子や孫世代の幸せを願って

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次世代の幸せを願って、日本の社会、経済について考えます。

愚民化した日本(13)  移民政策の愚①

 

 

愚かしい日本の少子化対策に触れた以上、避けて通れないのが「移民問題」です。

 

これも「財政破綻論」「新自由主義(規制緩和)」騙された結果であり、また「移民受け入れは人道的で民主的。それを拒むのは排外主義者だ。」との反日勢力が喧伝するムードに取り込まれ、多くが思考停止に追いやられてしまった結果なのでしょう。

 

以前「失われた30年をもたらした失政の結果(8)底辺への競争と移民政策」(2024/2/13)において、『欧州は移民の大量受け入れにより、自らその文化や価値観を失う道を選んだとの「欧州の自死」(ダグラス・マレー著)というベストセラーがありますが、まさに欧州は移民受け入れの失敗により立ち往生しているのです。それを見ながら、同じ轍を踏もうとする日本の政治が理解できません。』としましたが、繰り返しておきます。


 

【日本の人口推移】令和4年版高齢社会白書より  

 

 

確かに日本の人口は2010年の12800万人をピークに減少に転じ、このままいけば2060年代に9000万人を割りこみ、概ね3分の1の人口を失うと言われています。

生産年齢人口(15~64歳)はさらに厳しく、1995年の8700万人をピークに2060年代には4800万人を割り、その45%を失うとされています。

 

こうした日本の総人口の減少、特に生産年齢人口の急速な減少が、日本の経済・社会を大きく衰退させると危惧され、「少子化対策」「人手不足対策」が叫ばれてきたのです。

 

一般に「少子化」「人手不足」の問題には、その対策の一つとして「移民受入れ」が取りざたされます。特に日本の場合、既に人手不足とされることから、その対策としての「移民受入れ」が注目され、実際に、移民を増やしてきました。1990年代から急速に増加し始め、90年代初頭では100万人レベルであったのが、2023年末では340万人を超えるまでに膨らんでいます。

 

 

【在留外国人数】2024年3月22日 出入国在留管理庁報道発表資料より

 

 

ただし、現在においても日本政府は「移民政策」は採っておらず、あくまで人手不足対策として「外国人労働者」の受入れを増やしているのだと強弁しています。

移民の増加は、治安悪化を招くと国民に不人気ゆえにそうしているのでしょうが、誰も「移民政策」をやっていないなどとは思っていません。

 

そもそも自民党は2008年6月「人材開国!日本型移民政策の提言」(自由民主党 外国人材交流推進議員連盟)において、はっきりと「移民政策」を掲げ、「移民立国」とまで言い切っています。なんと50年間で1000万人の移民を受入れ人口の10%を移民にするとし、日本国民に他民族の固有文化を尊重する共生社会を覚悟せよとしています。

 

これ以降の政府の政策は、概ねこの提言にそって、事実上の「移民政策」を推し進めています。

 

さて、人口減少や生産年齢人口の減少はその通りとしても、そもそも本当に「移民」に頼らねばならないほど「人手不足」なのでしょうか。そのあたりから考えてみたいと思います。

 

2023年失業率2.6%有効求人倍率1.31倍(直近のピーク2018年1.61倍)であり、失業率が5%を超え、有効求人倍率も0.6倍程度に沈んだ2000年代と比較すれば、近年は労働需給が引き締まった状況ではあります。

 

しかしそれでも、高度経済成長期(1960年代前後)と比較すると、当時は失業率1%代前半有効求人倍率は高い時で1.76倍であり、それからすると雇用全体の状況としては、かつてほどの人手不足ではなさそうです

 

さらに有効求人倍率の内訳をみますと下図のようにパートつまり非正規雇用に対する倍率が高い傾向が続いています。つまり、近年の人手不足は非正規雇用の人手不足というのがひとつの特徴なのです。

 

 

【有効求人倍率】厚生労働省一般職業紹介状況より作成

 

 

ちなみにコロナ禍以降の有効求人倍率の低下と正規・非正規の差の縮小は、原材料費や光熱費の高騰などによる事業縮小、あるいは省力化投資の進捗により求人が控えられた一方、賃上げ期待などから求職が積極化したことが現れていると言われており、特に非正規雇用にそれが顕著に表れたとされています。

 

人手不足の実態として、どの業種においても厳しくなっているわけではなく、業種間に大きな格差、偏りがあり、特に不足感の強い業種である「建設業」「運輸業・郵便業」「医療・福祉(介護)」「通信サービス」「旅館・ホテル業」などが相当程度全体の求人倍率を引き上げている状況です。

 

特に目を引くのが福祉関連、なかでも介護関係であり、「求人」の「絶対数」も多く、倍率も3.06倍と高水準です。これと真逆なのが一般事務職であり、こちらは「求職」の絶対数が多く、倍率は0.35倍で、極端に低くなっています。

 

以上を鑑みれば、日本の人手不足は、かつての高度成長期ほどにはなっておらず、また極めて偏った業種、しかも主に身体的負担が大きくかつ低賃金の業種で、さらに非正規雇用で生じているということです。

 

雇用の全体観からすればまだ余裕があるということです。そうしたなか、「人手不足」が叫ばれているのは、コストカット経営による労働条件悪化それによるミスマッチのせいであり、その改善が施されれば、それほど移民に頼らなくても良いはずです。

 

さらには人材投資まで含めた「投資」全般が盛んになり、生産性が上がればなおさら人手不足は改善します。昨今の求人倍率の低下には省力化投資も一定程度影響していると言われ、今後のAI導入等更なるデジタル投資が期待できます。足元の求人倍率の低下など、すでにその兆候は表れ始めています。これではますます移民の出番はなくなるはずです。

 

 

次回に続きます。