今回のブログは、

先日観てまいりました

歌舞伎座夜の部の感想です。

 

 

 

 

 

 

雨に濡れる歌舞伎座も素敵。

 

 

 

中村時蔵さんが初代中村萬壽、

中村梅枝さんが六代目時蔵を襲名、

新・時蔵の長男小川大晴(ひろはる)くんが

五代目梅枝として初舞台。

さらには、中村獅童さんの

長男・小川陽喜(はるき)くんが初代中村陽喜、

次男・小川夏幹(なつき)くんが

初代中村夏幹を名乗って初舞台という今月の歌舞伎座。

おめでたいムードが劇場じゅうにあふれています。

 

 

 

 

 

 

客席に入ると目に飛び込んでくるのは

「初代中村萬壽 

六代目中村時蔵襲名披露 

五代目中村梅枝初舞台」

を寿ぐ祝幕。

日本画家・千住博さんによるものです。

気品と勢いを併せ持つ、素敵なデザイン。

 

 

 

六月大歌舞伎 夜の部

 

一、南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん

  円塚山の場(まるつかやまのば)

 

原作は、江戸時代に大流行した曲亭馬琴の長編小説。

今月は「円塚山の場」を上演しています。

 

 

 

円塚山の山中にやってきた網干左母二郎(巳之助)と

庄屋の娘・浜路(米吉)。

名刀村雨丸をめぐる争いで浜路が斬られたところに、

犬山道節(歌昇)が姿を現します。

やがて運命に導かれるように、

犬村角太郎(種之助)、犬坂毛野(児太郎)、

犬川荘助(染五郎)、犬江親兵衛(左近)、

犬田小文吾(橋之助)、犬塚信乃(米吉)、

犬飼現八(巳之助)が集まって、八犬士が集結。

暗闇で互いに村雨丸を探り合うのでした…。

 

 

 

みどころは、八犬士による「だんまり」。

「だんまり」とは、登場人物が台詞無しで、

宝物を暗中にさぐりあう動作を

誇張して表現する歌舞伎特有の演出法です。

それぞれに個性的な衣裳、お化粧で、

スローモーションで村雨丸を探る様子は動く錦絵。

妖しい空気が舞台に溢れます。

そして、若手ずらりの舞台に

目はどこを追っていいのやら。

 

 

 

二、山姥(やまんば)

 

 

 

 

 

 

初代中村萬壽襲名披露狂言、

五代目中村梅枝初舞台の舞踊です。

 

 

 

美しく紅葉した足柄山。

山姥(萬壽)に育てられ、

足柄山ですくすくと成長した怪童丸(梅枝)。

ある日、二人が住む庵を山樵(さんしょう:きこり)の

峯蔵(芝翫)が訪ねてきます。

実はこの男、主君・源頼光の命で

家来にふさわしい武者を探している

武将の三田の仕(みたのつごう)。

怪童丸はその力量を認められ、

都で召し抱えられることになるのでした。

 

 

 

怪童丸とは足柄山の金太郎、後の坂田金時です。

演じるのは新・中村梅枝くん、8歳。

堂々たる怪童丸です!

声はのびやかでよく通り、

動きが一つ一つ大きく丁寧で、

立ち廻りもしっかり。

舞台写真も見たのですが、形がきれいなんですね。

しかも、お顔立ちがとてもきれい。

今後がとても楽しみです。

 

 

 

萬壽さんの山姥は気品があり、

怪童丸への情愛にあふれます。

四季を描く「山めぐり」の舞は情緒たっぷりで、

すっかり見惚れてしまいました。

 

 

 

猪熊入道は梅枝くんの叔父にあたる萬太郎さん。

台詞には、萬屋一門にちなんだワードが

たくさん散りばめられ、とっても楽しい。

 

 

 

そのほか、多田満仲に歌六さん、平井保昌に又五郎さん、

白菊には梅枝くんの父親の新・時蔵さん。

お祝い感がアップしたところで登場するのが、

獅童さんの源頼光。

お供は渡辺綱と卜部季武に扮した小さな2人、

それぞれ初舞台の中村陽喜くん(6歳)と中村夏幹くん(3歳)

この姿がもう、可愛い!!

ちゃんと動いてる!

ちゃんと台詞言ってる!

ちゃんと見得切ってる!

心の中できゃあきゃあ言いながら観てしまいました。

そして最後に、

錦之助さんの源賢阿闍梨を伴った

菊五郎さんの藤原兼冬が登場し、

劇中口上となったのでした。

 

 

 

お祝い気分最高潮のところで小さな3人は踊りを披露。

劇場じゅう大拍手。

幸せな気分に包まれたところで祝幕がひかれ、

幕外の引っ込み。

新・梅枝くんは芝翫さんの三田の仕が見守るなか、

実に立派な花道の引っ込みを見せてくれました。

いやあ、めでたい!

