今回のブログは、

先日観てまいりました歌舞伎座昼の部の感想をば。

 

 

 

 

 

 

今月の歌舞伎座は昼夜ともに通し狂言。

しかも、どちらも作者は河竹黙阿弥と、

ちょっとおもしろいプログラムになっています。

加えて、今月の配役はAプロ・BプロのWキャスト。

私は、松緑さんが岩藤の霊/鳥井又助の二役、

萬壽さんが二代目尾上を演じているBプロを観てきました。

 

 

 

 

 

 

ちなみに、「通し狂言」とは、

お芝居を最初から最後まで通して上演すること。

フツーはそうじゃないの?と思うでしょうが、

歌舞伎の場合は、

ひとつのお芝居のハイライトだけを切り取って上演する

「見取り狂言(みどりきょうげん)」がポピュラー。

ハイライトばかりがズラッと上演されるさまは、

美味しいものをちょっとずつ、

の幕の内弁当のような様相です。

通しにも、見取りにも、それぞれの良さがありますが、

今月の歌舞伎座は、昼も夜も、

通しで物語をじっくり楽しむ、という趣向なんですね。

 

 

 

前置きが長くなりました。

それでは、昼の部の感想です。

その前に一言感想を書いておきますと、

見どころに次ぐ見どころの面白いお芝居でした!

 

 

 

歌舞伎座写真

三月大歌舞伎 昼の部

 

通し狂言『加賀見山再岩藤(かがみやまごにちのいわふじ)』

骨寄せ(こつよせ)の岩藤

 

 

 

江戸時代に実際に起きた、

加賀藩の御家騒動を題材にした名作

『鏡山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)』

の後日譚として河竹黙阿弥によって書かれた作品です。

パロディ、と呼んでもいいかもしれません。

ちなみに、『鏡山〜』の作者は容楊黛(ようようたい)。

そして、「骨寄(こつよ)せの岩藤」という変わった通称は、

野晒しにされていた骨が寄せ集まって

岩藤の亡霊が現れることからついた名称で、

ここが大きな見どころのひとつでもあります。

 

 

 

【これまでのあらすじ】

 

5年前、多賀家で御家騒動が勃発。

悪人たちの計略を知った中老尾上は、

悪事に加担した局岩藤に草履で打たれた屈辱から自害すると、

尾上の召使いのお初が仇である岩藤を討ち果たす。

御家の危機を救ったということで、お初は主人の名を継ぎ、

二代目尾上として中老に取り立てられた…。

 

 

 

【今回のお話】

 

騒動が収まったのも束の間、

当主の妹・花園姫(男寅)が病にかかると、

御家横領を企てて討たれた

岩藤の祟りではないかと噂され、

多賀家には再び不穏な空気が漂っています。

多賀家当主の大領(たいりょう)は、

正室・梅の方がありながら、

側室・お柳の方(扇雀)に心奪われています。

そんな当主大領を諫めた花房求女は追放され、

その帰参を願う忠臣の鳥井又助(松緑)は、

お柳の方を亡き者にしようとしますが、

誤って梅の方を殺めてしまうのでした。

しかし、すべては御家横領を企てるお柳の方と、

執権である望月弾正(芝翫)が仕組んだ陰謀だったのです。

 

 

 

通しで観るのは初めてのお芝居ですが、

言葉がわかりやすいからか、

物語がわかりやすい展開だからか、

イヤホンガイドなしでもすんなりと入り込めました。

まずは、さまざまな悪のはびこる多賀家の様子が描かれます。

芝翫さんの弾正はいかにも悪い奴、

という匂いをぷんぷんまき散らしつつ、

位の高さもきちんと出てよい。

弾正と結託する悪女・お柳の方を演じる扇雀さんは安定のうまさ。

蟹江一角・松浪主税の悪役兄弟は亀蔵さんと松江さんが憎々しげに。

男寅さんの花園姫はとてもキュート。

そして、松緑さんの又助は、実直さがストレートに出て、とてもよい。

だからこそ、悪い奴らに騙されて…(涙)。

 

 

 


 

 

 

一方、二代目尾上となったお初(萬壽)は、

尾上の祥月命日の墓参りの帰り道、

八丁畷で岩藤を回向しようと念仏を唱え始めます。

すると、土手に散らばっていた岩藤の白骨が寄り集まり、

突如、岩藤の亡霊(松緑)が現れて、

「お前に恨みを言おうと思って待っていた」

と襲いかかりますが…。

 

 

 

萬壽さんの二代目尾上、いよいよ登場の場!

なんと初役だそうです。

私が観たのはBプロの初日でしたが、

とてもそうは見えない。

芯の強さがある女性だと一目でわかります。

無念のうちに亡くなった主人だけでなく

敵の御霊も弔おうとする姿に惹きこまれていると、

そこから舞台は驚きの展開。

暗い土手に本当に骨が散らばっていて、

それがするすると動き出し、うわ、骸骨の形になった!

と思うと、松緑さんの岩藤が現れるのです!

