【re:】/『もう一度』


フィリピン
ルソン島中央部太平洋側
トゥポインティングエリア(架空)
注……‘‘トゥポインティングエリア埋め立て処分場’’はフィクションであり実在しません……
 ゴミマウンテン頂上に1人残されたセルズは途方に暮れてしまった。頂上からラモン湾の青い海を見下ろし、水平線の遠くから空を仰ぎ見た。ゴミマウンテンから見る空……。どこまでも青く広がる空に浮かぶ白い雲は、太陽の光を取り込み、涌き出る様に自ら光を放っている……。美しい……。いつまでも見ていたくなるほどに白く眩しく美しい雲だ……。

『心が奮い起たせてもらえるかもしれない』と青い空に浮かぶ白く美しい雲を見ていたが、逆に山を降りるのがイヤになりった。気持ちを切り換えて‘‘罰ゲーム?ビラ貼り’’任務に向かうためにオートバイのアクセルを回しエンジンを吹かした!セルズを乗せた軍用オートバイは、ゴミマウンテンの坂道を駆け降りていく。熱を帯びた凄まじい悪臭が前から身体に向かってくる……。
 かって、フィリピンの首都マニラ市内で収集された廃棄物(ゴミ)は、マニラの海岸地区の‘‘スモーキーマウンテン’’と呼ばれる‘‘埋め立て処分場’’に運び込まれていたが90年代半ばに閉鎖された。
 その後、ケソン市内の‘‘パヤタスダンプサイト‘’に埋め立て処分場は移転した。マニラ市内で発生する日量6000トンのゴミに悲鳴をあげる‘’パヤタスダンプサイト埋め立て処分場‘’……。
 処分場使用期間延命のために太平洋側の‘‘トゥポインティングエリア’’に埋め立て処分場が設けられ(注…架空)、日量数千トンのごみが運び込まれ埋め立て処分が開始された。
 搬入開始後何年間してだろうか……?あっという間に第1処分場は限界を向かえ、高さ50mのゴミマウンテンが出来上がった。数年前からは廃棄物は海沿いの‘‘予備埋め立て処分場’’への運び込みが始められた。やがて、第2ゴミマウンテンが出来るのだろう……。
 時を同じくして、‘‘パヤタスダンプサイトスラム’’の住人達…数万人も移り住んで来た(フィクションです……)。ゴミマウンテンと‘’予備埋め立て処分場‘’の間には‘‘トゥポインティングエリアスラム’’が形成された……。

 ゴミマウンテンからラモン湾沖を見るにはリゾート地の様な美しさだが、眼下には数万人が暮らす貧困層住人のバラックが無秩序に建ち並んでいる……。
 ラモン湾に浮かぶポリロ島の形が‘‘靴’’に似ていることから、‘‘靴のつま先が示す位置‘’にある海辺のスラムは、いつしか‘’トゥポインティングエリア‘’と呼ばれる様になっていた。
 数万人の住人の大部分が‘‘スカベンジャー‘’と呼ばれる人達である……。廃棄物の中から拾い出した有価資源物等を換金し、日々の生活費にして暮らす人達のことである。処分場にパッカー車が運び込み投棄した‘‘マニラのゴミ’’の中から拾い出した廃棄食品を食べ、売り物とすることもある……。
 廃棄物→ゴミの中から、有価資源物の、空き瓶、空き缶、プラスチック容器、プラスチック包装(ビニール)、鉄&非鉄金属、古紙、古着等を拾い出す。
 ビニールは川で洗浄、空き缶は種類ごとに目方を計り、空き瓶は零細企業に、犬猫の骨は肥料として仲買人(市中で)に持って行く。お金に換えられる物を拾い出す作業には、ずば抜けた集中力を発揮する。そうして『日々を精一杯生きている』。

 200α+7年……フィリピンのイメージ……というより有名な‘‘フィリピンの代名詞’’…とは?『フィリピンの廃棄物埋め立て処分場と子供たち』であろう。首都マニラは高層ビルが立ち並び近代的なのに、子供がゴミを漁って生きている。
 フィリピンの国に問題がある証だろう。政治力による固い既得権益に寄生する富裕層のごく一部の者達が、経済の大部分を独占的に握り、民主主義活動なども弾圧させてしまうからであろうか……。
 それと共に、80%の貧困層住人達が不公平過ぎる現状を受け入れてしまい、生活水準の向上のための変革の試みを放棄してしまっている……。それも、‘‘スカベンジャー’’達が存在し続ける理由であろう。
 劣悪な生活環境だが、住人達の識字率は90%と高く、全人口の90%以上が小学校卒業以上レベルの学力を持ち、中には大学を出た者もいるが、スラムの人達が安定した職業を見つけることは困難なのである……。
 また、不安定と不衛生な条件下の生活環境は、スカベンジャー達の健康を害させ苦しめている。住人の多くはぜんそく、肺炎、結核、コレラ、赤痢、回虫などを罹っている。住人の75%が回虫を持ち、貧血症や、皮膚病などに苦しむ女性や子供も少なくない。就学前児童の80%が栄養失調で、新生児死亡率は30%以上ちで年100人に達している。

 ゴミマウンテン斜面の坂道を降りていくオートバイのセルズだが、山の麓には数万人が暮らす‘‘トゥポインティングエリア’’のバラック建てがあり、‘‘徐行’’する事となった……。
 セルズの任務とは……。スラム住人達に『電波望遠鏡施設が【ユーラシアプレート】と【フィリピンプレート】の境い目に発生するストレス解放エネルギーの電磁波を観測した!……○月△日(カリフォルニア⚪月△日-1日)の午前8時○分にラモン湾沖海底を震源とした地震発生し、津波が来ることが完全予知された……。内陸部高台に用意してある‘’テント村‘’へ避難しなさい』ということを説明して廻り【テント村】への避難を促すというモノだ。そして……『ビラもあちこちのバラックの壁に糊を塗って貼れ!』という‘‘罰ゲーム’’みたいなことを命令されていた……。
地震が起こる理由……地球の表面は複数枚の固い岩盤‘‘プレート’’で構成されている。プレートが互いに動き大陸移動が起きるという説があり‘‘プレートテクニクス’’という。
世界中の‘’トランスフォーム断層線’’上では常にプレートテクニクスにより、プレートにエネルギーが溜まり、限界が来ると解放される……が繰り返されている。解放の時には地震が発生し‘’津波‘’や‘’内陸プレート断層活動‘’が起こる。

「どういう理由で地震が来るのが分かるンだいペペラァ~?」と、セルズに集って(タカッテ)来た住人達の1人が聞いた。
「だからサァ~!‘’ユーラシアプレート‘’と‘‘太平洋プレート’’が‘‘フィリピン梅プレート’’を引き込ンでっから!エネルギーが溜まってて解放するワケよォ~!」と口頭で説明し理解させ避難を促すというモノがセルズの任務だ。何回も繰り返さないといけなくセルズは少し苛ついていた……。
 少し離れた位置に建っているバラックから出てきた1人の少女が『ヘェ~!』『そうなンだぁ~!』『フ~ン!』と‘’知る喜び‘’に瞳を輝かせてセルズの話を聞いて頷いている……。好奇心満々の様子だ!‘‘知る喜び’’が満たされ‘‘何かを感じる喜び’’、‘‘何かを思う喜び’’、‘’考える喜び’’、‘‘楽しむ喜び’’と、次々に喜びを与えてくれるセルズの説明に好感を持った少女だ……。
「その時の解放前に発生する電磁波をだなぁ~!」と言いながら空を見て遠くを指差した。スラム住人達も空を見た。少女も空を見た。皆が見上げた空は青く、遠くに白く輝く雲が沸き上がっていた。
「電離層てのが空にあって~発生した電磁波はそこにあたるワケ!ソレを電波望遠鏡施設が観測したワケなンだぁ~!」
「おかしいゾペペラァ~!だったらサぁペペラァ~!いつも地震が来るのがわかる筈ペペラ!……わかってて教えてくれたら逃げられてェ~ペペラァ~!地震で死ぬ人なンていないでしょペペラァ~!」と気の利いたスカベンジャー住人だ。
「○月△日の午前8時○分にラモン湾沖海底を震源とした地震が発生するンダァ~!‘‘避難テント村’’が内陸部の高台に用意されてるンでェ~!そこに避難して欲しいンダァ~!」繰り返すしかないセルズだ。

