ヤッホ~!帆足由美です。

 

 

 

今月の歌舞伎座は、高麗屋三代襲名の

二ヶ月目の公演を行っています。

6日のブログには、

夜の部の二幕目、口上がわりの

『壽三代歌舞伎賑 木挽町芝居前』

について書きましたが、

今回は一幕目、三幕目の感想です。

 

 

 

 

 

松本幸四郎改め二代目松本白鸚

市川染五郎改め十代目松本幸四郎  襲名披露

松本金太郎改め八代目市川染五郎

歌舞伎座百三十年『二月大歌舞伎』

夜の部

 

 

 

   一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)

一、熊谷陣屋(くまがいじんや)

 

 

 

 

熊谷次郎直実  染五郎改め幸四郎
熊谷妻相模    魁春
藤の方       雀右衛門
梶原平次景高  芝翫
堤軍次        鴈治郎
白毫弥陀六    左團次
源義経        菊五郎

 
 
 
宝暦元(1751)年、人形浄瑠璃として初演され、
翌年に歌舞伎化された『一谷嫩軍記』。
『熊谷陣屋』はその三段目にあたり、
時代物の名作として、今日も上演を重ねています。

 

 

 

 
【あらすじ】
源平争乱の時代、
源氏が平氏に打ち勝った一谷の合戦の後。
ここは源氏の武将・熊谷直実の陣屋。
満開の桜の下には武蔵坊弁慶の筆による
「桜の一枝を伐ったならば指一本を切る」
という制札が立っています。
直実がその陣屋に戻ると、そこには
息子小次郎の初陣を心配してやってきた
妻の相模の姿。
女の身で陣中まで来たことを叱る直実でしたが、
小次郎の戦いぶりや、直実が
敦盛を討った様子を語って聞かせます。
そこに姿を現わしたのが、敦盛の母の藤の方。
直実に斬りかかりますが、直実はかわします。
実は、相模はかつて藤の方に仕えた身。
その頃、直実と恋仲になって小次郎を身ごもり、
本来なら不義の罪に問われるところを、
藤の方の恩情で許されたのです。
その深い恩義のある藤の方を
相模は陣屋に匿ったのでした。
そして、相模と同じ時分に懐妊中だった
藤の方が生んだのが敦盛でしたが、
敦盛は、実は後白河院の御落胤。
それを知りながらなぜ敦盛を討ったと、
藤の方は直実を問い詰めますが、
直実は全ては戦場の習いと諭し、
敦盛の最期の様子を語ります。
そこへ現れたのが義経主従。
首実検が行われることになります。
弁慶の記した制札を引き抜き、
これに従って敦盛の首を打ったと述べ、
首桶の中を差し出す直実。
が、そこにあったのは小次郎の首。
敦盛が後白河院の御落胤であることを知る義経は、
桜の制札に事寄せて、敦盛を救うよう、暗に命じ、
直実はそれに従って我が子を身代わりに仕立て、
自らの手で首を打ったのでした。
義経は、石屋の弥陀六と称して
陣屋に来ていた平宗清の正体を見破り、
鎧櫃に隠した敦盛を託します。
一方、直実は義経に暇乞いをします。
鎧兜の下には僧の衣服をまとい、
すでに剃髪もしていた直実は、
皆が見送るなか、
「十六年は一昔、夢だ」と語りながら、
法然上人の黒谷の庵へと向かうのでした・・・
 
 

 

 

熊谷直実は、新幸四郎さんの曽祖父、

七代目幸四郎、初代吉右衛門が当り役とした

高麗屋ゆかりの大役です。

新幸四郎さんは、8年前、染五郎時代に初役に挑み、

今回は3度目にして初めての歌舞伎座での直実。

とても若々しい直実でした!

