最終話-2



カァハァァァァァ~ッ!とタケハラは大きく口を開けて舌を出し、掠れた笑い声を立てながら、ハンドルを握りクラッチペダルを踏み、シフトバーを動かしてギアを入れた。
ダァカァン!とギアが繋がる音が響き渡り、トラックは動き出した。
ブプゥヒュヒュヒュヒュ~!ダァガン!ヒュヒュヒュヒュヒュヒュゥ~!と笛マフラー音と共に遠ざかって行く……。
「…………………」と無言でケータローは去って行くトラックを見ていた……。トラックは交差点を左折して見えなくなった。ケータローはバイクに股がり、ヘルメットを被り顎紐を締めた。
チュルルルゥゥ~ッ!ブルポォワァアァアァァァ~ン!とスターター音をさせて大排気量バイクのエンジンを始動させ、アクセルを吹かして回転数を上げた……。

ブルポォワァアァアァァァァ~ン!ブルポォワァアァアァァァァ~ン!とエンジン音を響かせて、クラッチを繋ぎ変え、急加速でバイクを走らせるケータローだ!

ブルルボボォワワァァァァァァァァ~ン!ボボォォワワァァァァァ~!とケータローの乗るバイクのエンジン音は遠ざかって行く……。
ドォバァダァガァバァァァンシャァァァァ~ン!と凄まじい衝突エネルギーの衝撃音が牛丼屋にまで届き、ガラス壁面を振動させた……。
ブィィィィィィィ~ン!と音をさせて牛丼屋の自動ドアが開き、店員が店前に出てきた。
『何ンだァ~?アァ~ッ?大変ダァ~ッ!事故ったなァ~ッ!』と言いながら遠くの交差点の方を見た……。

長官室
 事故の当日、前日、前々日の店内と、ガラス壁面外にいる人物の全ての会話が手に取るように分かる防犯カメラ音声強調映像を見て、部下からの顛末読み上げ説明を聞いて、指をニワトリの足のように広げ自分の鼻筋に当て、呆れ果ている長官だ。

カハァァァァァ~!と、掠れため息を吐く長官だ。続けた……。

「………実に…………実に…………イヤァ~………実にィ~下らない!……カハァァァァァ~!……岩野氏という人は天才なンだよな?……バカなのか?……アホなのか?……分からん!……が……そこが実に面白い!……が……カハァァァァァ~!……やはり……実に……実に下らない!」
「現場検証や、119番通報した牛丼屋の店員への聞き取りから『何者かが事故直前に岩野氏のバイクのディスクに潤滑油を塗った模様』で……防犯カメラ映像から……『タケハラのトラックから降りて来た出稼ぎ外国人コーが岩野氏のバイクに近付く』のが確認され……‘‘牛丼屋’’の店員の話から事故前日の映像では、岩野氏はタケハラとケンカをして……フレームアウトしてますが、岩野氏が倒れたタケハラを‘‘リンチ’’したらしく、コー達3人にも……エ~!」と……何ンと言葉して良いのか探す部下だ。
「3人は『ケツの穴を蹴られた』のだろ?……今、見た映像だな!全く下らない!」
「事故による昏睡状態から意識を取り戻した岩野氏の訴えと、事故の2ヶ月後に窃盗……いわゆる‘‘金属(非鉄)泥棒’’の容疑で逮捕された出稼ぎ外国人コー、ポー、チン達3人への余罪追及で……コーはタケハラから『バイクのディスクに潤滑油を塗れ!』と指示されたことが分かったのです……タケハラは『叩けば埃』の出る粗大ごみチンピラですから‘’別件‘’で逮捕して追及したのです……が……コー達3人の供述と防犯カメラ映像だけでは残念ながら……証拠不十分で不起訴となりました…………状況から言ってクロに間違いないのですが……とことんワルで抜け目のない粗大ゴミチンピラで、尻尾を掴ませないのです」
「経済界は納得しないだろう…………イヤァ~!……下らな過ぎて頭が痛くなるッ!……私は警察庁長官だぞ!何ンで?……何ンで?何ン年も前の~揉み消しで中止になった壊滅摘発~を?今になって実施する理由がァ?一体何故か?と言う理由が?
『シュワルツェネッガー知事が~フィリピンパブに遊びに行きたいンだナァ!』~て?『行くのが指定暴力団豪烈会ヤクザ本部⚪⚪ビルにあるフィリピンパブ』で?……『経済界に多大なる功績がありシュワ知事とも重要な関係にある研究技術者岩野氏に瀕死の重症を負わせた粗大ごみチンピラが、平然とシャバにいて、その⚪⚪ヤクザビルに出入りしているのはマズい!』から?……それでは『シャレにならンから?経済界に顔向け出来ンわ!警察庁の面子が立たない!立場がない!』……というのは分かる!……だけど……だけど……‘’事の発端‘’が……『隙あらば誰彼構わずに因縁つけたくてウズウズしてる粗大ゴミチンピラが牛丼屋にいる時に‘‘BSE’’の話をした』……というかァ~飲食店で!そンな話するか~?誰だって怒るよ!チンピラでなくても怒るよ!」
「天才というのは~やはり『普通の人じゃない』ンですね……」
「呆れ果てるよ!……岩野氏~自らチンピラに絡まれる原因作っておいて~!困ったモノだな……」
「全くです!……経済界に顔向け出来ないから行う壊滅摘発……これは~やらねばイケません!……だけど‘’事の発端‘’が『‘‘ガキちんぴらの喧嘩’’の尻拭い』と同じなンですね!…警察庁としても理由がつくのなら断りたいですよ……」
「で……岩野氏が、タイミング良く‘‘常識はずれのスピード違反’’をしてくれて‘‘揉み消し’’せねばならず……中止になった!……というワケだな!」
「それが一部始終です……」
「国家権力だよなァ~?警察庁はァ~!一体、何ンだってンだ!」と言いながらハァ~!とガックリと頭が下を向き背中が丸まり、長官机椅子に座る長官だ……。
「長官!」と部下が思い出したように言った。
「何ンだ?」 
「確かに7年前に……岩野氏の『常識外れのスピード違反逮捕』の揉み消しで‘‘壊滅摘発’’は中止になってしまったのですが……このままシュワちゃんが……イエ!……シュワルツェネッガー知事が‘‘ヤクザビル’’と呼ばれている豪烈会ヤクザ本部⚪⚪ビルに向かったらですが……かなりマズい事になりますよね?」と震え出した部下だ。
「マズい!マズいぞォ~!シュワ知事とも関係があり、日本の経済に重要な人物……岩野氏に危害を加えたに間違いない~粗大ゴミチンピラが、今だに反社会的組織の構えている本部ビルに、のうのうと出入りしているのはマズい!……勘弁してくれヨォ~!相当にマズいゾ!『コレハドウイウコトデスカナ?』てェ~経済界が激怒するゾ!」
「長官の次の目標は‘‘出馬’’で……政界を目指されてるですよネ!」
「そうだよ!ワタシは必死に努力して~やっと警察庁長官まで昇り詰めたンだ!2年後は出馬するンだからナァ!当選確実は当たり前なのに!経済界の後押しがなくなったら~水泡に帰す~だゾ!……何ンで?こンなシャバと刑務所を行き来してるような粗大ゴミみたいなチンピラを~のさばらせとくンダァ!こンなのに!ワタシの努力を全て台無しにされてたまるかッ!」
「では!GOサインと言うことですネッ!」
「あァ~!‘‘壊滅摘発’’だ!今すぐにだ!シュワ知事が‘‘ヤクザ本部⚪⚪ビル’’に着く前に指定暴力団豪烈会をツブすンだァ~ッ!機動隊、航空隊、SAT、入国管理局、……全てを向かわせるンだ!」