「どういう理由で今度だけハッキリとした日にちと時間に地震が来るのが分かるンだいペペラァ~?」

「ここに貼り紙があるだろ!読んでおいてくレェ~!」

「何故?その‘‘電磁波’’が分かるワケだいペペラァ~?他の地震の時には何故?知らせられなかったンだいペペラァ~?」と気の利いたスカベンジャー住人……。彼は‘‘大卒’’なのだ。

「‘‘電波望遠鏡施設’’がプレートから発せられる電磁波を観測したんだァ!テント村’’行けば食事も出るよォ~!‘‘貼り紙’’に書いてあるから読んでくれ!」と同じ説明繰り返しのセルズだ。

「本当なのかねェ~!いやサァ~!‘‘テント村’’行ってる間にオレの家~片付けよォ~って腹かな?ペペラァ~!」
「フィリピン政府ガバメントゥはスラムを本当は隠したいペペラァ~!」
「子供がゴミ漁る所見られたら国際社会から金融支援受け辛くなるペペラァ~!」と‘’大卒’’スカベンジャー住人は意地悪なヤジばかりトバす。雰囲気を悪い方に持って行こうとする。
「そんなことするワケないだろう!皆んなを大津波から守りたいンだよ!‘‘テント村’’に行ってくれよ!」と即答のセルズだ!住人達に早く‘‘トゥポインティングエリア’’から避難して欲しいセルズだ!
「‘‘テント村’’にメシ(食事)~食い行ってェ~食ったらァ~こっちに帰ってくればイイじゃないか~!ペペラァ~!」と言い出す住人もいた。 
「お前はテント村でメシ食って寝ててくれヨォ~!その分オレの酒代が増えるペペラァ~ケェヘェへへへへハハハハァ~ッ!」と住人の誰かの『トム笑い』が発火点になった!
ドォワハハハハァハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!
笑い声が爆発だ!これぞ大爆笑だ!
「そうだ!そうだった!うかうかしてたら空き缶盗られちゃうペペラァ~!」
ワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!
「『空き缶盗られちゃう』てお前のモンか?ペペラ~!」
ワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!
「だってサァ~!‘‘テント村’’でェ~メシは出てもお酒出ないからペペラァ~!」ワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!
「‘‘酒代’’作ンないとねぇ~何ンのために生きてンだかわかンないヨォ!ペペラァ~!」
ワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!
「テント村でその~…○月△日の午前8時○分にお酒出してくれるンなら行ってもイイけどペペラァ~!」
ワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ~!
とまるで酒飲み宴会のようだ!住人同士のフザけたヌカし合い……‘‘ヌカし’’1に対し‘’大爆笑‘’1でゲラゲラ笑って楽しむ住人達だ。和気あいあいもそこ等ァ~辺にしろ!
(「ガァッデェ~ム!ストゥピィトゥサァカァ~ッ!ゴミいじりのフザけた怠け者どもがぁ~ッ!こっちは必死なのにィ~ッ!ザケやがってェ~!いざとなれば銃で脅して避難させることだって出来るンだぞ!」)と左脇のホルスターのベレッタ92Fに思わず手が行きそうになる程に、セルズをバカにしたコトをヌかすスカベンジャー住人達だ。

『トム笑い』

「お前~行ってこいよォ~!ペペラァ~!」
「嫌だね~!ペペラァ~!」
「その分オレが拾っといてやるよペペラァ~!」
ダハァハッハッハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハ~ッ!
「嫌だね~!こないだ~お前‘‘銅線’’見つけたよなペペラァ~!」
ワハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!
「そしたら奪い合いの大ゲンカだったもンナァ!ペペラァ~!ケェヘェへへへへヘェッ!ヘェッヘェッハァッハァッハァッハァ~ッ!」とフザけたコトをヌカした住人の‘‘トム笑い’’がまたまた誘爆発火点になった。
ワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!多分、よくいる『‘‘絶妙なチャチ’’を入れ、笑い声を上げて、場を明るくする』ヤツなのであろう……。‘‘落語家’’のようにいつも同じコトを言ってるのに、場に笑い声が弾けさせて、自らも楽しくて笑ってしまうヤツ……。そういうタイプの‘‘トム笑い’’スカベンジャー住人だ。
ダハァハッハッハッハハハハハハハハハハ~ッ!住人達の笑い声爆発が起きた。(「コイツ等ァ~!ザケやがッてェ~!」)セルズは怒りを爆発解放させたくなったが堪えた……。
「みんなの命を守りたいンダァ~!ここにいたら、津波が押し寄せて来て死ぬゾォ~!」

「そもそも何ンでアメリカ人のアンタが言うワケ?ペペラァ~!」

「アメリカが何か?原因なのかね?ペペラァ~?」

「……ッ?」と一瞬たじろぐセルズだ!痛いところを突かれた様子を見せた。

「聞いた話なンだけどこっちの【○月△日の午前8時○分(カリフォルニア時間⚪月△日-1日)】と同じ頃に、アメリカがカリフォルニア州で【特殊核実験】を行うって聞いたけど?ペペラァ~?」

「…………」黙ってしまうセルズだ!住人達はジーッ!とセルズを見ている。

「【アメリカの特殊核実験】のせい(影響)でェ~そうなるってェ~?オレ達の住んでる家(バラック)が流されるって?本当~?ペペラァ~!」‘‘大卒スカベンジャー’’住人はセルズに聞く……。

「……し……知らない!……オ………オレは……国際活動できている兵士だ!」

「答えがヘンテコだってハァ~!ペペラァ~!」と突いてくる住人も!シーンと静まり返り笑い声は起きないスカベンジャー住人達だ。

「そもそも‘‘地震’’が何故?~!○月△日の午前8時○分に来るのが分かるンだい?ペペラァ~?実は『アメリカの【特殊核実験】の影響か?』ここに書いてあるペペラァ~!」と‘‘気の利いたスカベンジャー住人が’『学者の寄稿記事の載る新聞の‘‘破り抜き’’(切り抜き)』を見せて言った。

『そうだペペラァ~!』『そうだペペラァ~!』『どうなのペペラァ~!』

『何が‘’みんなの命を守りたい‘’だペペラァ~!』住人達が騒ぎ始めた!

