[re]/『もう一度』


200α+2年夏の朝
大韓民国ソウル青瓦台広場
アメリカ合衆国の各地の市街地スクリーン前
青瓦台上空ティルトローター機操縦席
アメリカ合衆国カリフォルニア州モハベリサイクル矯正センター(夜)
 アメリカ合衆国カリフォルニア州はただいま夜……モハベ矯正センターのそれぞれの牢部屋の中で囚人達はベッドに寝転びテレビを見ている。チャンクはあとは寝るだけの就寝前のリラックスタイムだ……。相変わらず1人で喋り続け笑っているチャンクだ。
「えぇ~ッへッへッへッへぇ~ッ!キショ~めぇ~ッ!いい~オンナだぜェ~ッ!早くってのこぉ~の野郎~めぇ~ッ!いつまで待たせんなヨォ~ッ!てのぉ~ッ!早く現れてこの女をギュッ~!て抱きしめてやンなッてぇ~のォ!
えぇ~ッへッへッへッへぇ~ッ!」と言いながらベッド脇のキャビネットに置いてあるコップを手にし口に付けるとトゥプ!と小さく音を立ててコップの中身を口に含んだ。
「クゥ~ッ!はぁ~ッ!ウメェ~やァ~ッ!寝る前の一杯はァ~喉に染みるねェ~ッ!クゥ~ッ!」と言いながら、口の中で転がすように味わっていた……。ブランデーか何かの強い酒か?
「それにしても何度見ても見飽きないわ~チャンクの『お酒を飲む物真似』……本当にお酒飲んでるみたいだわ!一生ムショ暮らしじゃお酒飲めないからって~お酒む物真似上手くなっちゃったワ♪キャハハハハハ~ッ!本当~チャンクっていい男だわ~アッ!」
カン!ピチャッ!と音がして、通路をはさんで向かいの牢部屋の鉄格子に張り付いて味わうかのようにチャンクを視姦していたホモっ気囚人ジョイの頭にホーローコップが当たり、少量の【お酒ではなくただの水】が掛けられた!
コロカラコロロ~ン!とホーローのコップが床に落ち音を立てるて……。
「痛いッ!アッ!冷たい~ッ!」て叫ぶジョイだ!
「やいジョイ!このチャンク様を気色悪い面して見るンじゃねぇゾ!コップ返せェ~ホモ野郎がァ~ッ!早くしろお~ッ!ファ~グ!」ベッドから起き上がり鉄格子の所まで行き、手の平を通路向かいの牢部屋へ伸ばすチャンクだ。ジョイは鉄格子の隙間から手を伸ばしてコップをチャンクに放った。
シパ!と音をさせてコップを受け止めるチャンクはジョイに言った。
「てめえ~ぶちノメされてェ~カァ~!話し掛けンじゃねぇ~!1人でコいてろってジャアァキィ~ッ!