メガデス/Angry Again

BGM代わりに聴きながら読み進まれたし……


東京OT区IK上町 

指定暴力団豪烈会本部ヤクザビル前

 指定暴力団とは……暴力団の内でも『威力により資金を稼ぎ、所属団員が麻薬、傷害等~暴力団員特有の前科を有する者が一定割合いて、支配する者の統制下に階層的に組織が構成されている』等の一定の要件を備えた反社会性の強い団体を‘‘暴力団対策法’’に基づき『指定暴力団』と指定し、必用な規制取り締まりを加えて行くことが出来るように定められている。

 東京都OT区IK上町にある、指定暴力団‘‘豪烈会’’本部ヤクザ⚪⚪ビルは……1、2Fがフィリピンクラブ‘‘マガダンマガオマガマニラ’’、3Fがヤクザ不動産、4Fがヤクザ金融、5Fがヤクザ事務所、6、7Fが組長宅&賭場だ……。

 元々ワンフロアーの高さが低いビルのために、2階分のスペースを使い天井の高い1フロアースペースとなっていて、1F、2Fがフィリピンパブ‘‘マガダンマガオマガ・マニラ’’で、6、7Fワンフロアーが組長宅&賭場だ……。

 3Fの不動産は‘‘地上げ屋’’スレスレの悪徳不動産業で、4Fのヤクザ金融……‘‘金融’’とは表向きで‘‘いわゆる闇金’’……である。ハッキリ言って3、4Fは5Fヤクザ事務所の分室……ということか……?建物にいるのは、ヤクザ者ばかりだ。


 ⚪⚪ヤクザビルの6、7Fで1フロアの天井が高い大畳部屋和室中央で……『茶碗程の大きさの笊(ザル)~ツボに入れて振られた2つのサイ(サイコロ)の出目の和が‘’丁(偶数)‘’、‘‘半’’(奇数)を予想して賭ける違法の賭場……丁半博打』が行われていた!タケハラは、‘‘夜の仕事’’として‘‘賭場’’で用心棒の頭兼中盆をしていた。
 部屋の‘’盆ござ‘’と呼ばれる布の台(60cm×360cm)の周囲に、タケハラが審判兼進行役の‘‘中盆’’、お色気紅一点で肩をはだけていかにもワルそうな目付きの着物美女がサイコロを振る‘‘ツボ振り’’、‘’客‘’であるいかにもワルそうな豪烈会系組幹部達、いかにもワルそうな各組の若い組員がギャラリー役で、30名程のヤクザ者達が『丁半賭博』に興じていた……!
「はァ~いッ!ツボォ~ッ!」と叫ぶタケハラだ!
『はァいッ!ツボ被ります!』と叫ぶ‘‘助出方’’と呼ばれる進行役助手チンピラだ!
「入りますゥ!」といかにもワルそうな目付きの、片方はだけ肩見せの着物ツボ振り美女が叫び、右手に持ったツボにサイコロを2つ入れ、‘’盆ござ‘’に置いた。左手の平を広げて『カッコ付け』?あるいは『何もイカサマ(不正)はしてません!のゼスチャー』か?……次にツボ振り美女は、伏せたツボを手前と前方に押し引きを3回くりかえした……。
 とにかく、いちいちサマになるツボ振り美女だ!はだけた肩見せとサラシ胸元がいちいちワルのお色気を醸し出すツボ振り女に……実に下らない……客達は『カッコ付けテンション』アップだ!1枚のつもりが3枚、2枚のつもりが5枚と余分に木札を多く手にする客達だ!
「ハッた!ハッた!……さぁ!ハッた!……さぁ!ハッた!ないか!ないか!ないか丁半!」と、大柄で中盆のヤバそうな粗大ワルイケメン中年タケハラがワルカッコ付けで叫ぶ!いかにもワル美女のツボ振りと、いかにもワルカッコ怖男の中盆コンビが絵になる『丁半博打』だ!
シパッ!シパッ!シパッ!と、いかにもワル怖そうにカッコ付けて弾いて音が鳴るように小さな木札を盆ござの上に置くワルの客達だ!とにかく吐き気がする程にワルの世界の象徴……『賭場』での『丁半博打』だ!
『半ァ~ンッ!』『丁ォ~ゥッ!』『丁ォゥッ!』『半ァァ~ンッ!』『半ァ~ンッ!』と楽しいのか?‘‘客’’から威嚇し合っているのか?いかにもワルそうな声が張り上げられている!
「コマが揃いましたァ~ッ!」と中盆のタケハラが‘‘丁、半’’の‘‘コマ札’’を締め切る。
「勝負ゥ~ッ!」とタケハラが叫ぶ!
ツボ振り女がツボを上に真っ直ぐ持ち上げた!ツボを開いた!サイコロの目が見えるようにツボを退かしたのだ。
「シロク(4、6)の丁~ゥ!」
おぉ~ッ!アッハッハッハァ~ッ!と当たって喜ぶ客である幹部だ!
アァ~ッ!イヤァ~ッ!マイッタァ~ッ!イヤハハハハァ~!と外れたがカッコ付けで苦笑いの客である幹部だ!
 ………実に…………実に…………下らない……ヤクザビル6、7Fの30畳部屋だ。

 1F、2Fフィリピンパブ‘‘マガダンマガオマガ・マニラ’’

 ヤクザビル1F、2Fフィリピンパブ‘‘マガダンマガオマガ・マニラ’’だ。

 やはり、東京都内で一番大きな床面積を誇るだけあって、二十数名のフィリピン嬢ホステスがいた。
 客の全員がそうという訳ではないが……。訂正……まず『彼女は出来ないであろう……』というような冴えない男性客ばかりだ!そういう男性達のメッカだ……。
 ディスコラブソングが流れ、薄暗い照明の店内の天井の‘‘ミラーボール’’からは細かく砕かれたかのような光が、様々な方向に向かって眩しさを放っている……。  
 各コーナー式に分けられたテーブル席の1つ‘‘17番テーブル’’席で、ダサい男性客に寄り添い、色仕掛けで座る美しいフィリピン嬢がいた……。ロエラ嬢だ……。
 ロエラが同席の男性客の名前はダサオだ。仕事終わりの夕方、真っ先に駅で待ち合わせしての‘‘同伴’’で『恋人とデート気分』で開始から来店している……。
 ‘‘指名’’料金プラスが欲しいからなのに、ロエラから電話番号を訊かれ、携帯に電話が掛かって来た時は天にも昇るような気分のダサオであった!
『自分にも彼女が出来たぞ!』……カモにされてるのが、本当に分からないのだろうか……?あまりにも、おめでたい……冴えなさ過ぎる男性客のダサオであった。
 夕方から多くのテーブル席がダサい男性客とフィリピン嬢で埋まっている……。フィリピンパブ‘‘マガダンマガオマガ・マニラ’’客は全てダサい男性客ばかりだ。‘‘同伴’’割合は割りと高い……。
 ‘‘マガダンマガオマガ・マニラ’’で働くフィリピン嬢達は、出稼ぎをして本国の家族に送金するために借金をして日本にやって来ていた。
『半年もすれば借金など、すぐに無くなるヨ……』という話の筈なのに、稼ぎの多くをピンハネされて、僅かな送金をしたら手元には幾らも残らない……。
 ロエラは豪烈会系ヤクザ悪徳ブローカーに引っ掛かり、働いても働いても思うように借金を返せずにいた。母国を離れて日本に来て辛い思いばかりだ……。
『もう嫌だなペペラ……でも……逃げ出して、国の家族に送金するのに働く宛てもないし……どうしたらいいのペペラ……?』と泣いてばかりのロエラであった……。とにかく‘‘ピンハネ’’がヒドくて、もう逃れたくて堪らなかった……。自由の身になれる‘‘おカネ’’は、やはり、魅力的なワードであった。

