『逢いたくて今』/MISIA



第5話-2


第5話は文字数制限をオーバーしたため第5話-2に続きます……



ダージリン、ヒマラヤ鉄道狭軌蒸気機関車ヒマラヤン・バード号
ダージリン・ヒマラヤ鉄道地図

ケータローには、あっけないティナとのお別れだった……。
ボュュ~ッ!ピシュ~ッ!ピピピィ~シュ~ッ!
カンカンカンカン!ピピピィ~シュ~ッ!カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン!
 汽笛とスチームロコモーション音が……???? つまらない……!先ほどまで乗っているだけであんなに面白かった筈のヒマラヤン・バード号……。の筈が……つまらない……。ティナと一緒に乗っていたヒマラヤン・バード号が楽しすぎたのだ。ティナのいないダージリン・ヒマラヤ鉄道ヒマラヤン・バード号はつまらない……。
 車窓から見える感動的な美しい山々も、ティナがいなければつまらない、ただの何ンのこともないただの美しい山々だ……。ティナと2人で一緒に感動的な美しい山々を見た喜びの後に、1人で感動的な美しい山々を見て、何の価値があるというのだ……?今見ている感動的な美しい山々をティナと2人で一緒に見たい……。
『美しいモノを見ても美しいと思うことが出来なくなってしまった~完全に精神的面で【変わり者】【変人】の部類に入ってしまっていた……』……と初めの方に書いたが、ケータローは本当に【変わり者】【変人】だろうか?今見ている感動的な美しい山々をティナと2人で一緒に見たい……。普通の人間なら当たり前に思うことだと思うが……?

「どうせ……オレなンて……また、1人に戻っただけ……」とオンナに関して慣れてしまった‘‘諦めムード’’だ……。
 次の停車駅‘’グーム駅‘’で降りたら機関車は去っていく。ダージリンで折り返して‘’往路列車‘’として戻ってくるが、ケータローは部品炉整備のために乗らないで残る……。‘’往路列車‘’は‘’ソナダ駅‘’でティナを乗せて、シリグリへ向かうであろう……。
 宴の時の一件があってから、ティナはケータローに姿を見せないようにしている……。やはり‘’斜め式坑道掘削工事‘’はほぼ終了している……。多分、ケータローのいない内に、シリグリ本部飯場村を去るつもりであろう……。もう、ティナに会うことはないであろう……。
「はぁ~!」とオンナのことでため息をつくのは初めてではないケータローだ。しばらく、落ち込んむだろう。そして、その内に時間が解決してくれるだろう。
 やがてヒマラヤン・バード号は‘’グーム駅‘’に到着した……。ケータローは本部飯場村医療所医師から預かった小袋を駅主人に手渡した。荷物を手に降りようとするとグーム駅主人が待ち構えていた。
「『ティンダリアの方で【グーム駅】の部品炉の整備に行ってくれ』言われたンだけど……」とケータローは駅主人に言った。
「あれ?ダージリン駅の整備所の修理炉の調整て話だゾ!」と……今度は駅主人が言い出した……。
 駅主はケータローから渡された紙包みを手に、駅側の小作業所に入るや、紙包みを開けた。中には【銀歯】が入っていた……。飯場本部村医療所医師の奥歯冠だ……。
 駅主は取っ手を持ち、ミニ取り部を修理炉の中から出した。白熱化したミニ取り部(トリベ…溶けた金属を入れる容器)のなかに、銀歯冠を入れた……。あっという間に銀歯冠は熱溶解し【液体状態】になった……。
 駅主の顔から汗が吹き出ている……。高熱のミニ取り部を粘土型の上に持って行き、慎重に溶解した銀歯冠を垂らした……。粘土型には小さな円形溝が彫られていた……。

「ソナダ駅に着いたら駅主に渡してくれ……」と、十数分の停車時間後、グーム駅主はケータローに紙包みを渡しながら言った……。グーム駅を出発するとやがて、ダージリン駅に到着した。
「あ~!修理炉なら大丈夫だ!連絡間違えじゃないやねかネ?」……やはり、駅主も同じようなことを言った……。

