ヤッホ~!帆足由美です。

 

 

 

今年の芝居納めは

歌舞伎座公演の第二部でした。

今日はその感想を。

 

 

 

 

 

 

十二月大歌舞伎

第二部

 

一、男女道成寺

   (めおとどうじょうじ)

 

 

 

 

 

 

第二部一幕目は舞踊です。

紀州道成寺に伝わる「道成寺伝説」の

後日談を題材にした

「道成寺物」と呼ばれる作品は数多くありますが、

そのなかでも有名なのが

『京鹿子娘道成寺』という女方舞踊。

この『男女道成寺』は、

それを男女で踊る舞踊です。

 

 

 

はじめ、道成寺の鐘供養の舞を奉納する

二人の白拍子、花子と桜子として登場。

しかし、舞を舞ううちに、

桜子は、実は左近という

男の狂言師であることが露見します。

二人の踊りがシンクロする様は美しく艶やか!

しかし、時折り桜子が

男っぽい仕草を見せて、可笑しい。

左近という男性になってからの踊りは、

おかめとひょっとこと、

もう一つは何なのだろう?

3つの面をスピーディーに取り替えながら、

男女の恋模様を踊りますが、

これがまたコケティッシュで実に楽しい!

お面を被っているのに表情が豊か!

そして、クライマックスは、

二人が清姫の亡霊の本性を顕し、

鐘にとりつくのですが、

その様子のあやしくもドラマティックなこと。

短い時間の中でくるくると

何度も変わる表情が楽しめました。

花子は勘九郎さん、

桜子実は狂言師左近は尾上右近さん。

お二人とも素敵でしたが、

シルエット的には逆の方が良かったかな、とも。

 

 

 

二、ぢいさんばあさん

 
 

 

 

江戸番町に住む江戸大番役の

美濃部伊織と妻るんは評判のおしどり夫婦。

子どもも生まれ幸せに暮らしていたが、

伊織は喧嘩で負傷した

義弟の宮重久右衛門に代わり、

1年間単身京都で勤めをすることに。

翌年春の再会を誓い、別れる二人。

ところが、伊織は京でふとした弾みから

同輩の下嶋甚右衛門を誤って斬ってしまい、

越前にお預けの身となって

江戸への帰参が叶わなくなる。

 

月日は流れ、

二人が離れ離れになってから37年。

罪が許された伊織とるんは

ようやく再会の日を迎えるのであった・・・

 

 


原作は、森鷗外の短編小説。

それを基に、

劇作家の宇野信夫が作・演出を手がけ、

昭和26(1951)年に初演された新歌舞伎です。

原作は、起きた出来事を

淡々と綴ることに終始しているのですが、

お芝居の方は台詞劇になっています。

まったく逆のアプローチで

夫婦愛を描いていますが、

原作も、お芝居も、

この一組の夫婦の絆を

しっかりと描き取っていて、

心に深く響きます。

 

 

 

前半、若い頃の伊織とるんは

超ラブラブなカップル。

観ていると口角が上がります。

微笑ましいのです。

それが、運命のいたずらで

37年もの歳月、離れ離れで

暮らさなければならなくなるのですよ。

なんと切ない!

でも、二人の愛は、

その長い年月を超えるのですね。

姿かたちはすっかり変わっても、

変わらぬ夫婦愛に感動します!

互いを慈しみ合う様子に、

自分もかくありたいものだなあと、

しみじみしてしまいました。

 

 

 

伊織は勘九郎さん、初役です。

すっごく可愛い!

るんのことが大好き、という気持ちが

体から湧き出るかのよう。

るんを演じた菊之助さんも初役、

エレガント!

年老いてからの演技がとくに素敵に映りました。

そして、良い芝居にはいい悪役、

下嶋を演じた彦三郎さん、

いかにも嫌な奴で光っていました。

 

 

 

長い年月、

いちばん大事な人と会えなかった二人が

再開を果たした姿を

一年の最後のお芝居で見て、

このコロナ禍の事情も頭をかすめました。

直接会えるって、

なんて素晴らしいことなのでしょう!

一年を締めくくるにふさわしい、

心が温かくなるお芝居でした。

 

 

 

『十二月大歌舞伎』

12月26日(日)千穐楽です。