 もう1つ‘‘自由になれる方法’’があった……。それは『‘‘日本人男性’’を捕まえる(結婚)』……ことであった……。客で来た日本人男性客に楽しい時間を提供して、自分を指名してくれる‘‘指名客’’を作り、自分を好きにさせて親しい関係になり、結婚に持ち込めば、借金を背負ってくれる……ということだ。
 が、いくら自由の身になれるからとはいえ、好きでもない男と一緒になるというのは『魂を売る』に等しく、借金よりも苦痛であった……。
 とにかく、フィリピンパブに来るのは‘’冴えない男性客‘’ばかりで、『まず一生、独り者であろう……』『この男とセックスするのは生理的に無理』という独身男性ばかりだった。
(「他に……ワタシのことを大切にしてくれる素敵な日本人の男性客……来てくれないかなペペラ~!」)とダサオに寄り添い色仕掛け接客のくせに‘‘願い’’はあるロエラであった……。
『男は顔じゃない!ハートさ!』とよくいうが、それなら人柄ということになるだろう。つまり『ブ男でも一緒にいて楽しい』か?……ということになるが……そういう日本人男性は、意外にも他人が羨むような美女を捕まえるもので、フィリピンパブには来ない……。
 ダサオだが……とにかく頭の回転がトロくて、話しも出来ずクソつまらなくて、誰も相手にせず、誰かと趣味や娯楽の楽しみを分かち合うことも自発的に求めずに、仕事以外の時間は何もない孤独な男性だ。
 ここに来るのは、自分からは何もしようとしないくせに、一応『女性には出会いたい』……という‘‘願い’’だけは人並みな、とにかく冴えない(風貌と人柄)男性ばかりであった。
 冴えない日本人男性は『フィリピン嬢は‘‘借金’’という‘‘人質’’に縛られているために‘‘ハードル’’が低い』という彼女達の現実に‘’一縷の望み‘’を託し『フィリピン嬢のとの結婚』を目指しての‘‘同伴’’通い来店だ……。
 フィリピン嬢のロエラから見たらダサオは『女性に縁がなく、オンナ遊びもして来なくて、仕事勤めは真面目で、自分の借金を背負うために一生懸命に働いてくれるのが、ほぼ確実』である……そこが唯一の取り柄であるくらいだろう……。一応、合格点だ。
 が、やはり風貌と人柄があまりにも冴えないさすぎる。『カネのため』と割り切っての接客なら構わないであろうが、やはり、冴えなさ過ぎる日本人男性と結婚するのは苦痛で堪らず、どうしても踏み切れなかった……。
(「何ンとかして日本人男性捕まえなきゃ(結婚)ペペラ~!でもォ~いくら苦しいからといって、ここまで‘‘冴えなさ過ぎる’’日本人男性はいないよペペラ……絶対に無理だよペペラ~……でも……ワタシのコト……想ってクレてる……もう~この人で諦めとくしかないのかな?ペペラ……ワタシには‘‘救いの素敵な神様ヒーロー’’なンて……現れるコトはないのかなペペラ……」)と‘‘願い’’ながらも、自分に好意を持ってくれる男性客がいることを確認出来るのは満更でもなく、ロエラにとっては‘‘幸せな一時’’なのかも知れない……。
 ダサオは必死であった。女性は、まず自分を性的対象に見ない……。ダサオの人柄は『とにかく~クソつまらない』……誰にも飲みに誘わない孤独な独身男性だ。
(「俺はモテないから嫁さんも、もう、モラえないのかも知れない……『フィリピン女性はカネ目当てに日本人男性を捕まえる……』と聞いたコトがあるが……いいじゃないか!……目の前のロエラちゃんと一緒になりたい!」)と切なくて、ささやかながらの‘‘願い’’の‘’幸せな一時‘’であった。
 広い店内の、各コーナーの接客席では、冴えない男性客とフィリピン嬢の間ではチッポケながら‘‘探り合い’’……が繰り広げられる‘‘幸せな一時’’であった……。

ヤクザビル前
 ヤクザビル6、7Fの‘’賭場‘’での『‘‘丁半博打’’の実に下らない‘‘賭場’’』と1、2Fフィリピンパブ‘‘マガダンマガオマガ・マニラ’’の『冴えない男性客とフィリピン嬢のチッポケながらのささやかな幸せな一時』を蹴飛ばし散らす出来事が起きた!
 数えきれない程の台数のパトカーのサイレンの鳴り響くが近づいて来て、辺り一面が回転灯の赤色に染まり、異様な空間に変わった。
十数台のパトカーがやって来た……!
3台の特殊警備車がやってきた!1台8人ずつの特殊隊員計24名が降りて、ヤクザビル入り口から突入だ!3Fヤクザ不動産、4Fヤクザ金融、5Fヤクザ事務所、6、7F組長宅&賭場に向かう!
 特殊隊員がビル入り口ドアを開けるとヤクザ者が『ブチ殺したるワァ~!』と何故か?関西弁で罵り‘‘チャカ’’を撃って来た!
バン!バン!キャン!バババン!キャキャキャン!バババン!バババン!キャキャキャン!とヤクザ者の‘‘チャカ’’射撃音と特殊隊員のMP-5サブマシンガンの3発バースト射撃音の交錯と排薬莢落下音が入り交じった!
 特殊隊員の射撃により簡単に血煙を上げて吹き飛ばされるヤクザ者だ!隊員達は次々に階段を上がって行き、‘‘チャカ’’を撃ってくるヤクザ者を射殺して3、4、5Fに突入制圧しながら6Fまで上がり、賭場への突入待機だ!
警察バスも2台やって来て停まった!警察バスのドアが開いた!1台20名ずつ2台で計40名の機動隊隊員達が棒丈を手に降りて来た!
ゴタゴタココタタゴダガタコ!と半長靴の靴音を立てて、アスファルト地面を踏み鳴らして、40人程の棒丈を手にした機動隊員達が降りてきてヤクザビルの前に並んだ!
バパラララララララァァァァァァ~ッ!とエンジン爆音を轟かせて、ヤクザビル屋上十数m上空に警察ヘリコプターが飛来した!ヘリは静止ホバリングし、側部ハッチが開けられ‘‘ファストロープ’’が投げ垂らされた!すぐに特殊隊員が次々と8人‘’ファストロープ降下‘’した!
ブルバァウワァァァァァァァァ~!とエンジン騒音が遠ざかる1機目のヘリだ!8名は、神業のような素早さで、屋上枠にロープを結び着け縁に立った。
バパラララララララァァァァァァ~ッ!と新たにエンジン爆音を轟かせて2機目のヘリが機飛来して静止ホバリングした!ファストロープが投げ垂らされ、8名の特殊隊員が次々とファストロープ降下した!
ブルバァウワァァァァァァァァ~!とエンジン騒音に変わりが遠ざかる2機目のヘリだ!
 屋上に降下するや、2機目の8名も屋上枠にロープを結び着け縁に立った。16名『‘‘ロープ懸垂降下’’突入準備よし!』だ!彼等は特殊急襲による制圧が任務の…‘‘SAT’’…警察特殊隊員達だ!まるで現代版忍者だ!
 1F入り口から階段を駆け上がりながら、制圧しながら8名の特殊隊員が上がって来た。6F‘‘賭場大部屋’’の開き扉の両脇に、4名ずつ8名でスタンバイ『突入準備よし!』だ!6F賭場入り口の開き扉を1名がハンマーで叩き倒した!
「ピン抜き!」と突入リーダー隊員が叫ぶ!数名の隊員が‘‘閃光手投げ弾’’の安全ピンを抜いた!
ピン!ピン!ピン!ブジィジィ~!と音をさせて安全ピンが弾け飛び導火薬が燃焼を始めた!
「投げ!」と突入リーダー隊員が叫んだ!‘‘賭場’’大部屋の中に‘‘閃光手投げ弾’’が放り込まれた!
 ビル壁面では、走るようにロープ懸垂降下する特殊隊員達だ!
バァン!バン!バァァ~ン!と数発の‘‘閃光手投げ弾‘’が破裂し目の眩むような光量を発しての爆発が起き、大部屋一杯に白煙が広がった!『突入!』と特殊隊員達のレシーバーに無線が入った!突入‘’GO’’サインだ!
バァダシャチャァァ~ン!とガラスの割れる音が響き渡った!
 大部屋内のヤクザ者達が麻痺し固まっている隙にガラス窓を蹴り破り、4名の特殊隊員達が中に踊り込み脇ホルスターから9㎜拳銃を抜き構えた!
「警察ァ~ツッ!動くなァッ!」
バァン!バァ~をバァァン!と拳銃の射撃音が交錯した!、マズルフラッシュの閃光が放たれ、炸薬燃焼ガスの黒煙が白煙の中に一瞬にして混ざり込み、あっという間に大部屋全体に広がった!チャカ(拳銃)を突入隊員に向け発砲したヤクザ者への正当防衛射撃だ!ヤクザ者は後ろに吹き飛ばされ、背中から倒れた!
 ヤクザビル入り口からは機動隊員が20名が、棒丈を手にヤクザビル3F、4F、5F、6Fの、それぞれの階入り口に向かい上がって行った。特殊隊員の突入制圧後にヤクザ者達を拘束するためだ。
 第二次世界大戦に敗れた日本国は『不戦の誓い』の国民性の国となった。何もかもが『不戦の誓い』……。自身を守る為、誰かを守る為にも戦うことに対しても『不戦の誓い』だ……。例え相手がならず者でも、銃器の使用を世論が許さない国となっていた。
 その国民性は警察官の意識にも影響していたであろう。警察官は『拳銃を発砲しない!』が常識であった
   
