このブログを中断している間、何度ここ北海道S市に来たろうか。
それにしても私がS市に来るたび足を運ぶ、ここS駅構内のソバ屋「そばS」の蕎麦は秀逸だ。
駅ソバのチャンピオンと言えないだろうか。
今日は、道内「幌加内」というところのそば粉を使ったそばを提供しているという。
すっきりした喉越し、絶妙なつなぎの割合。ふんだんに昆布出汁を使ったそばつゆも美味。
おまけに店内にはあの名曲「島唄」がBGMとして流れ、最果ての旅情をかきたてるではないか。
いつの間にか私は涙を流しているのだった。
この間、ブログの更新ができなかったのは、多忙だったからでも、病気だったからでも、パソコンの調子が悪かったからでも、パスワードを忘れたからでもなく、ブログを更新しようとするとなぜか人に怒られることが続き、更新恐怖症に陥っていたからなのであった。(病気だったということか。)
あれは3月半ば頃の新幹線「のぞみ」の車内だった。
私は、自分の席でせっせとブログ更新のためのタメになる記事の数々をパソコンで打ち続けていたのだったが、途中で尿意をもよおし、車内の便所に向かった。
最近の電車の便所は、便器の下に線路が見えたりすることもなく、実に清潔なのである。
私は大いなる満足感をもって便所の外に出た。そのときだ。
かなり暗い感じのする中年男性が、私に声をかけてきたのである。
「まだパソコンしますか?」と。
ハッとなった私――つねに弱気である私――は、とっさに、「うるさかったですか。もうやめます。」と、ほとんど無意識のうちに返答していたのである。
そして、実際に席に戻った私は、パソコン上のファイルを閉じ、電源を切った。
…が、それにしてもだ。いつもたしかに力いっぱいキーをたたくという何事にも全力投球の私ではある。しかし、新幹線の車内でパソコンをしているのは私だけでない。むしろ、パソコン用のコンセントがある車両だって珍しくない。どうして私だけ叱られなければならないのか。そんなにうるさかったか?
疑問を禁じ得なかった私に、さっきの暗い男性が、席に戻ってきて、こう続けた。
「申し訳ないですねぇ。となりの女房が眠れない…っていうもんですから。」
よほどの恐妻家なのか。しかしそれにしても、その奥さんの席は、私と通路をはさんだ反対側の、しかもその夫である男性を隔てた窓際の席ではないか。
どうしてそこまで私のキーをたたく音が届くだろうか。しかもこの走行中の車内である。それで「眠れないの、アナタ・・・」だと?
どうかしてるんじゃないのか?
だが、もういい。私も、この際、日頃の睡眠不足をこの車内で補うことにしよう。
騒々しい車内ではあったが、私はあっという間に深い眠りについた。となりにパソコンどころか、チンドン屋がいても私は目が覚めることがなかったろう。名古屋を出て豊橋か浜松にさしかかるころだったろうか。
実に、いい休養になった。
そして、私は、「のぞみ」の車内で、宝くじに当たったが、その宝くじの当選金を時効にかけるという大河ドラマ並みの、長年月にわたる夢を見ていた。
ところがだ。おそらく「のぞみ」が新横浜に着こうという頃だった。
くだんの暗い男性が寝ている私の二の腕を強くつつき、私をわざわざ起こしてくれ、そして言ったものである。
「今日はすみませんでした。失礼しました。」と。
すまないと思うんだったら、起こすなよ!
そう叫んでやればよかったと思ったのは、東京駅についてだいぶ経ってからだった。
女房が眠れないといって私のブログ更新に抗議した彼に、どうして寝ている私をわざわざ起こす権利があるのだろう。
しかし…、と私は反芻するのだった。
彼は、暗い。
きっと、世間にもあまり相手にされず、妻にも日頃邪険にされ続けているに違いない。そんな彼にとって、今日はもしかしたら、彼の主張が認められ、彼が彼の妻の期待にこたえおおせた、おそらく前にも後にもたった一日だけの、本当に彼にとっては祝福に値する大変な記念日となったのではなかったか、と。
おめでとう! 暗い男よ。
暗い男の妻よ!
しかし、それにしてもどうしても釈然としないことがあった。
それは、新横浜駅の下車間際に見たその「暗い男」の妻が、実に目をみはるばかりの美人。ミス・インターナショナル世界大会で惜しくも優勝を逃したが、翌年ミス・インターナショナルになった森理世さんよりもきれいじゃないかと新橋SL広場近辺のサラリーマンの間でもっぱら評判の知花くららさんと瓜ふたつの美女だったことである。
それにしても、こんな恐怖体験もあり、私のブログ記事作成の機会はますます限られてしまったという次第なのである。
そのためブログの更新がなかなかできなかった。
忙しかったわけでも、病気だったわけでも、パソコンの調子が悪かったわけでもない。
(なお、この記事は、飛行機の待ち時間に書いており、このために、なにかほかの仕事を犠牲にしたなどという事実はまったくありません。)