私らオヤジ族にとって飛行機旅行の楽しみのひとつがスチュワーデスさんの観察であることについては、あまり異論があるまい。

 日頃は接する機会がありえないような女性達に、お茶を入れてもらったり、「ヒザカケいかがですか?」なんて声をかけてもらったりできる。彼女らがウロウロしているのを見ているだけで結構楽しい。

 ところが、だ。

 今日の、東京発・網走行きJAL4147便の乗務員さん達は、いつにも増して非常なベテランぞろい。私は目を瞠った。

もちろん、それはそれで好ましいのだが、なにか、近所の町内会の婦人たちがコスプレ・パーティーでもしていっせいに制服を着て、スチュワーデスさんに扮しているような、なんというか、機内は非常な親近感に満ちており、家庭的で好感がもて、私はうれしかった。

 こういうときは、機内でぐっすり惰眠をむさぼり、安心して日頃の睡眠不足を解消するができる。…はずだった。

 ところが、「お休みのお客様にはお声をかけませんので、お目覚めの時はご遠慮なくお飲物などお申し付けください。」とか機内放送してたくせに、さっそく「お飲み物はなにになさいますか。」と私を起こしてくれる。

 「いや、けっこうです。」と言って再度うつらうつらしていたら、ヒザカケの毛布をボーンと私の腹にかけてくれ、またしても、目を覚まさせてくれる。

 それでもウトウトしていたら「キャンデーいかがですか。」とここでも親切に私を目覚めさせてくれる。

 おかげで私は何度も眠りにつく喜びにひたれた。なんて気の利く乗務員さんたちではないか!

 しかも、飛行機は乱気流で途中からかなり揺れた。

 きれいな女性と同乗しているときなんか、飛行機がこのままどこかの無人島に不時着しないかな…なんて、おバカなことを考えることもないではないが、今日ばかりは、私は真剣に、このままでは死にたくない、無事に北海道に着いてくれ、と祈らずにおれなかった。

 そんな私の心を見透かすように「飛行機は揺れましても、影響はありませんのでご安心下さい。」・・・さすがにベテランぞろいのクルーは落ち着いたもんである。

 しかし、影響があるからこそ、揺れてんじゃないのか。正確には「墜落したりはしませんので、ご安心下さい。」とでも言うべきなのだ。

 ま、冗談はともかく、もちろん、飛行機は無事網走空港に着陸した。

 最後の機内放送が響く。「機内でまたお目にかかれることを楽しみにしております。」

 私も心の底からそう思ったのは言うまでもない。