ヤッホ~!帆足由美です。

 

 

 

今日ご紹介する映画は、

とても見ごたえのある人間ドラマ。

『スリー・ビルボード』の

マーティン・マクドナー監督の最新作です!

 

 

 

 

 

 

『イニシェリン島の精霊』

監督・脚本:マーティン・マクドナー

出演:コリン・ファレル、ブレンダン・グリーソン

 

 

 

第80回ゴールデングローブ賞では

ミュージカル / コメディ部門の作品賞をはじめ、

マーティン・マクドナーが脚本賞、

コリン・ファレルが主演男優賞を獲得。

第95回アカデミー賞でも、

作品賞など8部門で9つノミネートされています。

 

 

 

舞台は1923年、

アイルランドの小さな孤島イニシェリン島。

本土は激しい内戦状態だが、

海を隔てたこの小さな島はいたって平和な日々だ。

ところが、そんなある日、

誰からも好かれる素朴な男パードリックは、

友人のコルムから突然、

絶交を一方的に言い渡されてしまう。

「お前が嫌いになった。話しかけるな」

島は住民全員が顔見知りという狭いコミュニティ。

二人の問題はすぐさま周囲の知るところに。

なぜコルムからそこまで嫌われるようになったのか

訳もわからないパードリックは

妹や隣人の力を借りて関係修復を試みるが、

コルムは頑なに拒絶するばかり。

ついには、

「これ以上、お前が俺を煩わせたら、

自分の指を切り落とす」

と宣言。

二人の関係は、想像を絶する形へと突き進む・・・。

 

 

 

冒頭、美しい景色に息を飲みます。

延々と石垣が積まれた

パッチワークのような牧草地や畑、

寒々しい空と海。

何かが起きそう、という予感がします。

 

 

 

で、起きるのが、

いい年のおじさん同士の諍いなんですね。

それも、子供か!と突っ込みたくなるような。

そして、この単純すぎる諍いは

いかようにも解釈出来て、

そこが面白い。

恋人同士の別れ話にも見えるし、

拡大解釈をすれば、

突如勃発した戦争にも見えるのです。

映画はちょうど100年前の

アイルランドの孤島が舞台ですが、

争いのはじまりは、いつも、どこでも、

こんな小さなほころびから始まるものなのだと、

つくづく思います。

今の世界情勢を考えると余計に。

 

 

 

ちなみに、イニシェリン島というのは架空の島。

実際のロケは、

アラン諸島の中で最大のイニシュモア島で

パードリックをはじめとする登場人物たちの家を、

またパブや街のシーンは

イニシュモア島から少し離れた

アキル島という島で撮影されたそうです。

いつの日か、

実際にこの目で見てみたい場所です。

 

 

 

パードリックを演じたのはコリン・ファレル。

突然の親友からの絶縁宣言に

ただただ困惑する純朴な男を好演。

困ったな~、弱ったな~、という表情が実にいい。

当の本人は大変な悲劇に見舞われているのに、

妙に滑稽に映ります。

対するコルムはブレンダン・グリーソン。

『ハリー・ポッター』シリーズで

マッドアイ・ムーディを演じた役者さん。

現状のままではいけない、

と苛立つ老齢の男性を静かな迫力で演じますが、

後半に行くにつれ・・・。

 

 

 

この二人の演技合戦だけでも

ぐいぐい引き込まれますが、

二人を取り巻く沢山の登場人物にも

それぞれのドラマがあって面白い。

パードリックの聡明な妹シボーン(ケリー・コンドン)。

風変わりな若い隣人ドミニク(バリー・コーガン)。

ドミニクの父親で高圧的な警官ピーダー(ゲイリー・ライドン)。

まさしく生ける島の精霊という風体の老婆

ミセス・マコーマック(シーラ・フリットン、撮影時80歳)は

スクリーンに登場するだけで胸騒ぎのする人物。

 

 

 

閉そく感たっぷりの「島」で起きる小さな諍いに、

自分ならどう対処するだろう?

自分がパードリックなら?

コルムなら?シボーンなら?

観終わった後に、誰かと語りたくなる作品です。

ただし、かなりドギツイ映像もありますのでご注意を。

 

 

 

『イニシェリン島の精霊』、

1月27日㈮公開です。

公式サイトはこちら