200α-4年冬
『空港に来なさい』……秋のことだった……母からの連絡が届かなかったイ・ジョンハ…。【父の横流しの私腹肥やしの部隊の私物化……その甘い汁を吸う家族達】……正義漢の父、いつも優しく正しく育ててくれた母にはあり得ない~濡れ衣~だった。平壌大学に踏み込んできた国家保衛部の者達から、すんでの所で逃げ出したイ・ジョンハ……。
 逃げ出し、たどり着いたのは北朝鮮中部日本海側ハムン駅……。雨の日のことだった。ジョンハの足に何か?引っ掛かり、見ると死体であった。翌日になっても死体は片付けられなかった。あちこちの建物の日当たりの良い場所を見ると、身体を折り曲げたまま死んでいる老人や子供が沢山いた……。
 ジョンハは意外にも、すぐに仕事にありつけた。信じられない程に忙しい仕事であった。人手が足りない程であった。1日中働いた……。死体を片付ける仕事だった。勿論、恐ろしく安い賃金で働かされた。
 仲の良い死体片付け仕事仲間も出来て打ち解けあい、自分の身の上話を聞いてもらった数日後のことだった。
「アイツです!」仕事仲間が自分を指差している。黒い党員服を着た男数名がジョンハを見つけるや走って追いかけてきた。
「イ~ッ!ジョンハァ~ッ!待てェ~ッ!」
 密告されたのだろう……。褒美のお金がもらえるなら何ンでもする……。食べていくのに~打ち解けた仕事仲間~など要らない……。
 当局の者達から逃れて、あちこちさ迷いたどり着いたのは『灯台もと暗し』……意外にも父の部隊地域である。ジョンハの実家のある北東部遠隔地域の、北朝鮮北東部の重要な港湾都市清津であった。空腹に押し潰されそうな毎日……。あちこちに転がる人間の死体と同じく、痩せ細っていく自身にジョンハは決意をしたのだった。
「このままでは、飢え死にだ……ここにいて死ぬのなら……ご飯を、ひとさじで構わない食べてから死にたい……食べてから死にたい……」と脱北を決意したのであった。
『北朝鮮の人民が餓死しても良い……100万人の党員がいれば……』と金正日は言う……。
 草しか食べ物がなく、人々は空腹で餓死しそうであった。起き上がることすら出来ないガリガリの骨だけのように痩せ細った子供があちこちにいる。栄えている筈の清津でも餓死者が出る程に飢餓状態の北朝鮮……。極寒の中朝国境の川……凍る豆満江を凍えながら渡り脱北した。
 豆満江を挟んで、原始的な北朝鮮の対岸は夜は明るく栄えた近代的な街である。栄えている延辺朝鮮族自治州延吉市の朝鮮族に匿ってもらうことが出来た。脱北者は主に非政府組織(市民主体の非営利目的の【海外の課題解決や社会を良くする活動の団体】』……助北支援団体非政府組織)NGOの助けを受ける。NGOの助けにより第3国に亡命するために、中国南部からベトナムに密入国することとなった
 車で中国南部まで行き、ベトナムの毒蛇がうようよいるジャングルを抜け崖を越えて、タイを目指す。タイに更に密入国し、行政機関や大使館等に駆け込み保護を求め、その後、第3国に亡命を果たすパターンを目指すこととなった。
 ここでジョンハの運命を変える出会いがあった。亡命までの様子を取材する日本の報道通信社【アジアワイドニュース(架空)】ジャーナリスト岩国豊と出会った。
【アジアワイドニュース】は日本、中国、韓国、朝鮮、フィリピン、パキスタン
からの出身者達によるフリーのジャーナリスト達による、Web通信協同体組織だ。ビデオ取材によるジャーナリズムを手法として、日本、他、外国にドキュメンタリー、ニュースを制作してテレビ局へ提供配信している。
 200α-6年の中頃から、北朝鮮人自身による取材による『トマンコウ(架空)』を定期出版物として刊行している。が、記事だけでは『見る側』にはインパクトを与えることが難しい。豊は一目瞭然の動画……素材が欲しい豊であった。
 ジョンハに信じられないことを言う豊であった。

「北朝鮮に越北(再密入国)して、北朝鮮国内の真実をビデオカメラで撮影取材してきて欲しい……」
「何ンだって?……死にたくなくて命からがら脱北してきたンだ!また『北朝鮮に戻れ!』て~岩国シィ~!何を言ってるのか分かって言ってるのかァ~?」
「キミにはNGOが力を貸してくれる……ベトナムとの国境まで車で乗せて行ってもらえる……だけど……君の祖国では、これからも人々が餓えて死んでいくンだぞ」
「…………岩国シィ~は…………食べられない苦しみなンて知らないだろう……オレは……嫌だ……もう、あんな国に戻るなンて……冗談じゃない!」
「ヤァ~!おい!イ~!ジョン!ハァ~!……キミはそれでいいのかぁ~ッ?……これからジャングルを越えてタイに行けばキミの願い『ひとさじのご飯を食べから死にたい』は叶う!というか……既に叶ってるなァ~ッ!……キミがご飯を食べられればいいか……あとは知らない……そういうことッ?……(かな?)」
「ウワァァァァァァァァァァ~ッ!…………やめてくれェ~ッ!岩国シィ~ッ!あなたに!……あなたに何が分かるッてんだァ~ッ!ウワァァァァァァ~ッ!」泣き叫ぶジョンハに豊は何も言えなかった……。

