神戸空港の国際化連載第3弾は、神戸空港が増便と国際化に備える上で、アクセス、ターミナルビル、滑走路の3点に分けて課題、およびそれをクリアするための提言をさせていただくとともに、本連載の締めとして、神戸空港を無理やり関空の補完に位置付けることへの私見を申し添えてまいります。


​アクセス

神戸空港は海上空港である一方で公共交通機関でのアクセスが新交通システム「ポートライナー」に過度に依存しており、かつポートライナーは人工島・ポートアイランド(ポーアイ)への足も担うため、朝晩はポーアイへの通勤通学客とバッティングし激しい混雑がみられます。私も何度か朝の神戸空港を使いましたが、時差を付けるため7時ごろに三宮を出る電車に乗ったところ、1便待ってやっと座れるという混雑ぶりです。


三宮と神戸空港を僅か18分で結ぶポートライナー。

朝晩の航空機発着ピーク時には混雑がみられる。


ポートライナーはラッシュ時には2分ヘッドで運行していて、ピーク時におけるこれ以上の増便は不可能です。現行の6両編成を2両増結して8両化する構想もあるものの、ホーム延伸などにかかる費用が数百億円見込まれるため運行主体の神戸新交通やその母体となっている神戸市は構想実現に及び腰です。


伊丹空港からは阪急の空港リムジンバスが

三宮・大阪市内・京都など各地域を結んでいる。


ポートライナーの輸送力強化や新アクセス路線の開業など、さまざまな意見がある中で、私が当面の提案として挙げたいのはエアポートリムジンバスの拡充です。現在でも神姫バスや西日本JRバスなどが神戸空港発着の航空機が集中する朝夕を中心に三宮・新神戸・三木・三田・淡路島・徳島方面との便を運行しています。これらの拡充とともに後述する高速道路開通後を睨み、西に明石・姫路方面、東に大阪・京都方面へのバス路線を開設することでより広域からの集客に繋げるととも輸送の遠近分離を図りポートライナーの混雑を下げる効果が期されます。また国際線旅客のリムジンバス利用のシェアは国内線利用者より総じて高いとみられていて、空港国際化の際のニーズにも合致します。


神戸スカイブリッジは東側に約4m拡張でき、

将来の拡幅に備えている構造になっている。


空港連絡橋「神戸スカイブリッジ」は現在2車線での運用ですが、4車線化できる幅員はあらかじめ確保されていることから、神戸市の久元喜造市長は来年中の4車線化が可能であるという見解を示されています。そのため、バスだけでなく自家用車での利便性をしっかり高めていくことも必要です。現状は平面駐車場のみで2074台収容となっていますが、陸路でのロケーションの良い伊丹空港の約3000台、関西空港では7119台の駐車台数を持っていることを考えるとまだ少なく、立駐構造にすることも含めてさらなる駐車スペース確保と値下げ等の利便性確保により、さらなる自家用車需要を喚起することもポートライナーへの混雑集中を回避するための手段と考えられます。


現状としてポートライナーの混雑は朝の三宮→ポートアイランド方面、および夕方のポートアイランド方面→三宮のそれぞれ一方向に限られ、そのためにホーム延長等の大きな投資をして輸送力を強化することは費用対効果としてあり得ないと判断できます。当面はリムジンバス本数・路線拡大と自家用車需要の喚起で乗り切り、2030年以降のさらなる需要の高まりに備えた将来に向けて、抜本的なポートライナーの輸送力増強や鉄道新線の議論を引き続き進めていただきたいものです。


ターミナルビル

増便や国際化に備えたターミナルビルの拡張も大きな課題です。主要交通機関であるポートライナーの改札からすぐにターミナルビルに直結し、チェックインカウンター、保安検査場、待合室(ラウンジ)、そして搭乗ゲートとシームレスに移動できる利便性を誇っていた神戸空港ターミナルが、その利便性を維持しつつどう拡張に備えていくのか。


