本書は、朝井リョウが現代の「推し活」と

ファンダム経済を題材に、

人がなぜ集団に熱狂し、

「物語」に動かされるのか

を描いた小説です。

 

物語は、アイドルグループの運営に関わる47歳の久保田、

大学生活に居場所を見つけられない19歳の澄香、

舞台俳優を熱心に応援してきた35歳の絢子

という、立場の異なる3人の視点から進みます。

 

つまり、「熱狂を仕掛ける側」

「のめり込む側」

「かつてのめり込んでいた側」

を同時に描くことで、

ファンダムの光と影を浮き彫りにしています。

 

例えば、久保田が関わるアイドル運営では、

単に歌や商品を売るのではなく、

ファンが「この人たちを自分が育てている」

「応援することに意味がある」

と感じる物語を設計します。

 

ファン同士の結束が強まれば、

SNSで情報を拡散し、

商品を購入し、

ライブへ通い、

仲間を増やしていきます。

 

それはマーケティングである一方、

「信徒獲得」や「布教」

にも似た構造を持っています。

 

一方、孤独や不安を抱える人にとって

「推し」は、生きる目的や仲間を

与えてくれる存在です。

 

しかし、同じ物語を強く信じる人々が集まると、

異なる意見を排除したり、

事実よりも自分たちに都合のよい解釈

を信じたりする危険も生まれます。

 

本書が鋭いのは、推し活そのものを

否定していない点です。

 

人はアイドルだけでなく、

企業、政治、SNS上のコミュニティなどでも

「自分が信じたい物語」

に引き寄せられます。

 

本書から学べるのは、

人を動かす最大の力は商品や情報そのものではなく、

そこに付与された「物語」かもしれない

ということです。

 

そして大切なのは、物語に感動し参加しながらも、

「これは誰が、何の目的で作った物語なのか」

と一歩引いて考える視点を失わないことです。

 

マーケティングやブランドづくりに携わる人

にとっても、人の心を動かす力と、

その力を使う側の責任について

考えさせられる一冊です。

 
なるほど。
人は「自分が信じたい物語」に
引き寄せられるのですね。
それで、人が信じたいストーリーづくりが
マーケティングでも必要なのですね。
よくわかりました。
 
それでは、また。(^_-)