各国のマネーロンダリングやテロ資金を規制対策を評価する国際組織、金融活動作業部会(FATF)が「日本の法整備が不十分」と声明を出しています。

日本政府のマネーロンダリングやテロ資金の規制が甘く、抜け穴になっている懸念があると国際的な批判が高まりつつあります。

かと言って、日本の金融機関がテロ資金の温床になっているわけではありません。

FATFは日本の制度に「ツケ入る隙がある」ことを問題視しています。

例えば、
1)日本で銀行口座を開く際の本人確認が甘いこと。

保険証など顔写真のない身分証明書でも口座を開けます。

そのため、他人名義の口座を開設でき、その口座を通じて不正資金の海外送金に使われるリスクがあります。

2)犯罪組織などの国内送金を差し止める法的手段がないことも指摘されています。

テロリストへの住宅や物品提供を禁じる「テロ資金提供処罰法改正案」はまだ成立されていません。

金融機関の情報をもとに警察庁が犯罪組織の国内資金移動を凍結できるようにする新法案もまだ国会に提出されていません。

3)重大犯罪を計画した段階で処罰対象とする「共謀罪」も日本にはありませんし、創設の見通しも立っていません。


FATFは日米欧など36カ国・地域でつくる国際組織ですが、主導するのはテロ対策を急ぐ米英です。

日本はこのままではトルコやアルゼンチンなど22カ国と同じ「グレーリスト」な入るか、
最悪の場合は「重大な欠陥がある国」として北朝鮮やイランなど6カ国と同じ「ブラックリスト」に入れられかねない状況とのことです。(^_^;)


米国はテロ資金などの流れを断つべく、大手金融機関に対する制裁に動いています。

米司法当局は6月末、仏銀最大手BNPパリバに資金洗浄などの疑いで89億7000万ドル(約9300億円)の制裁金を科しました。

また、三菱東京UFJ銀行も2012年に米国の制裁対象国に送金した疑いで和解金を支払いました。

日本の銀行も早く国際基準に合わせなければテロ資金の抜け穴と疑われかねなくなります。


9月29日召集の臨時国会では、

1)口座開設時に本人確認を厳しくする「犯罪収益移転防止法の改正案」を提出する予定です。

2)テロ資金の国内移動を差し止める新法案を提出する方針です。

しかし、3)共謀罪法案は過去3回にわたって廃案になった経緯があります。

日弁連などは適用対象が曖昧で捜査当局の恣意的な適用につながると批判しております。

野党の反対も必至です。

政府が今国会で「成長戦略関連の法案」を優先すれば、「資金洗浄対策の法案」は後回しになる公算が大きく、1ヶ月半位の会期では成立できない可能性があります。(^_^;)


反社会的組織の資金源を断つことは、テロの危機に直面する万国共通の課題です。

できるだけ早く不備を解消しないと国際社会からの信頼は得られませんね。