ヤッホ~!帆足由美です。

 

 

 

昨日に続き、今日も歌舞伎ブログ。

現在、国立劇場で上演中の

このお芝居の感想です。

 

 

 

 

 

 

国立劇場

令和5年初春歌舞伎公演

『通し狂言 遠山桜天保日記

ー歌舞伎の恩人・遠山の金さんー』

 

 

 

お正月の国立劇場といえば、

尾上菊五郎さんを座長とする

「菊五郎劇団」の公演が定番。

ただし、国立劇場は建て替えのために

今年の10月に閉場ということで、

今回の公演は初代国立劇場での

最後の初春歌舞伎公演

ということになります。

 

 

 

 

 

 

あちこちに、

「初代国立劇場 さよなら公演」

の文字が。

 

 

 

 

 

 

国立劇場、建物が大きすぎて、

なかなかカッコよく撮れません。

近づくとこんな感じ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中に入ると、

 

 

 

 

 

 

「謹賀新年」の幟をはさんで、

菊五郎さんの遠山の金さん、

そして時蔵さんのおもと。

この反対側は、

 

 

 

 

 

 

菊之助さんの小吉。

 

 

 

 

 

 

松緑さんの角太夫。

 

 

 

さて、肝心の演目ですが、

これが、「菊五郎劇団」らしい超娯楽作品!

昼の12時に開演して15時50分終演と

コロナ禍では珍しい長尺ですが、

瞬く間に楽しい時間が流れていきました。

 

 

 

江戸時代末期、

北と南の町奉行を勤めた遠山金四郎。

“遠山の金さん”の愛称で

今を生きる私たちにもお馴染みですが

(あ、お若い方はわからない?)、

この実在した人物は、

「天保の改革」で存亡の危機にあった

芝居町を救うために尽力し、

庶民の間で圧倒的な人気を誇ったそうです。

 

 

 

遠山金四郎を題材にした芝居や講談、

いわゆる「遠山政談物」の中でも、

明治26年に初演された本作は、

代表作とされています。

今回は、歌舞伎としては半世紀ぶりの上演だった

2008年12月の公演を

さらにブラッシュアップした内容とのこと。

 

 

 

主人公はもちろん、遠山金四郎。

長唄の唄方として

芝居に出入りする旗本の若様が、

楽屋での諍いを見事に仲裁するところから

お芝居は幕明けます。

後の名奉行の片鱗を、

ここで見せるんですね~。

そこに、幕府からの

北町奉行就任の報せが届く、という幕開け。

 

 

 

テンポの良さに、

のっけからぐいぐい引き込まれます!

 

 

 

演じるのはもちろん、尾上菊五郎さん!

カッコいいんです!!

登場するなり、すごいオーラ!

そして、声の張りが素晴らしい!

御年80歳ですよ、すごい!

キップのいい江戸っ子らしさから、

お白州でのお殿様らしい風格、

そして、片肌脱いで

桜吹雪の彫り物を見せる名場面まで、

一挙手一投足に目が釘付けになりました。

 

 

 

さて、主人公と言いながら、

金さんの出番は中盤にはほとんどなく、

3人の悪党を中心に物語が進みます。

1人目が、大店・尾花屋の若旦那の

小三郎(こさぶろう)。

清元の女師匠・おわかといい仲ですが、

周囲から別れるように迫られて心中。

ところが、死にきれずに、

「羅漢小僧小吉(らかんこぞうこきち)」

と名乗るごろつきになるんですね。

演じるのは菊之助さん。

きれいですね~。

若旦那の時は

いかにも大店のボンボンらしい品の良さ、

そして頼りない風情。

ごろつきになってからも、

目つきの鋭さはありますが、

きれいなんです!

