「地方創生」を仕事としていたこともあり、都内のアンテナショップにはよく足を運びます。ただ、その多くは赤字で、売場の縮小・撤退の動きがみられ始めています。



多くの道府県のアンテナショップが軒を連ねる有楽町の東京交通会館。B1には和歌山県のアンテナショップ「わかやま紀州館」があります。特産品の柑橘類をはじめとして、梅干、地酒、醤油、お菓子などが並べられていました。私が見に行った週末、多くの人の眼を惹いていたのはやはり「みかん」。紀州のみかんは甘くてジューシーなのが特徴的です。




新宿サザンテラスには宮崎県のアンテナショップ「新宿みやざき館KONNE」があります。ここは2階建てで、2階には〈宮崎風土くわんね〉があって、宮崎の食文化が体験できます。私はカツオ飯定食をオーダーして、最後のお茶漬けまで美味しく頂きました。


現場として、それなりに工夫を凝らしながら取り組んでおられるのは分かるのですが、都内の好立地で売れないというのは、アンテナショップのビジネスモデルのどこに問題があって、どう解決すべきなのかを探っていくのが、マーケティング的な思考であります。


問題点として、先ず1点目に挙げたいのは、商品選定の仕方であります。一般的にアンテナショップや物産展は、県内の出店者を広く募ります。そこから審査はあるのですが、ここからはやや裏の話、やはり政治力で何とかなるわけです。現地でそこまで有名でもなく人気もそこまででもないような店がアンテナショップや物産展の常連になっているケースは10年以上前に問題になりましたが、今でも少なからず同様の事例は続いています。


2点目は、店頭のオペレーションです。アンテナショップに訪れる多くの方は、商品のストーリー性を大切にする傾向が強い。にも拘らず、商品陳列は生鮮・菓子・グローサリーなど大雑把な商品分類で、ただ並べてあるという陳列に終始している事が非常に多くみられます。加えてセルフサービスの販売手法を取っていることが多すぎて商品説明を受けられる環境にもない事は大きな課題であります。


3点目としては、「県」単位でのブランド化は基本的に沖縄と北海道以外では難易度が高い(すみません、私から見れば「出来ない」という回答)ということ。

歴史的に広域自治体たる「県」というのは国家が中央集権を図る中でつくられたもので、町が発展拡大した基礎自治体たる「市」とは歴史的経緯が異なるものです。


日本海に面する日本三景・天橋立は「京都」か?


たとえば京都府を例に取ると、「京都」のブランドは京都府下全域という認知がどこまで広がっているのか?おそらく「京都」は平安京を中心とした京都市域が精一杯でしょう。あくまで府庁を京都に置いたから「京都府」であって、京都と聞いて丹波・丹後の各自治体までも連想させることはほぼ不可能です。これは排他的な議論ではなく、歴史的にやむを得ない事です。また、それぞれ独自の文化性に育まれた丹波・丹後を「京都」とすることは、それらの地区の市町村にとっても好ましい事ではないでしょう。

「道」「県」として一体性を持った文化圏を構築している北海道と沖縄を除けば、「県」としては県内の「市」のブランド化を進めさせて、その中の大きな枠組としての「県」の存在を訴求させた方がメッセージを伝えやすいはずです。「県」はコーポレート向けのブランドイメージを高めて企業や新産業誘致など大きな事業に専心し、コンシューマー向けのブランド価値創造は「市」に委ねるべきだというのが私の考え方です。


最後に4点目。ECや「ふるさと納税」などを通じた相対的なリアル店舗の地位低下。その地域に足を運ばないと買えないようなモノが身近な店で入手できると好評を博した物産展やアンテナショップでしたが、急速なECの普及により直接おとりよせが出来るようになったり、総務省の地方税制度改革の一環として都市に集まる住民税を地方に還流させるためのふるさと納税の返礼品に当該地方の特産品を並べるなどの取組によって、リアル店舗まで足を運んで購入する意味合いが薄れ、客層の高齢化が顕著となっています。


その中で、アンテナショップを売れる店に変え、地域ブランディングに直結させるための取り組みとして、私ならどうやるか。


1つ目、バイヤーによる商品選定。出店ないし出品を募る従前のスキームではなく、地域を代表するに相応しいものを探し、オファーを掛けていく。商品の入荷日には開店前に行列ができるほど(行列をつくらせる事がCS面にもたらす影響は度外視しているが…)の注目アイテムを出品させます。


2つ目、広域自治体やその外郭団体が運営するにあたり、今のように何でもありはマズくて、たとえば「広島の筆」や「和歌山の柑橘」、「静岡のお茶」などキラーコンテンツに絞った展開をやるか、やや高度なレベルだと明確なブランド戦略、ターゲット戦略に則ってMDを練る。地域にもよりますが、これらをうまく組み合わせることも可能です。


3つ目、文化的に結びつきが強い地域に分割した展開をやること。岐阜県は大きく分けても西濃・東濃・飛騨で全く気候・風土が異なっていて、それぞれの地域で育まれた共通の文化性を持つといわれます。そこに落とし込んでいけば、地域全体のブランド価値の向上が期待できます。


4つ目は接客要員の確保。地域の産品に興味のある方はその商品の背景にあるストーリーが購入の決め手になると言われます。現在でもいくつかのアンテナショップでは蔵元による試飲販売などが積極的におこなわれていますが、さらに深化させていく必要があります。


5つ目は広域自治体による基礎自治体のブランド価値向上施策です。ブランディング先進都市といえる神戸市のブランドを牽引しているのはやはり「神戸ビーフ」ですが、そのブランド管理全般を担っているのが神戸市ではなく兵庫県であることはあまり知られていません。世界的ブランドとして神戸ビーフを尖らせることで、その産地である但馬地方を中心とする県内の農作物の振興を図ろうとする戦略です。


6つ目は「絶対的な価値」を主眼に据えたMD戦略。たとえば日本酒だとどの地域にもあります。そこで同じ日本酒を提案するにしても、その地域特産の素材や地域でしか入手困難なおつまみとともに提案することで、その地域のアンテナショップでしか体験できない価値を生みます。

もう1段階ギアを上げると、1つ目で挙げた内容の重複に近いですが、地域で深く愛され、通販ですらなかなか買えないような貴重なもの、もしくは地域ですら知られていない価値ある逸品を探し出すバイヤーが必要です。


最後、7つ目と纏めを合わせて、アンテナショップそのものの役割の見直し。これまでは首都圏など大消費地に「床」を構えることで地域産品の普及、および地域情報の発信を担ってきたアンテナショップの役割は、先に触れたようにEC等の「おとりよせ」により大きく変わり、旅行や移住に関してもスマホやPCでアクセス出来る時代です。一方でメタバースの時代とはいえバーチャルはリアルにはまだ及びません。買うだけならEC、お得感ならふるさと納税が強いものの、体験という要素を担うのはやはり店頭、という意味でアンテナショップはまだまだ活路を見出せると考えています。


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