「ここに書いてあるよォ~!アンタ?ペペラァ~!」と、追撃だ!……スラムの中には‘‘学’’(大卒)のあるスカベンジャー住人もいるそうだ……。彼がそうらしくスラスラ説明してしまう……。


【連爆干渉破壊方式特殊核実験(平和核)】(注……筆者のフィクションの理論……)

サンアンドレアス断層背後山々を横切る形で各山々の地下に井戸を掘る(200α+7年には水脈は完全枯渇)…役目を終えた井戸は‘‘核坑道’’に代わる

1、地下水脈に影響が出ない深さまで井戸(坑道)を掘り最深部に‘’兵器解体核‘’を仕掛ける…
2、山の真下、地下水脈に影響が出ない深さで核爆発を起こす
3、山の真下に空洞が出来、巨大な重量(山)が落下する
巨大な重量(山)の落下の衝撃が上方へ向かうことにより、次(隣)の山の重量を軽減させる……。それにより次(隣)の使用核を抑える……。尚、連爆干渉破壊方式核実験は一旦開始したら途中で中止することができない……。
地図内【黒線】上‘’トランスフォーム断層線’’上の【赤点】が‘‘ストレスエネルギー観測地点’’
 カリフォルニアとフィリピンは直線距離にして約1,2000km離れている。が、‘‘北米プレート’’、‘’ユーラシアプレート‘’、‘’フィリピンプレート‘’、は‘‘太平洋プレート’’に‘‘トランスフォーム断層(海溝)線’’約15,000kmで繋がっている……。世界中の‘’トランスフォーム断層線’’では常にプレートテクニクスにより、プレートにストレスが溜まっていて、限界が来ると解放され地震が発生している。

 カリフォルニア州のサンアンドレアス断層における【連爆干渉破壊方式特殊核実験】……。地下水脈に影響しない深度での核爆発と、巨大な重量(山)の落下衝撃程度ではプレートの【ストレス解放】を誘発するエネルギーには小さい。

 が、【連爆干渉破壊方式核爆発】では、その‘‘小さな衝撃の連続’’により【小波の足し算効果エネルギー増大】が起き、北米プレートの‘‘ストレス’’にまで‘‘衝撃’’が達して影響を与え【エネルギー解放】を引き起こす……。

【エネルギー解放】は‘‘トランスフォーム断層線’’上の【赤点(ストレス観測地点)】に【小規模ストレス解放】を次々に誘発させる。【誘発赤点解放】発生は【断層黒線上】を『導火線』の如く次々に伝わって行く。限界が近付いていたフィリピンラモン湾沖海底のプレートに到達し【赤点……大規模ストレス解放】を誘発させてしまう。ラモン湾沖海底を震源とした大地震が起き津波が発生する……。


 ‘’大卒‘’スカベンジャーは理論整然と【特殊核実験】についての予想を言い出した。ほぼ的中していた……。

「つまり、‘’アメリカの核実験‘’のトバっちりでオレ達の大事な家は津波にさらわれてしまうンだぞペペラァ~!」

『何ンだってペペラァ~?』『ザケんなよペペラァ~!』『原因作っといて何が【皆んなを大津波から守りたいンだよペペラァ~!】だ!』と怒りの声を上げているクセに、無表情のスカベンジャー住人達だ。完璧にセルズを値踏みしている。

『あのデザートパターン戦闘服はいくらになるペペラ?』『ヘルメットはいくらになるペペラ?』『ゴーグルはいくらになるペペラ?』『あのピストルは値打ちモンだペペラ!』

『いくらかペペラ?』『いくらかペペラ?』……と袋叩き後身ぐるみ剥がしての品定めしているのか……?セルズは脚を少し開き腰を沈め‘‘値踏みスカベンジャー住人’’達に鋭い視線を走らせながら、ベレッタ92Fのグリップを握り、親指で安全装置を解除した。

『……ッ?』スカベンジャー住人達は、アメリカの兵士が胸ホルスターのピストルのグリップを握ったのを見て、さすがに我にかえり静まりかえった。

『このアメリカ兵士を本気にさせたらペペラ……』スカベンジャー住人達はセルズの脇ホルスターのベレッタ92F(装填弾数15発)、腰などの予備マガジン数本……‘‘計算(一種の値踏み)’’した……。答えは『10秒以内に、ここにいるスカベンジャー住人達

数十人全員が頭を吹き飛ばされる』であった……。

 一触即発の緊張感が支配する中、セルズは住人達にチャンスを与えるコトにした。トボけて無事に納める最後努力だ!

「か!……核実験て?……核爆発で?……地震なンて起こせるワケないだろォ~!」

 が……頭が良い筈が、実はバカなのか?……‘‘大卒スカベンジャー’’は空気が読めない!危険な状態に戻そうとする……。

「駄目駄目~!嘘は通じないよ!‘‘連爆干渉破壊方式核爆発’’で出来るンじゃないかペペラァ~!世にあることは‘‘物理’’で説明出来るンだペペラァ~!‘‘数式’’書いて説明出来るンだぞ!オレぁ~大学出てンだゼェ~!ペペラァ~!」

 その時だった!

「大学を出て~今はゴミ漁って暮らしてますゥ!ペペラァ~!ケェへェへへへェッアッハァハァ~ッ!」と‘‘トム笑いスカベンジャー住人’’が一発で場を笑いに引き寄せた!

ドボォワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!最大級レベル更新の笑い声が爆発した!‘‘取り囲みスカベンジャー’’達は一触即発危機を脱した!

「だからさァ~!この貼り紙読んでくれよォ~!」(「参ったなぁ~こんな所!いつまでもコイツ等ァ~!さっさと‘‘テント村’’に避難してくれよォ~」)危機を脱したら、どっと疲れを感じた……。

 どうみても暇潰しにセルズに構けに来たスラム住人達だ。セルズに飽きたのか

『さぁ~!帰って昼寝でもするかぁペペラァ~!』と言いながら離れて行った。セルズは参ってしまった。

 自分が命懸けでくぐり抜けてきた危機に比べたら‘‘屁’’みたいな時間だが、心底参ってしまった。参ってしまったセルズの心を癒してくれる救世主が現れた……。

「○月△日の午前8時○分に地震が来て津波が押し寄せてくるから、テント村に避難するように……」少女の声がした……。バラック建て小屋の入り口からセルズの説明を聞いていた少女だ。黒い瞳……まるで宝石の様に美しく輝く瞳だ。少女は黒く美しいを瞳を煌めかせてセルズに笑顔を見せている……。セルズも笑顔を少女に返した。

