今回のブログは、

先日観てきた歌舞伎座昼の部の感想です。

 

 

 

七月大歌舞伎 昼の部

通し狂言 星合世十三團

  (ほしあわせじゅうさんだん)

 

 

 

 

 

 

今月の歌舞伎座は

昼夜ともに「通し狂言」になっています。

歌舞伎座正面玄関左右のこの場所には、

通常は各演目の名場面を描いた

「絵看板」が掲げられています。

 

 

 

 

 

 

これは、

先月の『六月大歌舞伎』昼の部の三幕目

「妹背山女庭訓(妹背山女庭訓)」の絵看板。

 

 

 

ところが、最初に載せた画像のように、

今月はど~んと1枚のビジュアルが

飾られているのです。

演目ごとの絵看板は趣きがありますが、

このど~んと1枚は迫力があります。

 

 

 

ちなみに「通し狂言」とは、歌舞伎などで、

一つの演目を序幕から大切(おおぎり)まで

全幕、またはそれに近い場割りで

通して上演すること。

 

 

 

え?

それって普通のことじゃないの?

 

 

 

普通のお芝居だとそうですが、

歌舞伎の場合は、長~いお芝居の中の

ハイライト、名場面だけを切り取って

上演するほうが多いのです。

なので、どんな話か予習していかないと

ビギナーには前後の脈絡がわからず、

はて?となることがあるのですね。

つまり、今月の歌舞伎座公演は

昼も夜も通しなので、

ビギナーにもわかりやすいお芝居というわけです。

 

 

 

さて、今月上演の昼の部の演目『星合世十三團』。

初演は令和元(2019)年7月の歌舞伎座。

歌舞伎の三大名作のひとつ

『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)』を原作に、

そこに描かれたドラマをぎゅっと凝縮、

スピーディーに舞台が進行していくお芝居です。

 

 

 

初演当時は海老蔵だった團十郎さん。

インタビューで今回の再演について、

歌舞伎を観たことのない人にも楽しんでもらえるよう、

「せりふに至るまで、わかりやすさを意識したい」

と語っていました。

その表れのひとつでしょう。

舞台は「発端」を見せた後、

大きなスクリーンに物語の相関図を写し、

裃姿の團十郎さんがお芝居のポイントを説明してくれます。

敷居がぐっと低くなる感じ。

 

 

 

演出はとにかく派手で、目を見張りっぱなし!

早替わりや宙乗りなどの

歌舞伎ならではのけれん味たっぷりの演出が

これでもか!と詰め込まれ、

客席からは始終どよめきが起きます。

これぞエンターテインメント!

という舞台。

 

 

 

しかも、團十郎さんは1人13役!

主要人物13人をたった1人で、

しかも早替わりを多用しながら演じ分けていくのです。

その13役とは、左大臣藤原朝方、卿の君、川越太郎、

武蔵坊弁慶、渡海屋銀平実は新中納言知盛、入江丹蔵、

主馬小金吾、いがみの権太、鮨屋弥左衛門、

弥助実は三位中将維盛、佐藤忠信、

佐藤忠信実は源九郎狐、横川覚範実は能登守教経。

ありとあらゆる歌舞伎の役柄を

一人で演じているのですね。

歴史に名を残す武将から豪傑、

色男に一般庶民、老爺、ちんぴら、

そして女性や狐も!

 

 

 

持ち味が活きるのは、

中納言知盛のような骨太な役でしょうか。

いがみの権太もよかったな。

源九郎狐も可愛らしかった。

それにしても、衣裳も化粧も違う役を、

あんなに素早く変えていくとは!

イリュージョンですか、これは!?

という場面も何度もあって、

裏方の皆さんとのチームワークの賜物だと思いました。

團十郎さん曰く、

「早替りのときの舞台裏は、

まるでF1のピットインのよう」

う~ん、覗いてみたい!

 

 

 

知盛の霊が天へと昇る幻想的な宙乗りと、

狐忠信のキュートな宙乗り、

カラーの違う宙乗りを2つ味わえたのも

贅沢なことでしたし、

歌舞伎の面白さ、素敵さを伝えよう!

という團十郎さんの思いが響く、

そんな舞台でした。

 

 

 

そして、歌舞伎ファンとしては、

この観劇をきっかけに

通常の『義経千本桜』も観てみたいと思う人が

増えると良いなあとも感じたのでした。

 

 

 

 

 

 

最後の最後は

ものすごい桜吹雪(というかスコール)のなか、

團十郎さんが裃姿で舞台中央に登場し、

挨拶をして、幕。

 

 

 

終演後、花びらを拾う人続出。

夜の部まであまり時間がない中、

お掃除の人は大変だろうなあ。

いろいろな人の努力で

舞台は支えられているのですね。

 

 

 

『七月大歌舞伎』

7月24日㈬千穐楽です。