 72年の『浅間山荘事件』では、多数の死傷者を出す悲劇が起きた。強力な銃器を持ったならず者に対しても、急襲する術を持たない警察……。信じられないことに、籠城する者達がライフル銃を所持しているのに、自動小銃も携行していなかった……。
『撃ってくるまで撃ってはいけない』正当防衛射撃をしない……警察官の人命は軽視されていた……
 また、同72年にはミュンヘン五輪事件もあり、世界的に‘‘警察特殊急襲隊’’の必要性が認識されたのであった……。
 国内外の悲劇が教訓となり、今は違う!銃器を反社会的組織が密輸で入手しているのは当たり前の時代だ!凶悪性が高まり『銃器を持ったならず者を特殊急襲により制圧』する為の‘‘警察特殊隊’’が編成された!
 当然、ヤクザ者が警察官に銃器を向けたら、殺傷力の高い9㎜弾による問答無用の正当防衛射撃で制圧(射殺)となるのだ!
(「ゥゥ??」)とさらしの中、着物の袂から‘‘チャカ’’を取り出したタケハラと‘‘ツボ振りオンナ’’だ!
 2人は突入隊員達に‘‘チャカ’’を向けようとした!
「動くなァッ!チャカ(拳銃)を下に置けェッ!!オカしな真似したら正当防衛射撃するッ!!チャカを床に置けェッ!!」と隊員達が叫ぶ。
 撃ち殺されたヤクザ者を見て、しばらく固まっていた2人だったが、大人しく‘‘チャカ’’を盆布の上に降参して両手を差し上げた。
 応援の機動隊達数十名がなだれ込んで来た!ヤクザ者達も怖じけ付き、握っていたドス(短刀)を畳の上に置いた。チャカやドスを置いたのを確認するや機動隊員達はヤクザ者達に襲い掛かった!
バンドォダァン!スバキン!チバァン!ダァン!と激しい打撃音が響き渡った!無抵抗のヤクザ者達を棒丈で叩きのめしだした。半長靴や膝でヤクザ者達を蹴りまくる過剰防衛キ⚪ガイ機動隊員か?
 チャカやドスを持っていたヤクザ者達の不測の行動(凶器を隠し持つ可能性が高い)を抑え、自身を安全にするた為に、床に倒し、逆らえないようにダメージを与えて大人しくさせるためだ!
 ボコボコにされ、制圧される、威勢だけは一丁前のヤクザチンピラ達だ。
『何ンじゃ!コラァ~ッ!』
『離せ!つッてンだろがァ~ッ!』
『さわンなやァ~ッ!タコ(Octopus)がァ~ッ!』と意気がって悪態をつくヤクザ者達だ!
「オドレがマッポじゃなきゃあ~ッ!八つ裂きじゃあ~ッ!こンバカたれがァ~ッ!」と騒ぐタケハラだ!
「何処触ってンだってぇ~のォ~ッ!いやらしいンだよォ~ッ!どうせ‘‘素人’’とシタことねェ~ンだろがァ~ッ!この『いかにも筋肉バカ』野郎ォ~共ォがァ~ッ!」と完璧に、ワシ掴みにされて胸を揉まれてるかのように、羽交い締めにされている‘‘ツボ振り女’’だ!女の不測の行動を抑えるためか?機動隊員はは完全に役得だ!
ブッ!ブブッ!トゥペェ~ッ!と、音を立てて、片っぱしから機動隊員に唾を吐き掛けまくっているツボ振り女だ。