200α-3年始め
 中国南部に向かうワゴン車に乗る脱北者達数人と共にジョンハはいた。脱北者の多くが中国南部から、東南アジアの毒蛇がいたり切り立った崖を降りたりなどして、ジャングルを経てタイなどに密入国する。その後、大使館などに駆け込み保護を求め、更にその後に第3国に亡命を果たすパターンだ。
 ワゴン車を運転するのは【NGO】……海外の課題解決に取り組み社会をよくする活動団体のメンバーだ。
「みんな~!必ず!また会おうな!」
「本当にいいンだな」豊はジョンハに言った。
「ええ~!私は北朝鮮のありのままの人々の暮らしをそのまま見てもらいたい!……北朝鮮のあるがままの姿を伝えたい!例えば~列車の中には何人が乗るとか~どうやって寝るのか~ご飯はどんな器でどんなモノを食べるのか~何時に起きて便所に入って~出勤して~寝るまで何をしてるか……しっかり撮って外に……外国の人達に見てもらいたい!」熱く語るジョンハだ。
「お~い!便所ン中まで撮るのかよ~ォ?」脱北者仲間の1人が聞いた。
「当たり前だよ!北朝鮮の便所も見てもらうんだよ」
「お~い!オレが便所入ってる時とか撮って(ないよな)ッ?」
「ヤァ~!ヤァ~ッ!お~い!お~い!便器とかを撮るンだよォ~誰がお前がクソしてる所なンか撮るかよお~てのォッ!このばか野郎!セッケョ~オ!」
ワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!ワハハハハァ~ッ!と下品ながらも大爆笑で最高に和気あいあいのワゴン車の前だ。
 数分間位バカ笑いしていたが、やがて笑い声が止んだ……。別れの時間が近付いてきた。しんみりしてきた。
「必ず北朝鮮を変えてやる!私は誰も飢え死にすることなどない国になるように!私は何かをしなければならない!私が火種になるンです!」ジョンハは続けた。
「気を付けてな!捕まったら処刑だぜ!せっかく食べるモノ食べて生きていられるンだ!やはり大切なのは命だ!」
「もし捕まれば銃殺だよ!気を付けてな!」と心配する同胞達だ。
「ああ~!骨ばかりのガリガリになってたのに今こうして生きてるンだ!ドジは踏まない!」とジョンハは答えた。
「出発だ!」運転席のNGOメンバーが言った。
 泣き叫ンだ翌日に、豊の頼み【越北潜入盗撮ジャーナリスト】を引き受けるジョンハは見送られる側から見送る側になっていた。脱北者達と取材の豊を乗せNGOメンバーの運転するワゴン車は匿われ家前から出発した。スモークフィルムの貼られたリヤウィンドウからだが、車内から脱北仲間達が手を振るのがうっすらと見えている……。遠ざかる車にいつまでも手を振るジョンハだ……。

 更に数日後……
ワハハハハァ~!アハハハァ~ッ!笑い声の匿われ家だ……。豊はパソコンとビデオカメラを手にジョンハと和気あいあいだ……。
「へぇ~ッ!すごい面白いなぁ~!岩国シィ~!もう一回早回し再生やって下さいよォ~!ペラペラペラペラ~!て小人みたいな声でワハハハハァ~ッ!あれは面白いです~!ワハハハハァ~ッ!」
「ヤァ~!ちょっとさぁ~ッ!昔のイルボン……日本の小学生と同じだな!8ミリ映画の逆回しや早回ししただけでゲラゲラ笑ってたからな!昭和のイルボンの小学生と同じだな…………ヤァ~!オモチャじゃないンだぞ……まずは、ビデオカメラからな!」
「……フスゥ~ッ!……ハァ~ッ!……いや~!面白かった~!……すみません……教えて下さい……」と、あまりに単純なことで大笑いしていたジョンハであったが、深呼吸をした。しかつめらしい顔になると、岩国をビデオカメラの操作方法の教えを乞うのであった。
「いいかい……ビデオカメラを被写体に向けたら動かさない!……ゆっくり数えるンだ!」
「ゆっくり数える?」
「あぁ~そうだ!カメラを向けたら『いち!…にの!…さんの!…よんの!…ごぉ!…』てゆっくり数えるンだ!人は映像を『何が撮れてるか?』最低5秒間は見ないと認識出来ないンだ……撮ってきたモノを見て『北朝鮮では人々がどんな苦しい状態にあるのか?』多くの人達に見てもらうんだ……いくら記事を書いた所で、実際に映像で目にしないことには北朝鮮で何が起きているかは、人々は分からないだろ?」
「…………ハナ!(ひとつ)……トゥル!(ふたつ)……セッ!(みっつ)……ネッ!(よっつ)……タソッ!(いつつ)」
「……カット!……オッケーだ!」
ワハハハハハハハァ~ッ!アハハハハハハァ~ッ!と匿われ家はジョンハと豊の笑い声に包まれた……。北朝鮮では初となるビデオカメラによる潜入盗撮ジャーナリストの誕生だった……。

