横浜地裁川崎支部は、私にとっては鬼門である。


 なぜなら、川崎駅から裁判所までの道中、飲食店が多く、時間があるとついつい立ち寄ってしまい、いらぬカロリー摂取とお金の無駄遣いをしてしまうからだ。


 もっとも、この日私が裁判所の近くの牛丼チェーン店「すき家川崎市役所通り店」のドアをくぐったのは、単に腹が減っていたからである。


 店内は昼時をとうに過ぎたこともありガラガラだった。


 「ご注文をどうぞ。」


 「あれください。」私は壁に貼ってあったポスターを指差した。


 「ねぎ玉牛丼ですね。」


 「そうだよ、決まってるだろう。もしかして私が小池栄子さんを所望したとでも思ったかね。」


 ・・・というような低劣なジョークを店員相手に飛ばすほど、私はまだ落ちぶれていないつもりなのだが、そのとき気付いた。


 ポスターの中で「ねぎ玉牛丼」を今まさに食べようとしている小池栄子さんは、左手に箸を持っていた。つまり、左利きなのだ。


 私は、こうして堂々と左利きであることを見せ付けているポスターを、生まれて初めて見た気がした。いや、ポスターに限らず、メディア上、登場人物が左利きであることがわかるシーンというの自体が珍しい。


 かくいう私も左利きであるが、大げさに言えば、なにか左利きということがちょっとした市民権を得たような気がしたこの日の「すき家」であった。


 なお、すき家のネギ玉牛丼のお味のほどについては、機を改めて論評したいと思っている。