ヤッホ~!帆足由美です。

 

 

 

今回は、

2日に初日を観てまいりました

歌舞伎座公演、

『猿若祭二月大歌舞伎』

昼の部の感想です。

 

 

 

 

 

 

十八世中村勘三郎十三回忌追善

『猿若祭二月大歌舞伎』

 

 

 

開演前に行われた『一番太鼓の儀』には、

たくさんの見物客が。

私もその中の一人でしたが、

江戸時代の興行の様子がしのばれる

古式ゆかしい様子に感動しました。

 

 

 

十八世勘三郎さんの

十三回忌追善興行ということで、

今月の歌舞伎座は、

中村勘九郎・七之助のご兄弟を中心にした

十八世ゆかりの演目が並びます。

その感想を一言で言いますと、

たいへん充実した内容でした!

 

 

 

 

 

 

昼の部

一、新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)

   野崎村

 

 

 

 

 

 

実際にあった「お染久松心中事件」を

下敷きにしたお芝居です。

作者は近松半二。

この「野崎村」のくだりは

すべて作者の創作だそうです。

 

 

 

野崎村の百姓久作の家。

養子の久松との祝言を控え、

娘のお光は嬉しさを隠しきれない様子で

婚礼の準備に勤しんでいます。

そこへ訪ねてきた、艶やかな着物姿の娘。

その娘は、久松が奉公する油屋の娘お染で、

実はかねてより久松と恋仲で、

家の者には野崎観音に参詣すると偽って、

久松の後を追ってきたのです。

一緒になれないのならば

心中しようと誓い合う久松とお染。

そんな二人の覚悟を知ったお光は、

ある決心をして…。

 

 

 

とても切ない物語です。

よく知っている物語なのに、

今回もすっかり泣かされました。

 

 

 

悲劇のヒロインお光を演じたのは

初役の鶴松さん。

舞台に登場する姿が、弾けるよう。

可愛らしい!

大好きな久松さんと夫婦になれる、

その嬉しさが体中から湧き上がって、

可愛いのなんの!

それが、お染登場によって

ストレートなジェラシーにとって代わり、

最後はお染久松のために身を引く覚悟と

変わっていきます。

ジェットコースターばりの心情の変化を、

鮮やかに見せてくれて素晴らしかったです。

髪を切って尼姿になったお光が、

去っていく久松とお染を見送る笑顔。

幕切れの空虚な眼差し。

今でも心に残ります。

 

 

 

久松は、やはり初役の七之助さん

品がありました。

お染は児太郎さん、艶やか。

百姓久作の彌十郎さん

後家お常の東蔵さんは、

どちらも安定感たっぷり。

 

 

 

 

 

 

お芝居では、本物の大根を

まな板で千切りにする場面があります。

その手つきを見るのも、なかなか楽しい。

 

 

 

二、釣女(つりおんな)

 

 

 

 

 

 

狂言の「釣針」を基にした松羽目物です。

とってもユーモラスな舞踊劇。

歌舞伎ビギナーでも十分わかる演目です。

 

 

 

妻が欲しい大名は、太郎冠者を供にして、

縁結びの神と名高い西宮の戎神社へ

参詣にやってきました。

すると、夢のお告げがあり釣り竿を授かります。

さっそく大名が釣竿をさげると、

世にも美しい上﨟を釣り上げます。

それを見た太郎冠者も、

美しい妻を釣りたいと釣竿をさげますが、

釣れたのはなんと、とんでもない醜女・・・。

 

 

 

最高に面白かった!

何度も声をたてて笑ってしまいました。
太郎冠者は獅童さん

太郎冠者が釣り上げた醜女は芝翫さん

獅童さんはお一人でも

何か可笑しみがあるのですが、

そこに芝翫さんの醜女が合わさると

最強の可笑しさ!

すごいお化粧でしたよ~。

途中から、何かに似てるなあと思ったら、

オバケのQ太郎!

この醜女は、ふだん立役を勤める俳優さんが

敢えて演じて可笑しさを演出するのですが、

可笑しいだけでなく、

太郎冠者大好き♡という気持ちも

表すのがだいじなのです。

はい、お化粧はすごかったけれど、

可愛かったです。

一方で、萬太郎さんの大名と新悟さんの上臈は、

好対照なお人形のように美しいカップル、

目の保養になりました。

 

 

 

三、籠釣瓶花街酔醒

(かごつるべさとのえいざめ)

 

 

 

 

 

 

世話物の傑作です。

江戸時代・享保年間に実際に起きた

「吉原百人斬り」事件を基にしています。

花魁道中やお座敷遊びの様子など、

江戸時代の吉原の独特な華やかさも

たっぷりと味わえます。

 

 

 

下野国佐野の絹商人の次郎左衛門は、

下男の治六と一緒に、江戸の土産にと、

桜が咲き誇る吉原仲之町へとやってきます。

そこで見たのが、

絢爛豪華な兵庫屋八ツ橋の花魁道中。

そのあまりの美しさに魂を奪われてしまいます。

 

人柄も気前も良い次郎左衛門は、

江戸に来るたびに八ツ橋のもとへと通い、

ついには身請け話も出始めます。

しかし、八ツ橋には

繁山栄之丞という情夫がいるのでした。

 

ある日、次郎左衛門は八ツ橋から突然、

満座の前で愛想尽かしをされてしまいます。

実は、栄之丞の差し金だったのですが、

心砕かれた次郎左衛門は国許へ帰ります。

 

それから数カ月後。

再び吉原に現れた次郎左衛門。

以前と変わらぬ上機嫌な様子ですが、

その手には名刀「籠釣瓶」・・・。

 

 

 

2時間近いお芝居ですが、

あっという間に感じました。

物語が、よくできているのですよね。

そして、俳優陣の演技もとてもよかった!

 

 

 

主人公の次郎座衛門は

十八世勘三郎さんの当たり役でしたが、

今回は勘九郎さんが初役で演じています。

好人物で、可愛らしく、

見ているだけで好きになります。

それだけに、後半、

愛想尽かしをされてからの姿が痛ましく、

最後の惨殺事件では、

どんよりとやるせない気分になりました。

なんとか思い止まれなかったのか、次郎左衛門。

 

 

 

七之助さんも初役で八ッ橋を演じていますが、

妖艶で、なおかつカッコいい!

次郎左衛門との出会いの場の微笑み、

ゾクゾクっとしました。

かと思えば、恋人の栄之丞の前では

おろおろするただの女という一面も見せ、

そして愛想尽かしの場面では冷徹。

艶やかさ、美しさだけではない、

人間ゆえの愚かな側面にも味わいがありました。

 

 

 

栄之丞は仁左衛門さん、超クール!

諸悪の根源という役どころだけれど。

立花屋長兵衛を歌六さん

立花屋女房おきつを時蔵さん

遣手お辰を歌女之丞さんなどなど、

脇を固める面々も充実した、

とても見ごたえのある一幕でした。

 

 


 

 

 

『猿若祭二月大歌舞伎』

2月26日㈪千穐楽です。

 

 

 

 

 

 

2月ということで、

GINZA KABUKIZA地下2階

「木挽町広場」には、

「こい春」の旗と地口行灯。

 

 

 

 

 

 

駄洒落が面白いんです。

 

 

 

 

 

 

劇場のなかにも地口行灯があちこちに。