最終のB737機内はけっこうな混雑だった。お客の大半は修学旅行生。こんな遅い時間に修学旅行とは珍しい……

そんなことを思いながら私自身はいつしか深い眠りに陥ってしまい、着陸のガガガターンという衝撃で目をさました。…しまった、ジュースをもらいそこねた! 

時刻はもう8時だ。

この時間になると、市内には9時過ぎになるな。修学旅行生は、おそらく宿舎であったかい夕食が彼らを待ってるだろうが、自分のような孤独な旅人はそうはいかない。


かつて殷賑をきわめたこの地も、駅前は死の町のように静まり返っており、飲食店なども皆しまっている。かといってやや離れた飲み屋街に繰り出すほどの元気はもうない。

しかも、この時間になると相変わらずドドッと脚腰の痛みで、歩くのがホントにつらい。

せっかくはるばる来たというのに、夕食は通りがかりのコンビニで調達することにし(それでも「北海道限定」とかいう紅鮭のおにぎりやポテトサラダのサンドイッチを買うところは旅人のこだわりというか意地かもしれない。ただ限定モノに弱いだけですが。)、駅前のビジネスホテルにチェックイン。


「喫煙シングルご一泊でよろしかったですか?」

……えっ? 生まれてこのかた100年近く、1本もタバコを吸ったことない俺が喫煙室を所望するはずがない。

「禁煙室でお願いしたはずですが。」

「そうですか、では禁煙室にお部屋をご用意しましょう。ただ、本日シングルは満室でして、ツインのお部屋でもよろしいでしょうか。」

「もちろんですよ。」

サービス精神に富んだフロントのおかげで、逆に得した気分になる。また、すぐわきを見ると「大浴場営業中」とのプレートが。

「あれっ? 大浴場は修繕中と聞いてましたが。」

「いえ、予想外に修繕が早く終わりましたので。どうぞご利用ください。」

狭いユニットバスで屈葬されるように入浴するのを覚悟していたので、これまた得した気になる。「それは助かります。」

ただ、このあとさっそく大浴場に行ったが、内外装とも以前とちっとも変わってなく、実際には修繕はされなかったのだな、と悟る。が、広々とした浴槽で、疲れきった足腰をじっくりあたためることができ、私は心から満足した。


このホテルの名物であるガラス張りのエレベーターで眼下に夜の工事現場を臨みながら6階の部屋に戻って、私はさっきコンビニで買ってきたおにぎりとかサンドイッチをパクつく。そして、すぐ寝てしまった。


そして、朝。北海道だけにけっこうな寒さを覚悟してきたがそれほどでもない。

しかし、木々はすでに色づき、息は白くなる。

タクシーではなく路線バスを乗り継いで各予定先にまわり、大過なく3件の用務を消化できたのは収穫であった。

実は、当初はいずれもいやな予感がしていた面談であったが。


そして夕刻、いつの間にか降ってきた雨の中、幸運にもジャスト・タイミングのバスでこうして空港に来て、いま、羽田行きの最終便を待っているところだ。

最終便で来て最終便で帰る。

高校生時代憧れた北海道の大地にも、いつもこんな風にして出張している。もったいないことだ。


いま、ロビーで飛行機を待っているところだが、出発便が遅れるというアナウンスが、あたりまえのように流れた。「たいへん申し訳ありません。」と若い女性の実に朗らかな声で。

私は、ああ、そうだ、こういうときくらい更新しよう…と、自分のブログを見たのだか、なんと4月以来。……ずいぶん怠けてしまい、恥ずかしいかぎりだ。

だが、同時に思う。もしかしたらこれが人生最後の更新になるのではないか、と。それくらい、最近の私は元気がない。

ですから、もし、この記事にお気付きの奇跡の読者がおられたら、こう申し上げるのをお許しください。「今年も本当にお世話になりました。どうぞよいお年を。」と。

おそらく今年一番乗りでしょう、このご挨拶は。最終便ではなくおそらく始発便だと思いつつ。