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レベッカ『ラブ・パッション』(85)


第10話……

 【遊撃中隊コソコソ話ジャー戦】隊員明達に、カレーライスや、野菜サラダや、フルーツポンチの、シロップなどの夕食や、プラ製お盆や、食器が向かった!テーブルの上に踊り上がった広彦は、明の胸にスライディングキックだ!
 勿論、明の食事を乗せたお盆は、広彦のスライディングされて、テーブル下に落とされることとなった……!
ゴォダァン!カキャ!ガラカカン!シャヤァン!ガン!カラキャン!
 広彦が、スライディングキックを明に喰らわす過程で、あらゆる大きな音が、発せられた!最後に……ズダォダァァンッ!と大きな音を立てて、広彦と明が床に落下した!
 あらゆる大きな音は【あらゆる人達の一生懸命】が入り作られた【シーフードカレーライス】などの食事が、全て床にばら蒔かれた音だ……。最後に広彦と明が床に落下した音だ……。
『コの野郎~ッ!』
『何ンダァてめぇ~ッ!』
『ザァケやがってぇ~ッ!』
『上等だ!コラぁ~ッ!』と床に落下した2人は、取っ組み合いの喧嘩を始めた……。
 広彦が、明に絡み始めた辺りからの一部始終を【幹部スペース】で食べていて、見ていた郷は、激怒した。立ち上がると、広彦と明達の喧嘩している方に向かい、歩き出した。
ヤメロ!ヤメロ!と言いながら、近くにいた3等陸曹土屋が広彦を、遊撃中隊の仲間の陸士が明を、それぞれ羽交い締めにし、ケンカの2人は分けられた!2人は互いに罵りあった!
「何ンだぁ~ッ!人がメシ食ってる時に~イヤらしい野郎等ァ~だぁ~ッ!コソコソ悪口~ピチャピチャ~ヌカシてやがッてェ~!おうコラぁ~ッ!フザけんなァ~!ちゃんと【ちんカス】皮~ムいて洗ってンのかぁ~ッ?こらァ~ッ!」
「何ンだ!てめえ~!【あかあざ線撤去作業】ン時もフテ腐れてやがってェ~!」
「【チ!】【チ!】【チ!】【チ!】舌打ちばっかしやがて~テメェの方こそォ~気分悪いンだろがぁ~ッ!」
「何ンだとぉ~!番号中隊の1等陸士のクセに生意気だぁッ!」
「お前等ぁ~何ンカいい気になり過ぎだっつぅのヨォ~何が『花形遊撃中隊』だ~ガキじゃあるまいしィ~!センズリこいてンのと同じだ~ッ!」
「お~!放してくれ!殴らなきゃ気がすまんゾこのクソガキが~ッ!アッ?……的場3尉……アッ!」
【幹部スペース】からやって来た郷は、羽交い締めにされていた明の胸ぐらを掴むと、引き離した!
ゴォバァキッ!と大きな音をさせて、郷は明の顔面にパンチをブチ込ンだ!吹き飛ばした!
ドダァァ~ンッ!と、食堂内に、大きな音を響かせて、床に背中から倒される明だ!
「貴様ァ~コラァァァ~ッ!」と叫びながら、郷は広彦の胸ぐらを掴んだ。土屋は『どうぞ!』という様に羽交い締めを解いた……。やはり、広彦の胸ぐらを掴んだ郷は、パンチをブチ込む様だ!
ゴォバァキッ!と大きな音をさせて、郷は広彦にパンチをブチ込み吹き飛ばした!
ドダァァン~ッ!と、広彦も、やはり、大きな音を立てて、背中から床に倒された。
「バカ野郎ォォォォォォォ~ッ!」
 郷の凄まじい怒号、が隊員食堂内に響き渡った!テーブルで、食事中の駐屯地の隊員達500人はいるであろう……。当たり前のように【シーフードカレーライス】を食べていた約500人は、食べるのを止めて、郷達に注目している……。
 郷の怒鳴り付けは、まだ続くようだ!郷は、床に散乱し、飛び散った食器や、カレールーや、ご飯や野菜等を、指差しながら、明と広彦に説教怒鳴り付けタイムだ!