「ああ~!そうだ(ョッ)?」返事をかえそうとして途中で止めた。
 5人組の東洋人が現れた。日本語訛りのあるタガログ語で少女に挨拶をして割り込んできた。日本のテレビ局取材クルーだ。女性1人にテレビカメラ、マイク棒、反射ミラー、責任者らしき男4人だ。
「こんにちわ!ティモーナ!」と若く美しい女性が少女の名前を呼びながらティモーナに笑顔で近付いた。
(「多分‘‘女優’’であろう」)セルズは思った……。
「あ~ッ!こんにちわッ!サカタさんだ!」ティモーナの笑顔の輝きは一段と増した。
「今は1人?お邪魔してもいいかしら?」と言いながら僅か3畳程のバラックに入り込む女優のサカタだ。サカタとカメラマンは何ンとか入り込んだバラックだがマイク棒男は入り口から棒を入れ込み集音だ。ミラー男は反射板でバラック屋内に光を送り込んでいる。責任者……ディレクター男は少し離れた場所から指示を出している……。
 男達の額から身体からは汗が吹き出している。バラック屋の中は凄まじく暑いであろう。が、ティモーナには、いつもの常夏の熱帯地方の国フィリピンの毎日に過ぎなかった。セルズはオートバイから離れ、バラックの中を遠巻きに覗き込む。少しずつ近付いて行った。
「すまない!私達は日本のテレビ局‘‘チャンネル8’’のテレビ取材クルーだ……今、『貧困な状況下の世界の子供達~世界の100人の子供達』という番組を制作中で、こうして、実際に貧困な子供を取材しているンだ!世界に100人子供がいたら『きれいな水を飲める』『学校に通って勉強が出来る』『毎日、ちゃんと毎日、食事が出来る』3つとも不自由なく手に入っているのは先進国の子供位なンだ!……その割合は『子供が100人いたら1人』……その事実を番組を通じて世界中に知らしめたい……協力してくれるカナ(あまり近付かないでくれ)……?」とセルズの接近に気付くとディレクターが、日本語訛りの英語で説明を始めた。
「あの女の子はティモーナ……9歳……弟のルカァイ3歳と2人姉弟だ……父親は暴漢に襲われ死亡……母親は病死……親の友人の家、その隣の家に2人はそれぞれ引き取られたのだけど『食いぶちは自分で稼ぐ』ということで……昨年も取材に来たのだけれどティモーナは相変わらず学校に行けずにいるンだ……」説明した後、セルズに手の平で『下がってくれ』サインでだ。
『オーケー!』と手で合図しながら、邪魔にならない距離まで下がった。
「どうぞ~!……サカタさん去年も来てくれたよねペペラ!」と3畳程のバラック屋にティモーナから日本人女優サカタを招きいれ始まり……。
「あれから、どうしてた?私~ずっとティモーナのことが気になってた」サカタが質問したり、やりとりだ……。
「別にィ~ペペラ!ワタシは毎日、ゴミの中から、お金になるモノを探して何ンとか生きているョペペラ~!」と‘‘自身の現状報告’’に虚ろで元気のない少女だ。
「…………そうなの……」とサカタは自分の無力さを再認識する……。
「だから学校に行けなくて……ワタシも学校に行って勉強がしたいな……」
 あっという間に目が赤らんで来たサカタ……。「スン!……はぁ……」早くも涙を啜りため息吐きだ。カメラマンは真剣だ!あまりにもサカタの‘‘悲しい美しさ’’が全開だからだ!撮り逃すことないように必死だ!来る度に女優のサカタは自分の無力さを突きつけられている……。
『政府既得権に寄生する一部の富裕層』も貧困の一因……についてをクローズアップしたいのだが‘‘フィリピン政府’に睨まれることになる。マスメディアとして病巣の根本に切り込むことは、取材のための入国が出来なくなる……。というジレンマがある。
 テレビ局が出来ること……。『子供がゴミを漁り学校にも行けない現状を知らしめ、募金を呼び掛ける』……。それにより『そういう状況の国に国際社会は金融支援をしてるのか?』という国際世論を引き出し【そういう状況の国】の変革を促す。日本のテレビ局と女優サカタ達に出来るのは、それが精一杯だった……。
 女優サカタはそのためにメソメソし涙を流すのだ。『涙を流す美しい女優の絵になる悲しい映像』を撮るためにフィリピンまで来たのだ。サカタに出来るの は、それが精一杯なのだ……。
「お腹は空いてるョペペラ!昨日~パン(ゴミの中から拾った)を食べたンだペペラ!……あとは水を飲んでいるよペペラ!……」ティモーナの冷めた様子の答えに、サカタの頬を涙が一筋流れた。演技でなくて地だが、何をしても絵になるサカタだ。
「……スン!……スン!……はぁ……」映像だけではダメである。女優なら美しさに比例し、CDを出すほどに声も美しい……。涙を啜りため息吐きの音……いちいち様になる! 
「何か持ってくれば良かったかな……」サカタは言った。
「フフフ!……今夜がお米が食べられるペペラ!今日は空き缶拾えて売ったンだ見てよペペラ!」と子供の服のポケットに入る程の容積プラ袋に入っているお米を見せるティモーナだ。
「ルカァイにもあげるンだペペラ~!」少し元気な自分を思い出した
「そうだ!サカタさんに見せてあげる!……ワタシの‘‘宝物’’だョ~ペペラ!」と部屋の隅に置かれてた薄汚れた英語の教科書を出した!
「フフフ!あちこち汚れてボロボロだけど……ゴミの中に捨てられてたのを拾ったンだよペペラ~!……システル!…お姉さん!…スタル!…星!…」単語を読み出したティモーナだ。英語の教科書を読んいる時のティモーナは別人だ!瞳を宝石のように輝かせている。‘‘9歳の女の子’’になった。
「フフフ!あちこち汚れてボロボロだけど……ゴミの中に捨てられてたのを拾ったンだよペペラ~!」
「そうなんだ……」とサカタは笑顔を見せるティモーナに笑顔を取り戻した……。
「でも……もう全部読んで頭に入っちゃったからペペラ~‘‘次の教科書(次の学年用)’’が欲しいなぁペペラ~!次のことが勉強できるからペペラ~!」と‘‘勉強’’のことを考えただけで輝きの表情を見せるティモーナだ。‘’表紙まわり(表,背,裏を含む)が剥がれてて、気を付けないと各ページを落としてしまいそうな、ボロボロの『ゴミの中から拾った‘‘宝物(教科書)‘’』を閉じたとたんにティモーナの‘‘輝き’’は消えた。擦ったマッチの炎が消え、見せてくれる夢も消え光を失ったかの様に、虚ろなティモーナに戻った。
「学校に行けないなら……せめて……次の(学年の)教科書が欲しいな……勉強がしたいなペペラ……!」とボソボソ言うティモーナだ。
「ウゥゥ~!アハァ~ァン!……はぁ!……ウゥ~!……せ!…先進国の子供達はイヤイヤ勉強したり‘‘学級崩壊’’とかあって‘‘勉強できる幸せ’’を感じることが出来ないでいる……ウゥゥ~!なのに!勉強がしたいのに出来ない子供がいて……おかしいわよ!」サカタは泣き出した。泣きながら言った。
「世界って、そういうモノなンだよペペラ!……何も変わらないンだよペペラ!……変えることが出来ないンだから、あまり望まなければ良いンだよペペラ!……そう思えば悲しくないよ」ティモーナは冷めて言った。また、ボロボロの‘‘宝物’’の教科書のページを捲った。数枚のページが脱落して床に落ちた。
「あ!」と言いながら落ちたページを拾うティモーナだ!
「ウゥゥ~!日本では学年が終わり要らなくなった教科書はみんなゴミに出して捨ててしまうのにッ!ハァウ~ッ!」と叫びアァァァァァァァ~ン!と号泣のサカタだ。
 その時だった……。虚ろだったティモーナはサカタの言葉を聞いて、表情が一気に輝いた!顔が‘‘勉強’’の話をした時の様に、瞳を‘‘宝石’’の様に輝かせているではないか!
 セルズは特殊隊員だ。人間が何を考えているかなど、手に取る様にわかる。当たり前だ。殺るか?殺られるか?の戦場を駆け抜けた者……それが無ければとっくの昔に死んでいただろう。
 セルズの目から見て、ティモーナの考えは理解出来なかった。せっかく、望みが叶うチャンスを日本人の女優が言ってくれてるのに……顔は‘‘勉強’’の事を話した時の‘‘宝石の様な輝き’’を見せているのに……‘‘モノ欲しそうな願い’’が叶いそうで希望に満ち溢れた顔をしてるのに……この少女は自分からは何もしようとしない……女優の‘‘もう一言’’を待っている……。
「ウゥゥ~!ごめんなさい!……今日は、もう帰るわネ!また明日ネ!」と言い立ち上がってしまった。少女の‘‘輝き’’は一気に消え失せた……。