ジョビト『いとしのエリー』

BGM代わりにお聞きください……
1、2F‘’フィリピンパブマガダンマガオマガ・マニラ‘’
 ‘‘不法就労摘発’’が始まった!制服警官十数名と、紺色ジャンパーの法務省外局入国管理庁管轄の‘‘入国警備官’’十数名の、計三十名近くが入り込んできた!
 入国警備官は『不法の入国、滞在、就労の外国人の情報収集や、強制捜査や身柄の拘束(逮捕)』が出来る。OT区内警察と合同でフィリピンクパブ‘’マガダンマガオマガ・マニラ’’への‘‘不法就労の緊急摘発’’だ!
 入国警備官の有田は『夕方、開店したら不法の就労、滞在のフィリピン嬢を逮捕せよ』との緊急命令を受けての急行だ!。つまり『シュワ知事が来る前に‘’店の掃除‘’(不法滞在、就労外国人を‘‘逮捕’’せよ!)』ということだ。
「はぁ~いッ!Gメェ~ン!Gメェ~ン!(入国管理庁入国警備官)ミュージック止めてもらえますかァ~ッ。」と叫びながら身分証を差し上げ示して、入って行く入国警備官有田達十名だ。制服警官十数名は合同摘発のOT区内警察の制服警官上野達だ!有田は令状を経営者に見せた。店内ミュージックが止められた……。
シ~ン!と静まりかえる店内だ。照明が点き、店内が明るくなった。
「ハァ~イ動かないでェ~」と言いながらフィリピン嬢達に近づくGメン達だ!
「ワタシ~日本語ワカラなァ~いペペラ!」
「パスポート見せて欲しいだけなのォ~!確認したらすぐに帰りますゥ~!」
「見セマスゥ~ペペラ!」日本語分からない筈が都合良く分かるようでポーチを開けるフィリピン嬢だ。
「ビザ見せてくれるゥ~?ナイのォ~?」と言いながらフィリピン嬢達にポーチを開けさせてパスポートとビザカード(身分証明)を出させて、手に取り開き見るGメン達だ。
「『日本語ワカラナァ~イ!』て嘘じゃ~ん!素直にしないと引っ張ってくよォ~!あれェ~?‘‘観光ビザ’’なの~?‘‘オーバーステイ’’だねェ~!」と語尾を伸ばし完璧にフィリピン嬢達を見下した喋り方だ。
パン!パン!と手を叩きながら有田は叫んだ。
「はァ~いッ!お客さん達聞いて下さァ~い!入国管理庁の‘’Gメン‘’です~!今日はァ~帰ってもらえますかァ~!ご協力頂けますかァ~!すみませんねェ~!」と有田が店内に叫んだ。
 ダサオを含めて冴えない男性客達は、フィリピン嬢達に挨拶もせずに席を立ち上がり、出口に向かって歩き出した。
(「どうも、[ワケ有り中のワケ有り]らしいゾ……!」)と‘‘不法~滞在、就労’’の摘発現場を目の当たりにして、フィリピン嬢への恋が一気に冷める男性客達は、次々と席を立った……。
 恋の女神から見放されて孤独だった、冴えない男性客達の前に、やっと現れた恋愛対象女性‘’フィリピン嬢‘’達……。ほぼ『初めて出来た彼女』達は~法律違反の~ワケ有り中のワケ有り~とわかった……。彼女達がピンチを向かえているのに男性客達は、もう……知らぬ顔だ……。
『もう、関り合いになりたくないからに見捨て行く』ことに決めた‘‘冴えない男性客’’達だった。次々と入り口に向かって歩き進み、後を振り返ることなく去って行く……。全員が開いたままの扉を出て帰って行った……。
『カネになる位しか取り柄のない冴えない男性客』でも、実際に、自分が見捨てられた事実を突き付けられて、絶望するフィリピン嬢達だ。
 が……一人だけ戻って来た男性客がいた……。
「あれ?何?」とGメンの有田が聞いた。
「いやァ~!忘れ物してしまいまして!」と冴えない男性客ダサオだ。
「どこにですかァ~?」少しイラつく有田だ。
「えェ~?あれェ~?あっちに忘れたンだなァ~?」と自分の座っていた17番テーブル席ソファーコーナーを通りすぎて奥に向かって歩き進むダサオだ。
(「ボクが引き付けるから隙を見て逃げるンだ!」)と自分の座っていた‘’17番テーブル席‘‘を通り過ぎる時に、ダサオはロエラに目くばせをした。
(「……ッ?……ダサオさん……」)と驚くロエラだ!普段のトロくて話も出来ずクソつまらなくて冴えないブ男のダサオとは別人だ!頭をフル回転させ『勝手に思い込んでいる‘‘大切な女性’’』を逃す術を必死に探している!ロエラにとって‘‘救いの素敵な神様ヒーロー’’が現れた!
 歩き進むダサオに警備官や警察官達の注意が一斉に向かった。
キラン!と目を光らせて、ダサオの目くばせしたフィリピン嬢ロエラを見据える制服警官上野一人だけだ。
 ダサオは、今まで座っていたソファーコーナーと全く反対の方向の、店の奥にあるコーナーに行き、わざとらしい演技を始めた。『ある筈のない財布』を探し始めたのだ……。ダサオとGメン有田のやり取りが始まった。
「あれェ~?財布~無いぞォ~?何処なンだろうかァ~?」
「すみません!帰って欲しいンですが~!」
「えぇ~?さっき来たばかりでェ~財布がない~」
「え~?そこに座ってたンですか~?」とイライラする有田だ。
「はい!でも、一体何故なンですかァ~?いきなり『帰れ』言われても~理由はァ~何ンなンですかねェ~?どうしてですかねェ~?」
「お答え出来ません!とにかく、お帰り頂けますか?」
「えぇ~?だってさァ~!」
「今日はァ~!帰ってもらえますかァ~!」
「今さっき来たばかりです……『帰らない』って言ったらどうなりますかかァ~?」
「‘‘公務執行妨害’’ですねェ~強制的に排除しますよォ~」
「いやァ~!じゃあ……『ボクはココを動かない』て言ったら……?」
「妨害してるンですかァ~?」
「財布を探してるンですよォ~」トロいダサオの割りには、長引かせている。Gメン達や制服警官達は、完ペキにダサオに注意を引き付けられていた。姿勢を低くしてソファー席を離れるロエラにノーマークだ!
「ちょっとォ~!来てくれますかァ~?」と店内の隅で、ダサオを見ていたボーイを呼ぶ有田だ。ハ~イ!と言いながらボーイがやって来た……。
「何ンですかね~こちらのダンナさんが、この『ソファーコーナーに財布忘れた』と言ってるンですが~」
「あなた拾いましたかァ~?返して下さいよォ~!‘’拾得物横領‘’になりますよォ~」とダサオだ!
「何ィ~言ってやがンだァ~!アンタあそ(この17番テーブル席でしょ?)ッ?あ痛ェッ?」とダサオに言葉を遮られ‘’指し示す人差し指‘’にシパン!という音と共に手の平で叩かれての痛みを感じたボーイだ!
「嘘つかないで下さいッ!僕はこの席に座ってたンです!」とボーイの言葉を遮って言うダサオだ!
「痛てぇなこの野郎ォ~!てめえはァ17番テーブル席だろうがァ~ッ!」
「途中で代わったでしょう!」
「ざけンなァ~ッ!てめえ~『今さっき来たばかり』て言ってたじゃないかァ~ッ!」と言いながらダサオの胸を手の平で押すボーイだ!ダサオの上着の胸ポケット財布の膨らみを確認した!
「てめえ~ッ!胸ポケットに財布入ってンじゃねぇかァ~ッ!ブチのめされてェかァ~ッ!殺すぞォ~!」
「何ンですかァ~ッ!脅迫ですよね!‘‘殺すぞォ~!’’て脅かしましたヨ!聞きましたヨネ~?」
「この野郎ォ~ッ!」とダサオに殴り掛かろうとするボーイだ!
「やめなさい!」と有野達警備官数人が割って入る!ダサオに掴みかかろうとするボーイを数人掛かりで羽交い締めだ!
「訴えますよォ~!冗談じゃない!今!見ましたよね!証言して下さいね!お巡りさん!」
「自分は警備官です!警察官ではありません!」と有田はダサオにマヌケな返答で、構ってしまっている……。
「放せェ~ッ!てめえみてぇなキモい客達にヘコヘコしててェ~マジやってらンねかったンだよォ~!鏡ィ~見て来ォ~い!不細工なツラしてブクブク太りやがった暑苦しい豚がァ~ッ!てめえなンぞォ~‘‘ジャパユキ’’もォ~マジ相手なンかしてくれてねェ~ンだよォ~ッ!気付いてネェのかァ~ッ?カネ払ってくれたらテメェ~なンぞキモスに用は無ェ~ッてのォ!色気付いてンじゃねェぞォ~ッ!」
「何ンですかァ~ッ!‘‘ジャパユキ’’て!フィリピン嬢達を蔑むンですかァ~ッ!」とボーイに悪口を言われても平気であったが、例え『カネのため』であろうが自分に優しくしてくれるフィリピン嬢ロエラ達を‘‘ジャパユキ’’と侮辱されて、本気で怒りだしたダサオだ!二十数名のフィリピン嬢達は、ボーイを睨んだ。
「この野郎ォ~ッ!」と叫びながらボーイに突進していくダサオに、警官と警備官は数人でダサオの前に立ち塞がった。完璧に警備官、制服警官達の注意を引いているダサオだ!
 初めて女性に恋をした……。恋する女性を悪く言われると怒りを感じることを初めて知った……。初めて自分に寄り添ってくれた女性が危機に陥っている……。初めて恋した女性を守りたくて……。ロエラを逃がすために必死なのか?ボーイに対して抗議の行動なのか?何ンとかロエラを逃せそうだ!
 が……?
キャアァァァ~ッ!とフィリピン嬢の悲鳴が店内に響き渡った。
「おっとっとォ~!何処へ行くつもりなのォ~?」と入り口から逃げようとしていたロエラの手首を掴みながら制服警官上野だ!
「チョッと~トイレにィ~行カセて~ヨォ~ペペラ!」と苦しい嘘のロエラだ。
「トイレは奥でしょォ~!ダメでしょう~!逃げようとしちゃァ~!」
「私シィ~借金シテ日本にィ来たァ~!今ァ帰さレたらァ借金ダけェ残るゥ~見逃してェ~ペペラァ~!」と目が真っ赤で涙が溜まっているロエラだ。
「コラ~?泣き落としが通じると思ってるのカイ?」
「アタシ~本当に辛いよぉペペラァ~!」
「ハァン!……ふザケやがッてェ~ッ!どうせ日本人の男ォ~捕まえて(結婚)カネふンだくろォ~ッてンだろォ~?結婚しちまえば『ずっと日本で暮らせてェ~こっちのモノだワ~ペペラァ~』てなァ~!」と完全にロエラに嫌悪しかない上野だ。
『どいて下さいッ!』と店の奥でモメていたダサオの声がした!警官が横に退くと、ダサオが入り口近くの上野とロエラの所に駆け寄って来た。
「ロエラちゃんは僕の婚約者です!見逃して下さいッ!お願いしますッ」駆け寄って来るなり、必死に上野に叫ぶダサオだ!ロエラはダサオがブラッド・ピットに見える程に嬉しかった。
「フフン!……ったく……アンタねェ~コイツ等ァ~は‘’カネ‘’が目当てなのォ~よォ~てのッ!」と上野はダサオを見下し鼻で笑い言った。
「だから何ンなンですかァ~ッ?初めはそれがキッカケでもイイじゃないですかァ~ッ!見て下さいッ!」と胸ポケットから折り畳み財布を取り出して開き、ロエラと一緒に写ったポラロイド写真を見せるダサオだ!
「見て下さいッ!彼女です!僕の婚約者です!大切な人なンです!」
「バカじゃないのォ~?商売で客の皆ンなと写真を写してンだろ!……つうかァ~アンタ財布失くしたンじゃないのかァ~ッ?」と見え透いた魂胆のダサオにだんだんイラつき語気を荒め始めた上野だ。
「胸ポケットにありました!」
「嘘ォ~ついて妨害してンだろォ~ッ!狂言かァ~あんたァ~?公務執行妨害だァ~ッ!」
「失くしたと思ってたンです!」
「もうイイ!帰りなさい!アンタもパクってやってもイイんだよ!」
「ロエラちゃんは僕の婚約者です!見逃して下さいッ!」と必死に叫ぶダサオだ!摘発にかなりの妨げになっている。
「ロエラちゃんは僕の婚約者です!見逃して下さいッ!お願いしますッ!」ダサオは床に土下座して額を擦り付けて懇願を叫んだ!
「まあ~『初めはカネ目当て』で愛に変わるってあるかもネ……」と上野だ。通じたか?
「分かってもらえますか」とダサオは上野を見上げて喜び始めた……と、思いきや……。
「何ンてェ~!……分かるワケねぇだろォ~が!ワハハハァ~!腹ァ~痛てェ~ヤァ!ワハハハハハハァ~!バァカァ~野郎ォ~!」と、上野は怒りを通り越して、あきれ果てて笑いだした。ダサオを蔑み始めた!
「ウケるゼェ~!イイ加減にしろよテメェ~!コイツ等ァ~『初め』だけでなく『一生』アンタ達みたいなダサい男~ダサ男のカネが目当てなのよォ~!何ィ~テメェ~みてぇなキモスが調子コイてンだァ~!」と蔑む上野だ!続けた!
「だからァ~ッ!わかってンですヨォ~!それでもイイじゃないですかァ~ッ!」とダサオは折角見つけた恋?……実は違う……としても、どうしても否定したくないのだ。
「うるせェバァ~カ!テメェ~みてぇなキモスのダサ男ォ~!カネくれなきゃセックスしてくれるオンナなンているワケねぇだろォ~がァ~!」と涙ぐむダサオを徹底的に蔑む上野だ。更に続けた。
「カネ目当てで~我慢してお前とセックスしてくれてもォ~カネ貰った後オンナはァお前みてえなキモスにはヤラせねェ~ンだってのバァ~カァ~野郎ォ~!ワハハハハハハハハハハハハァ~ッ!」と爆笑の上野だ。
「だからァ~ッ!それでもイイじゃないですかァ~ッ!」と意を決したように叫びながら立ち上がるダサオは、近くのソファーコーナーに向かい、置いてあるビール瓶の首を掴むと瓶底をテーブル叩き付けた!
チャンガァキャ~ン!と店内にビール瓶の割れる音が響いた!瓶の底が破損して、割れ裾が切れ味の鋭い‘‘凶器’’と化したビール瓶首を握り、上野に向けるダサオだ!警察官に‘‘凶器’’を向けて威嚇している……。
 ダサオはロエラのためなら命懸けらしい……。真面目に働いて来た勤め先は、間違いなく解雇されるであろう。ダサオは恋した女性を危機から救うためなら、人生を棒に振っても構わないらしい……。
(「エェッ?ダサオさん?」)とロエラは驚いた!