「お前等ぁ~ッ!何ンだぁ~ッこれはぁ~ッ!食べ物ォ~粗末にしてどういうつもりだぁ~ッ!栄養士さんが『美味しくて栄養ある献立』一生懸命考えてくれてぇ~!満保さん達糧食班のみんなが心を込めて一生懸命作ってくれた料理をォ~ッ!床に投げ散らかすたぁ~!どぉういうつもりだぁ~ッ!何ンだぁ~これはぁ~ッ!」
 明と広彦は、床に散乱した食器や食事を見て、配食カウンター窓の方を見た。栄養士や、糧食班隊員達が怒った顔を覗かしていた。配食のために並ぶ隊員達の脇にいた陸曹長満保も、明と広彦の近くまでやって来た……。勿論、怒りで顔は真っ赤だ!
 2人にパンチを一発ずつブチ込むも、怒りに燃える郷は、続けて2人を罵った!
「人間は食べなければ生きて行けないだろォ~ッ!我々~自衛官は何ンだぁ?『国民の生命と財産を守る』ためには~日々鍛練して行くにはァ~ッ!食べて行かにゃならンだろォ~!この料理~お前等ァ~ッ!当たり前のように食ってっけど何ンだぁ~ッ!誰が~カネ払ってくれてンだぁ~ッ!国民が一生懸命働いて納めた税金でだろうがぁ~ッ!」
 床に落ち散らばった食べ物を、指差しながら続ける郷だ!
「その食べ物は何ンだぁ~!漁師が必死に働いて獲ってきたモンだろガァ~ッ!あ~ンッ?野菜も同じだぁ~ッ!食べ物~粗末にするヤツがぁ~ッ!イザとなって国のために戦えるかぁ~ッ!てんだぁ~ッ!お前達にィ~ッ!大切な人達を守るために戦うことが出来るのかぁ~ッ?親!兄弟!そして~お前等ァ~もそのウチ嫁さん貰うだろォ~がッ!妻や子供を守るために戦えるのかぁ~ッ?」
ビクッ!と広彦の身体が震えた!郷は続けた。
「食べ物粗末にするヤツに大切な人を守れるか~ッ!……それ……喰え!」と落ちた料理を指差しながら郷は2人に命令した!
「それ……喰え!……喰え!……犬の様に這いつくばって喰え……」と怒りに震えながら真面目に命令した……。固まったままの2人に、郷はブチ切れて叫んだ!
「喰えぇぇぇぇぇ~ッ!」……食堂内に怒りの郷の命令が響き渡った……。
フチャッ!ズビビ~ッ!チャッ!とすぐさま言われた通りに、犬の様に這いつくばりカレーのルゥーを舐め啜る明だ……。
「的場3尉!もういいです!止めて下さい!……おい!キミ!もういいヨ!止めな!……アッ?」と慌てて満保は、明に舐め啜りを止めさせようと来たが、郷に阻まれた!
「いいンです!満保さん!」
「的場3尉!ダメですッてェ~ッ!こんなコトさせては~ッ!止めて下さいッ!」
「満保陸曹長!上官に指図するかぁ~ッ?陸曹長が3等陸尉に指図するかぁ~ッ!」と衛生的に問題があるメチャクチャな命令は……怒鳴り付けたからには……『後に引けなくなってしまった』……郷の様だ……。
「…………しかし……」と満保も、郷に歯向かうのは止めておいたが、食堂内の隊員の衛生面には責任がある満保は、やむを得ず命令に背くコトにした!
「君!もうイイから!止めなさい!」
スチャクッ!チャッ!と落ちた食べ物を食べ続ける明の両肩を、両手で掴んだ。明は顔を床から離した……。
 郷は、明を『その辺で勘弁』することにした……。明に、落ちた食べ物を舐め啜らせたからには、広彦にも同じくさせねばなるまい。郷は広彦に命令だ!
「おい!加藤ォ~!お前!お前もだ!落ちたモン喰え!」
「…………」黙って郷を睨む広彦だ。
「耳が聞こえンかぁ~?お前もだ!お前も犬の様に四つん這いになって、犬の様に喰え!食べ物を粗末にするヤツがぁ~国民の生命、財産を守るために戦えるかぁ~!お前に大切な人が守れるか!」と続ける郷だった。が、……広彦は、郷が背中を見せると、出口に向かい、歩き始めた……!
