新年最初の映画鑑賞 | ペコリーナのブログ

 映画「コンクリート・ユートピア」 を観てきました。韓国の作品です。


 そらもうものすごい災害により、残ったのは一棟のアパート(マンション? ) だけ。

 その住人たちは避難しにきた部外者たちを受け入れきれず、住人以外を建物から排除することにしました。

 食事や水、電気などのライフラインの整備のため、部外者とのトラブルを率先して解決した住人、イ・ビョンホン氏演じるヨンタクをリーダーとして選出します。

 また、看護師を妻に持つ、市役所? 勤めの若き公務員男性、ミンソンが自警団のリーダーとなり、アパートの秩序を守ることに。

 血気盛んなヨンタクのおかげで、住人たちは団結してそれなりに暮らせていけるように。


 しかし、そんな住人たちの間にも確執がうまれはじめ、なお助けを求める外部の人間たちに対して選民意識も芽生えはじめた彼らは、徐々に常軌を逸してきます。

 加えて、自分たちの住居が無事だったからといって、他の困っている人たちを排除するのはいかがなものかと考える冷静な住人をも敵と見なし、既にトップに君臨していることに快感すら覚えているようなリーダー、ヨンタクの指示で、彼らに屈辱的な制裁を与えることに何ら疑問を持たなくなります。


 欲望や憎しみに満ち満ちた極限の世界で、果たして彼らが助かる術はあるのか……?


 あと、ヨンタクってなんか、変じゃね……?


 というお話。


 日本は元旦に震災に襲われて現実にとてもとても辛い環境に身を置くかたたちがいるため、大々的なプロモーションは控えているようで。

 確かにとても恐ろしい映像が流れるため、安易にオススメできない作品でもあります。


 ただ、極限状態の人間たちから放たれるむきだしの欲望、憎悪は、大きな事故や事件、さらには戦争に身をさらされた人たち、そしてそれを傍観する立場の人たちにも生まれ得るもので、それぞれの立場に自分を投影させてみて、

 果たして平和な解決策などあるのだろうか

 と、最終的にはトロッコ問題の哲学に至りそうな内容なので、それこそ被災地以外のところであーだこーだといった議論が勃発しているいま、観られるひとは観たほうがいいかもしれません。


 作品そのものについての感想としては、格差社会において生まれる憎悪とその心理が容赦なく描かれていて、ポン・ジュノ監督の映画「パラサイト」 に続く問題作のように感じました。

 謎のリーダー、ヨンタクを演じるイ・ビョンホン氏は、個人的には韓国のトム・クルーズだと思っている無敵のイケメン俳優なのに、この映画では


 全然カッコよくない……!


 最初はボソボソ喋るし髪もボサボサだし、中盤からは保身と降ってわいた権力にすがる愚かな独裁者。


 ブルース・ウィリス主演の「RED リターンズ」 でクールでクレイジーな殺し屋を演じていた彼はどこへ……?

 てくらい、情けない認証欲求のカタマリの男、ヨンタクを演じたイ・ビョンホン氏そのものが、


 俳優としてめちゃくちゃカッコいいな……ッ!


 と思いました。


 ただまぁ、ヨンタク(イ・ビョンホン氏) にもそうならざるを得なかったのかもしれない過去があって、自警団に選出された若き公務員、ミンソクの背景やその妻の心情などが、殺伐とした物語の合間あいまに映像としてうまく挟まれているので、観る者(わたし) の視界に奥行きを持たせてくれました。


 実際の災害がとてもとても辛いので、日本ではなかなか観られるひとは多くないと思いますが、観た人間としては、秩序を保って復興に向けて尽力しているであろう現状の素晴らしさを信じたいと感じました。


 鑑賞を終え、綺麗なショッピングモールの豊かなフードコートでいつものたこ焼きを食べられることも、感謝するべき日常なのだとも思いました。