ひそひそ声が、次第に大きくなってきた。若い女性の声である。
風呂上り、私は、ホテルのロビーで備え付けのスポーツ新聞を読んでいた。
いまどきあんな風にひそひそ話をするのは珍しいなと、私は思った。
どんな女性なのだろう。
…すると、私の横の方を、チャンチャンコみたいなのを着た二人の女性が、相変わらずなにか密談しながら通り過ぎて行った。背が高くて、顔がちっちゃい。チャンチャンコみたいな衣裳から太ももまではみ出したスラッとした生足が眩しい。
私は、このホテルに呼ばれたコンパニオンさんかなにか(スーパー・コンパニオンとかいうヤツ?)だろうか、と思った。
案の定、彼女らは、携帯電話ではなく、ホテルの公衆電話でどこかに電話をかけている。
…しかし、それにしては、彼女らはその後もホテルのロビーに止まり続け、ふたりして宿泊客向けの1台のパソコンに向かい、一心に何やら作業をしている。妙だ。
車の迎えとかがくる気配も全くなかった。
私は、彼女らが何者であるのか、余計なお世話であるにもかかわらず、非常に気になってきた。
スポーツ新聞を熟読した私は、まだロビーにいた彼女らに、意を決して話しかけた。
…年をとったときに都合がいいのは、その程度のことをしても「変なおじいさん」ですみ、「変な男」として警察を呼ばれたりしないところである。
「ちょっと失礼ですが、あなたたちはこちらの地元の方ですか。」
最初ふたりとも怪訝そうな表情をしていたが、彼女らのうちのひとり、ショートヘアでどこか倖田来未さんに似ている方から意外な答えが返ってきた。(つづく)