「ウゥゥ~!アハァ~ァン!……ウッ!ウッ!……アタシ達……何も出来ない……アハァ~ァン!」とバラックから出て来たサカタは号泣だ。
「とにかく我々はこの悲しい現状知らしめて行くンだ!……それしかないンだよ!地道に行動していけば必ず国際世論を動かせる筈だ!」とディレクターがサカタを慰めている。
「ウゥゥ~ッ!アハァ~ァァァ~ァン!アハァァァァァァァ~ッ!」と泣きながら去って行くサカタとテレビ局取材クルー達だ……。去って行く5人を目で追っていたセルズであった。
 ふと、視線を感じ後ろを振り返った……。バラック家からティモーナが顔を覗かせていた。キラキラと宝石の様に輝く瞳の持ち主の愛らしい少女であった。年の頃は同じ位だろうか……?ティモーナを見てセルズは10年程の少女ことを思い出していた……。
イラク戦争
2003年3月20日~2011年12月15日
開戦理由として……
 91年湾岸戦争後停戦決議『大量破壊兵器の不保持』が義務付けられ、イラクは査察を受け入れることになった……。が、査察は妨害され、決議が守られているか?確認が困難になる。
イラクは大量破壊兵器保有を過去に公言し、その可能性が世界を脅かす。
独裁者フセインが国内クルド人を弾圧……。
フセインとアルカイーダが協力関係にある可能性がある。
亡命イラク人(フセイン政権打倒目的)によりアメリカにもたらされた『大量破壊兵器保有』捏造情報…。
 という開戦理由から2003年3月20日からイラク全土の攻略には1ヶ月強という速さであった。
イラク戦争のイラク市民の死亡者数は10万3160人~11万3,728人とされている

2004年4月
イラク
 2003年3月イラク戦争が開戦するや、アメリカ合衆国エネルギー省第2特殊部隊ダークベレー大尉ジョン・セルズは、大量破壊兵器捜索の為の技術顧問要員として‘‘スクリーミングイーグル’’第101空挺師団に『核・ミサイル・放射能関連‘‘技術顧問要員’’』として帯同し、連日あちこちを探し回っていた……。が、どこにも大量破壊兵器は見つからず『存在しない』という結論に至る。2004年4月、大量破壊兵器捜索は打ち切りとなった……。
 イラクの街では治安が悪化したままで、アメリカ軍兵士にも死者が出ていた。補充が来るまでの間『一般部隊の掌握下に入ってくれ』との命令があり、セルズは治安維持部隊の要員としてイラクに留まっていた。バイクに乗り治安維持パトロールの任務に就いていた。
 街に出ると、かつてのベトナム戦争と同じく‘’動くものは敵‘’……歩いている人間は全部が敵に見え、中にはイラク人に暴力を振るう兵士まで出た。

 街に出ると、かつてのベトナム戦争と同じく‘’動くものは敵‘’……歩いている人間は全部が敵に見え、中にはイラク人に暴力を振るう兵士まで出た。心が荒んだ米兵を見るとイラク人達は怖がり逃げる者もいた。
 兵士達の心は疲れきっていた……。イラク戦争の大義である『大量破壊兵器』が探しても見つからない。数えきれない程の市民の命が失われた……。『自分達は何をしにきているのか?』兵士達は精神的に疲れきっていた……。

その頃、荒みきった兵士達の心を癒してくれる‘’小さなスター(存)‘’が現れた!無線が入った。
『オ~ゥマイガァ~ッド!大変だぁ~ァ!現れたゾォ~!』
『分かった~ァ!何処に行けばいいンだァ~ッ?』
『〇Ⅹ通りF3!5!4!オーバー!』
『ラージャー!分かった~ッ!』
「オーイ!来てるゾォ~ッ!行くゾォ~ッ!」
「イヤッホ~ォ!」
ブゥブゥボォブゥルルルゥゥボォボボボボボォボォボォォ~ン!
 アメリカ兵達は何か?‘’緊急事態‘’に駆けつけるかの如く軍用車両に乗り込んだ。ブゥブゥボォブゥルルルゥゥボォボボボボボォボォボォォ~ン!とエンジン音をさせて車両は猛スピードで兵士達の‘’持ち場‘’から遠ざかって行った……。
 入れ替わりに……。
ボォボボボォボォボボボォボボボボォン!ボォボボボボォボボボォ~ン!と排気音をさせて治安パトロール任務のセルズの乗る軍用バイクが現れた……。
「まったくヨォ~!持ち場ァ~離れやがって!しょうがねェ~なァ~!……フフフ……!またアイツかぁ~!」
『〇Ⅹ通りF3!5!4!オーバー!』とセルズの無線に‘‘アイツの出没場所’’を兵士が教えるやりとりが先程から続いている。セルズはアクセルを回した!
ボォボボボボォボボボォボボボボォ~ン!と排気音を響かせて‘‘アイツの出没場所’’に向かうべくセルズを乗せた軍用バイクは猛スピードで発進して行った……。

〇Ⅹ通りF3-5-4
 
 〇Ⅹ通りの道……道幅が割りと広い舗装されてない道だ……。軍用車両が数台停車されている。20人程のアメリカ兵が‘‘アイツ’’を取り囲んでいる様だ!‘‘アイツ’’とは誰か?行方をくらましている‘‘サダム・フセイン’’か?一体どんな人物だろうか?
‘‘アイツ’’の正体が判明した!何ンと?年齢は8~9歳のイラク人の美少女であった!20人程のばかデカイアメリカ兵はイラク人美少女にメロメロの様子だ!少女の歌声に聴き惚れている……。
♪ハァドゥアァイリィブ~ウィザァゥトゥユゥ~♪アヲォントゥゥノォォォ~ォォ~♪ハァドゥアァイリィブリィ~ェフ~ウィザァァァァ~ゥトゥユゥ~♪イフゥエバァノォォ~ォォ~ッ!ハウドゥアイリブエネェトゥモオォォ~♪

 熊みたいにばかデカいのから、小さいの、白人の、黒人の……アメリカ兵達は、美少女の歌声に癒されタイムだ!心からの好意の眼差しを美少女に向けている……。『聴き惚れる』という言葉は、このシチュエーションにこそ相応しい!
♪ハァドゥアァイ~オォ~♪ハァドゥアァイ~♪オォ~ハウドゥア~イ♪リィ~ブ~♪ハウドゥアイリィィィィィ~ブ♪~アァァァ~♪ハウドゥア~イ~♪リィィィィィ~ブ…………♪
チパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ~ッ!屈強なアメリカ兵達の盛大でパワフルな拍手が鳴り響いた。
ワァァァァァァァァァァァァァァァ~ッ!と核爆発級の大歓声が上がった!
イェ~ィッ!最高ダァ~ッ!ワァンダァフォ~ッ!イェ~ィ!フォ~ッ!
割れんばかりの拍手喝采だ!
ピィピィピィピィピィピィ!ピィィィィィ~ッ!と賛美の口笛が発せられた。
「セェ~ンキュウ~ッ!アメリカ兵達よォ~ッ!アイラブユー!」美少女は笑顔を兵士達に向けた……。

チパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ~ッ!と鳴り止まないだ!拍手はやがて……。

チャッ!チャッ!チャッ!チャッ!チャッ!チャッ!チャッ!チャッ!という手拍子に変わった!

ウヲゥ!ウヲゥ!ウヲゥ!ウヲゥ!ウヲゥ!ウヲゥ!ウヲゥ!ウヲゥ!と兵士達は吠え始めた!

ティーシャッ!ティーシャッ!!ティーシャッ!ティーシャッ!と、どうやら美少女の名前らしい……。唸り声は、やがて美少女の名前『ティーシャ』に変わった。

‘‘ボンネット舞台’’の美少女ティーシャの前に集まった20人程の兵士達は名前を連呼している……。いわゆる‘‘アンコール’’だ!歌の後は‘‘ネタ’’だ!

