最後に私はまりこに伝えた。
「◯◯さんに、不貞に対しての慰謝料を請求したいと考えております。
通常ですと、不貞の慰謝料は◯◯万です」
「◯◯万!
ボーナス入らないと無理です。
私、家を買ってローンもあるんです。
半分は、◯◯さんにも責任はありますよね?」
求償権について調べたんだろうか。
「そうですよね。
この件に関して、一番悪いのは夫です。
夫と今後どうしていくのか、離婚なのか別居なのか、夫婦で話し合いをしていきます。
私には子供が3人いるんで…、
簡単な話ではありません。
こちらは弁護士を立てるつもりはありませんが、◯◯さんもそうですか?」
「はい。」
「では、示談金に関してはお話し合いで決めましょう。今後はラインでお伝えします。
◯月までに行政書士さんに示談書を作成してもらいます。
会ってサインしていただくか郵送、
どちらがいいですか?」
「どちらでもいいです。」
彼女は車から降りた。
終わった。
「らんちゃん、大丈夫?
私こんなことしてよかったのかなって考えちゃって…。
運転大丈夫?」
「みきちゃん、ありがとう。
感謝しかないよ。
運転お願いしてもいいかな?」
助手席に座った。
一気に現実が押し寄せてきた。
夫との死闘で痛めた身体が
今頃になって痛みだす。
私は
赤ん坊のように泣いた。
何時間も
ずっとずっと泣き続けた。
あぁ、子供達の元へ帰らなくては。
夫に会えるのは明日。
話し合いは会社に行く前だ。
夫との死闘
まりこへ誓約書作成
まりこと対面
まりこへ慰謝料請求
12時間以内に起こった出来事。
ジャック・バウアーばりの行動力だったな。
普段、私はこんなタイプじゃない。
ニコニコ笑って穏便に済ますタイプ。
トラブルに巻き込まれたこともない。
この行動力は
不倫の恨みではない。
再構築でさんざん味わった
苦しみ
さんざん苦しんで
ようやくここまで辿り着いたのに
それが
幻だった絶望