本書は、日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)が
自由化以降の40年間に繰り広げた競争の裏側を、
政治・官僚・空港・航空会社の利害関係を
交えて描いたノンフィクションです。
単なる企業競争ではなく、
羽田空港の発着枠や国際線の権益、
航空行政を巡る攻防が、
日本の航空業界の成長を左右してきた
ことを明らかにしています。
本書では、JALが長年「日の丸航空会社」として
国の保護を受ける一方、
ANAは国際線参入や羽田空港の発着枠獲得を
目指して苦闘した過程が描かれます。
例えば、ANAは「国際線のない航空会社は航空会社ではない」
という強い信念のもと、国土交通省との粘り強い交渉を続け、
国内線中心の企業から国際的な航空会社へ
と成長していきました。
一方、JALは官民のなれ合いによる危機意識の欠如から
経営が悪化し、2010年には会社更生法の適用を申請する
事態に陥ります。
その後、JALは稲盛和夫氏のもとで経営改革を進め、
採算意識の徹底や組織風土の改善により見事な再建を果たしました。
一方で、LCC(格安航空会社)の台頭やスカイマークとの競争、
羽田空港の国際化など、新たな競争環境への対応では
両社とも苦戦を経験します。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大によって
航空需要が激減し、経営基盤の強化や事業構造の見直し
が迫られました。
著者は、日本の航空業界が国内の利権や省益争いに
時間を費やす間に、アジアの航空ハブを
シンガポールや韓国、中国などに奪われた
と指摘します。
本書は、企業の競争力は経営努力だけでなく、
政策や制度、意思決定のスピードにも大きく左右される
ことを教えてくれます。
そして、世界市場で勝ち残るためには、
既得権益にとらわれず、利用者目線と国際競争力を重視した
改革が不可欠であることを示した一冊です。