「……ッ?……おい!加藤!待て!……」
「的場3尉!もう止めて下さい!」と、広彦を追いかけようとする郷の前に、満保が立ちはだかった……。
「フザけんなァ~!てめェ~ッ!戻ってこォ~いッ!」
「的場3尉!止めて下さい!」
「いや!駄目だ!どけェ~ッ!」
「もう止めて下さい!」
「邪魔するなァ~ッ!」と言って、走り出そうとする郷の身体に抱きつき、止める満保だ。第1中隊の3等陸曹土屋も加わった。
「的場3尉!待って下さい!」
「止めろ!放せ!加藤ォ~コラぁ~ッ!戻ってこぉい~ッ!」と罵る郷を無視して、広彦は出口から外に出て行ってしまった……。
「コラァ~ッ!」激怒した郷は、広彦を追いかけようとするが、満保と土屋の2人に抱きつかれ、阻まれた……。
「放せ!『放せ!』と言っているだろうがぁ~ッ!ア~ン!はんかくせぇ~ガキャー!」と叫んで、マジ切れの3等陸尉は走り出そうとして、陸曹長満保を振り払った!
アッ!と声を上げ、満保は床に転がされた……。
「放せェ~ッ!」と叫ぶ郷に、土屋は大声で叫んだ!
「的場3尉!待って下さい!話を聞いて下さい!…………話を聞いて下さいッ!」
「…………」ようやく静まる郷であった……。

レベッカ『ロンリーバタフライ』(85)

営庭野球場ベンチ 1730(ヒトナナサンマル)
 雨上がりの晴れた夕方……営庭端の野球場ベンチに座る広彦だ……。遠くの山々の緑の上の、青い空には、美しく色を放っている虹が掛かっている……。虹を見ている広彦であった………。それは、それは、美しい虹であった……。
 だが、北部方面隊第2師団北方駐屯地第4機動歩兵連隊第1中隊一等陸士加藤広彦には『ウンザリする程に見飽きた、どうでも良い自然豊かな、北海道の、ただの美しい景色』でしかなかった……。
 その美しい自然に恵まれた場所に暮らす幸せに、感謝出来ない広彦に『空の神様』は罰を喰らわした……。やはり、夕方だから、虹はス~と去って行くように消えた……。
「あ?」と広彦は、小さく声を発した……。
 どうでも良いと思っていた~美しい景色を構成していた虹~が消えるのは、やはり淋しい……。いなくなって分かる、有り難さの様だ……。
 薄暗くなり始める空の下に取り残された様に、ベンチに座る広彦だ……。普通の者なら、誰もいない営庭に、1人でいると、孤独である自分を認識し、皆のいる隊舎に帰りたくるだろう。
 が……、この若者は違っていた……。カレールーで汚れた【ジャー戦】の胸ポケットから、ソフトケース財布を取り出すと、開いた……。内側の透明プラ写真入れには【可愛い女の子の写真】が入っている……。前出の『本当の愛を~』の様に、印刷されたアイドル歌手の写真ではなく、カメラで撮って、プリントした……本当の【彼女の写真】である……。
 写真の女の子に向かって広彦は呟いた……。
「るみ……」
ザスッ!と後ろで、誰かの足音がした!人の気配を感じ、後ろを振り向くと郷が近付いてきていた……。広彦は、財布を畳むと、胸ポケットに入れて、ボタンを掛けた……。
「ご苦労様です!」と、ベンチから立ち上がり、敬礼する広彦だ……。
「お~!やっぱりいたか……大体~自衛隊員は~気が滅入ったりすると~ここに……駐屯地野球場のベンチに座って……たそがれに~来るンだよな……アハハ……」と【自衛官あるある】をヌカシながら、さっきまで、怒鳴り声を上げていて、広彦をブン殴った幹部は……今度はニコニコ笑顔だ……。手には【飯ごう】【プラ袋】【紙パック牛乳】【スプーン】を持っている……。隊員食堂の夕食を、広彦のために【上げ飯(飯ごうテークアウト)】して持ってきてくれた様だ……。ベンチに座る広彦の脇に【飯ごう】等を置いた。
