きょう9月11日…といえば01年のNYの同時多発テロを思い出す方も多いと思いますが、97年のきょうは「京都駅ビル」が全面開業した日です。今回はその駅ビル内のキーテナントである「ジェイアール京都伊勢丹」を取り上げます。


京都駅ビルの特徴


京都駅ビル全景。

建物というよりさながら超大型現代アート!


トータル237,000㎡の大型駅ビルの中には、百貨店の「ジェイアール京都伊勢丹」や当時京都最大のグレードのホテル「ホテルグランヴィア京都」の2核のほか、吉本興業・ホリプロ・ジャニーズ事務所が出資した劇場「シアター1200」(現・京都劇場)、旧駅ビル内にあった「京都駅観光デパート」をフルリモデルした専門店街「The CUBE」(ザ・キューブ)、関西国際空港発着の航空機のチェックインが可能な「京都CAT」(01年廃止)などが入居。


大屋根の下には駅と京都の街を繋ぐ空間が。


設計は東京大学名誉教授の原廣司氏。中央改札口を抜けたらガラス張りの大屋根に覆われたアトリウムがあり、そこから京都タワーが一望のうちとなる景観を形成しています。また建物が横に長い形状のため烏丸通・室町通の突き当たりには空洞を空けるデザインとして圧迫感を軽減するとともに、それぞれを「烏丸小路広場」「室町小路広場」を形成し賑わいをもたらすイベント広場として機能させています。


夜になるとカップルが沢山腰掛ける大階段。

京都駅ビルの注目すべきスポット。


そして何よりも印象的なのはこの「大階段」。4階部分から12階部分にあたる「大空広場」まで繋がる171段に及ぶ階段は、「室町小路広場」とセットにすると舞台構造になるように設計されているという秀逸ぶりです。この階下に「ジェイアール京都伊勢丹」があります。


(京都駅ビル公式HPより)


そのため、伊勢丹のフロアはスライド型となっていて、カスケードエスカレーターとエスカレーター周りに拡がる吹き抜けが印象的な店となっている反面、フロア構造が歪なため相当腐心して構成を考えられているようですが、それはまた後ほど。


新規商圏の開拓に成功!

京都駅地区と四条地区の位置関係。

地下鉄で2駅、移動時間は5分。

(GoogleMAPより)



■DATA■

店名:ジェイアール京都伊勢丹

運営主体:ジェイアール西日本伊勢丹

    (JR西日本の連結子会社)
構造:地下2階地上11階

売場面積:約46,000㎡
来店客数:約2,300万人

売上高:約645億円

   (大阪ルクア1100ショップを含む)

初年度の売上400億円強から20年でおよそ1.5倍に引き上げた伊勢丹成功の最大の要因は新規商圏の開拓にありました。当初は四条通の商業エリアとのバッティングが強く懸念されましたが、実際には京都市内エリアからの集客がメインの四条通エリアに対して伊勢丹はレールサイドの利点を活かしたドーナツ型の商圏を確立していきます。西に長岡京・高槻(大阪)、東に大津・草津(いずれも滋賀)、北に亀岡・園部、南に宇治・城陽・京田辺から幅広く顧客層を拡大させていることは同社のIDデータからも明らかになっています。一方で開店から20年を超えた今も、市街地には食い込みきれていないことも分かっています。


建物構造が活用されていない

エスカレーターがフロア中央を貫くため、

フロアが左右に分断されている。


店舗構造としては先に申し述べた通り、中央エスカレーターの配置でフロアのトラフィックが南北に分割されています。本来あのような構造の場合、エスカレーター周辺を主動線として左右にラグジュアリーのショップやレストラン・カフェを配置して主動線上をショッピングストリートと見做した演出を施すなどすれば、ショッピング体験という意味で出色の施設となったのでしょうが、結論から言えば、エスカレーターまわりを縦のゾーニングとするような考え方は取られていません。


飲食施設のニーズを満たしていない

飲食施設のニーズという意味では2つの切り口から申し述べます。

まずは席数の少なさです。伊勢丹は特に観光ニーズなども満たす施設でありながら、レストラン・カフェの席数が少ないため、ファッションフロアの顧客のお休み処が確保しきれていません。

また、11階の「イートパラダイス」を見渡した際に、伊勢丹新宿本店と同様のラインナップがみられることから、京都発祥の店舗の少なさが気になるところです。


京都市内を商圏下に

円は京都駅から半径15km圏を示す。

電車で15分〜20分圏内のエリアが中心商圏。

(GoogleMAPより)


京都駅の鉄道ネットワークを活かして、凡そ15km圏内のロケーションを中心に顧客を吸引している伊勢丹ですが、10km以内の一次商圏(京都市内)に攻めきれていません。ショッピングエリアとしての面的な展開がなく、隣接する地下街「ポルタ」なども主に観光客向けラインナップとなっていることや、京都駅ビル開発以後も依然として京都市内のビジネスエリアは四条通近くに集積していることで、四条通の商圏と食い合うかたちにはなっていません。ただ、今後、京都駅付近の街としてのポテンシャルを高めていくためには、市内商圏を取りに行くアグレッシブさが必要です。


京都駅周辺のまちづくり政策



最後に、店づくりから見れば少しマクロな視点でお話をさせていただきます。

以前に「京都駅八条口の建築物の高さ規制を緩和してビジネスエリアに」という提案をいたしました(上掲のリンク参照)が、それもやはり京都駅地区の街としての機能強化を見据えてのものです。関西地区では交通結節点としての機能性を持った駅として新大阪駅に注目が集まりがちですが、東海道新幹線や北陸・山陰地区への特急などが集まる京都駅の拠点性の高さがまちづくりの施策に活用しきれていません。あくまで京都市の規制緩和次第ではありますが、JR西日本としても新幹線サイドの八条口も含めて京都駅周辺のさらなる整備に着手することで、京都駅ビルを中心にした街区整備をより一層進めて頂きたいと願っています。