北朝鮮脱北ジャーナリスト…リ・ジュン取材映像~写真📷動画2#北朝鮮 #金正日 #飢餓

イ・ジョンハのモデル…リ・ジュン氏


北朝鮮某所市場
 越北(北朝鮮へ密入国)は意外に簡単であった……。国境警備の兵士は【賄賂】を渡せば簡単であった。アジアエクスプレスが費用を出してくれたカネを渡せば、自由に豆満江を渡るのを目をつぶってくれた。給料を貰っていない北朝鮮兵士は~カネ~を渡せば『ハムンで自分を売った打ち解けた仕事仲間』などより、ずっと信用できた。ジョンハは延吉と北朝鮮の行ったり来たりを、ほぼ自由に出来る状態になっていた。
 国境警備兵士は自分達から【部隊内盗撮ジャーナリスト助手】の兵士の紹介まで言い出しできた。バレたら処刑は間違いない違反だ。が、北朝鮮の軍隊では~カネ~を出せば、どんなモノもの映像も手に入るようだ。
【盗撮ジャーナリスト助手】兵士パァチュンヒは沢山部隊内の様子を流出させてくれた。
【工業用アルコールを洗面器に入れて水割りを作る女性兵士、豆腐を肴に飲む上官】【豆満江の岸に板に打ち付けた釘に草を被せ『こんな鬱陶しい時代~早く終わって欲しい』と体制の崩壊を願いながら~罠~を仕掛ける兵士】【女性への性的暴行尋問】など軍規の乱れなどの流出映像もあった。
 ジョンハを驚愕させたものがあった……。父を陥れた部隊指揮官コンジョンバルの姿が撮られた動画であった。まさに鬼畜であった。北東部遠隔地域部隊内保衛所内での若い女性への取り調べは、部隊指揮官であるコン・ジョンバル自らが行っていた。取り調べの手法は部隊指揮官自らが行う【性的暴行尋問】であった。
 
 配給が途絶えた北朝鮮では、人々は闇市場で必要なモノを手に入れていた。
闇市場では【横流し食糧】らしき食糧支援の袋まで確認できた……。
その闇市場の地面にこぼれ落ちた食べモノを拾うコチェビ(浮浪児)
 ジョンハは北朝鮮国内のあらゆる所に出没した。
ジョンハには信念があった……。いつか自分が捕まった時のために【自撮りメッセージ】の撮影をした。ビデオカメラのスイッチをONにすると、ビデオカメラに向かい指で数えながら喋り始めた。
「……ハナ!(ひとつ)……トゥル!(ふたつ)……セッ!(みっつ)……ネッ!(よっつ)……タソッ!(いつつ)……草しか食べるモノがなく……空腹ガリガリに痩せ細って北朝鮮を離れました……NGOの人達に助けてもらって今~私は生き延びることが出来ている……助けられた命……今度は私が誰かのために……『私は、何かをしなければならない!』と強く決心をしたのでした……今はまだ、私1人だが、私が火種となれば、いつか北朝鮮は変わるでしょう!もし、捕まれば民族反逆者と呼ばれるでしょう……秘密撮影が危険であることは分かっています……私がしたいことは……外のことを知らない北朝鮮の人々に外部の情報のビデオを制作して北朝鮮の人々に知らしめることです……北朝鮮の人々は人権をふみにじられていることにすら気付いていません……国家が『やれ!』と言うとおりに従っているのです……私は何も知らない北朝鮮の人々達を目覚めさせたい!…………もう一度言います……捕まれば私は民族反逆者と呼ばれるでしょう……しかし!私は!…………私は!………私は!堂々といたい!民主主義のためにしています!私の願いは皆が平等に暮らせる民主主義です!」言い終えるとフゥス~!ハァ~!と深呼吸のジョンハだ。
「……カット!……オッケーだ!」と独り言からビデオカメラのスイッチをOFFにした。