ダサオを爆笑して馬鹿にしていた上野の顔から笑いが消えた……。

「連れて行ってくれェ~」と言いながら上野は掴んでいたロエラの手首を放した。
「来なさい!」と言いながら、ダサオの目の前を、部下の警察官がロエラを手首を掴み17番席に連れて行った。
 上野を止めたところで、代わりの警察官がいる。ダサオの行動は無意味だった。

「この野郎ォ~!その瓶でェ~どうするつもりだバァ~カァ~野郎ォ~!」

シャキィ~ン!と金属音を立てて、上野はスチール警棒を伸ばすと構えた!瓶首を握り、割れた鋭い瓶裾を上野に向け構えるダサオだ!

 ‘’凶器‘’を構えるダサオと、スチール警棒を構える上野だ!上野は摺り足で少しずつダサオとの距離を詰める。

プヒュウゥン!と風切り音がした!ダサオが割れビール瓶を上野の顔の数cm手前を振り払ったのだ!ロエラを逃がそうと『殺るか?殺られるか?』の命懸けは本気らしいダサオだ……!
「どいてください!……ロエラちゃんを見逃して下さいッ!……お願いですッ!」と真剣な不細工ダサ男のダサオは、17番席に向かう通路をジリジリとにじり進む……。握ったビール瓶首の鋭い割れ裾を上野に向け続け……。

 上野は目を見開き、頬から血の気が引き温度が下がるのを感じた。ダサオから後ずさり、少し距離を取った。‘‘凶器’’を構えたダサオを睨んだまま、スチール警棒の先を床に向けて持ち直し、しゃがみ、先端で床を突いた!
コキキィ~ン!と金属音をさせてスチール警棒を縮めると、腰横ホルスターに収めた。
 今度は反対側のホルスターから、38口径(9.067㎜)回転式拳銃を抜いて握り、銃口をダサオに向けて構えて拳銃を向ける……『撃つぞ!』の警告だ!