「あ?」
「まぁ~食えって!」
「あ!じゃあ頂きます!」
 手を合わすと、広彦は、手に取った飯ごうの蓋を開け、中蓋の中に入っていたプラ袋入りのカレールーを、飯ごうの中のご飯に掛けた……。
シーフードカレーライスを、凄まじい勢いで食べた……。
ハフ!ブチャ!スチャ!と、汚いが、いかにも美味しくて堪らない~と音を立てて食べる広彦だ……。広彦は、あっという間に【シーフードカレーライス】【プラ袋入り野菜サラダ】【プラ袋フルーツポンチ】をたいらげた……。
 空になった飯ごうの中に、ゴミになったプラ袋や、紙パックを入れると、幸せそうな顔になった……。
ハァ~!と息を吐く広彦だ。
「ご馳走様でした」と言いながら、飯ごうを郷に渡そうとする広彦だ。
「パッカぁ~野郎ろろろォ~ッ!洗ってから返すン決まってンべサァ~!」
「そうだと思いました……ククク……」
「何ン~はんかくせぇコト~ヌカして笑ってんだぁ~コノ野郎ォ~ゥ!舐めてンのカぁ~!(いい)度胸だぁ~ッ!」
ワハハハハハハハハハハハハハハハ~!
アハハハハハハハハハハハハハハ~!
 笑い声を立てて、打ち解ける郷と広彦だ……。笑い声が終わると、沈黙の2人だ……。どうも郷は広彦の何か?を伺っている様だ。郷は広彦に話し掛けた。
「美味いよなぁ~シーフードカレーライス……」
「ッ?…………オレ……スミマセン……」と詫びる広彦だ……。
「そうだぁ~!食べ物を粗末にするなんざぁ~【言語道断】だぁ~!フザけんなよ~!」
「スミマセン……」
「…………で……」
「…………」
「…………」
 また沈黙する2人だ……。郷から切り出した……。
「何?……辞めるンだって?」
「…………」
「辞めて~どうすンのよぉ~?」
「………………………」
「………………………土屋3曹から聞いたけど~あと7ヶ月で1任期満了て聞いたけど~それまで待てないのカ?」
「……………………………………………」
「それから~もう1任期続ければァ~【自教】行かして貰えて【大型1種自動車運転免許】~取らしてくれるゾ~」
「…………………………………………」
「街の自動車学校だったらァ~何ン十万円もオカネ取られるンベサ~!でも自動車運転教育隊なァ~【自教】ならァ~給料貰いながらァ~タダで勉強させて貰えンだゾォ~!」
「………………………………………………」
 と……しばしば訪れる沈黙に参る郷であった……。(「話題を変えよう……」)と言葉を探した……。
「ところで、さっき~チラっと写真~見えたンだけど【彼女】だべや~?ちょっとォ~見せてぇ~!」
「………………………………」
「見せてぇ~!見せてくれたってイイ~しょォ~!」
へへ!とまンざらでも無さ気に、胸ポケットから財布を取り出し、開いて【彼女の写真】を見せる広彦だ……。
「うわぁ~ッ?すンゲェ~!可愛い~べサァ~!え~?何処のコ~?看護婦さんか?川田デパートのコか?うぅ~わァ~!可愛い過ぎるよォ~!」
「へへへ……るみ……て言うンです……」
「へぇ~!……るみちゃんて言うンだァ~…………かわいい~しょやァ~……で…………どうだい?…………るみちゃんとは結婚するンだべ?……じゃあ~尚更だべサぁ~!こっちは仕事が少ないから~【自衛隊】続けないとォ~!」
「だから辞めるンです……」
「は……?」
 他の中隊の陸士の広彦の‘’依願退職‘’理由など、郷には関係ないのだ。が……、クラブで、遊撃中隊の鈴木3曹を殴った時に、一応【和解】させたり、隊員食堂では【鉄拳制裁】を喰らわしたたり、いつの間にか広彦に親身になりつつある郷であった……。広彦の話を聞いてやるコトにした………。


中部方面音楽隊「あすという日が」