 ケータローの顔に喜びの表情が沸き出てきた……。

『ティナに会える???往路のソナダ駅に着いたらティナに会える???』と『降ってわいた』駅主の言葉だ!
「本当にですか?」
「あぁ!本当だよ」
「本当にですか?」
「本当だって!ワハハハハハハハハハァ~ッ!良かったなァ~ッ!」
「はい!」
ワハハハハハハハハハァ~ッ!
ハハハハハハハハハハハハァ~ッ!と嬉しそうに笑い声を上げるケータローとダージリン駅主だ!

 ダージリン駅では機関車を前後反対に客車の最後尾を連結する。往路は、もと来た道をバック運行するのだ。
 ケータローはイラついて来た!待ち時間が、こんなに恨めしいとは!
ボォュュ~ッ!ピシュ~ッ!ピピピィ~シュ~ッ!とヒマラヤン・バード号は汽笛を鳴らす……。
カンカンカンカン!ピピピィ~シュ~ッ!カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン!相変わらず騒がしいスチームロコモーション音は旅行で来た者には堪らなく魅力的な音だろう……。耳にしているだけで心ち良い……。

 ヒマラヤン・バードはやがて、バタシアループに着いた……。グルカ兵を偲ぶ塔の台がある……。ネパール山岳民族から構成される戦闘集団‘‘グルカ兵’’は、第二次世界大戦では日本軍とも交戦していた……。ケータローは塔の台に上り黙祷する……。
 小さな出店があり、ヒマラヤの美しい山々を覗むには最高であろう場所だ……。
「いやぁ~素晴らしく美しい山々だよぉ~!ヒマラヤってのはさぁ~!地球の水は風に乗り、必ずと言っていい位にヒマラヤの山々を登り~冷やされて氷河となって~!」と、あまりのヒマラヤの山々の美しさに思わず言葉を発した。ティナに言っているようだ。
「あの山々に蓄えられてンだよぉ~!だから…あンなに美しいンだよ!ハハハハハハァ~ッ!何ンだかいいこと言う(だろ~)……ッ?」とケータローはティナがいないのに、思わず声を掛けていた……。
ティナに会える!ソナダ駅に着いたらティナに会える!!!
ティナに言いたいことがある…
ケータローはティナのことばかり考えてる内に胸が苦しくなり身悶えしてきた……。
「フフフ……しめしめ……」とニヤニヤ笑ってグーム駅整備所主人だ……。
 不思議なことはダージリン駅でも、続いて起きた……。ケータローはダージリン駅の整備所の主人に聞くと「整備の話?……あ~!アレなら直ったヨ!」と、また不思議返事だ。
 ケータローはソナダ駅で降り、駅主に紙包みを渡すと、ティナを迎えに行こうとダージリン茶農家に向かった。停車時間内に間に合う筈だった。まぁ……当たり前であろう……『作戦中』なのだから……。
 停車時間が終わりに近づく頃、リュックサックに満杯のダージリン茶を詰め込み、手提げカバンにもダージリン茶を詰め込み重そうな様子で、停車駅ソナダのヒマラヤン・バード号機関車の方に歩いて来た。
「うわぁ~!」と機関士が叫ぶ!カ~ン!カ~ン!カン!カン!カンカンカンカンカンカン!と相変わらず騒がしいスチームロコモーション音だ!機関車が動き出した。
「どうしたンだぁ~?」と客車のドアからケータローは機関士に叫んだ!
「ブレーキが利かねえンだぁ~!」と一大事が起きたことを伝える機関士だ。
ヒマラヤン・バード号は走り出した。
「待ってェ~ッ!」と叫びながら走って追いかけてくるティナだ。
「おぉ~い!止まってくれェ~!ティナが~!まだ、乗ってないンだぁ~!」
「ブレーキが!ブレーキが効かないンだァ~ッ!」と前を見ていて止める事が出来ない機関士だ。
「待って下さい~ッ!」叫びながら走るティナだ。ケータローは客車から道に降りてティナの元に駆け寄って行った。
「ティナ~ッ走るゾォ~ッ!」と言いながら「ホラぁ~!荷物よこせェ~ッ!」と更に言ってティナの手提げかばんかヒッタクった!背負い袋も「よこせェ~ッ!」と避けてながら背負いを奪った!手提げカバンを片手で2個持ち「オレの手を掴めェ~ッ!」と叫びながら左手をティナに差し出した!
ティナの左手を掴みヒマラヤン・バード号を追いかけるケータローだ!
「早く来ォ~いッ!」と叫びながらスロットルを引きスピードを上げる機関士だ。
‘‘サンドマン’’の1人が客車に入って行った事
「待ってくれェ~ッ!」と鮭ながら背負い袋を背負い、右手に手提げかばん2つ、左手でティナの右手を掴みヒマラヤン・バード号を追いかけるケータローだ!やっと追い着いた!客車のドアから入ろうにも上がるタイミングを上手く掴めない!
カンカンカンカン!ピピピィ~シュ~ッ!カンカンカンカンカンカンカンカン!
ヒマラヤン・バード号は汽笛を鳴らしスチームロコモーション音のピッチを上げた!
バシアタループと往路バック
 
