Bさんの家に着いてインターホンを押す。しかし、「どなた?」とそっけない返事。もともと愛想がいいとは言えないBさん。わたしは、「市川です。」と応じた。
しかし、Bさん、「あれ? 来たんですか」とさらに愛想がない。
Bさんもいよいよ認知症かな、と玄関先で待っていたら、Bさんが姿を見せた。
その第一声が「手紙着いてないですか?」と。
なんのことかわからなかったので、聞いてみたら、今日は来なくていい…という手紙を私に送ったとのこと。
「あぁ、そうだったんですか。手紙は来てませんね。もっとも昨日は一日中出回ってて事務所に行けてないですがね。」
ま、どっちにしろ、相談があるから、と呼ばれて来ただけの私の方には、Bさんにはべつに用も用事もない。
少々雑談して、早々に失礼した。
しかし、朝から昼すぎまで、無駄足を運び、さらに夕方までホントなら他に裁判や相談の予定を入れられたのに、それもできない。実に時間を有効活用した!
…だが、私はこうして予定がキャンセルになるのは、実は大好きなのだ。人生にとって無益な暇だが、理由はどうあれ、また、すべきことが単に先送りになるだけであっても、この予期せぬ目先の安楽! 正直うれしくなる。神様からのプレゼントか、とすら思う。
私は思いがけぬ自由を満喫しながら、錦糸町のわが事務所に戻ることにした。錦糸町は千葉の玄関口と言えよう。
さて、事務所に戻ったら、たしかにBさんからの手紙が来ていた。それも、なんと内容証明で。
「今後いっさい訪問しないでください。」とある!
「もちろんだとも!」
しかし、このテの内容証明、昔からよく出したものだが、自分がもらってみるとたしかに不愉快なものだ。が、まぁ、来いと言われたから行っただけで、こっちからのこのこ出掛けて行くことはしません。
まあ、Bさんはパソコンをしないし、おそらくあの姪御さんあたりが、Bさんを私から遠ざけようとされたのだろう。
私は知っている。Bさんのお家によく出入りしている、宝塚のスターみたいな美人の姪御さん(推定代襲相続人)を。そして彼女が、私に会うと、いつもいかにもうさんくさそうな目で私を見ていることを。
図星だ。そう、私はBさんの養子になるのを狙ってるかもしれないのだから!
ホントは結婚したいのだが。
ま、いずれにしても、弁護士らしいことを何ひとつしなかった今日一日であった。