(「さぁ~♪今日は、どうやって笑わせててくれるンだい?」) 兵士達は‘‘吠えアンコール‘’から美少女の名前コールに変わった。

ティーシャッ!ティーシャッ!ティーシャッ!ティーシャッ!ティーシャッ!相変わらず美少女の名前を連呼している。しかも、うるさい……。

 ティーシャは口を閉じ鼻から小さくため息だ。小さく首を横に振った。

『オイ!始まるゾォ~!』『何ンだい?キュートな悪態つくゼ!』『似てない物真似か?』『静かにしろよ!』『シィー!シィー!』と兵士達は互いに静まり合った。兵士達は静かになった。

「……ったくサァ~!……アンタ達さぁ~!……アタシの歌~聴いて喜んでくれるのは~ありがとうね!」からティーシャは始めた……。

ヲワァオォォォォォォォ~!突然、盛り上げようと叫び声を上げた兵士がいた。

「黙ぁれェってェ~!このキ⚪ガイ!シャアタァップ!サァ~イクゥ!」と美少女はいきなり叫び声兵士を‘‘キュート悪態’’で一蹴だ!

ワァハハハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!爆笑の兵士達20人程だ!

「まったく~ゥ!人が話してるのに!アタシより目立とうとすンじゃないよ!」

ワァハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!ティーシャの‘’キュート悪態‘’に更に爆笑の兵士達20人程だ!

「あ~!ウザい!もう1回言わなきゃダメじゃん!調子狂うよォ~!」

ワァハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!

「アタシの歌~喜んでくれるのは嬉しいけどね~普通に出来ないのォ~?」

ワァハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!

「『ティーシャッ!ティーシャッ!ティーシャッ!』て吠えてるみたい~ッ!前から思ってたンだけど~!………アメリカ兵ってさ~いちいち暑苦しいよね?」

ワァハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!大爆笑の兵士達だ。

「だから~!マジいちいち暑苦しいんだってェ~!アンタ達~!」

ワァハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!やはり兵士達は大爆笑だ!

ティーシャの‘‘持ちネタ’’の一種……『キュート悪態』に大爆笑だ!

「……………………」静かになるティーシャだ。

『何ンだ?』『始まるか?』『今日は何をやるンだい?』と兵士達はコソコソ話しだ。

 ティーシャは、急に口を閉じ頬を膨らませ‘’ヤバい目‘’の‘‘変顔美少女’’モードに。た。例の‘‘似てないモノ真似‘’の始まりだ!

『へ~ィ!カマァ~ン!』『ミスターTだぜェ~!』と兵士達はザワつき始めた。


筆者は90年夏にレンタルした『サタデーナイトライブ』のエディーに笑い捲って呼吸困難からの失神に陥りそうになった……。
『Eddie murphy Delirious』……『YouTubeで見る』でご覧下さい

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「『ミスターTがホモだったら?』て~さてはインターネットで【エディーマーフィーのライブ映画】見たな!」と状況を早口で説明して場を明るくしようとする【説明好きヲタ】兵士が言った……。

『…………』『…………』『…………』と他の兵士達は【ヲタ兵士】の‘’ペラず口‘’に笑わないし、シラけたワケでもなかった。

 ティーシャのする‘‘モノ真似’’は、ハッキリ言って、似てない……。が、とにかくキュートで楽しくカリスマ性があった。

「ヘェ~イ!ボォワァイ(ボーイ)!よお~!お兄ちゃん!」まったく似てない。

が、この美少女が存在するだけで爆笑に向かえるのだ!ティーシャがたった一言発しただけで大爆笑の保証は確実だ!【無理やりミスターTのモノ真似する人のモノ似】……。といった方が正解か?

ング!ブフフフ!グゴブ!ブプウ!と大爆笑の前の堪え笑いを始めるアメリカ兵達だ!

「ヘェ~イ!ボォワァイ!……ヘェ~イ!ボォワァイ!(ボーイ)よお~お兄ちゃん!」

クプ!ムグッ!カァハァイヒィヒィヒィィィィィィ~ン!堪え笑い、鼻鳴らし笑い、掠れ堪え笑い……。アメリカ人特有の『堪え笑い→大爆笑』の‘‘堪え笑い’’を楽しんでいる。それは兵士達には拷問に等しく苦しい作業であった……。

「ヨォ~ルクゥ~マァラァ~ネェイム‘‘キュートゥジィ~ンズ’’!ジーンズ姿がキュートだゼ!」

ググフゥ~!クプ!ムグッ!カァハァイヒィヒィヒィィィィィィ~ン!堪

ティーシャはまず‘‘堪え笑い攻め’’でアメリカ兵達を苦しめた!

兵士達は堪えていた笑いエネルギーで、どんどん血圧アップか?爆笑解放を願い更に堪え笑いをした!ティーシャは、アメリカ兵達を‘‘引きずり込んだ笑い地獄’’から逃がさない。笑い狂い死ぬまで笑わせてやる!ティーシャはニヤリと笑う……。

「アワナァトォクトゥユゥ~!話ガあるンだぁ~!」

クプ!ムグッ!カァハァイヒィヒィヒィィィィィィ~ン!

「カァモォバァデェ~ア!こっちに来なッ!」

ググフゥ~!クプ!ムグッ!カァハァイヒィヒィヒィィィィィィ~ン!

 ティーシャの似てないエディーマーフィーモノ真似に『腹を抱えて大爆笑前の堪え笑い』……もうこれ以上‘‘引っ張られる‘’のは限界のアメリカ兵達だ!

「何ンだァ~ッ?そんでもって『オレのカマを掘れ!』ファックミーアップダンス!Fuck Me Up Dance!(Fuck me up the Ass!)てかァ~ッ?」と例のやたら状況を説明する‘‘ヲタ兵士’’が堪え笑いでヤジを飛ばした。

 ヤジをとばされティーシャは似てないミスターTのいかつい顔真似を中断し、冷めた美少女の顔にもどした。間髪入れずに言い放った。

「そうだけど、何ンか文句あンの?ファカァ~!」ティーシャがたった一言発しただけで大爆笑だ!

バァワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!とアメリカ兵達は大爆笑だ!何を言っても周りを笑いの渦に放り込む人間なのだ。絶妙な間の取り方だ!人を楽しませる才能を神から授かったのだろう……。叩きのめされる様に更に爆笑爆弾爆発だ!

 

エディーマーフィーの傑作モノ真似『ミスターTがホモだったら笑えるゼ!』

『カマを掘られる姿勢』~Fuck Me Up Dance!(Fuck me up the Ass!)
『ウゥ~ン!ハァ~ッ!Hey Boy! Slow Down!オイ!兄ちゃんゆっくりやれェ!』

筆者……ミスターTを知らない若い方達のためにミスターTの説明動画作りました

「ヲォ~!フゥ~ン!」
バァワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!
「アァ~!オ~!」
バァワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!
「兄ちゃん!もっとゆっくりヤれ!!ヘェイ!ボォワァイ!スロォダァオン!」
バァワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!
「はやく来すぎるゾォ!ヨォカムトゥファストゥ!」
バァワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!
‘‘汚い声’’を作り叫んでいたティーシャが後ろを向く仕草をした!
「もうイッちまういそうなのかぁ~?モォウベェンドォ~バァナァ~ッ!ハァ~ン?」
バァワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!
 アメリカ兵達はティーシャの一言に対し、一大爆笑で、笑い捲り続け呼吸困難状態だ!爆笑爆弾連爆だ!アメリカ兵達は降参し始める兵士が出始めた。顔から地面に墜落し砂だらけになり笑い転げる兵士もいる!

『アァ~!苦しい~!』『止めてくれェ~!ヒィ~ッ!』『ヘェイ!ヲ!ヲ!ヲ!ウェイトゥ!待てっての!』……そんな兵士達の訴えなど一蹴だ!アメリカ兵達に留めを刺した!