 ここで十数年前のテレビニュース番組のドキュメンタリー枠では【北朝鮮潜入盗撮取材映像】が放送されていた。現在では手に入らないが筆者の私の記憶から何点か……。

『国際世論をかわすために【コチェビ収容所】→毒饅頭を食べさせられるために収容所から逃げ出し、道に倒れて泣き続ける子供……母親から捨てられコチェビになったとのことだ。』

『生きて行くために売春をした女性達~何名かが木杭に縛られ一斉銃殺処刑……人々の見ている前で行う』

『2007年初め……伐採したはげ山に数えきれない植林か?……墓碑代わりの木杭であった……2006年核実験の制裁に中国は重油と食糧支援を切らざる負えなくなり、冬に到来した大寒波に50万人が深刻な状況に陥った……その結果』

 ジョンハの潜入盗撮映像は日本や韓国などの報道番組で200α-3年頃から流され始めた。インターネットでも世界中に流されることとなっていた。映像はかなり、ショッキングなモノばかりでありニュース番組視聴者をくぎ付けにした。徐々に世論が高まり始めた……。世論の高まりは事を動かし始めた。
 この時に、北朝鮮の人々の飢餓の様子が動画が世界中に広まるということは、経済発展著しい中国にとって【緊急事態】に等しいのであった……。何故か……?
 中国は地政学的戦略の優先のために「38度線に干渉しないが米帝国主義が38度線を越えた場合中国は必ず攻撃する……」とアメリカに警告している。朝鮮半島北部に誕生した社会主義政権を守ることが【台湾解放(侵攻)】より優先的である?北朝鮮の政権の崩壊は断固避けさせたい中国であり、中国にとっては【緩衝地帯】として北朝鮮は何としても存在し続けてもらわねばならない国である。
 そのために75年から操業の中国大慶油田~丹東~鴨緑江を渡るパイプラインにより重油を、96年からは毎年50万tの食糧支援を北朝鮮に行っている……。
 そんな中国の【親(例えるならば)】の願いなどお構い無しに、金正日政権の【わがままっ子供のおもらし】……。北朝鮮の人々の飢餓の様子が動画が、世界中に垂れ流し配信されてしまっている。
 200α-1年……ミサイル開発に巨額の費用を費やし、公的扶助で助けねばならない人々を飢えさせて、地域の安定を脅かしている北朝鮮……。核開発の疑惑はもう確信レベルにまで達している。餓死者を大勢出し、子供達は骨ばかりのガリガリに痩せ細って浮浪児となっている。
「そんな国に援助をして、中国の信用を低下させて【中国経済マイナス】を発生させて、オレは仕事を失ったってことか?【中国共産党指導部】は何をしてるンだ!」暴動が起きない方が不思議であった。
「人民が飢えて死のうが我が共和国を守るためには核兵器が必要なのだ!」と保身のため以外の何モノでもない【わがままな言い分】だ!
 世界中に流されるガリガリに骨だけのように痩せ細っていく子供の映像がメディアに流れれば流れるほど強硬になり、核ミサイル開発に更に金をつぎ込む金正日政権……。
200α-3年、北朝鮮朝鮮は核開発宣言をしNPT核拡散防止条約から脱退した。中国はに北朝鮮への圧力として重油パイプラインを3日停止した。
 北朝鮮は【切ることの出来ない厄介者の国】だ。【人々の飢餓】がメディアに流れ世論にインパクトを与えている。このまま援助を続けて行くと『中国の信用』に関わってくる。【信用の低下】は【中国経済のマイナスの発生】に繋がる……。
 12億~13億人の大所帯の国である中国において【マイナスの発生】イコール『中国共産党指導部への高まる巨大な不満』であり、デモに発展してしまう。やはり経済発展著しい中国にとって【緊急事態】に等しいのであった。
【台湾解放(侵攻)】より優先的な北朝鮮。ガリガリに痩せ細った浮浪児が闇市場の地面に落ちた食べモノを拾い食いする映像がメディアに流れれば、北朝鮮への援助を切らざる負えなくなる。『中国共産党指導部』は中国国民の不満の矛先を【反日】に反らした……。『中国共産党指導部への高まる巨大な不満』のガス抜きである。
 が、あまりの中国国内ダメージに『反日矛先を反らし』を止めるのであった。そんな中国共産党指導部の悩みなど構わないのか北朝鮮……?中国は面子を完全に潰されることになる。
 200α-1年……北朝鮮は『核兵器保有』を公式に宣言した。200α年7月には弾道ミサイル発射実験、10月には初の核実験が北朝鮮北部豊渓里にて行われた。TNT火薬換算にして最大15キロトンプルトニウム型の初期の原子爆弾レベルで実験は一定の成功を納めたらしい。
 翌週には国連安全保障理事会にて制裁決議が全会一致で採択された。中国からの重油の援助は停止された。200α年冬には-40度の寒波がやってきて50万人が深刻な状況に陥った……。
200α+1年初旬
 ……伐採されはげ山となっていた山の斜面には数えきれない木杭がたっていた。強烈な寒波により陥っていた深刻な状況を乗りきれなかった人達の墓標であった。
「共和国を守るためには核兵器が必要なのだ!ミサイルが必要なのだ!そのためには飢えて命を落とす人々がいるのも知ってる……」と保身以外の何モノでもない金正日だ。
 北朝鮮の痩せ細り飢えた子供達の映像が世界中のメディアに流れれば流れるほどに強硬になっていく金正日政権北朝鮮だ。金正日には、わかっていた……。
 食べるのに困らなくなれば『子供に教育を!』『医療を!』『仕事をくれ』『家が欲しい』人々は飢えていなければ欲はどんどんエスカレートしてやがて【民主主義】を求め『海外との経済活動』を求め出すことなど目に見えといた。わかっていた……。偉大なる父の『親の七光り』の自分など、すぐに引きずり下ろされることも……。
 面子を完全に潰された中国は激怒した……。中朝貿易は大幅に制限され、大慶油田から、鴨緑江川底を通り丹東を経て北朝鮮に送られていた【重油パイプライン】はストップされた。