「骨寄せ」です。

これを観るのはたしか2度目ですが、

一体どうやって骨が集まっているのか、見入ってしまいます。

そして現れた岩藤の気味の悪さ。

その後、お芝居は「だんまり」に。

奴伊達平と蟹江主税なども登場し、

二代目尾上が落としてしまった

朝日の尊像という宝物を皆で探り合う、

という展開になって、幕。

ちょっと強引な展開だなとは思うのですが、

まあ、歌舞伎あるあるです。

 

 

 

その後、場面は一転、明るくなり、

それまでのおどろおどろしい空気はすっかり消え去ります。

復活した岩藤の亡霊は、美しい局の拵えで日傘をさして、

ふわふわと楽しそうに桜咲く上を飛んでいくのでした。

 

 

 

みごと復活した岩藤が、

宙乗りでふわふわと舞台の上を飛んでいく

(なのでこの場面は通称「ふわふわ」)、

これだけの幕で、ストーリーもないのですが、

とにかくビジュアルが強烈で、

ぜったいに忘れられない舞台です。

それまで骸骨でおどろおどろしかった岩藤が

きちんと紅をさして、穏やかに微笑みながら、

メリー・ポピンズのごとく日傘をさして

ピンクの桜の上を飛んでいく。

蝶と戯れながら。

ファンタジーです!

 

 

 

松緑さんの岩藤は2013年以来、

13年ぶり2度目とのこと。

前の場面では本当に怖かったのに、

ここではめちゃくちゃキュート!

同時に、めちゃくちゃ妖しい!

いつもはいかついイメージなのに!

ちなみにこの岩藤は、

日頃は立役の俳優が演じる女形という点でも注目。

Aプロの巳之助さんは全く違う岩藤にちがいなく、

そちらも観たいものです。

 

 

 

さて、物語は本筋に戻って、お次はこんな展開。

 

 


多賀家の奥殿で尾上は、病中の花園姫を励ましますが、

そこに現れた弾正、尾上が姫の病気に乗じて

御家横領を企んでいると詰め寄ります。

すると、岩藤の声がとどろき、館は鳴動、

5年の歳月を経て再び岩藤が奥殿へ姿を現します。

岩藤の霊は、弾正を操り多賀藩の乗っ取りを

たくらんでいるのです。

尾上に向かい御家横領の張本人と言い立てて侮辱し、

草履を手にして尾上を打ち据えるのですが…。

 

 

 

この一幕も迫力満点。

悪人・弾正が尾上をはじめとする善人たちをやっつけに来た、

と思いきや、ガラリ舞台は様変わり、

岩藤が再登場、尾上に襲いかかるのです。

この松緑さんの恐ろしいこと!

そして、打ち据えられる萬壽さんの尾上と二人、

いい形を作っていくんですね。

怖がりながらも、歌舞伎の様式美を楽しむ。

歌舞伎鑑賞は、なかなか心が忙しい。

 

 

 

 

 


続いての物語は舞台が一変、又助一家の悲劇を描きます。

 

 

 

一方、鳥井又助の家には、

病となった主人の花房求女(萬太郎)が身を寄せています。

又助の弟・志賀市(しがいち:種太郎)は

目が悪く近所の子供たちにいじめられていますが、

琴を弾いて日銭を稼ぎ、生活を助けています。

又助の妹つゆ(莟玉)は、

求女の体を治す金を金を工面するため

苦界に身を沈める覚悟を決めています。

そこにやって来たのが家老の安田帯刀(又五郎)。

又助は、自分が殺害したのはお柳の方ではなく、

梅の方であり、それがために求女が

苦境に立たされていることを知らされて…。

 

 

 

歌舞伎では、市井の人々が、

自分たちは何も悪くないのに権力争いに巻き込まれる、

という悲劇がよく描かれますが、

この場面もそのひとつ。

志賀市を演じたのは種太郎くん、10歳。

中村歌昇さんのご長男。

たくさんの動き(しかも盲目の役)、

長い台詞があるうえに、

琴を弾きながら歌う場面がかなりの長さなのですが、

みごとに演じていました。えらい!

公演が終わるころには、もっと上手くなっているのだろうな。

つゆ役は莟玉さん、健気で可愛い。

又五郎さんの安田帯刀はまことにカッコよく

頼れる家老という雰囲気。

松緑さんの又助は、絶品!

そして、切ない…。

 

 

 

すっかり泣かされた後はエンディングです。

 

 

 

さまざまな悪の所業が白日の下にさらされます。

悪党一味は滅び、岩藤の霊も消え去ります。

同時に花園姫の病気もたちまち快癒。

万事、めでたしめでたしとなったのでした。

 

 

 

この大詰は大勢の捕手が登場、

派手な立廻りがけっこう長いこと楽しめます!

それまで重苦しい展開が続いたこともあり、

単純に、楽しい!!

俳優さんたちの鮮やかな立廻りに、

歌舞伎を観たぞ~、という気分になりました。

そして、多賀家の殿様・大領を演じる七代目菊五郎さん

この大詰で登場です!

舞台奥から中央にお出ましになりますが、

一瞬にして注目を集める、そのオーラの凄いこと!

そして、声の張りが素晴らしい!

舞台はすっかり締まって、

陰謀とか、亡霊とか、いろいろとあったけれど、

最後はめでたい!という気持ちになったのでした。

こう書いていると、

ものすごく乱暴な展開のような

気持ちもしてくるのですけれどね(;^_^A

それも、歌舞伎の醍醐味なのだと思います。

 

 

 

 

 

 

左、萬壽さんの二代目尾上。

右、松緑さんの復活した岩藤の霊。

 

 

 

そして、又助はこんな感じでございました。

 

 

 

 

 

 

歌舞伎座前にはこんなイラストの展示も。

 

 

 

 

 

 

劇場前に展示されていた

漫画家・紗久楽さわ氏による描きおろし特別イラスト。

右は昼の部の演目『加賀見山再岩藤』、

左は夜の部の演目『三人吉三巴白浪』。

これも見ごたえたっぷり!

 

 

 

三月大歌舞伎、3月26日㈭千穐楽です。

 

 

 

 

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