「穴スボめてテメェのチン⚪チョン切るゾォ~!メディ~ゲェイメェィ~ドァパンチィ~マァ~バァンチィ~サンリィプィットゥ~ディックオォフゥ!」
『……………』『……………』『…………』『…………』アメリカ兵達から笑い声は起こらなかった……。20人程のアメリカ兵達は全員、笑い狂い呼吸困難に陥り、地面に墜落して砂まみれになっていた……。
 しばらく、砂まみれのまま笑い狂い死にして倒れていた。荒んでいたアメリカ兵達の心は、完璧にメンテナンスされたのであった……。
「ハァ~イ!アメリカ兵共ォ~!いつまでスッ転んでンだぁい?ちゃんと買うモン買ってもらうヨォ~!」と叫びながら‘‘パッチとウエス’’(銃手入れの布切れ……廃墟から拾い出して作る)を次々にアメリカ兵達に手渡した!
「ハァ~イ!ハァイ!その箱に入れてねェ~!ばっくれ(タダ見)は許さないからねェ~!」との言葉に促されて、兵士達は箱に色々なモノを入れ始めた。
【コンバットレーション(戦闘糧食パック、缶詰め等)】【お菓子】【ジュース】……つまり、美少女は‘‘パッチとウエス’’を色々なモノと交換して、売り、‘’生活の糧‘’にする……というワケだ。
『イヤ~!楽しかったゼ!』『ありがとう!』『来て良かったァ~!』『また、楽しみにしてるカラな!』とアメリカ兵達は次々に賛美した。
「こちらこそアメリカ兵の持ってくるモノは私にはみんな‘’宝物‘’だよ!」と言いながら箱を見て満足そうな笑みを浮かべた。
『しかし、しっかりしてるよなァ~!』
「だってサァ~!生きていくためには、自分に出来ることを精一杯やらなくちゃね!」と真面目な台詞がティーシャの口から出た。
『オッ?』『オッ?』『オ?』『始まったゾォ~!』と……どうやらティーシャの持ちネタ‘‘励ましタイム’’らしい……。
「どんな困難にも打ち勝つ勇気を持って!」アメリカ映画の影響らしい……熱い台詞タイムらしい……。
『…………』『…………』『…………』『…………』と黙って‘‘励ましタイム’’の熱い台詞を味わっているアメリカ兵達だ。
「闘いなンだよ!自分との!諦めたら何もかもが終わってしまうンだよ!」
『…………』『…………』『…………』『…………』真剣にきいているアメリカ兵達だ。
「最初から投げ出しちゃダメなンだよ!特に私なンかね!パッチなンか作ったって誰も買ってくれないヨ!」とにかく‘‘歌’’で癒し、‘‘モノ真似’’で笑わせ、‘‘熱い台詞’’で励ますパターンらしい。
「だから私は歌ったり、モノ真似したり……自分に出来ることは精一杯しなくちゃ!……動かなケレば何も始まらない!……自分から動くンだよ!……自分の願いは伝えるンだよ!……自分の意思は示すんだよ!……」どうも『戦争を終わらせ平和になるために‘‘世論’’を発しなければならない!』が言いたいらしいティーシャか……?
「人間として最低なことは、何もしないクセに、何も言わないクセにグジグジ不貞腐れて愚痴ってることネ!」やはり~世論~について言っているみたいだ……。
「泣きたい時は泣けばいい……笑いたい時は笑えばいい……いつも笑っていられる日が来ることが本当はいいンだけどね!」
 アメリカ兵達は黙ってティーシャの‘‘お言葉’’に感動している。インターネットでハリウッド映画ばかり見てて‘‘テンション’’高くなったらしい……。影響されたのは、間違いないようだ。
「とにかく私に出来ることは前に進むこと!……黙ってたって何も始まらないヨ!……黙ってたって何も動かない!……黙ってたって何も変わらないンだよ!」……何か?『夢を追いかける人間』を励ますかのような台詞のティーシャだ。夢が叶う』には、まず、戦争がなく平和な日が来なければならない……。結論は『平和の願い』なのか……?
『ティーシャの‘’励まし台詞‘’』……‘‘ジャパニーズ落語’’と同じで、言葉は覚えて聞き飽きてしまうのと同じで目新しさはない。が、その‘‘語り口の良さ’’は何度きいても胸に染み入り感動させてくれるのだ……。しみじみとしてしまったアメリカ兵達だ。
 が……それは、いきなり始まった。
チパン!……チパン!……チパン!……チパン!……と音をさせてティーシャが手拍子だ!
「手拍子ちょうだいアメリカ兵共ォ~!」ティーシャは叫んだ。
ジャッ!……ジャッ!……ジャッ!……ジャッ!と音をさせての手拍子は応えるアメリカ兵達だ!
♪ポォゥ~ポォン!ポォ~ポォン!ポォンポォ~!ポォォポォォォン!カマァ~ン!
手拍子に合わせ歌い出すティーシャだ。
♪ポォゥ~ポォン!ポォ~ポォン!ポォンポォ~!ポォォポォォォン!と歌い出すアメリカ兵達だ!
「ジャクソン5!‘‘ABC’’だぁ!」マイケルジャクソン……ジャクソン5の‘‘ABC’’と例の台詞ヲタ兵士が叫んだ。
「アメリカ兵共ォ~!しみじみしちゃって何ンなのサァ~?……アンタ達はいつも暑苦く騒いでなきゃ~!ガラじゃないでしょォ~ッ!一緒に歌うよぉ~!♪ポォゥ~ポォン!ポォ~ポォン!ポォンポォ~!ポォォポォォォン!カマァ~ン!」ティーシャは元気良く歌った!
♪ポォゥ~ポォン!ポォ~ポォン!ポォンポォ~!ポォォポォォォン!とアメリカ兵も元気に歌った。
 道幅の広い舗装させてない道路で、‘‘ボンネット舞台’’のティーシャを前にしての‘‘路上ライブ’’を楽しんでいるアメリカ兵20人程……。
♪カマァ~ン!♪A~!B~!C~!♪イィズィアァ~ス!♪1ァン!2ゥ~!3ィ~!♪オォ~ゥスィンポォアァス!♪ドォゥレェ~ミィ~!A~!B~!C~!♪♪1ァン!2ゥ~!3ィ~!ベェィビ~♪ヨォァンミィ~グロォォ~!手拍子をしながら楽しそうにうたうティーシャと20人程のアメリカ兵達……。
 ボンネット舞台前に集まった無防備なアメリカ兵達は後ろ姿……。背中を見せて盛り上がっている。彼等から10数m程離れた後ろを、ズダ袋を担いで緩い服を着た男が歩いていた。
 男はアメリカ兵達の後ろ姿を見ながら’’担いでいたズダ袋‘’を置いて、歩き出した。男は50m程離れたところで携帯電話を取り出した
ボォボボボボォボボボォボボボボォ~ン!とエンジン音が向かって来た。セルズのバイクだ。ズダ袋男とすれ違った。すれ違ってから50m程離れるたところで、セルズはハンドルミラーの‘‘ズダ袋男’’が携帯電話を操作するのを目視で捕らえた。携帯電話の操作など‘‘遠隔操作’’以外の何物でもない!
「散開して伏せろォ~ッ!」とセルズは叫んだ。
‘‘ボンネット舞台’’前の20人程のアメリカ兵達は凄まじい瞬発力で散開し広がりスライディングで地面に伏せた。1人のアメリカ兵は‘’ボンネット舞台‘’に駆け上がりティーシャを抱きすくめ地面に飛び下りスライディングだ!
