さて、私は、仙台駅と「すき家」でしばらく時間をつぶしたあと、仙台地裁の朝一番の裁判に出席。
その仙台地裁で、15年ぶりになつかしい姿をお見かけした。
「先生! 市川です。」と、勇気を出して声をかけたその先生とは、私が「司法修習生」という、研修期間中に言葉に尽くせぬほどお世話になった元裁判官で、退官後、いまはご出身地で弁護士をなさっているQ先生だ。
…先生が覚えてくれているかどうか不安だったが、覚えてくれていたようであった。Q先生は言った。「ずいぶんご立派になられて!」
法律用語で、ブクブク太ることを「立派になる」と言うのである。
「はい、立派になりました!」
が、先生もお忙しそうだったので、もちろん、あまりお引き留めはしない。「今後とも何卒ご指導のほど、お願いします!」そう言って私は失礼しようとした。
しかしながら、よくよく思い出してみれば、いくら指導してもまったく甲斐のない代表選手が私なのだった。
ところが、なんと、そんな私に対し、実ににこやかに、先生はおっしゃった。「いや、指導して頂きたいのは僕の方ですよ。」…私は思わず目頭が熱くなった。
あぁ、ほんとに偉い人ってほんとに違うんだなぁ、と。
大きな人ほど、いばらない、えらぶらない。ほんとに偉い人ほど、自分を偉く見せない。で、俺みたいな半端者に、さりげなくこういうことが言えるんだ。わたしは「とんでもありません。」と返すのが精一杯だった。
先生は会釈して地下鉄の駅の方に去って行った。その後ろ姿を見送りながら、私は、いついつまでもこの先生の記憶に残り続けていたいものだ、と思った。
仙台はすでに秋雨であった。
(おわり)
その仙台地裁で、15年ぶりになつかしい姿をお見かけした。
「先生! 市川です。」と、勇気を出して声をかけたその先生とは、私が「司法修習生」という、研修期間中に言葉に尽くせぬほどお世話になった元裁判官で、退官後、いまはご出身地で弁護士をなさっているQ先生だ。
…先生が覚えてくれているかどうか不安だったが、覚えてくれていたようであった。Q先生は言った。「ずいぶんご立派になられて!」
法律用語で、ブクブク太ることを「立派になる」と言うのである。
「はい、立派になりました!」
が、先生もお忙しそうだったので、もちろん、あまりお引き留めはしない。「今後とも何卒ご指導のほど、お願いします!」そう言って私は失礼しようとした。
しかしながら、よくよく思い出してみれば、いくら指導してもまったく甲斐のない代表選手が私なのだった。
ところが、なんと、そんな私に対し、実ににこやかに、先生はおっしゃった。「いや、指導して頂きたいのは僕の方ですよ。」…私は思わず目頭が熱くなった。
あぁ、ほんとに偉い人ってほんとに違うんだなぁ、と。
大きな人ほど、いばらない、えらぶらない。ほんとに偉い人ほど、自分を偉く見せない。で、俺みたいな半端者に、さりげなくこういうことが言えるんだ。わたしは「とんでもありません。」と返すのが精一杯だった。
先生は会釈して地下鉄の駅の方に去って行った。その後ろ姿を見送りながら、私は、いついつまでもこの先生の記憶に残り続けていたいものだ、と思った。
仙台はすでに秋雨であった。
(おわり)