 

 

 

2人目が、武家崩れの

短筒強盗・生田角太夫(いくたかくだゆう)。

黒頭巾に黒い着物、根っからのワル、

といういでたちで登場。

後の場面で按摩に化ける場面は

ユーモラスな空気も醸しますが、

いかにも悪党、という人物です。

演じるのは松緑さん。

ワルイ奴を嬉々として演じている印象。

 

 

 

そして3人目が、

破戒僧の佐島天学(さじまてんがく)。

3人のうちでは、実はこの人が一番複雑。

角太夫の罪を着せられお縄となり、

牢抜けして、角太夫と小吉に出会い、

兄弟分の誓いを立てる。

角太夫の濡れ衣を着せられたことを

知ったにもかかわらず!

そしてついには・・・。

演じるのは彦三郎さん。

相変らずのお声の良さ、そして、

悪い巡り合わせが重なって

どんどん悪に染まっていく様子を、

繊細に、面白く演じていました。

 

 

 

そのほかの出演が、

小三郎と恋仲のおわかに梅枝さん

おわかの母・おもとに時蔵さん

実際にも親子ですね。

どちらも安定の演技。

おわかの妹分のおえんは尾上右近さん

清元永寿太夫としても活動されていますが、

今回は清元も聞かせてくれて大サービス!

そして、遠山家の家老役で坂東楽善さん

しばらく舞台を拝見していませんでしたが、

お元気そうで何よりでした。

 

 

 

それから、今回のお芝居は子役たちも大活躍!

菊之助さんの息子の丑之助くんは、

尾花屋の丁稚辰吉。

けっこうな量の台詞があるお役なんですが、

登場するたびに客席の温度が上がります。

一人で花道を出たり、

戸を開けたり閉めたり、お辞儀をしたり。

一つ一つの所作がとても丁寧なのが印象的。

心の中で「がんばれ」と、

客席中がエールを送っていたのではないでしょうか。

 

 

 

このお芝居、お白州で一件落着、の後に、

幕間を挟んで「河原崎座初芝居の場」があります。

悪人たちを見事さばいた遠山さまは、

取り潰しの危機にあった江戸三座を救い、

めでたく初芝居となり、

役者たちが勢ぞろいして総踊り。

そこに遠山さまもやって来て、

めでたし、めでたし、

という幕切れ。

それまでの芝居に出ていた俳優さんたちが

みな鬘と衣裳を着替え、

歌舞伎役者として登場します。

さっきまでみすぼらしい服装だった時蔵さんは、

艶やかな芸者?の衣裳、

男だった菊之助さんも艶っぽい芸者に。

なるほど、幕間が20分要るわけです。

でも、それだけ待つ甲斐のある

華やかで楽しい踊りでした!

そして、子供たち。

丑之助くん、寺嶋眞秀くん、

亀三郎くん、小川大晴くんの4人

鳶のいでたちで元気よく踊りを披露。

可愛いんです!

歌舞伎の未来は明るいなと、

頼もしい気持ちになりました。

 

 

 

また、「菊五郎劇団」のお決まりといえば、

時事ネタや流行語を盛り込むことですが、

今年は、「ブラボー!」

そして、「きつねダンス」ならぬ、

干支にちなんだ「うさぎダンス」

あの曲が、三味線で聴けるとは。

最後の最後には、

コロナ禍でしばらくNGだった「手拭いまき」もあって

(大のスワローズファンの彦三郎さんが

強肩をいかんなく発揮!)、

色々な意味で楽しい、お正月公演らしいお芝居。

まさに、ブラボー!なのでした。

 

 

 

国立劇場

令和5年初春歌舞伎公演

『通し狂言 遠山桜天保日記

ー歌舞伎の恩人・遠山の金さんー』

1月27日(金)千穐楽。

 

 

 

台詞はとても分かりやすく、

肩の凝らないお芝居です。

歌舞伎ビギナーにはおすすめですよ。

お席はまだあるようですから、

気になる方はぜひ!

 

 

 

ロビーにはお正月らしい飾りがあちこちに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きな凧!

ホントに飛ぶのでしょうね。

 

 

 

 

 

 

吉徳の羽子板。

歌舞伎の演目の羽子板です!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

繭玉や、しめ飾りもあちこちに。

 

 

 

これから国立劇場にお越しの皆さま、

どうぞお正月飾りも

たっぷり味わってくださいね!