百貨店の強みを活かした小型店の出店は、比較的に低投資で顧客接点が強化できることから、各社で進められていますが、その中でも化粧品のMDを切り出したコスメショップの出店がかなり多くみられます。今日はこの話題をお届けします。
何故コスメショップ?
理由は大きく2つあります。
ひとつめは顧客接点の強化。百貨店には足を運ばない、主に若年層に向けてのアプローチのために、駅ビルなどのSCに百貨店が供するグレードの高いMDを見てもらう取組です。例えば〈CHANEL〉でもリップなら4,000円で購入できるなど、ラグジュアリーブランドの提案がしやすく、SC顧客との親和性の高さも認められます。
ふたつめは販売手法の差異。完全接客を伴う百貨店のコスメフロアに対してコスメショップでは必要な客だけが接客を受けるセミセルフ方式を採用したことで、気軽に入り1点でも購入しやすい環境を整えたことで、新たなニーズの掘り起こしを期したのです。
三越伊勢丹〈イセタン ミラー〉
運営:三越伊勢丹(中小型店事業部)
店舗:18店
地域:首都圏…17
中国・四国…1
2018年オープンした東京ミッドタウン日比谷店。
ガジェットや美容家電なども取り扱っている。
この業態の生みの親は三越伊勢丹です。
2012年にルミネ新宿店2にオープン、その後、ルミネを中心に業容を拡大しています。化粧品で日本一(当時)の売上を誇る伊勢丹新宿本店のMDを切り出したため、ラグジュアリーコスメをメインにしていますが、途中からプライスラインをやや下げてオーガニック系の取扱も開始するなど拡張性も意識しはじめました。
特徴としては、編集力やブランド交渉力が高く、小型店でありながら大型化しやすい傾向にあるようです。2018年にオープンし、業態で最大の約50ブランドを集結させた東京ミッドタウン日比谷1階のショップでは各社のリップやネイルを集結させて試せるゾーンを作ったほか、百貨店のコスメフロアのようなカウンター接客も採り入れています。
出店地域としては首都圏がほとんどで、2017年には域外出店として2017年10月にJR広島駅ビル〈ekie〉に出店しています。
また、ミラーの名では出店していないものの、例えば大阪駅のルクア1100では「イセタンコスメティックス」としてミラーのノウハウを活用したセミセルフ方式での販売手法を取っている事例もあります。
髙島屋〈ミリオン・ドアーズ〉
運営:ファッションプラザ・サンローゼ
店舗:3店(タカシマヤコスメティックス含む)
地域:首都圏…3店
2018年4月にオープンした有楽町マルイ店。
「タカシマヤ」の表記が目につく印象。
これに素早く対抗したのが髙島屋です。子会社のサンローゼが運営するかたちで、イセタン ミラーと同じくラグジュアリーコスメに特化したショップとして川崎駅前の「アトレ川崎」と大阪市の「天王寺ミオ・プラザ館」(のちに閉店)に出店したのを皮切りに東日本・西日本で店舗拡大を模索したものの多店舗出店には至らず、有楽町マルイと流山おおたかの森S・Cの2店でセミセルフ式を、ミリオン・ドアーズ1号店であったアトレ川崎店は〈資生堂〉〈SK-Ⅱ〉など6ブランドのカウンターを備える完全接客のコスメゾーンを形成しており、セミセルフからは撤退しています。
阪急阪神〈フルーツギャザリング〉
運営:エフ・ジー・ジェイ
店舗:25店
地域:首都圏…13
中部・近畿…7
九州・沖縄…5
35ブランドを揃えるエキュート品川店。
エキナカで「デパコス」が買えると大人気。
今や百貨店系コスメショップとして最大勢力となったフルーツギャザリングですが、2011年の阪急メンズ・トーキョー(現在は阪急メンズ東京と表記)リモデルに合わせて開業したのが最初。当初は百貨店コスメ展開ではなく「シー・オー・ビゲロウ」などNYのアポセカリーで扱うオーガニックに特化したショップでした。現在に近いMDに切り替えたのは2013年2月のエキュート品川店オープン時で、その名を「阪急フルーツギャザリング」とショップネームの冠に阪急の名を配し、阪急うめだ本店(大阪・北区)のMD切り出しを強調していました。(※現在は他店舗と同様に「フルーツギャザリング」と阪急を外した屋号に改称している)
特徴としては、ラグジュアリーコスメを扱いつつもアポセカリー系の充実度が高い点がひとつ。ふたつめは来店ハードルを下げる狙いがあるのか、あえて百貨店ブランドを使っていないという点です。みっつめとしては、千里阪急・西宮阪急などの関西の阪急百貨店の支店にも出店させて、百貨店の化粧品売場と同居させることによりストア全体の中での顧客の選択の幅を広げる役割も期待しているようです。
阪急のコスメ戦略の先鋭化は別途取り上げる予定です。
大丸松坂屋〈アミューズ・ボーテ〉
運営:大丸松坂屋百貨店
店舗:11店
地域:北海道・東北…1
首都圏…6
中部・近畿…3
九州・沖縄…1
最後発でありながら急成長している印象があるのがここ。1号店は2016年10月、大丸京都店の阪急烏丸駅に繋がる地下エントランス付近にオープンしたのを皮切りに、松坂屋名古屋店、大丸梅田店などグループ百貨店内に出店して、オーガニックコスメやヘアケア・ボディケア系を充実させることで既存のコスメブランドを補完する狙いがあったように思いますが、外部出店時にはイセタン ミラーと見紛うようなMD・ブランド構成がみられます。
まとめ
現況として三越伊勢丹と阪急阪神百貨店が覇を競い、大丸松坂屋が追随、髙島屋が出遅れた感の強い百貨店系コスメショップ。やはりMD切り出しとなると化粧品に強い東西の横綱の強みが発揮されているということと、当初はミラーに倣った出店政策も10年が経過し各社それぞれに特徴が見えてきました。特に近隣に百貨店のない(もしくは百貨店が閉店した)地方のSCからは出店依頼が続くものとみられ、費用対効果のバランスの中で各社とも拡大するものと見ております。
そごう・西武は2021年4月、食品とギフトの
編集型小型店を武蔵小杉にオープンさせた。
(出典:そごう・西武リリース)
加えて、化粧品だけでなく別のMDを切り出した小型店の出店も期待されます。セレクトショップや靴・ハンドバッグなどの雑貨、食品、時計、美術など挙げれば何でも出来ると思いますし、今回取り上げなかったそごう・西武の小型店政策のように、出店立地等に合わせてMDを編集して出すより時間も手間も省ける上に数字も立ちやすいと考えます。百貨店の本支店との競合も見据えつつも、百貨店の外部への小型店出店には期待を持ちたいと思います。
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