ヤッホ~!帆足由美です。

 

 

 

今月の歌舞伎座は團菊祭。

まずは初日に昼の部を観てきました。

先日はその中でも三幕目、

初代尾上眞秀丈の初舞台の感想を書きましたが

(よかったら5月2日のブログをご覧ください)、

今回は一幕目、二幕目の感想を。

 

 

 

 

 

 

歌舞伎座新開場十周年

團菊祭五月大歌舞伎

昼の部

一、寿曽我対面
 (ことぶきそがのたいめん)

 

 

 

 

 

 

日本三大仇討ちのひとつ、

曽我兄弟の仇討ちを題材にしたお芝居は数多くあり、

「曽我狂言」と呼ばれます。

そのなかでも、このお芝居は集大成的作品。

祝祭性の高い作品で、

初春興業などで上演を重ねてきました。

 

 

 

【あらすじ】

工藤佑経(梅玉)の館。

名誉ある富士の巻狩りの

総奉行に任じられた工藤が祝宴を催しています。

梶原景時(桂三)、景隆(吉之丞)父子をはじめとする諸大名、

家臣の近江(亀鶴)、八幡(莟玉)や、

小林朝比奈(巳之助)、傾城の大磯の虎(魁春)や

化粧坂少将(新悟)が座を連ね、

工藤への祝辞を述べています。

そこへ、小林朝比奈の手引きにより、

曽我十郎(尾上右近)と五郎(松也)の兄弟が

やってきます。

実はこの兄弟は、

18年前に工藤の不意打ちにより命を落とした

河津三郎の忘れ形見。

父の仇を討とうとやって来たのです。

血気にはやる五郎は工藤に詰め寄りますが…。

 

 

 

物語はとてもシンプル。

舞台には歌舞伎の代表的な役柄が勢ぞろい。

役柄の見本市的な作品なので、

歌舞伎ビギナーにはお勧めの演目です。

お化粧や衣裳も役によって違う様子が

一見してわかりますし、

歌舞伎らしい様式美がたっぷり楽しめます。

 

 

 

工藤佑経は梅玉さん。

気品あふれる、大人な工藤で、

人徳者、という雰囲気。

曽我五郎は松也さん、ものすごく若々しい!

五郎はたぶん10代後半だと思うのですが、

本当にその年に見える。

工藤が憎い思いが体中から迸って、

観ていて楽しい五郎です。

対する兄の十郎は尾上右近さん。

きれいです。

しっとりとした物腰のなかにも、

弟をたしなめるしっかり者の兄、

という雰囲気がよく出ていました。

ちなみに歌舞伎用語で言いますと、

十郎は「和事(わごと)」、

五郎は「荒事(あらごと)」という

対照的な役柄です。

二人の傾城、魁春さんの大磯の虎と、

新悟さんの化粧坂少将

華やかさ、艶っぽさは眼福。

巳之助さんは道化的役柄の小林朝比奈、

とってもよかった!

 

 

 

何度も観ているお芝居ですが、

若さに溢れた、とても楽しい一幕でした。

元気をもらいました。

 

 

 

二、若き日の信長

 

 

 

 

 

 

作家の大佛次郎が

十一世市川團十郎のために書き下ろし、

昭和27(1952)年に初演された新歌舞伎です。

今回は、「十二世市川團十郎十年祭」と銘打って、

当代團十郎丈が信長を演じています。

 

 

 

【あらすじ】

尾張国を治める織田家を相続した信長は、

その傍若無人なふるまいから

うつけ者と呼ばれています。

父の三回忌法要にも出ない信長の様子に

責任を感じたお守り役の平手中務政秀は、

死をもって信長をいさめようと自害。

信長は、中務に死なれた

悔しさと淋しさを吐露します。

そこへ、今川方に寝返った者達が

攻めてくるとの報せが。

信長は、家臣の木下藤吉郎を呼び寄せ…。 
 

 

 

今でも大人気の戦国武将、織田信長。

若い頃は奇抜な恰好を好んだとか、

革新的な戦術を用いた天才とか、

有名なこの句、

「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」から、

短気で怖い人、なんてイメージが

出来上がっていますが、

作者の大佛次郎は、

なるべく史実に基づいた若い頃の信長を

舞台に登場させたいと考え、

このお芝居を書いたそうです。

混沌とした戦国の世に織田家に生まれ、

家督を継がなければいけない信長には、

人知れない苦悩があったこと。

大きな孤独を抱いていたことが

丁寧に描かれています。

 

 

 

台詞は現代語に近いのでわかりやすいのですが、

かなりの長台詞もあり、

観るほうも集中力を要するお芝居です。

團十郎さんの信長は、

序幕の大うつけ的風情は、

若々しさもありとてもいい。

ただし、台詞の句読点の前が妙な伸び方、

イントネーションが気になる。

特に長い台詞になると。

最後の「敦盛」の舞は、迫力がありました。

信長のお守り役の中務は梅玉さん。

観終わって筋書きを見るまで

梅玉さんと気付かなかった(いい意味で)。

役者は化けるというけれど、すごい。

特に序幕のラスト、信長を陰で見守る

台詞無しの場面が心に残りました。

そのほか、信長を慕う弥生に児太郎さん。

木下藤吉郎秀吉を右團次さん。

 

 

 

 

 

 

1階ロビーには

十二世市川團十郎丈の祭壇。

 

 

 

歌舞伎座新開場十周年

團菊祭五月大歌舞伎、

5月27日㈯千穐楽です。

 

 

 

 

 

 

歌舞伎座ギャラリー(歌舞伎座タワー5階)では

「十二世市川團十郎十年祭 特別展」を

5月2日㈫~27日㈯まで開催。

 

 

 

十二世の当たり役の舞台写真を中心に、

「若き日の信長」にまつわる様々な品々などを

展示しているとのこと。

入場料は無料です。

私も近いうち、行くつもりです。

 

 

 

今回の歌舞伎座土産。

 

 

 

 

 

 

『寿曽我対面』ゆかりのお菓子。

「箱根銘菓 湯もち本舗 ちもと」の

「湯もち(3個入)」(左)と、

「黒助(6個入)」(右)。

 

 

 

 

 

 

『音菊眞秀若武者』のゆかりの地、

京都・天橋立の「天橋立キャンディ」
アップル・塩レモン・グレープの3種類あって、

どれもキラキラしていてとってもきれい。

全部買ってきてしまいました。

 

 

 

1階お土産処「木挽町」は

チケットを持っていなくても入れますよ。

興味のある方は、ぜひ。