失われた30年をもたらした失政の結果(4)  危機レベルの安全保障 | 子や孫世代の幸せを願って

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失われた30年をもたらした失政の結果(4)危機レベルの安全保障

 

日本の安全保障体制は、防衛、治安、防災、食料、エネルギー、医療、物流等々の安全保障対象分野のいずれも十分なものはありません。

 

多少なりとも見直しが進むのは、それぞれなんらかのイベントや事件後。しかし「対策」は用意されるが、「書き物」だけに終わりがち。実際には「なにもしてこなかった」に近い呆れる状態です。

 

全くもって不十分な自衛隊の装備、弾薬、燃料、そして隊員の暮らしの惨状、防災の不備による天災被害の拡大、下がりっぱなしの食料自給率、コロナ騒動で露呈した脆弱な医療体制、ブラックアウトまで引き起こした電力事情や電気代の高騰等々これらはその都度報道され、改めて説明を要さないところです。

 

どうしてこうなったのか。

 

まず「安全保障」は、政府の介入を嫌い、効率を一番とする「新自由主義」とおよそ対極の関係にあるからです。ただし、防衛、治安維持については、「私有財産や自由への侵害」を防ぐという意味で政府の役割とし、その費用の拡大を容認します。

しかし、防衛、治安以外の防災、エネルギー、食料、医療ほか政府の行う安全保障一般は「いつ効果を発揮するかわからない備え」なので非効率の最たるものと見做されてしまうのです(※)。

 

※政府が提供する公共物や公共サービスは、一般的にタダで利用できるものです。これらは主流派経済学では「効用(満足)」が測れないことから、それはすなわち「効用を生まない」ものとし、政府活動一般が「無駄な活動」とされているのです。

 

そして、そこに「財政再建」です。それへのこだわりの結果、防衛、治安でさえも十分な予算が手当されず、安全保障分野全般が低い予算で放置されてきたのでした。

 

中国の軍事費が激増し領海侵犯も日常化、北朝鮮のミサイル開発が進み、韓国、ロシアが領土を不法占拠しているにも関わらず、長年「防衛費1%枠」に汲々としてきたことなど、正常な政府の行うこととは思えません。

 

さらには、「国土強靭化計画」。これは巨大自然災害に備え、防災、減災、迅速な復旧、復興につながる取組みです。2011年の東北大震災を教訓に、2013年にその基本計画が策定されたのですが、やはり財政再建優先、予算ゼロで5年間も放置

 

漸く2018年から予算がつき始めたのですが、それがまた情けないレベル。

もともと強靭化には10年間で200兆円必要とされたのですが、8年間でたったの22兆円です。計画から遅れている上に、当初望まれた規模をはるかに下回る予算。

ここでも財政再建という無意味なもののために国民の命や暮らし、社会経済システムが危険に晒されているのです。

 

そして悪いことに、放置されてきた安全保障分野にも新自由主義(競争原理)が持ち込まれ、「安全」を根こそぎ失う動きとなっているのです。

 

新自由主義すなわち「競争原理主義」は、「儲けが一番」、「体力勝負」、「自己責任」、「負け即退場」なので、安全保障で肝心な「供給、価格、品質の安定」が保てません

 

「電力の自由化」は、原発政策の誤りもあり、電力会社の体力を落とし、電力供給を不安定にしました。また、将来の原発廃炉に向けた人材確保も困難になっています。

 

「農産物貿易自由化」日本農業の衰退を招いており、食の外国支配を一層許すのみならず、足元の輸入食料の品質(安全性)にも不安があります。

 

公共工事など「指名競争入札」から「一般競争入札」への原則切り替えにより、品質が怪しくなった上に、体力勝負から土木・建設業者数が大きく減少、産業全体が衰退しています。被災地の復旧、復興の遅れや大阪万博の建設難航などの背景となっています。

 

水道事業の民営化も進みつつありますが、欧米の事例から品質の低下、料金の値上げは避けがたく思われます

 

残念ながらこれが日本の安全保障の実態であり、すでに「危機」レベルに達しているとしても過言ではありません。