(「ハッ?……嘘ォ?……ダサオさん……」)と、17番席に座るロエラは自分を逃すために命を懸ける男性がいることを知り、驚いた……!警察官の顔に向けて刃物を振るい、凶器を捨てない……。
 治安の悪いフィリピンなら、直ぐに射殺されるであろう……。このまま続けたら、日本であっても射殺されるであろう。
『……ヤメテ……ヤメテ……』とロエラは呟きだした。だんだんハッキリと声に変わった。
「ダサオさん……ヤメテ……もういいよペペラァ~撃たれるよペペラァ~殺されるよペペラァ~お願いヤメテェ~!ワタシのためにィ~ダサオさん撃たれるよペペラァ~……ダサオさァ~ん!ヤメテェペペラァ~!……ダサオさんヤメテェ~!」だんだんハッキリと声になった。
 どう見ても、この日本人警察官は拳銃を向けての警告にダサオが従わなければ、正当防衛射撃をするであろう……。
「瓶を捨てなさい!撃たれたくないなら捨てなさい!ザケやがッてェ~ッこの野郎ォ~ッ!パクられるかァ~!撃たれてェ~かァ~?バァ~カァ~野郎ォ~!」と言いながら上野は、拳銃の撃鉄に親指を掛けた。
チャキン!と金属音をさせて撃鉄を引き起こした!ダサオの胸を狙った。38口径拳銃の引き金を引く人差し指の力を入れ始めた。
「ヤメテェ~ッ!」とロエラは叫んだ!その時だった!
「オわぁ~ッ?危ネェ~だろォ~がァ~!バァ~カァ野郎ォ~!」上野が叫んだ。有田が間に割って入って来たのだ。
「あのさァ~!お前って馬鹿じゃないのォ~?そのビール瓶さァ~捨てなってェ~パスポートやビザを見に来ただけなンだから~別に捕まえに来たワケじゃないンだヨ~!だからァ~帰りなさい!見逃してあげるから~」とダサオに言う有田だ。誰が聞いても嘘なのに、騙してパクろうという魂胆みえみえの有田だ。
「ロエラちゃんを返してくれますかァ~?」と瓶ビールを握る手が下がり始めたダサオだ!
「当たり前だろう~おォ~い!そのコ連れて来てェ~」と有田は通路を振り返り、17番席に座ったロエラと警察官に手で合図した。ダサオは17番席の方を見た……。
 背筋を伸ばして、胸を弾ませて、息を深く吸い込み吐き出して、胸を弾ませて、ダサオの方に顔を向けているロエラだ……。開いた瞳孔が煌めく美しい瞳で、ダサオを見つめているロエラだ……。心の底から男性を想う時の女性の目でダサオを見つめているロエラだ……。外見でなく……カネになるか?……でもなく……楽しい人柄か?……でもなく……人間としての中身にときめきを感じて、ダサオという男性を見つめているロエラだった……。
 ダサオには人生で初めての経験であった……。自分の恋する女性が、自分のことを目に焼き付けようと見つめてくれている……。人生初めての経験であった……。
 その時の……自分に向けられた女性の瞳の美しさを目にするのは……。ダサオとロエラは見つめあった……。ダサオの割れ瓶首を持つ腕の力が少し弛んだ。
キラン!と有田の目か光った!ダサオの瓶ビールを持つ手が更に下がるのを確認するや、ダサオに飛び掛かろうと踏み出すための歩幅を広げ、バネを作るように身体を沈めた有田だ……!が……?
「オワァ~ッ?」と間抜けな声を上げ、バランスを崩し、その場に留まった。
「おォ~いッ!ザケろテメェ~ッ!何ィ横取りカマそうとしてンだよォ~ッ?」と、今度は上野が有田の前に出た!アホ過ぎる2人だ!妨害しあっている?
チェッ!と舌打ちして、ダサオに飛び掛かるのを止める有田だ。
「俺はァこのダサ男パクって成績上げて‘’昇任‘’して‘‘昇給’’~貰うンだからァ!テメェ~警備官だろォ~がァ!ジャパユキをパクってろよォ~ッ!」と上野だ!
「警備官には‘‘警察権’’があってこのダサ男をパクってもイイんだよ!つうかァ~!お前が先に俺達が管轄のジャパゆきを横取りしたンじゃネェかァ~ッ!俺等ァ~だってパクって点数上げて昇給アップ~貰いたいンだよォ~ッ!お前等ァ~警察なンて証拠ねつ造してパクったヤツに濡れ衣着せて死刑にしてェ‘‘点数稼ぎ’’してェ~クソたくさん昇任昇給アップ貰ってやがるンだろォ~ッ!」

袴田事件

『治安と市民の生命、財産を守るために、事に臨んでは己の危険を顧みず職務の遂行にあたる』警察官が、悪質、重大、狂暴な犯罪を検挙……大手柄には‘‘点数’’が与えられ、昇任にプラスし、昇給に反映されるべきであろう……。
 が……警察官の中には『パクった者』の人命を軽視し、証拠を捏造してまで……『シロ(無実)の者をクロ(有罪)にして』の『点数稼ぎ(昇任→基本給上がる)』をした取り調べ官がいた……。
『点数稼ぎ→昇任→昇給→カネ』……カネのためには、人を死(死刑)に追いやっても、平気な人間性の取り調べ官がいた……。
『取り調べ官の‘‘功名心’’が冤罪を生んだ……』という言葉でマスコミは片付けるつもりか……?
‘‘功名心’’とは何ンだ?
『階級バッヂの線が増えて、警察組織内で鼻がたかくなる』……そんな理由で‘‘捏造’’をすると思うのか?‘’カネ‘’しか考えられないではないか!
‘‘点数稼ぎ’’→『階級が上がる(昇任あるいは号俸上がる)』→『給料が昇給する』→『生涯賃金~月給、賞与併せて~現在換算でいくら違ったのか?』……何故?マスコミは調べないのか?世論に知らしめない?
世論は何故?『警察官の功名心』で片付けるのか?
世論はニュース番組を見て『カネ!カネ!カネ!カネ!』言っているではないか……。
『カネ!カネ!カネ!カネ!』言うのなら『袴田事件の証拠捏造をした取り調べ官の貰った‘‘昇給額’’はいくら?か?退職金を含めて生涯賃金がいくら違ったのか?』何故黙っているのか?世論は知りたくないのか?世論は『カネ!カネ!カネ!カネ!』言うべきではないのか?
『いくらの‘‘繰り上げ昇給’’額のために無実の者を死に追いやろうとした』知りたくないのか?何故?世論は黙っているのか?
『‘‘昇進‘’が早まった!』という言葉だけで誤魔化されるつもりだろうか?
『捏造(虚偽)で掴んだ昇任(昇給→カネ)』は『嘘の昇給(詐欺?搾取?)』と同じではないか……で何故、世論は黙っているのか?

『高齢の袴田氏が旅立つ』のを時間稼ぎして引き延ばしているように思え、怒りを覚える……。世論を発して欲しい……。と共に、世論が黙っていることに、もっと怒りを覚える……。


『世論を発する』に一番簡単な方法は……
『俺達のジャスティス最終話-2』にアクセスして欲しいです……。
アクセス数が‘‘世論’’となり事を動かします……。

(注…筆者の怒りの主観)



