ヤッホ~!帆足由美です。

 

 

 

今回のブログは

先日観てまいりました

歌舞伎座夜の部の感想です。

 

 

 

 

 

 

歌舞伎座新開場十周年

六月大歌舞伎

夜の部

 

義経千本桜

〈木の実・小金吾討死・すし屋〉

〈川連法眼館〉

 

 

 

今月の歌舞伎座夜の部は、

歌舞伎の三大名作のひとつ、

源平合戦の後日譚を描いた物語、

『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)』

全五段のなかから、

三段目と四段目が上演されています。

 

 

 

まずは三段目、

「いがみの権太(ごんた)」と呼ばれる

小悪党を中心とした世話物です。

 

 

 

 

 

 

大和・下市村の茶店。

平維盛の妻の若葉の内侍と嫡子の六代君は、

家来の小金吾を連れてやってきます。

壇ノ浦の合戦で入水した維盛が

実は生きているという噂を聞き、

行方を捜しているのです。

そこへ現れたのが

「いがみの権太」と呼ばれる小悪党。

内侍一行は因縁をつけられ

金を巻き上げられてしまいます。

その一部始終を見ていたのが

茶店の主の小せん。

実は権太の女房で、

権太の悪事を咎めます。

が、自分の悪事の発端は、

元は遊女だった小せんの元に通うための

金欲しさだったとうそぶく権太。

そして、可愛い我が子の善太郎にせがまれ、

久しぶりに我が家に帰ることにするのでした。

【木の実】

 

 

 

その夜、若葉の内侍一行は

鎌倉方の追手に見つかります。

小金吾は孤軍奮闘するものの深手を負い、

内侍と六代君を逃がしてから無念の討死。

そこへ偶然通りかかったのが、

権太の父・弥左衛門。

小金吾の亡骸につまづき驚きますが、

何か覚悟を決めた様子で

その首を打ち落とすのでした。

【小金吾討死】

 

 

 

 

 


すし屋を営む弥左衛門は、

実は維盛を奉公人の「弥助」として匿っています。

そこへ勘当の身である権太がやって来て、

母親をだまして金を巻き上げます。

そこに今度は父親の弥左衛門が帰宅。

弥助は本来の維盛の姿となり話しはじめますが、

その様子を億でうかがっていた権太、

一部始終を訴人すると告げ、

先ほど母親から巻き上げた

金の入った鮨桶を小脇に抱え、

駆け出していきます。

 

やがて、鎌倉方の梶原景時がやってきて、

維盛の首を差し出せと命じますが、

そこに戻ってきたのが権太です。

維盛の首が入った鮨桶と、

縛り上げた若葉の内侍六代君を差し出します。

首は維盛のものと見極められ、

梶原たちは引き上げていきますが、

怒り心頭なのは弥左衛門。

思わず権太を刀で刺します。

が、権太は苦しい息のなか、

意外な真相を明かし始め・・・。

【すし屋】

 

 

 

「いがみの権太」、

ホントに悪い奴なんですが、

どこか愛嬌があって憎めません。

〈木の実〉では、

いまだ女房に惚れている様子や、

子煩悩な姿が可愛らしい。

〈すし屋〉では、

母親をだましてはいるのだけれど、

甘えている姿に実に愛嬌がある。

とても魅力があるので、

もうこれ以上悪事を働かないでよ、

と思うのですが、

維盛がいることを訴えに走るわけです。

この時の花道の引っ込みは

とてもドラマティック!

 

 

 

 

 

 

仁左衛門さんの「いがみの権太」。

かっこいい!

 

 

 

そして後半は、小悪党から一転して、

実は善人であったという真相が明かされる

(これを歌舞伎では“モドリ”といいます)のですが、

実の父に腹を刺されて息も絶え絶えに語る姿は、

もう、なんとも言えません。

しかし、なんでもっと早く改心しなかったのか。

権太はともかく、女房と息子が可哀そうすぎる。

・・・いろいろ作者に文句を言いたくなるのですが、

要は「いがみの権太」が魅力的なら仕方ないか、

という気分で観てしまいます。

 

 

 

さて、仁左衛門さんの権太は

たぶん私は4回目なのですが、絶品でした!

とても若々しい!

そして、小ずるくって、調子が良くて、

チャーミングで・・・。

私がおかあさんでも、お金あげちゃうだろうなあ。

コミカルな演技もさることながら、

鮨桶を小脇にすっくと立つ姿、

女房と息子を差し出す場面の苦渋の表情、

死にぎわの告白などなど、

歌舞伎仕様なのに、とてもリアル。

権太という生身の人間を感じました。

 

 

 

弥助実は維盛は錦之助さん、

若葉の内侍は孝太郎さん、

二人とも気品があります。

権太の父の弥左衛門は歌六さん、

うまかった~。

小金吾は千之助さん、お顔がきれい!

〈小金吾討死〉の立ち廻りは

縄を使った大掛かりなものなのですが、

張り巡らされた縄の中央の

美しい顔立ちの千之助さん、

映えました~。

↑なんてほめ方(;^_^A

すし屋の娘お里は壱太郎さん、可愛い!

弥助に恋する乙女心が弾けんばかり。

昼の部の「吃又」が楽しみです。

弥左衛門の女房お米は梅花さん、

権太女房小せんは吉弥さん、

ベテラン女方も見せ場がしっかり。

名脇役たちが舞台をきちんと支え、

その中心で仁左衛門さんが光を放つ、

見ごたえのあるお芝居でした。

 

 

 

さて、同じ『義経千本桜』でも、

続く四段目はファンタジー。

人間に化けた仔狐のお話です。

 

 


川連法眼の館で匿われている源義経のもとへ、

家臣の佐藤忠信が訪ねてきます。

義経は、伏見稲荷で預けた

静御前の安否を尋ねますが、

忠信にはまったく覚えがない様子。

そこへ、静と忠信が到着したとの知らせが。

忠信はすでにここにいるのに。

不審に思った義経は、

静御前に忠信詮議を命じます。

静が「初音の鼓」を打つと、

その音に惹きつけられて姿を現したのは

もう一人の忠信。

静が正体を明かすように迫ると、

いよいよ観念して語り始めます。

なんとこの忠信は、桓武天皇の御代に

雨乞いの儀式に使うために作られた「初音の鼓」に、

生き皮を用いられた夫婦狐の仔であるというのです・・・!

【川連法眼館】

 

 

 

狐忠信の演じ方は、大きく分けて

澤瀉屋型と音羽屋型がありますが、

今回はケレン的要素を最小限に抑えて

狐の親子の情愛を描くことが特色の音羽屋型。

澤瀉屋型だとアクロバティックな動きに

神経が集中してしまいがちなのですが、

今回は、正体を明かす台詞とか、

小さな動きにも目が行きました。

 

 

 

「初音の鼓」が与えられた

源九郎狐の可愛らしさ、健気さよ!

演じるのは松緑さん。

本物の忠信は実に立派!

このお芝居、本物の忠信の影が薄くて

印象に残らないことが多いのですが、

松緑さんの忠信は心に残りました。

そして、源九郎狐は、もう可愛い~!

お体が大きいので、狐というか、

たぬき?(ごめんなさい)とも思いましたが、

まるっとして可愛いんです。

お顔のお化粧も。

いつまでも見ていたかった。

 

 

 

ほかに、義経は時蔵さん、

川連法眼は東蔵さん、静御前を魁春さん。

大人の雰囲気の舞台のなか、

亀井六郎を演じた左近くんの

武者人形のような美しさ、フレッシュさにも

心惹かれました。

 

 

 

『六月大歌舞伎』、

6月25日㈰千穐楽です。