 急ブレーキでバイクをスライディングさせて地面に倒し、脇ホルスターからベレッタ92Fを抜いた。脚から腹這いにスライディングで‘‘伏せ撃ち’’のセルズだ!‘‘ズダ袋男’’の手から離れた携帯電話は地面に落ちた。‘’ズダ袋男‘’は緩い服の内側からサブマシンガンを取り出し、セルズに向けフルオートで射撃して来た!
ボォン!ボォン!ボォン!ボォン!ボォン!ボォンコォォ~ン!
ダガダガダガダガダガダガダガダガダガダガダガダガダァァァ~ン!とベレッタ92Fとサブマシンガン’‘スコーピオン’’の射撃音の交錯が幅広いイラクの街の道路に響き渡った。
 ズダ袋男は何故か?空に向かい全弾丸を撃ち放った。セルズとのベレッタ92Fの9㎜弾数発がズダ袋男の緩い服の胸を破裂させ、血煙を上げさせ、後退りさせたのだった。スコーピオンの連射反動を支えきれず、銃口は天をむいたのだた。ズダ袋男は膝から地面に崩れ落ち、前のめりに倒れた。
 倒れた‘‘ズダ袋男’’は命が尽きる前に顔を起こし、地面に落ちた携帯電話に手を伸ばした。たどり着いた手は、携帯電話を掴んだ。ズダ袋男は親指で‘‘送信’’ボタンを押した。そして、全てを脱力し、命の尽きた‘‘ズダ袋男’’であった。
 アメリカ兵の腕に抱きすくめられ地面に伏せていたティーシャは「はッ?」と小さく叫んだ。‘’宝物‘’の箱を軍用車両‘‘ハンヴィー’’のボンネットに置き忘れたことを思い出したのだ。抱きすくめていたアメリカ兵の腕からすり抜け立ち上がったティーシャだ。すばしっこく動きが速い少女だ。
「アッ?戻れェ~ッ!ティーシャ!」アメリカ兵はティーシャを捕まえようと手を伸ばした!が、ティーシャの動きは機敏過ぎて間に合わなかった。あっという間に軍用車両‘‘ハンヴィー’’前面に駆け寄ったティーシャはボンネットの上に這い上がろうと両手を伸ばした!ボンネットの上の箱……‘‘宝物’’を下ろすことに必死だった!命懸けだった!
 ……その時だった……!
スキュゥンズゥバァンダァババァァァァァァァ~ンと凄まじい轟音と衝撃が辺り一帯の地面を叩き、砂煙爆発が起こった!爆発による砂粉塵が一帯の空間に漂い居座る中、雪のように白いモノが空から多数舞い降りてきた。‘‘パッチ’’であった……。勿論、‘‘ズダ袋男’’の‘‘ズダ袋爆弾’’は消滅していた。セルズは起き上がり‘‘パッチ’’の降る方向に向かい全力疾走だ!
「ティィィィィィィ~シャァァァァ~ッ!」と叫び、血だらけで倒れている少女の元へ駆け寄った。
「大丈夫かァ~ッ!」叫ぶセルズはティーシャのシャッをみぞおちの辺りまでまくり上げた。
 腹部には『筆舌し難い大きな‘’傷‘’』があり、‘’血液など‘’が‘’はみ出て溢れだし‘’ている。セルズは‘‘救急セット’’から布を取り出すとティーシャの腹部の‘’傷‘’にあてがった。血は止まらず、ただ、押さえているだけが精一杯であった。何のしようもなかった……。
「衛生兵を呼ンでくれェ~ッ!」と叫ぶセルズだ!伏せていたアメリカ兵達は立ち上がりティーシャの周りに集まって来た。
「衛生兵を呼んでくれェ~ッ!」と再び叫ぶセルズだ。アメリカ兵は無線で「爆発に市民が巻き込まれ、重傷!出血多量!大至急、衛生兵をよこしてくれェ~ッ!」叫んでいた。
「ティィィ~シャァァァ~ッ」と、また叫ぶセルズだ!
「(うる)ッさァいなァァ……」とティーシャはセルズの呼び掛けに答えた。
「ティ~シャ~ッ!」
「また……またアンタかい?……いつも盛り上がってると邪魔しに来るンだよネ……いつも止めさせに来ンのよネ……本当にアンタうざいンだよ!」
「ああ……悪かった……」
「何ンなのサァ……ソレ?……ハァ~!ハァ~!……ハァ!……」ティーシャの容態が変わりだした。呼吸が苦しそうな様子だ……。
「ま……まるでワタシが死ぬみたいじゃないカ……ハァ!ハァ!ハァ!……生きるヨ……生きるために精一杯の出来ることをハァ!ハァ!ハァ!……しなくちゃハァ!ハァ!ハァ!……どんな困難にも打ち勝つ勇気をハァ!ハァ!ハァ!……勇気を……ハァ!ハァ!ハァ!ハァ!……勇気をハァ!ハァ!ハァ!ハァ!ハァ!……」ティーシャは呼吸が苦しいようだ。
「『勇気を持って!』……!」とティーシャをボンネットから降ろしたアメリカ兵がティーシャの脇に膝ま付いて『ティーシャの励まし』の言葉を手伝った。
他のアメリカ兵達もティーシャの側に膝ま付いた。
「ティーシャ!しっかりしてくれ!また、笑わせてくれよ!ティーシャ!」セルズは涙を堪えティーシャの傷口を布で押さえるしか出来なかった。
「ハァ!ハァ!ハァ!『自分に……』」とティーシャは『ティーシャの励まし』を続けたいようだ……。その力は、もう無くなりつつある。
「『自分に出来ることを精一杯やる』ンだよなぁ~ッ!ウッ!」泣き出しそうなアメリカ兵は泣くのを堪え『ティーシャの励まし』を手伝った、ティーシャの代わりに言葉した。
「『どんな困難にも打ち勝つ勇気を持って!』だよな!ウグッ!ハウッ!」と別のアメリカ兵が言葉した。
「『闘いなンだよな!自分との!諦めたら何もかもが終わってしまう』ンだよな!」更に別のアメリカ兵だ!
ティーシャはアメリカ兵が、手伝って『励ましの台詞』を言葉してくれることに喜び笑顔を見せた。
「『最初から投げ出しちゃダメ』なンだよな?……『自分に出来ることは精一杯しなくちゃならない!』ンだよなぁ?」と、更にまた別のアメリカ兵が手伝った。ティーシャは笑みを浮かべた。心地好い‘‘子守唄‘’を聴きながら眠りにつく前の天使のよいな安らかな笑みだ。
「『動かなケレば何も始まらない!……自分から動く』ンだよな?」
「……『自分の願いは伝える』ンだよな!……」
「『自分の意思は示す』ンだよな……?」次々に交代してアメリカ兵達はティーシャの言葉を手伝った。手伝いながらティーシャの言葉を思いだし胸に刻んでいた……。

「人間として最低なことは、何もしないクセに何も言わないクセにグジグジ不貞腐れて愚痴ってることネ!」

「泣きたい時は泣けばいい……笑いたい時は笑えばいい……いつも笑っていられる日が来ることが本当はいいンだけどね!」

「とにかく私に出来ることは前に進むこと!……黙ってたって何も始まらないヨ!……黙ってたって何も動かない!……黙ってたって何も変わらない!」

ウグッ!ハウッ!ウッ!ウッ!ウハァ~ッ!アメリカ兵達は泣き出してしまった。ティーシャは最後に言葉を残した……

「エディーに……エディに……会い……会い……た……い……」

 それは『戦争など終わり、平和になって欲しい……そして、楽しい映画をたくさん観たい……』……ティーシャは自分の願いを表したのだった……。ティーシャは最後まで闘った……。

写真集紹介『ゴミと宝石』


緑黄色社会『想い人』



第6話-2に続く……