ヤッホ~!帆足由美です。

 

 

 

今月は本当に

歌舞伎をよく観た月でした。

昨日はそのフィナーレ。

歌舞伎座の第三部を堪能してまいりました。

 

 

 

 

 

 

歌舞伎座新開場十周年

『壽 初春大歌舞伎』

第三部

 

 

 

今月の歌舞伎座は、

今年、没後130年を迎える歌舞伎の大人気作家、

河竹黙阿弥の作品が各部で上演されています。

新年早々、黙阿弥ならではの

七五調の流麗な台詞回しに

気分がよくなっている次第ですが、

第三部の演目がこちら。

 

 

 

 

 

 

『通し狂言 

十六夜清心(いざよいせいしん)』

 

 

 

『小袖曾我薊色縫(こそでそがあざみのいろぬい)』

という全七幕のお芝居のうち、今は、

僧侶清心とその恋人の遊女十六夜にまつわる物語を

「花街模様薊色縫(さともようあざみのいろぬい)」

という外題で上演するのが通例です。

その「花街模様薊色縫」の通称が、

主人公二人の名前をとって

「十六夜清心」

となっているわけ。

昔の芝居の正式名称、

色々な工夫があって味わい深いのですが、

覚えにくいですよね~、

漢字ばかりだし、当て字が多いし。

さらりと正式な題名を

言えるようになりたいものですが。

 

 

 

それはさておき、

あらすじはこんな感じです。

 

 

 

鎌倉極楽寺の僧である清心は、

遊女の十六夜と深い仲であることが発覚。

女犯の罪で寺を追われます。

二人は心中を決意し川へ身を投げますが、

十六夜は舟遊びをしていた俳諧師白蓮(はくれん)と、

船頭の三次に命を救われます。

 

一方の清心も死にきれず、

岸辺にたどり着くと、

そこへ通りかかったのは

寺小姓の恋塚求女(こいづかもとめ)。

癪を起こして苦しむ求女を清心は介抱しますが、

ふとした拍子に懐にある大金に手が触れ、

その金を奪おうとして揉み合ううちに

求女を殺めてしまうのです。

実はこの求女は、十六夜の弟。

父や姉が恩を受けた人(つまり清心)に

用立てるために苦心して用意したお金を

持っていたのでした。

そうとは知らぬ清心は、

「ひとり殺すも千人殺すも、

取られる首はたったひとつ」

今後はこの世を面白おかしく生きようと

心を決めるのです・・・。

 

 

 

ここまでが序幕の「稲瀬川」。

実は私、この場面までしか

観たことがありませんでした。

今回の上演は、二幕目の「白蓮妾宅」、

大詰めの「白蓮本宅」まで舞台が続きますが、

どんでん返しに次ぐどんでん返しで、

もう、びっくり!!

 

 

 

「白蓮妾宅」では、

白蓮に命を助けられた十六夜が

おさよという名に戻り、

清心の菩提を弔うために剃髪。

で、それから月日が経った設定の「白蓮本宅」では、

どういうわけか、

見るからに素性の悪そうな姿になった清心とおさよが

白蓮の本宅に入り込んで、

強請りを始めるのですよ!

 

 

 

なぜ!?

悲劇のヒロインがなぜ、こんなことを?

そもそも、生き別れた二人が、

なぜまたくっついてるの?

 

 

 

その辺のいきさつは台詞で語られますが、

いや、しかし、河竹黙阿弥、ぶっ飛んでます。

 

 

 

黙阿弥のお芝居の奇想天外さには

もうだいぶ慣れっこですが、

このお芝居の展開は、

後半に行けば行くほどアクロバティック。

伏線を張り巡らす、というよりは、

どんどん新事実が明るみに出て、

え~!?の連続。

「稲瀬川」までがしっとりとしたメロドラマ

(と言っても、

女犯の罪を犯した僧侶と遊女が心中して、

生き残った僧侶が人を殺して、っていう、

かなりな荒業ですけれど(;^_^A)

だったので、

後半の急展開がよけい際立つのです。

で、最後の最後は、

主要人物、みんなワルモノだったんじゃ~ん

(ネタバレ承知で書きますが、

俳諧師の白蓮も実は大盗賊)!

という展開で、幕。

歌舞伎らしいといえばそうですね。

 

 

 

黙阿弥さんは、

わざと意識してこういう展開にしたのか。

はたまた、

今回はしっとり行こうと思ったのだけれど、

途中で飽きてジェットコースターものに仕立てたのか。

あるいは、芝居小屋や役者からの

リクエストがあったのか。

創作の現場をいろいろ想像すると

面白いですね~。

 

 

 

清心のちに鬼薊の清吉を演じたのは幸四郎さん。

遊女十六夜のちにおさよを演じたのは七之助さん。

絵になる二人です!

浮世絵から抜け出たような美男美女!

きれい、美しい、というのは、

とくに歌舞伎の舞台では重要ですね、

当たり前ですが。

物語に大きな説得力をもたらします。

清心も十六夜も、

モラルから大きくはみ出しているのに、

きれいだから見ちゃう。

心を寄せてしまう。

 

 

 

幸四郎さんは、

清心の頃はちょっとつっころばし的な感じ。

それが、求女を殺して

心のどこかがぷつっと切れる。

その瞬間が、ひじょうに良かった。

清心のときは、

悲劇性の中に垣間見られる滑稽さも味ですが、

個人的には、この清心の時のお芝居が好み。

七之助さんは、

艶やかで儚げな十六夜の後に、

妾宅では痛々しい剃髪姿、

その後に散切り頭で悪女おさよとして登場と、

ものすごい変貌ぶり。

ため息に包まれたような十六夜の姿も

色っぽくて良かったけれど、

この方は、ワルくなってからのお芝居のほうが

なんだか生き生きして見えます。

そして、台詞回しのそこかしこに

玉三郎さんを感じたのですが、

直接教わることはあったのでしょうか?

教わったといえば、幸四郎さんは、

仁左衛門さんから教えてもらった、

と筋書きにありまして、上演記録を見ると、

平成18年1月の大阪松竹座で、

仁左衛門さんの清心、玉三郎さんの十六夜で、

同じ「稲瀬川」「白蓮妾宅」「白蓮本宅」を

上演しているのですね。

これ、観たかったなあ。

また、上演してくれないだろうか。

 

 

 

閑話休題。

清心、十六夜と並び立つ三人目の悪党、

白蓮実は大寺正兵衛は梅玉さん

品格のある大人物、ということが

舞台に出てくるだけでわかるので、

十六夜ちゃん、良い人に囲われて、

と思っていたら、すっかり騙されました~。

十六夜の弟の求女は壱太郎さん

若衆姿が可愛らしすぎる!

白蓮女房のお藤の高麗蔵さん

きっぱりした演技でよかったです。

 

 

 

『壽 初春大歌舞伎』第三部

『通し狂言 十六夜清心』、

肩の凝らないお芝居で楽しいですよ。

1月27日㈮千穐楽です。

 

 

 

今回の幕間。

 

 

 

 

 

 

「懐石料理青山」の

「十穀米弁当」♪

 

 

 

歌舞伎座、

幕間なら自分の席やロビーで

食事ができるようになっています。