ヤッホ~!帆足由美です。

 

 

 

今回のブログは

昨日観てまいりました

歌舞伎座第三部の感想をば。

 

 

 

 

 

 

本来なら、毎年九月の歌舞伎座は

「秀山祭(しゅうざんさい)」。

初代中村吉右衛門の功績を顕彰し、

芸を伝えよう、という興行で、

ゆかりの演目が上演されるのが習わしですが、

コロナ禍の今年は、この第三部のみが

初代ゆかりの演目となっています。

 

 

 

九月大歌舞伎 第三部

双蝶々曲輪日記

(ふたつちょうちょうくるわにっき)

引窓(ひきまど)

 

 

 

 

 

濡髪長五郎   吉右衛門
南与兵衛後に南方十次兵衛   菊之助
平岡丹平   歌昇
三原伝造   種之介
お早   雀右衛門
お幸   東蔵

 

 

 

 

大坂で人気の相撲取り

濡髪(ぬれがみ)長五郎が

山城国の八幡にある

南(なん)与兵衛の家にやってきます。

訳あって人を殺めた長五郎は、

ここに住む実母のお幸に

ひと目会おうとやってきたのです。

長五郎は幼いころに養子に出され、

また母のお幸は与兵衛の父の後妻として

この家に暮らしているのでした。

長五郎の突然の来訪に喜ぶお幸。

すぐに発つという長五郎を

二階の座敷に通すのでした。

そこへ、代官となり、

南方(なんぽう)十次兵衛と

名乗ることを許された与兵衛が帰宅します。

皮肉なことに、代官としての初の任務は

長五郎の捕縛。

長五郎の持った人相書きから

事情を知るお幸。

そして与兵衛は二階にいる

長五郎の存在に気づき・・・。

 

 

 

 

寛延二(1749)年に初演された人形浄瑠璃

『双蝶々曲輪日記』の八段目に当ります。

明り取りの引窓が、物語の重要な鍵となるため、

通称「引窓」と呼ばれます。

 

 

 

心に沁みる、人情劇です。

実の子と、義理の息子の間で揺れるお幸の気持ち。

自分の職務と人情の間で揺れる与兵衛。

母や与兵衛の思いを受け止め、覚悟を決める長五郎。

与兵衛の妻お早も、事態がうまく収まるよう心を砕く。

互いを気遣う人々の姿が美しく、切ないのです。

 

 

 

演じる役者陣は皆すばらしかった!

今回の公演で、吉右衛門さんは濡髪。

久々の吉右衛門さん、

お元気な姿に涙が出そうになりました。

とっても若々しい濡髪で、

母に一目会いたさにやってきた

若い相撲取りにちゃんと見える。

芸の力ですね!

雀右衛門さんのお早と

東蔵さんのお幸はいいコンビで、

本当の仲のいい嫁姑のよう。

二人のほほえましいやり取りがあってこその、

後半の悲劇。

そして、お三方より若い菊之助さんが与兵衛。

一つ一つ、きちんとした演技が印象的。

帰宅直後の晴れがましい様子、

人相書きを売ってほしいとお早に懇願され、

訳にはっと気づくときの表情、

すべて飲み込んで

濡髪を落ち延びさせようと決めた覚悟。

きっちり見せてくれました。

 

 

 

時節柄、先月、今月と

舞踊劇が中心の歌舞伎座ですが、

普通のお芝居もやっぱりいいなあ、としみじみ。

大向こうのない分、

精一杯拍手をしてまいりました。

1時間10分、あっという間。

しみじみと、いいお芝居でした!

 

 

 

九月大歌舞伎、

9月26日(土)千穐楽です。