その男は、成功していた。
日本で起業し、事業は黒字、社員も育ち、次の展開も見えている。
だが彼は、あえて次の一手を選ぶ。
海外移住、そして会社の株式を投資ファンドに譲渡する——M&Aという決断だ。
物語は『闇と闇と光 THIS IS M&A ESSENTIAL』の、この静かな決意から始まる。
最初の面談では、すべてが順調に見えた。
ファンドの担当者は笑顔で言う。「素晴らしい会社ですね。ぜひ一緒に成長させたい」
提示された条件も、悪くない。
だが、交渉が進むにつれ、少しずつ空気が変わっていく。
「この数字、もう少し精査が必要ですね」
「このリスク、価格に反映しないわけにはいきません」
一つ一つは小さな指摘。だが積み重なると、企業価値は静かに削られていく。
時間は迫り、決断を急がされる。
“今サインすれば楽になる”という甘い声が、心の奥で囁き始める。
クライマックスは、契約直前のデューデリジェンスだ。
追加資料、条件変更、想定外の要求。
ここで多くの経営者が折れる——本書は、その瞬間の心理を生々しく描く。
主人公を救ったのは、数字ではなく、信頼できる仲間と「まだ譲ってはいけない」という直感だった。
そして契約成立。
資金は手に入り、人生は次のステージへ……のはずだった。
だが物語は、そこで終わらない。
経営権を一部失ったあとに訪れる、違和感。
短期利益を求めるファンドと、会社を“作品”のように育ててきた創業者との溝。
M&Aの「光」の裏側にある、静かな「闇」が、ここで浮かび上がる。
この本が本当に描いているのは、M&Aの手法ではない。
**「成功したあと、人は何を守り、何を手放すのか」**という問いだ。
数字の裏で起きているのは、人生の選択そのもの。
だからこの物語は、経営者でなくても胸に残る。
もしあなたが
・いつか会社を譲るかもしれない
・成功の次に何が待つのか知りたい
・「自由」という言葉を疑ったことがある
そんな瞬間があるなら、この物語は、静かに、しかし確実に刺さってくる。
友人に紹介されて読みましたが、なかなか面白い本でした。
私にもこんな瞬間が訪れるのか?
それでは、また。(^_-)
