さえまくっているために稼働率が高止まりして、宿泊費の高騰傾向に歯止めがかかりません。週末ですと都内のビジネスホテルのシングル利用でも食事なしで2万円超というレートになっていて、日本人の国内旅行および出張需要に冷や水を浴びせ続けています。
旅行アナリストらからは、今月から新型コロナの感染症分類の変更に伴い、インバウンド旅客のさらなる増加が見込まれ、コロナ禍前を超えてくると異口同音。ただ、本当にそうなるかはきわめて懐疑的です。
確かにコロナ禍前には3割を占めていた中国人観光客の回復を見越しているのでしょうが、中国人の海外旅行による消費が爆発的に増加することによる外貨流出を良しとしない習近平政権は海南島を一大免税拠点に整備しており、22年には総面積約28万㎡、800店を擁する世界最大級の免税店「cdf海口国際免税城」が開業するなど、離党免税政策が効果を挙げつつあるなかで、かつてほど中国人インバウンド客の「爆買い」に依存できる状況にあるともいえません。
さりとてインバウンドを受け入れないというのはあまりに早計です。キーは「コンテンツ」と「単価」。
わが国のコンテンツ市場のマーケットは13兆円あまり(経産省統計より・2022年)で、国際収支で約2兆円の黒字(財務省統計より)が出ています。人口減少に加えてコンテンツの飽和状態により国内マーケットが伸び悩む中で良質なジャパンコンテンツを海外、とりわけアジア地域に発信していくことは非常に意義深いものであります。中国本土で爆発的な人気となっている「スラムダンク」の舞台になった鎌倉高校前ではこのGWも多くの撮影者で混み合ったと聞きます。アニメのほか、国内マーケットで2兆円規模に育っているゲームマーケットにおいても積極的な海外輸出が期待できます。こういったわが国のコンテンツを海外客にしっかり訴求することでインバウンド客に価値提案することが求められます。
加えてインバウンド観光客の単価を引き上げていくこと。わが国の素晴らしいテキスタイルやさまざまな伝統産業、食などにおいてブランディング化することで、付加価値を求めるハイエンドな外国人観光客にアプローチしていく必要があります。羽田空港の3棟のターミナルビルを運営する日本空港ビルの副社長で羽田未来総合研究所社長の大西洋さんは「観光客ひとりあたりの経済効果を15万円だとしたら、それを(倍増の)30万円にすることは可能だと思います」とダイヤモンドのインタビューに答えておられる通り、とりわけ欧米人の単価アップが大きな課題であります。
少なくとも現況のインバウンド景気は円安に大きく支えられたものであって、「格安な日本」だから流行っているだけ。為替が逆に振れたら蜘蛛の子を散らすかのごとくいなくなるでしょう。また中国人頼みもかつてほどではないと見ています。中長期でわが国のバリューをしっかり高めていく施策を講ずるために、もっと知恵を絞っていくべきでありましょう。
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