「知らない人が聞いたら本気にすンだろォ~ッ!」
「本当のコトだろがァ~!つう~かァ~ッ!お前ェ~下手クソ……つうか~今ァ上手くいきそうだったろォ~がァ!撃つしかなくなったろがァ~ッ!」と言いながら、OT区内署制服警察官上野の横に並び、胸のホルスターから9㎜拳銃を抜いてダサオに銃口を向けて後ずさる入国管理局入国警備官有田だ。
「この豚みてえに醜いブ男のダサ男がァ~!瓶を捨てろォ!撃つぞォ~ッ!」と有田は後ずさりながら、にじり進ンで来るダサオに本性を見せ、9㎜自動拳銃を向けながら警告を叫んだ!
『ヤメテェ~ッ!ヤメテェ~ッ!』と女の悲鳴がクラブ内に響き渡った!ロエラの悲鳴だ!
「ダサオさん!ヤメテェ~!殺されるよペペラァ~!もういいよペペラァ~!ウゥ~ッ!ハウッ!アアァァァ~ッ!お願いしますペペラァ~!ダサオさんを撃たないでペペラァ~!アアアアァァ~ン!」と泣き出したロエラだ!
「ロエラちゃんを返してくれますかァァァァ~ッ!」と叫び、割れ瓶を有田と上野に向け続けるダサオだ。
「お前ェ~ッ!死にたいのかァ~ッ!この拳銃は口径9㎜だァ~!当ァ~たれェば胸には9㎜の穴が開くだけだがァ~!胸ン中ぁなンざぁ~グゥッチャグチャに掻き回されてェ~背中に空く10センチ(cm)位の大穴から噴き出されンぞォ~ゥ!プロレスラーだってイチコロだァぜェ~!瓶を捨てて跪けェ~いッ!」と本性丸出しの有田はクリント・イーストウッドにでもなったつもりだ!
「ダサオさん……ヤメテ……もういいよペペラァ~撃たれるよペペラァ~殺されるよペペラァ~お願いヤメテェ~ワタシのためにィ~……ダサオさァ~ん!ヤメテェペペラァ~!……ダサオさんヤメテェ~」だんだんハッキリと声になった。どう見ても、この日本人警備官は拳銃を向けて警告後にダサオが従わなければ、正当防衛射撃をするつもりなのが分かり過ぎる……。
「ロエラちゃんを返してくれますかァ~?」とダサオは諦めない!
「当たり前じゃないかァ~!結婚するンなら返すさァ~!危ないから‘‘割れ瓶’’を床に捨てなさい!」と有田はまた嘘をつく。
「本当ですね?」
「そうだよ本当だァ~!」と上野が割り込みだ!
「あったりメェ~よォ~ッ!本当だァゼェ~!ソイツのォ~クソ言う通りだゼェ~!こォ~のダサい豚野郎ォ~がァ~!」と上野が割り込みだ!続けた。
「『逃がしてやる』ってソイツのクソ言う通りだゼェ~……ンなワケねェ~だろォこんバァ~カァ~野郎ォ~!」とブルース・ウィルスにでもなったつもりで38口径回転式拳銃をダサオに向け続けている!
ヤメテェ~!ヤメテェ~ペペラァ~ッ!アハァァァァァァ~ン!アアァァァァ~ン!と叫び泣き出したロエラだ。
「てめえ~ッ!割り込むンじゃネェってのォ~ッ!‘‘点数’’稼ぎ野郎がァ~ッ!」と有田だ!
「うるせぇ~ッ!てめえ~入国警備官だろがァ~ガメついってのォ~!」
「警察官のお前が最初に、俺達が管轄の‘’ジャパゆき‘’捕まえて手柄ァ横取りしたンじゃねェかァ~ッ!」
「OT区内警察署と入国管理庁入国管理局との合同だろォ~がァッ!逃げようとしてたジャパゆき~捕まえてやったのに何ンだソノ言い草はァ~ッ!」
 ダサオが通路を数m前ににじり出た分、店内脇通路から出入口前通路への死角が出来た。薄暗い店内、斜め後ろから飛び掛かろうと、制服警察官数名がスチール警棒を手にし、身を低く忍び足での接近に、ノーマークのダサオであった。
「お前がトロいンだヨォ!」
「てめえ~ッ!ガメついンだァ~ッてのォ~ッ!」と、ダサオをそっちのけでケンカを始めてしまう、制服警察官上野とジャンバー姿の入国警備官有田だ……。自分をそっちのけで、手柄争いのケンカを始めてしまう上野と有田に、呆気にとられているダサオだ!
 横から、忍び足で近づく制服警察官数名だ!ダサオは‘’手柄‘’=昇給=カネ……にしか見えず『油揚げを拐うトンビ』というところだ。‘’⚪⚪官‘’というモノ達は、常に‘‘手柄’’を横取りすることを考えているのだろうか?
「お前ェ~警備官なンだろォ~ッ!いいから‘‘ジャパゆき’’パクってろよォ!」
「警察官のクセにィ~トロいだろォ!がァ~お前(はァ~!)ッ?」
ドサッ!ダタン!と床に重量あるモノが叩き付けられる音が店内に響き渡った!

忍び寄っていた2名の警察官がダサオを床に倒して床に叩き付け、腕を捻り上げて手錠掛けようとしている!ケンカを止め、我に返る上野と有田だ……。

『カクホォ~ッ!』(確保)と叫び声がした!
チャキチャキ~!と手錠が掛けられる金属音がした。

 上野の後輩制服警察官達がダサオを組伏せて、後ろ手に手錠を掛けている。‘‘オコボレ’’に授かろと、五、六人の制服警察官が集っている。警察官に凶器を向けた者をパクれば、かなり点数が高いのだろう!

 ‘‘手柄’’を横取りされて、ケンカを止め、我に返る上野と有田だ……。

アハァハァアハァァァァ~ン!と店内にはロエラの泣き声が響き渡っていた……。

ヤクザビル前

 一方……ヤクザビル前の路上では……。

 日も暮れて暗くなってきた……。ヤクザビル前の路上はパトカーの赤色回転灯

辺り一帯を赤色に染めて、異様な雰囲気を醸し出している。まるで映画のロケの世界にでも迷い込んだようだ!映画の中では、主人公ヒーローが、ここで登場するのだが……。果たして‘‘ヒーロー’’は登場した???
ピィリィピピピリリリィ~ッ!ピピピピィリリリィィィ~ッ!と警察官が警笛を強く吹き鳴らした!
「止まりなさいッ!」と叫び、赤色プラランプ棒叫んだを振りかざした……。と思いきや横に飛び退いた!
 大きな黒塗りのリムジンが‘‘KEEP OUT’’の黄色テープをブッ千切って、突っ込んで来たのだ!ビル前の警官や機動隊員達は『何ンだ!ヤクザ共の逆襲か?』と色めき立った!
タタダダダダダァァ~ッ!と機動隊員や警察官達の半長靴の足音が鳴り響き、駆け寄りリムジンを包囲した
 リムジンの前部左右ドアが開き、サングラス&背広姿の黒づくめの巨漢の白人と黒人の男性2人が降りて来た!白人男性が後部左ドアを開け、黒人男性が辺りを警戒して周りにバリアを張る雰囲気だ!
 ドアが開き、降りて来た人物に、包囲していた警察官、機動隊員達は驚きの声を上げた!
オオオオオオオオォォォォォォォォォォ~!と喚声が上がった!
『信じられねぇ~ッ!』『マジかァ~ッ?』『本当に来たァ~ッ!』と警官達は口々に声を発した。
 アメリカ合衆国アーノルド・シュワルツェネッガーカリフォルニア州知事……シュワちゃんであった……!巨漢の2人は‘‘バディガード’’というワケだ……!2人はリムジンのトランクを開けると、それぞれ肩にダンボール箱を一箱担ぎ、一箱を脇に抱えた……。2人計4箱だ。
 ダンボールを担ぎ、抱えた‘‘バディガード’’2人は、やはりフィリピンクラブ‘‘マガダンマガオマガマニラ’’に向かうようだ。路上に停められたパトカーを避けて歩き、歩道に上がり店に向かった。
 が……シュワちゃんは違った。真っ直ぐ歩いた……邪魔なモノは乗り越えて……。
 
‘’ラストアクションヒーロー‘’のように、パトカーの上に上ってしまうようだ。

「ヒィヤァ~!(よっこいしょ!)……オヲゥルドゥ!(ワタシもトシかナ~?)……」と思わず声を出すシュワちゃんは……年を食ってしまったようだ……。
 パトカー屋根に上がると赤色回転灯を踏みつけて歩き、赤色プラ破損させて、ランプをショートさせ火花スパークさせて歩いた。次々にパトカーの上を歩き、屋根の回転灯を踏みつけ破損させて火花スパークを散らしたシュワちゃんだ!
(「何ンで?避ければイイでしょ?ひょっとして‘‘シュワちゃん’’てバカなンじゃないのォ?」)と警官達は思いながら、言葉する者は誰一人としていなかった……。
「こンな所にパトカーを停めるのガ悪いンダァ~!」と言いながらパトカーの上を歩くシュワちゃん……。

 完ペキに間違っているのに、誰もがそれを‘‘当たり前’’と受け入れる他なく、苦情を発する者は誰一人といなかった……。

 ……だって……‘‘シュワちゃん’’だもの……。

 シュワちゃんは結局、計5台のパトカーの回転灯を破損させた……。



第6話-3に続く……