やはり私はなにかのワナにはまったのではなかったか。とすると、やはり自宅の場所を知れないようにしたのは正解だったのかも・・・。

ところがだ、その冷たいお茶をひと口、口にふくんだとき、私の左奥歯、親知らずのあたりにすさまじい激痛が走った。

いつもゆがんでいる私の顔はそのときいっそうゆがんでいたに違いない。

「どうかなさいましたか。」

女性が私の顔を覗きこんだ。化粧ッ気はうすいが、どこからどう見ても美しい。

こんな女性のスカートの中に勝手に手を突っ込むなんて、あの白いTシャツの男は今頃どこでどうしているのだろうか・・・と、そんなことを思えたうちは、まだ余裕があったということだろう。

しかし、次の瞬間、私はそのときすでに奥歯の激痛がこめかみから耳の付け根、さらには左顔面全体にあっという間に広がっていくのを自覚していた。

なんとかそれをこらえながら、「すみません。急な用事を思い出しました。後日改めてご連絡します。」・・・私はそう言い置いて、彼女と追いすがる犬から逃げるように退散し、ヨロヨロと自宅に向かった。

そんな私を彼女が目で追っていたかどうかはまったくわからない。

自宅に帰った私は薬箱からボルタレンとロキソニンを出してその両方とも飲んだのだが、痛みはますますひどくなっていった。

もちろん、疲れてはいたが、眠れるどころの話ではなかった。(つづく)