本書は、1956年米国生まれで、
1976年の初来日以来、
通算30年以上を日本で暮らし、
2018年に日本国籍を取得した
日本文化研究者マイク・モラスキー氏
によるエッセイ集です。
著者自身が「移民」でありながら、
移民政策を正面から論じる
というより、半世紀にわたり
日本社会の内側で生活してきた
「参与観察者」
の視点から、
日本文化の魅力や不思議さを描いています。
題材は実に幅広く、寅さん、夏目漱石、落語、
ジャズ、尺八、将棋、熱海、そばとラーメン、
東京オリンピック、スマホ、女性ファッション誌など、
一見すると脈絡のないテーマが並びます。
しかし、その根底には、
外国出身だからこそ見える日本と、
長く日本で暮らしたからこそ分かる日本
の両方があります。
例えば著者は20年以上テレビを持たず、
芸能人にも詳しくない一方、
テレビ出演を依頼されることがあります。
「外国人から見た日本」という役割を
期待されることへの違和感を
ユーモラスに描き、
「日本人対外国人」
という単純な区分では
人間を捉えられないことを
浮かび上がらせます。
また夏目漱石については、
現代より情報収集が不便だった時代に、
古典、漢詩、外国語など幅広い教養を身につけた
知識人の力量に驚嘆します。
外から日本文化を研究してきた著者だからこそ、
その価値を私たち以上に鮮明に見いだしているのです。
本書の面白さは、
「日本とは何か」を大上段から定義しない点
にあります。
居酒屋や音楽、文学、街歩きといった
日常の小さな体験を積み重ねることで、
日本文化の奥行きを描き出します。
移民とは単なる「外から来た人」ではなく、
長い時間をかけて社会に入り込み、
その文化を新たな角度から照らし返す存在
でもあります。
日本文化を理解するには、
日本人だけの視点から一度離れてみることも
大切だと気づかせてくれる一冊です。

