今回のブログは、

おととい4月2日に観てきました

歌舞伎座初日、夜の部の感想です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四月大歌舞伎@歌舞伎座

夜の部

 

 

 

一、於染久松色読販

(おそめひさまつうきなのよみうり)

 

 

 

 

 

 

今月の歌舞伎座、夜の部は

なんといっても、にざ玉コンビの演目が

2つあるということです!

そのひとつ目がこのお芝居。

 

 

 

作者は、「東海道四谷怪談」や

「盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)」など

数々の名作を生みだした四代目鶴屋南北。

奇想天外なストーリー展開や、

ピリリと毒の効いたユーモアが持ち味です。

このお芝居は、大坂で実際に起こった心中事件を、

舞台を江戸に移して描いたもの。

油屋の娘お染と丁稚の久松の

道ならぬ恋がメインのストーリーですが、

今月は、土手のお六と鬼門の喜兵衛という

悪人夫婦が主人公。

お染も久松も登場しません。

 

 

 

このように歌舞伎は、長い芝居の一部だけを

抜き取って上演することが多々あるんですね

(逆に、作品のすべてを上演することを

「通し」「通し狂言」という)。

なので、ビギナーの方は

予めあらすじなどを読んでおいて、

それまでの話の流れや、

人間関係を把握しておくと

お芝居に入りやすいと思います。

 

 

 

向島で莨屋(たばこや)を営むお六のもとへ、

かつて仕えていた奥女中の竹川からの手紙が届きます。

そこには、紛失していた

名刀・午王吉光(ごおうよしみつ)と折紙が

油屋にあることがわかったので、

取り戻すために必要な

100両の金を工面してほしいとあります。

お六が思案しているところへ、

亭主の喜兵衛が帰ってきますが、

実はそれらを盗み出した張本人こそ、

この喜兵衛でした。

河豚の毒にあたった男の死体に細工をし、

強請って金を手に入れることを思いついた

お六と喜兵衛の二人は、

早速、油屋へ乗り込みますが…。

 

 

 

土手のお六は、“悪婆(あくば)”と呼ばれる役柄。

「悪い婆さん」ではなく、ほれた男のために

盗みや殺しなどの悪事を働く中年の女性を指します。

髪を結わずに後ろでゆったりとまとめた

「馬の尻尾」という鬘に、

格子縞の着物が典型的な扮装です。

この土手のお六を玉三郎さん。

そして、悪人なんだけれども色気がある、

お六の亭主の喜兵衛を仁左衛門さん。

 

 

 

昭和46(1971)年に初めて二人で勤めて以来、

何度も上演を重ねてきた当り役だけあって、

初日でありながら息ぴったり!

二人とも、ホントにワルなのに

どこか抜けていてユーモラス。

凄味の効いた啖呵を切りながら

強請っていたかと思ったら、

あっという間にウソがばれ、しゅんとして帰っていく。

にざ玉のお二人のリズムにすっかり引き込まれ、

笑って、感動しました。

しかも、お二人とも、

いかにも悪そうなルックスなのになんて綺麗!

カッコいい!

悪の華を体現しているのです。

 

 

 

 

 

 

二、神田祭

 

 

 

 

 

 

江戸の二大祭の一つである

「神田祭」を題材とした舞踊です。

「於染久松色読販」の悪の華から一転、

仁左衛門さんは粋でいなせな鳶頭、

玉三郎さんは艶やかな芸者で登場。

とびきりの美しさです!

聞こえているのが祭囃子、まさに祭りの真っただ中。

舞台中央にお二人が並ぶと、

江戸の風情が匂いたち、初夏の風まで感じます。

ステキ!!

しかも、この鳶頭と芸者は訳ありの設定、

踊りながらもイチャコラし始めるんですな。

親密に手をつなぐさま、頬を寄せ合う様子、

玉さまがにざさまのほっぺを

つん!とつつく仕草などなどに、

観ているこちらが、「きゃあああ」。

身もだえしそうになりました。

いや、本当にしていたか。

しかも、そのすべてが美しい形にきまっているのです。

眼福とは、まさにこのことでした。

 

 

 

三、四季

 

 

 

 

 

 

明治・大正の女流歌人として愛された

九條武子の遺作で、

昭和三年に初演された舞踊です。

私、初めてかも。

題名そのままに、

日本の四季折々の風情が描かれています。

 

 

 

まず、「春 紙雛」では

菊之助さんが女雛、愛之助さんが男雛として登場。

これが、我が家の木目込み人形のお雛様にそっくりで。

うっとりしながら拝見。

つづく「夏 魂まつり」は、

大文字の送り火を舞台にして、

芝翫さん、橋之助さん、歌之助さん、

児太郎さんが登場。

「秋 砧」は、孝太郎さんのしっとりとした踊り。

若妻の夫を思う心情を表したもの、だそうですが、

とても引き込まれる舞踊でした。

そして最後、「冬 木枯」は、

ものすごい数の役者さんが登場。

これは歌舞伎なんだろうか、

とちょっと思ってしまったのですが・・・、

新しい形の舞踊です。

大部屋の若手の役者さんたちが、

木枯らしに舞う木の葉の動きを

群舞で表現していくのです。

とんぼなどのアクロバティックな動きが盛りだくさん、

若いエネルギーが舞台で弾けるのを、

松緑さん坂東亀蔵さんのみみずくが

優しく見つめているのがほほえましく、

また亀三郎くん眞秀くんの木の葉は

可愛らしい極みでした。

 

 

 

『四月大歌舞伎』

4月26日㈮千穐楽です。

 

 

 

 

 

 

「本日初日」の幟は

夜の部終演後には降ろされるのね。