彼らが大きくなるまで、

歌舞伎座に通いたいものだと思いました。

 

 

 

 

五代目 中村梅枝丈

 

 

 

 

初代 中村陽喜丈

初代 中村夏幹丈

 

 

 

三、魚屋宗五郎(さかなやそうごろう)

 

 

 

 

 

 

初代中村陽喜くん、

初代中村夏幹くんの初舞台。

河竹黙阿弥の生世話物の名作です。

 

 

 

町は芝の明神さまのご祭礼でにぎわう中、

魚屋の宗五郎(獅童)の家はすっかり沈んでいます。

というのも、宗五郎の妹・お蔦は、

磯部家の殿様に見染められて妾奉公に出たのですが、

不義を理由に切り殺されてしまったのです。

悲しみに暮れる宗五郎一家。

そこにやって来たのが、妹お蔦の朋輩おなぎ(孝太郎)。

おなぎからお蔦の不義は濡れ衣と聞かされ、

やるせない気持ちの宗五郎は

絶っていた酒に手を出してしまいます。

すっかり酔っぱらった宗五郎は、

「殿の野郎を叩っ斬ってやる!」

と、女房おはま(七之助)や父・太兵衛(崎権十郎)、

使用人の三吉(萬太郎)の制止を振り切り

磯部家へ乗り込んでしまい…。

 

 

 

ビギナーでもとっつきやすい、楽しいお芝居です。

そんなことでお蔦さんは殺されちゃったんだ、

という虚しさは横に置いといて。

酒は飲んでも飲まれるな、ですな。

 

 

 

獅童さん、宗五郎初役です。

初役とは思えないこなれ感。

でも、少し重たい感じがしますかね。

世話物なので、台詞は

今の私たちが使う言葉とほとんど変わりないのですが、

ちゃきちゃきの江戸弁なんですよね。

いつだったか、

今の歌舞伎俳優でちゃんとした江戸弁がしゃべれるのは

七代目菊五郎だけだ、

ということを書いていた人がいましたが、

今回の舞台で、そういうことか、と思いました。

それから、次第に酒に酔っていく様子とか、

酒の飲み干し方とか、

磯部家の玄関先でお蔦のことを思いながら語る長台詞とか、

宗五郎ってしどころ満載のお役なのだと改めて。

私は七代目菊五郎さんの宗五郎がとっても好きなのですが、

あんなに自然にやっていらしたことが

実は実は大変な芸なのだと、今回改めてわかりました。

獅童さんはその菊五郎さんの教えを受けて

今回の舞台ということですが、

これから、獅童さんらしい宗五郎を

作り上げていくことでしょう。

楽しみです。

 

 

 

脇を固める面々はしっかり。

宗五郎の女房おはまは七之助さん。

おなぎは孝太郎さん。

菊茶屋女房おみつに魁春さん。

お蔦の父・太兵衛には権十郎さん。

そして、家老・浦戸十左衛門を坂東亀蔵さん。

磯部の殿様・主計之助(かずえのすけ)を隼人さん。

 

 

 

そして、酒屋の丁稚に、

初舞台の初代中村陽喜くんと初代中村夏幹くん。

『山姥』の武将姿も可愛かったけれど、

丁稚姿も、食べちゃいたいくらいに可愛い。

花道から登場すると、割れんばかりの拍手。

それに物おじせず、よく通る声で台詞を言って、

ああ、えらいなあ、

こうして歌舞伎役者は作られていくのだわねえ、

とおばちゃん、ニマニマして拝見しました。

 

 

 

 

 

 

「初代中村陽喜 初代中村夏幹初舞台」

を寿ぐ祝幕。

ビートたけし氏原画・提供。

 

 

 

とっても可愛い風神・雷神!

陽喜丈、夏幹丈もお気に入りなのだとか。

すくすく育って

歌舞伎界に旋風を巻き起こしてくださいね。

 

 

 

『六月大歌舞伎』

6月24日(月)千穐楽です。

 

 

 

今回の歌舞伎座土産は、

 

 

 

 

 

 

萬屋饅頭。

1階の「お土産処・木挽町」で

人形焼きの実演販売をしている

「大黒堂」の商品です。

お値段は6個入りで1050円。

 

 

 

 

 

 

萬屋の家紋、桐蝶の焼き印!

 

 

 

 

 

 

生地はしっとり、ふわっ。

なかのこし餡は甘さ控えめ。

人形焼きより少し軽い感じでしょうか。

1つなら罪悪感なしで食べられる、

しかし、1つ食べると

2つ目に手が伸びる可能性大。