 アニメの恋愛場面では定番の『男の子が女の子の手を引き汽車を追いかけ乗り込む』今!まさに【恋愛場面】定番をティナと一緒にしているのだ!あとは、ヒマラヤン・バード号客車に乗り込むだけだ!
ピシュ~ッ!ピピピィ~シュ~ッ!と汽笛を鳴らして、どう見ても速度アップのヒマラヤン・バード号だ!
カンカンカンカン!ピピピィ~シュ~ッ!カンカンカンカンカンカンカンカン!
「早く乗れェ~ッ!ブレーキが効かないンだァ~ッ!」と叫ぶ機関士は絶対にスロットルを引いて速度アップしてる!スチームロコモーション音のピッチが上がっているではないか!
「ケータロー!お前の荷物だな~ッ!落とすゾ!」と客車ドアから‘‘サンドマン’’がケータローの荷物を客車外に落とした……。
『速度を落とすつもり無し&お前とティナを乗せるつもり無し』の意思表示
「待ってくれェ~ッ!」
「ソナダ駅でゆっくりしてくがいい~ッ!」
ボュュ~ッ!ピシュ~ッ!ピピピィ~シュ~ッ!
カンカンカンカン!ピピピィ~シュ~ッ!カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン!と汽笛を鳴らしピッチを上げる音をさせている!完璧にケータローとティナを置いて行くために速度アップだ!
ケータローとティナは走るのを止めた。
????とだんだんケータローとティナに不思議なことが続けて起こることに気付きだした……。2人はお互いに目で???と質問しあっていた……。
ソナダ駅に戻る道……。
「フフフ……」
「どうしたのティナ?」
「今~大変だったけどフフフ!アハハハハハハハハァ~ッ!楽しかったね!アハハハハハハハハァ~ッ!アッ?ムッ!ムッムムゥ~ッ!(ケータロー!)」
「ティナ!ずっとキミと一緒にいたい!ずっとキミか抱き締めていたい!」
ケータローはティナを抱きすくめ、ついでに、ティナに想いを告げた!
抱き締められてたティナは幸せを心の底から感じていた……。
ビビビィ~ッ!と車のクラクションが鳴らされた!狭軌線路脇の道路を車が通って行く!ブルルルルルルルル~ッ!とエンジン音が通りすぎるとき運転していた男がからかった。
「‘’仲直り作戦‘’~大成功だなぁ~ッ!ワハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!」
「何ンだい!それはぁ~ッ!」とケータローは叫ぶと……。
「あまり世話やかさないようになぁ~!ワハハハハハハハハハハハハハァ~ッに」と運転の男は叫び返してきた……。
「やっぱりなァ~ッ!皆ンなでグルなンだ……ハハハハハハァ~!」と笑うケータローだ。
「嬉しい……ケータロー……ねェ……」と目瞼を閉じて唇をうっすら開いたティナだ……。

