「紅ちゃん、灯油買いに付き合ってよ。」
家の灯油が無くなったのだ。
「ん~?もう無かったか?まぁ、いいけども。」
「ついでに私の欲しいものも買ってもらっていいかな?」
「ついでの領域を超えない範疇の品物だろうな?」
「シャ〇ルのお財布♡」
「御自分のお金でどうぞお願い致します。」
「即答っ!(笑) まるで分かってたかの様な反応だねっ!」
「お前の行動・言動パターンはいつも突拍子も無い事が多いからな。寧ろ常道的なパターンの方が希少なんだよなぁ。」
「おっ!小説だからって、珍しく難しめの言葉で攻めてるね紅ちゃん!」
「筆者の代弁と世界観を暴露する様な発言はやめて差し上げなさい(笑)」
「(笑)(笑)」
「じゃ、みーちゃん、行ってきます。ちょっと待っててねぇ。」
「みーちゃん、行って来るよ。」
二人を見送ったみーちゃんは牧草を一本、丁寧に口へ運んだ後、「もうひと眠り」といった具合にうさぎ寝入りを始めたのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【 還り道
~白の宝物~ 】
姫神 碧
《第3話:ふたり》
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
《神田町のとある喫茶店》
「だからそんな上手く見つかるワケないって言ったじゃん…。」
「ぐぅ。ぐや゛じい゛~~!挙句風邪気味だし……完全に今回は我々の完全敗北ですな!」
ずずずずずず……
【注文したアツアツの茶葉入りミルクティを啜りながら項垂れるミコ】
「でもまぁ、ウチらがピザ注文して待ち構えてれば簡単に会えるよね……。」
「っっ!! ハルミ…あんた天才か!その発想はなかったわ」
「えぇ……」
「早速ピザ、頼むわよ!ん?そもそもどこのピザ屋か調べる所から始めなきゃ!」
「あんた…まずは風邪を治す所からだね。」
「……せやな」
「……うん」
【配達員捕獲計画が始動しようとしていた。時が満ちる(ミコの風邪が治る)迄、あと数日……】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おい……まだ買うのかよ。」
「ん~?まぁ久々のデートだし、もうちょい付き合ってよ。」
俺達は自宅から歩いて数分の大型デパートへ買い出しに来ていた。
それにしてもコイツは満面の笑みでそんな事言いやがって。
少しコイツの紹介をしとくと、
3年歳下の彼女は今年で24歳。以前成田が言ってたように確かに美人だ。
何よりこんなに純粋な笑顔を出せるのは育ちが良いんだろうな。
そんな笑顔を向けられて尚、冷静沈着に務める俺は所謂所の《格好付け》だ。
「飯でも…食ってくか?」
「え~?私の手料理大好きでレストラン嫌いな紅ちゃんが珍しいね。どういう風の吹き回し?」
「お前はいちいち恥ずかしくなる事を口外するんじゃない。別に深い意味は無いけど、たまにはお前を連れて外食でもしてやりてーなって思っただけだよ。」
「……ふふっ。不器用なんだね。良かろう良かろう。苦しゅうないぞ。」
「………………。」
コイツは本当に面白いキャラだよ。
まぁ、だから一緒にいて楽しいんだけどな。
外食はデパート内のイタリアンレストランで済ませ今回の目的である灯油を購入し帰り道についた。
「紅ちゃん、灯油、持とうか?」
「楽勝だよ。お前こそ自慢の鍋セット落とすなよ?」
「落としたら今年は鴨鍋、無しになるでざます。」
「そりゃあ困るな。しっかり守ってくれよ。」
また得意の山の手言葉が出てるな。
っ!!
「…危ねぇっっ!!!」
ブロロロロロ……
狭い路地に大型のトラックが猛スピードで通り過ぎていった。
俺は咄嗟に荷物を放り出して壁に彼女を押し付けていた。
「ったく危ねぇ。何考えてんだあのバカトラック……。大丈……」
俺は言葉が詰まった。彼女が見た事の無いほど色気に充ちた恍惚の表情で俺を見ていたからだ。
お互い言葉は交わさずにいた。まるで何時間も前からそうしていたかの様なミステリアスな感覚。
10秒も満たない時間ではあったが気恥しくなり俺から目を逸らした。
「お前も灯油も無事で良かった。か、帰ろうぜ。」
「う、うん……。」
コイツが素の女になってる時は相当緊張してるか照れてるかの二択になる。
俺は灯油缶とは逆の手で彼女の手を引っ張る様に握った。
「ボーッとしてたら、置いてくからな。」
「……ふふっ。本当に不器用だね、紅ちゃんは」
気づけばいつからか降り出していた雪は止んで帰り道は雪が溶け始めていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「みーちゃん、おやすみねぇ。」
私は夜のグルーミング中のみーちゃんにカットしたほうれん草と水をケージに入れておやすみの挨拶をした。
向かう先はいつもの自分の部屋、ではなかった。
「ねぇ紅ちゃん……。今日は一緒に、寝ていい?」
「……布団剥がれる未来が目に見えてるから持参して来るならな。」
私の目論見は見透かされていたようでちょっぴり気に食わなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー