ヤッホ~!帆足由美です。

 

 

 

今日ご紹介するのは

ケネス・ブラナー監督の最新作。

自身の幼少期の体験を投影した

この自伝的映画です。

 

 

 

 

 

 

『ベルファスト』

監督・脚本:ケネス・ブラナー

 

 

 

1960年代末の北アイルランド・ベルファスト。

この地で生まれ育った9歳の少年バディは、

家族や親せき、友達に囲まれ、

映画や音楽に親しむ楽しい毎日を送っている。

笑顔と愛に包まれた暮らし、

それはバディにとって完璧な世界。

しかし、1969年8月15日、

すべてが悪夢へと変わってしまう。

プロテスタントの武装集団が

カトリック住民への攻撃を始めたのだ。

住民がみな顔なじみで、

まるで一つの家族のようだったベルファストは、

この日を境に分断されていく。

暴力と隣り合わせの日々のなか、

バディと家族たちは

ベルファストを離れるか否かの

決断を迫られる・・・。

 

 

 

第46回トロント国際映画祭で

最高賞の観客賞を受賞。

第94回アカデミー賞でも

作品賞、監督賞ほか

計7部門にノミネートされているこの作品。

「北アイルランド紛争」の始まりを

9歳の少年の視点で描いています。

平和この上なかった街が

突如戦いの地と化してしまう怖ろしさ。

この間までお隣さんだった人々が

敵となる悲しさ。

なぜ、こんなことに!?

まだ9歳のバディの視線で描くからこそ、

その理不尽さが際立ちます。

「北アイルランド紛争」では、

1988年の和平合意に至るまでに

3600人近い死者が出たそうです。

 

 

 

とはいえ、

映画は人々が恐怖におののく姿や、

憎しみ合う姿ばかりを描いているのではありません。

彼らが喜び、楽しみ、

いつくしみあう姿もたっぷりと映し出し、

だからこそ、だからこそです、

争いの虚しさが浮き彫りになるのです。

 

 

 

浮き彫り、といえばもうひとつ。

この作品は全編モノクローム。

それが逆に、人々の表情を、街の姿を、

生き生きと見せてくれます。

 

 

 

9歳のバディを演じるのは

本作が長編映画デビューのジュード・ヒル

 

 

 

 

 

 

この天真爛漫さ!

この笑顔!

 

 

 

ケネス・ブラナー監督が、

バディを取り囲む大人の俳優たちに求めた要素は

“信憑性”だそうです。

母親を演じたカトリーナ・バルフはアイルランド出身、

父親役のジェイミー・ドーナンはベルファスト出身、

祖父を演じたキアラン・ハインズもベルファスト出身、

そして、祖母役のジュディ・デンチは母親がダブリン出身。

ほかにも、北アイルランド出身の俳優が脇を固め、

ベルファストに住む人々の心意気や、

そこで起きた出来事に、

リアルを与えているわけです。

 

 

 

映画について、

ケネス・ブラナー監督はこう語ります。

「ベルファストの魂と生命力、

そして人生を明るくしてくれるようなユーモアを

感じ取ってもらえることを願っている。

この街の喜びや悲しみ、

一家が経験する出来事を見て、

親近感を覚え共感し、

他者の人生を見つめることで、

私たちは独りじゃないんだと感じてほしい」

脚本は、2020年、

パンデミックの最初のロックダウンが始まったころに

書かれたそうです。

幼少期に経験した出来事と、

現在進行形の問題を重ね合わせての

執筆となったわけですが、

観客の私たちは、

ロシアのウクライナ侵攻をも脳裏に浮かべながら

この作品を観ることになるのです。

 

 

 

人間にはエネルギーがある。

前に進む、不屈の力がある。

と同時に、あらためて、

争いほど無駄なものはない、

と強く感じた作品でした。

 

 

 

『ベルファスト』、

今日3月25日(金)公開です。

公式サイトはこちら