等身大の、という表現で当たっているでしょうか。

これまで、お父さまの新白鸚さん、

叔父様の吉右衛門さんの直実を何度か拝見していますが、

その立派な、骨太の直実とは違い、

武士の習いを通そうとしながらも、うろたえ、嘆き、

悲しむ若い父親の姿がのぞきます。

線の細さはありますが、

十代目幸四郎色の直実だなと思いました。

僧の姿になっての幕外の引っ込み、

「十六年は一昔、夢だ…夢だ~!」

泣けました。心に深く響きました。

菊五郎さんの義経、魁春さんの相模、

雀右衛門さんの藤の方、左團次さんの弥陀六、

芝翫さんの梶原景高、脇の皆さんも素晴らしく、

襲名披露らしい豪華なお芝居でした。

 

 

 

三、仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)

   祇園一力茶屋の場

 

 

 

 

 

 

大星由良之助  幸四郎改め白鸚
大星力弥     金太郎改め染五郎
遊女お軽                 玉三郎
寺岡平右衛門             仁左衛門

 

 

 

夜の部の三幕目、そして

歌舞伎座ので三代襲名披露の締めくくりは

『仮名手本忠臣蔵』の「七段目」。

37年前の三代襲名でも上演された演目です。

その際には、初代白鸚さんが由良之助、
七代目染五郎が力弥を演じましたが、
今回は、新白鸚さんが由良之助、
新染五郎さんが力弥という配役です。
平右衛門は仁左衛門/海老蔵、
お軽は玉三郎/菊之助の豪華ダブルキャストですが、
私は仁左衛門さん&玉三郎さんのコンビでの観劇。

 

 

 

 

【あらすじ】

塩冶判官が殿中で刃傷に及び切腹してから半年。
国家老だった大星由良助は
京都祇園で遊興三昧の日々を送っています。
由良助が遊ぶ一力茶屋にやって来たのが
塩冶家足軽の寺岡平右衛門。身分が低いながら、
仇討ちに加わりたい一心で来たのですが、
由良助は仇討ちなど馬鹿らしいと相手にしません。
やがて、由良之助の息子の力弥がやって来ます。
亡君の奥方、顔世御前の密書を父に届けに来たのです。
そこに姿を現したのは、塩冶の元家老でありながら
仇の高師直に寝返った斧九太夫。
由良助に仇討の意思があるか確かめに来たのです。
密書の中身が気になる九太夫は縁の下に隠れます。
誰もいない座敷で、由良助は文を読み始めますが、
それを隣の二階座敷から見つけたのが遊女のお軽。
ほんの好奇心で鏡を使って文をのぞき込みます。
縁の下の九太夫も、垂れてきた文に目を走らせます。
しかし、二人に気付いた由良助、生かしてはおけないと、
お軽に身請けの話を持ち掛けて画策します。
そこに戻ってきたのが平右衛門。
実はお軽は平右衛門の妹。
思いがけない再会に喜ぶ兄と妹。
しかし、平右衛門はじきに、
由良助が妹を殺そうとしていることに気付き、
自分の手で妹を討ち、
仇討ちに加わろうと考えます。
説明を聞いたお軽が死を覚悟したところに
戻ってきたのが由良助。
二人の真意を見極め、
平右衛門が仇討ちに加わることを許可します。
そして、仇討ちの本心を明かし、
縁の下の九太夫に刀を突き立てると、
その始末を平右衛門に命じるのでありました。
 

 

 

 

新白鸚さんの由良助は、円熟の一言!

一つ一つの動き、そして台詞、

深みが尚一層増していて、感動することしきり。

芸に終着点はないのですね。

新染五郎さんの力弥はお人形のような美しさ。

溜息の出る、姿かたちの良さ。

歌舞伎役者としては大きな財産ですね。

すくすく育ってくださいませ。

仁左衛門さんの平右衛門と

玉三郎さんのお軽のお二人、

これはもう、素晴らしすぎる!

息がぴったり、情に溢れ、優しが伝わりました。

 

 

 

観ていて幸せになるお芝居での締めくくり、

「高麗屋、こりゃいいや」

とつくづく思う一幕でした。

 

 

 

『二月大歌舞伎』

2月25日(日)千穐楽。