「フフフフフフフフ……!上手くいったワイ!」とソナダ駅主は、駅舎から遠くに見える、ケータローとティナが抱き合い唇を重ねているのを黙視確認し笑った。ソナダ駅に着いたケータローはソナダ駅主に‘‘結婚’’を報告した。
 ‘‘結婚式’’はソナダ駅舎でその夜に行われた……。‘‘紙包み’’の中身はもちろん‘‘結婚銀歯指輪’’だ……。ケータローとティナは、シリグリ飯場本部村の町の人々に祝福されて一緒になれた………。その夜、ソナダに泊まった2人……ケータローとティナは幸せを抱き締めあった……。

 何度も、何度も、抱き締めあった……。数えきれない程、抱き締めあった……。

 ケータローとティナがシリグリ本部飯場村に帰ったのは、ジョン・セルズとバーン・フィッチャーは、アメリカ政府の‘‘避難誘導活動’’のためにフィリピンに出発した後であった……。
 シリグリ本部飯場村は数日後に‘‘3ヶ月の有給休暇’’が与えられた……。まず、あり得ない報酬……。その理由を数週間後に知ることになる……。

フィリピン
ルソン島中央部太平洋側
‘‘トゥポィンティング’’エリア廃棄物埋め立て処分場(架空)

 フィリピンルソン島中央部太平洋側ラモン湾‘‘ポリロー島’’(靴に似た形の島)の‘‘つま先’’が示す辺りの‘‘廃棄物(ゴミ)埋め立て処分場スラム地域‘’……【トゥポィンティングエリア~スラム】にやって来た、アメリカエネルギー省第2特殊部隊‘‘ダークベレー‘’大尉ジョン・セルズは参ってしまった……。
 海沿いのゴミ埋め立て処分場の背後には、ゴミに土砂を被せ~ゴミに土砂を被せ~の【サンドイッチ埋め立て】による高さ50mのゴミの山‘‘ゴミマウンテン’’が出来ている。スラムには、処分場に運び込まれた廃棄物の中から有価物(主にプラスチック)を拾い出して、買い取ってもらい生活している、約2万人の‘‘スカベンジャーズ’’と呼ばれる人達が暮らしている……。
バパララララララァ~ッ!とローター爆音とゴミ埃を巻き上げてゴミマウンテンの頂上に一機のコンパウンドヘリコプターが着陸した。デザートパターン迷彩服を着た兵士が軍用オートバイを降ろしている……。
「イヤァ~!臭せェ~ッ!臭せェ~ッ!臭くて臭くて堪ンねェ~なァ~ッ!じゃあ夕方に、また、ゴミマウンテンに迎えにくるよ!じゃあな!」と言いパイロットのバーン・フィッチャー操縦のコンパウンドヘリコプターは去って行った……。
 凄まじい悪臭に参ったセルズだ。マーク大佐からは【避難誘導&ビラ貼り】という、まるで‘‘罰ゲーム’’のようなことを命令されていた……。
 2万人のスラム地域住人の少数派の人は、内陸部テント村に避難を始めているが、あと大部分の住人達が言うことを聞かない。ビラ貼りなどもして避難させる命令を受けていた……。
 アメリカの電波望遠鏡施設がフィリピンラモン湾沖でフィリピンプレートが発する電磁波を観測した……。正確な日時を割り出す【地震の完全予知】が成されたのであった……。
フィリピンと関係の良好な国が避難誘導の国際活動に参加していた……。
セルズはこの‘‘トゥポィンティングエリア’’スラムで1人の少女と運命的な出会いを果たすことになる……。


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写真集紹介

上田敏博、戸井十月/『ゴミと宝石』