『科学者は戦争で何をしたか』
益川敏英 著
集英社新書 2015年8月17日 第1刷発行
理論物理学者 2008年ノーベル物理学賞受賞
九条科学者の会 呼びかけ人
益川敏英さんは、ノーベル賞の受賞記念講演で、ご自分が5歳の時に名古屋の昭和区にあったご自宅にアメリカ軍の爆撃機によって落とされた焼夷弾と土間で向き合ったことを話されました。 不発弾で、破裂しなかったことで命を取り留めたのだとのこと。
この体験をノーベル賞の受賞記念講演で話すことを、場をわきまえないと非難する声もあったそうですが、もともと、ノーベル賞は、ノーベルが自分の発明したダイナマイトが戦争に使われて多くの人の命が奪われたことへの贖罪の思いから制定した賞だということを増川さんはしっかりと踏まえていたのです。
増川さんの研究室の壁には、恩師である理論物理学者の坂田昌一先生の書が掛けられているそうです。
「科学者は科学者として学問を愛する以前に、まず人間として人類を愛さなければならない」
この本には、上記の言葉の他、印象に強く残る言葉がたくさん記されています。
坂田昌一先生の言葉として、上記の言葉を要約した「科学者である前に人間たれ」、そして、「科学者には現象の背後に潜む本質を見抜く英知がなければならない」という言葉も印象的です。
フランスの生化学者 ルイ・パスツール
「科学に国境はないが、科学者には祖国がある」
そして、バートランド・ラッセルとアインシュタインの提唱したラッセル・アインシュタイン宣言 1955年7月九日
「およそ将来の世界戦争においてはかならず核兵器が使用されるであろうし、そしてそのようなそのような兵器が人類の存続をおびやかしているという事実からみて、私たちは世界の諸政府に、彼らの目的が世界戦争によっては促進されないことを自覚し、このことを公然とみとめるよう勧告する。したがってまた、私たちは彼らに、彼らのあいだのあらゆる紛争問題の解決のための平和的な手段をみいだすよう勧告する。」
世界の平和を守るために日本がどうあったら良いかを考える上でも、大切なことが書かれている本だと思います。
今日も、出来るだけ、良い日となりますように。