「10月8日」というとピンと来る野球ファンも多いのではないかと思います。とりわけドラゴンズのファンの皆さんには忌まわしき思い出でしょうが、今回の話題は野球ではありません(笑)。


大阪・梅田にある阪急阪神百貨店の阪神梅田本店が10月8日、リモデルオープンします。



ハード概説

阪神本店が入る「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」。

上層階には市内随一の面積を誇るオフィスも。


過去には阪神梅田本店が入る「大阪神ビル」と「新阪急ビル」が道路を挟んで別々に建っていましたが、阪急阪神統合のシンボルとして阪神電気鉄道と阪急電鉄の両社が事業主体になるかたちで建替を推進してきました。容積率緩和を受けるため、建物に面した御堂筋の歩道や梅田歩道橋(現:阪急阪神連絡デッキ)、地下道などのリニューアルなど周辺整備も一緒に実施しているほか、建物地下に隣接する阪神電車の大阪梅田駅も拡張を含んだリモデル工事を実施しています。

阪神本店は10月8日に拡張したあとリモデルを進め、最終的に来年4月の地下1階のオープンをもって7年以上に亘る一連の建替工事を終えることになります。


食品+OMO

リリースが昨日(9月22日)出たばかりできちんと読み込めていないのですが、大雑把に柱は以下の項目でしょう。


①食品・レストランを集客の柱に

②1階はイベント性の高いフロアに

③OMO戦略を織り込んだアプローチ


今の阪神梅田本店の原型をつくったとされる三枝輝行氏(のちに法人としての阪神百貨店の社長・会長を歴任)が食品強化を推進し、「たねや」「マールブランシュ」などを梅田でいち早く導入、業界注目の的となりました。全国でRF1などの惣菜店を展開する「ロック・フィールド」の岩田会長をして「うちは三枝さんに育てて頂いたようなものだ」と言わしめるほど、食品メインの百貨店として長らく君臨しています。

今では阪急阪神百貨店として新たな道を歩んでも食品メインは変わらず、かつてのB1のみの1フロアから1階にも拡大、まるまる2フロアを食品で展開するようです。また1階は食品の各カテゴリーのポップアップの集合体然としたフロアが出来ることでデイリーニーズに応えようとする動きがみられます。

また全館において100名ほどの「ナビゲーター」を配置し、顧客とオンラインでコミュニケーションを取りつつMDに活用する取り組みも本格的に始動するようです。三越伊勢丹など同業でもこのような取組の前例はありますが、他の百貨店のようにオンラインサロンを用いた方法ではなく既存のSNSを使用したコミュニケーションの確立ということは特筆されるかと思います。ナビゲーターを中心に進めるOMO戦略に関しては後日別記事掲載も考えています。


現時点で考えられる課題

さきほどリリースから見た時点での、いくつかの課題を挙げておきたいと思います。


大阪駅前第4ビル側からみた阪神本店の建物。

南側からの集客は現状でも見込みにくい。

(17年の工事中画像しかなかったです……)


先ずは建物内外のトラフィックの問題です。先述の通り元々の阪神梅田本店は大阪神ビルというほぼスクエア上の建物にエスカレーターが2機ついているというシンプルな構造。百貨店としては理想的なトラフィックを有していました。一方で新築ビルはほぼL字型となっていて、南側にかけて道路の屈折に合わせるかたちでトラフィックも曲がってしまっています。南側の入口が弱いことは既に分かっているので、店舗効率的に南側の集客を高める必要があります。店側もそれを理解しているのでしょう、南側のB1にはスタンディングのバルスペース「スナックパーク」、1階には「シェイクシャック」、そして今日の発表で7階に「無印良品」が入るということです。ただ残念なのは縦移動を考慮したゾーニングまでは考えられていないようで、これで南側のトラフィックの弱さを補えるのかは……うーん、どうなんでしょうか。。


阪急・大丸とは大きな道でトラフィックが
阻まれており、その影響で1階入口が弱い。
(Google MAPをもとに著者にて編集)

また外からの集客を考慮するうえで阪神本店の場合は地下鉄などに面するB1と阪急阪神連絡デッキに繋がる2階がメインになっています。これは今に始まったことではなくて、JR大阪駅や阪急大阪梅田駅という2大ターミナルと阪神本店は大きな道に阻まれていて地上ベースのトラフィックが悪いのです。これが阪神本店のウイークポイントとなっていて、その解消を狙った食のイベントゾーン構築なのでしょうが、もし仮に食をメインにするなら2階を使って食を切り口にしたファッションゾーンとした方が集客的には良かったのではないかと考えています。


阪急本店と阪神本店のロケーション。

相互往来をどこまで促せるのか。


あとは2階〜8階フロアに関しては、未発表のものもあるのでしょうが、ファッションフロアとして特段のサプライズはありませんでした。ルクア大阪や目前の兄弟店である阪急本店と競い合うファッションフロアを期待していましたが、アパレルが主力クラスのブランドを投入することはないもようです。私も「ない」と言い切ってしまった手前、もしサプライズ発表があれば逐次ブログ更新します。


伝統的に楽しい百貨店


18年オープンの催物場は吹き抜けガラス貼りで

イートインスペースを充実させた。


阪神本店はかつてより時代に即した面白い切り口やカルチャーを持ってきている印象を強く持っています。ハイエンドを標榜し、ややもすれば保守に走りやすい百貨店業界において生鮮食品売場を「市場」と捉えてみたり、物産展に「バル」を掛け合わせてその場で食す空間を仕立てたり、マーケットを拡げるのがとにかく上手。業界が縮小均衡のさなかにあって、阪神本店のアプローチがマーケット再拡大への布石となるか、注目したいと思います。



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