子や孫世代の幸せを願って

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次世代の幸せを願って、日本の社会、経済について考えます。

愚民化した日本(14)  移民政策の愚②

 

 

 

前回人手不足は、偏った業種で生じているとしましたが、その人手不足の実態を見てみたいと思います。

 

まず「建設業」ですが、その人手不足は、土木建設関係従事者の減少によるものであり、それは政府が長年公共投資抑制してきたからです。当初予算に補正を加えた公共投資予算は98年のおよそ15兆円から2010年代では半分を切る6兆円の水準まで引き下げられました。

 

近年ではさすがに防災や国土強靭化関係で7~8兆円レベルにありますが、大幅引下げの影響で、社も人員も大幅に減少しました。社数でピーク(99年60万社)の2割、13万社を失い、従事者数もピーク(98年680万人)の3割、200万人を失ったのです。

 

 

また前回も取り上げた「介護関係」の人手不足は、その需要仕事の過酷さに比して賃金が安すぎることが主因です。全業種の最下位クラスの賃金水準です。

 

【介護報酬改定へ 2024年度から1.59%引き上げで最終調整 厚労省 介護職員の処遇改善へ】

 2023/12/18 NHK

 …人材の確保が進まない理由のひとつは、介護職員の給与が低いことです。

 2022年の厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」で賞与込みの給与を比較したところ、全て

 の産業の平均が月に36万1000円なのに対し、介護職員は月に29万3000円で、全産業の平均

 よりも6万8000円低くなっています。

 処遇改善のための加算などの対策で介護職員の給与は、10年前(2013年)と比べて4万円近く

 上がりましたが、他の職種で賃上げの動きが相次ぐ中で、介護業界の給与は相対的に低い状態

 が続いています。このため、介護職員の処遇改善が求められていて、今回、職員の給与の原資

 となる「介護報酬」がプラス改定されることになりました。

 

このニュースにある通り、介護職員の賃金は、労働需給によって決まるのではなく、実質的に介護保険制度を運営する「政府」が決めるのです。

 

しかし、こうした改定にも関わらず

【介護報酬引き上げ 人手・財源の不足解消、なお遠く】2024/1/22 日経新聞

 厚労省は24年度の介護報酬改定で全体1.59%の改定率のうち、6割以上にあたる0.98%分を介

 護職員の処遇改善に充てる。介護職員ら向けの処遇改善加算※を新設し、24年度に2.5%のベ

 ースアップを見込む。こうした措置でも全産業平均との7万円近い賃金差を埋めるに至らず、

 人手不足を解消する抜本的な対策とは言い難い。

ということなのです。

  ※「処遇改善加算」とは、介護職員を雇う事業所が一定の要件を満たせば、介護職員1人あたり最大月37,000

    円相当を受け取れる仕組みです。

 

さらに日経新聞は「(人手不足の)背景には他の産業との賃金差などがある。介護分野の有効求人倍率は22年度で3.74倍と全産業平均のおよそ3倍も高い。なかでも訪問介護は15倍以上と深刻だ。」と述べているですが、今回の介護報酬の改定では、なぜかその深刻な訪問介護従事者の基本報酬だけが引き下げられていたのです。

 

厚労省によれば、訪問介護の利益率が他のサービスより高いことが引き下げの理由らしく、処遇改善加算では、他よりも高い加算率が設定されているので賃上げにはつながっているとはしていますが、求人倍率の圧倒的な高さを考えればまったく説得力がありません。

 

厚労省がこうした馬鹿なことを遣るのも、元はと言えば財務省の緊縮財政主義にあります。

それが、本来の需要に見合った介護報酬引き上げを阻み、いつまでも人手不足を解消させないのです。

 

 

 

最後に「運送業」、特にトラックドライバーの人手不足については、その主因はやはり低賃金、過重労働です。産業平均の労働時間より2時間近く長く働いているにもかかわらず、賃金は平均より1割ほど低い実態があるのです。

 

バブル崩壊前までは概ね産業平均水準(大型トラックのドライバーは、産業平均より高い水準の賃金)の賃金であったのですが、バブル崩壊以降は平均を下回り、産業平均が横ばいとなるなか、トラックドライバーの賃金は下がり続けたのです。

 

この原因のひとつは1990年12月施行の「物流二法」(貨物自動車運送事業法、貨物運送取扱事業法)にあり、運送業を免許制から許可制とし、運賃もそれまでの認可制から事前届出制とする規制緩和を行い、参入障壁を下げたことにありました。その結果、運送業者は爆増(当時4万社が6万社に)し、ドライバーも増えたのでした。

 

ただしこの措置は、バブルによる多大な運送需要に応じたものであり、それは当時の実情に整合的なものでした。

 

しかし問題は、バブルが崩壊し、その需要が減少したにも関わらず、さらなる規制緩和を重ねたことでした。二法施行後も車庫規制の緩和等「通達ベースの規制緩和」が続き、より参入が容易となり、さらには小泉政権による構造改革で、一般貨物自動車運送事業の営業区域規制や運賃の事前届出制を廃止する改正(2003年4月施行)をやってしまったのです。これによりますます競争が激化し、一層運賃が下がり、ドライバーの賃金も下がるというようになったのです。

 

愚かにもバブル崩壊後の閉塞状態にあった経済を活性化させる「起爆剤」として「規制緩和(新自由主義)」を位置づけ、結局それにより「参入(供給)過多」すなわち「競争激化」を生み、墓穴を掘ってしまったということです。

 

 

 

次回に続きます。