さてさて、現在の東芝の問題。
腑に落ちないことがいろいろ。
問題を整理してみますね。
1.東芝の会計処理疑惑について、
その中でも大きな問題は米国子会社ウェスティングハウスの現存処理。
東芝が2006年に買収した米国の原子力発電のプラントメーカー ウェスティングハウス社(以下"WHWH社")。
東芝は、現在でも同社の株式の87%を保有しています。
当時私は米国にいましたが、米国でも大きな話題になりましたので、よく覚えていますが、買収金額は54億ドル(約5400億円@100円/米ドル)。
(以下為替レートは100円/米ドルで計算します。)
買収時のWH社の純資産は約2000億円。
差額の約3400億円は”のれん代”です。
”のれん代”というのは、ある会社を買収しようとする場合、
その買収金額から正味の価値(純資産)を引いたもので、
その会社のブランド力であったり、ネームバリューであったり、顧客層であったり、そういった無形のものの総和で、
将来どんどん儲けてくれる筈だと思えば”のれん代”は高くなっていくでしょうし、
反対に、将来儲けることなどあまり期待できないなければ(じゃあ、買収せんじゃろ!?)はゼロに近くなります。
現実的には、企業買収にはライバル会社も現れますので、そういうライバル会社との駆け引きでも高くなったりもします。
この時も確か三菱重工業も入札に参加していたという噂もありましたから、日本企業同士で買収価格を吊り上げていった可能性もあります。
ともかく、東芝がめでたくWH社を買収したわけですが、
ここでややこしいのはこの”のれん代”の会計処理の仕方。
1)まず、日米で会計処理の原則が異なります。
そもそもそれがおかしいじゃろ!
日本企業もグローバルになっているのですから、国際会計基準を導入すべきだと思いますが・・・。
まず、日本では”のれん代”は20年間で全額を償却することになっています。
つまり約3400億円を年間170億円づつ20年間償却する(損金計上する)ことになっています。
(以前は買収した年に一括償却でしたが、少し緩やかになりました。)
買収した子会社が期待どおりに儲けてくれればよいのですが、
期待通りに儲けられなかったら”のれん代”として計上した資産は、
絵に描いた餅になりますから、
少しずつ帳簿から落とす(償却する)ことが望ましい、
という考え方です。
一方、米国では、買収した企業の業績が好調で儲けている間は”のれん代”を償却する必要はないですが、
儲からなくなったら、企業としての価値が下がってくるので償却をすべし、
となっています。
これだけでもややこしいですが、次がもっとややこしいです。(-_-;)
2)東芝は、WH社ウェスティングハウス社を買収して以降、
日本の会計ルールに従って”のれん代”を償却してきていません。
年間約170億円(20年間)の償却をしていません。
なぜ!?
東芝の言い分ですと、”米国ルールに則って対応している”とのことです。(-_-;)
それでは、米国側はどうかと言いますと、
2011年3月の福島第一原発の爆発事故が発生し、
原発プラントメーカーを巡る営業環境は世界的に様変わりしてしまいました。
プラント建設の仕事がなくなりました。
以前のブログでも書きましたが、ドイツは原発を廃止しましたし・・・。
WH社は、米国会計ルールに従って、
2012年には約762億円、
2013年には約394億円の減損処理をして、
赤字に転落しました。
米国側で減損処理をしたのですから、”東芝は米国ルールに則って”
WH社と同じように減損処理をしたかと思えば・・・
していません!!??
そのからくりは・・・
3)”のれん代”(=減損の判定)の仕方の解釈を変えました。
”のれん代”とはその事業の将来の稼ぐ力ですから、
①将来の事業計画と収益予測、
②同業他社の株価や類似の買収事例、
の両方の方法で評価します。
WH社は上記①②の両方の方法で評価して減損しました。
一方、東芝は2012年度以降、連結対象となる事業(WH社を含む)の評価を上記①のみで行うことに変更しました。
①の将来の事業計画と収益予測というのは、
会社の恣意性が高いので(要は鉛筆なめなめして計画を甘く作ります・・・(-_-;))
早い話なんとでもなります。
”のれん代”として欲しい数値から逆算して事業計画を作ることもできます!?
という訳で、メチャクチャな会計処理ですね。
粉飾決算と言っていいでしょう。
しかし・・・、
更に腑に落ちないのは、
第三者委員会が、
”のれん代”に関しては、
「これらは我々の調査対象外。会社が検討して、監査法人と協議されることだ」
と言って知らない振り。
そして、日本経済新聞(11月14日朝刊)さえも、
「東芝に対する株式市場の不信が強まっている。米原子力事業子会社が過去の決算で1600億円もの減損損失を計上していたと伝わった13日の株価は急落。一時、前日比9%安の285円と約3年ぶりの安値水準まで売られた。東芝の決算訂正につながる不適切会計ではないが、消極的な情報開示や将来の損失発生のリスクを嫌がる市場家関係者は多い」
・・・と、
”のれん代”の減損処理を行わないことが「不適切会計」にも該当しないと言っています。(-_-;)
幸か不幸か私は株主ではありませんが、
株主の方々は旧経営陣を相手に株主代表訴訟をされては如何でしょうか。
(と、つらつら書いていたら、東芝がこの減損処理について今夕記者会見とか。
上記と内容が違っていたらごめんなさい。(-_-;))