本書は、慶應義塾大学教授の渡辺靖氏が、
アメリカで存在感を増す
「リバタリアニズム(自由至上主義)」
の思想と、その社会的影響を
現地取材を交えて解説した一冊です。
リバタリアニズムとは、
国家による介入をできる限り小さくし、
個人の自由を最大限に尊重すべきだとする考え方です。
しかし、その立場は保守派ともリベラル派とも異なり、
従来の「右・左」という政治の枠組みでは捉えきれません。
例えば、リバタリアンは経済面では減税や規制緩和、
小さな政府を支持します。
一方で、社会面では同性婚や個人の自己決定権を認めるなど、
個人の自由を重視します。
反対に、銃規制や社会保障の拡大には慎重な立場を取る人が多く、
「経済的自由」と「個人の自由」の双方を重視する点が特徴です。
こうした考え方は、共和党や民主党のどちらにも
完全には当てはまらず、多くの若者の支持を集めています。
著者は、ニューハンプシャー州で「自由な州」を
目指すフリーステート・プロジェクトや、
政府の役割を極限まで縮小しようとする団体、
政策研究を行うシンクタンクなどを訪ね、
その実態を紹介しています。
例えば、「政府が教育や医療に介入するよりも、
市場競争に任せた方が質の高いサービスが実現する」
と考える人々がいる一方で、
「貧困層への支援はどうするのか」
といった課題も浮かび上がります。
理想と現実の間でさまざまな議論が交わされている様子が
丁寧に描かれています。
本書は、トランプ政権下のアメリカ政治を理解するだけでなく、
自由とは何か、
国家はどこまで個人に関与すべきか
という普遍的な問いを投げかけています。
リバタリアニズムは一枚岩の思想ではなく、
多様な立場を含みながら世界へ広がりつつあります。
日本でも行政改革やデジタル化、規制緩和などを
考える際に参考となる視点を提供しており、
政治や経済だけでなく、
自由と責任の関係について
深く考えさせられる一冊です。