出発便が集中する朝の出発ロビーの密集度は、

関空・伊丹を凌ぐものがあり大きな課題。


1日60便の厳しい規制の頃でも朝の出発ロビーは連日人でごった返し、保安検査を待つ長い列が出来ている状況、国内線だけでも120便に増えることから、ピーク時を見込ん混雑への対応が求められます。加えて国際化のためのCIQ設備の新設も含めると、建物の増築はマストです。そもそも神戸空港ターミナルビルはもともと拡張に備えて用地が確保されていますので、先ずは今から3年後にあたる2025年の万博需要も見込んだチャーター便の運航に備えた拡張を確実に実施することと、30年の国際定期便運航までにファサードも含めた「神戸の玄関口」たる様相に整備できるのか、神戸空港の真価が問われることになります。


滑走路

現状、神戸空港の滑走路は2500m×1本となっています。メンテナンスの時間を考慮すると完全24時間運用は不可能な状況、かつ滑走路にトラブルがあった際にクローズしなければならない状況です。

いっぽう、航空機に必要な滑走路の長さは、B737などの小型ジェットで約1800m、B767などの中型機(ワイドボディ機)で約2000m、B747やA380などの大型機は約3000mを必要とすることから、現在の神戸空港の機能では大型機の離着陸は不可能とされます。


かつては国内旅客便でも大型機が使用されていましたが、近年では燃料効率や騒音の観点から小中型機がおもに活躍していますが、国際線の長距離路線では依然として大型機が使用されています。神戸空港に大型機が乗り入れられないとなると、国際線もアジア地域を中心とする近距離路線に限られると考えられます。


神戸空港は海上空港のため設備増強には

新たな埋立が発生し大きなコストを伴う。


今後、神戸空港がれっきとした国際空港として関西経済に寄与していくためには、国際長距離路線の大幅な拡充と同じく大型機が用いられる国際貨物便の就航が欠かせません。そのためには2500mで整備されている既存滑走路の延伸か、3000m超の新滑走路の建設が欠かせません。2030年までの開業は難しいにしろ、長期的なビジョンにしっかりと織り込み、実現に向けた議論の加速を強く期待いたします。


「関空ファースト」!?

大阪府の吉村洋文知事は「関空ファースト」「関空の補完として神戸空港を使う」などと発言しています。大阪を中心とする首長や財界関係者から似たようなコメントがみられますが、記事の通りであれば、これはまさに空港旅客のニーズを無視した荒唐無稽な発言であります。



既に関空も神戸空港もインフラとしては整っている中ですから、便利なものを活用することが大前提としてあるべきです。要は現状のハードを活用することで旅客ニーズの高い方が生き残れば良いだけの話で、それを公的施策で捻じ曲げるというのはマーケットの原理に反します。「関空ファースト」ではなく、関西に足を運ぶ「旅客ファースト」で考えるべきです。

神戸空港は本稿第1部で申し述べました通り、度重なる不幸により地方空港として誕生し、管制の問題を口実に便数や発着時間まで厳しい制限を受けて来ました。不便な関空への手厚い施策が、域外の成田国際空港や中部国際空港(セントレア)などを利する結果となり、さすがにそれではマズイと神戸空港の利活用が議論されているのです。今なお、神戸空港に足枷を施そうとするのは大きな愚策であります。

私の「おそらく」な見方ですが、神戸サイドとしては関空一本足を批判するよりも、話には乗っておいて身を取る方が賢明との判断が働いたのでしょうか、開港時の倍となる国内線1日120便(60往復)の就航と国際化を手にすることになりました。

関経連の松本正義会長(洲本市出身)は「オール関西」という語をよく使われますが、真のオール関西のためには先ず地域のエゴを捨てて、地域住民や来街者への利便性を高める事が先決です。不便な空港を無理やり使い続けることは、国際化している時代において関西の地位低下、および中部地方など他地域との競合上、大きく不利に働くということをこれまでの経験からスタディーすべきであると考えております。


(了)


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