200α+1年北東部遠隔地域
 ……はげ山の墓標の前に若く美しい女性が憔悴しきって手を合わせていた。『深刻な状況に陥った50万人』の内の2人の墓標に手を合わせていたのはファン・チョンミだ。チョンミの両親は冬の寒波に『深刻な状況』に陥り命を落とした。大学を卒業してからは清津で働き始めたチョンミだった。皮肉にも別々に暮らしていたため、深刻な状況には陥ることなく命を落とすことはなかったようだ。

200α+2年初夏
 イ・ジョンハの名前は【北朝鮮潜入盗撮ジャーナリストの象徴】として世界中に知れ渡たっていた。中国公安当局も延辺自治州の~脱北者支援NGO~の摘発のため目を光らせ始めていた。
 イ・ジョンハの他にも数人の【北朝鮮潜入盗撮ジャーナリスト】が生まれていた。この頃になるとイ・ジョンハは素性がバレてしまっていて、金正日にまで知られる存在となっていた。北朝鮮には行けなくなり、もっぱら潜入盗撮ジャーナリストの延吉の匿われ家で潜入盗撮ジャーナリストの指導役をしていた。
 ある日、岩国が「今すぐここを移るんだ!」と言った。匿われ家の移動は頻繁になって来た。最近は、延吉にまで中国公安当局の者が来てジョンハを探し回るようになっていたのだ。
『国(自分が君主であること)を守るためにはミサイル、核開発を続けなければならない……例え人々が死のうが……』金正日の身勝手な理屈……。
『北朝鮮の飢えた子供達の映像』が世界中に流されることが、北朝鮮が核実験やミサイル実験をして強硬な態度を見せる大きな理由の1つとなり始めていた。
『人々を食べさせる能力の無い政権』というレッテルを貼られ世界中に流され、指導者として辱しめを受ける『北朝鮮の飢えた子供達の映像』だ。新たなミサイル実験、核開発をせねば体裁を繕うことが出来ず保身が出来ない……という【テロ確信犯】意外の何モノでもない……。
【潜入盗撮ジャーナリスト】の存在は、金正日体制にとって『巨象を倒す蟻』になりかねない危険な存在となり始めていた。『北朝鮮の体制維持』は何がなんでも避けたい中国は【北朝鮮潜入盗撮ジャーナリスト】【脱北支援NGO】の摘発を強化し始めていた。
 いつでも移動出来るように、持ち物はバッグ一つにまとめてある。新しい匿われ家に着くとジョンハは岩国に告げた。
「そろそろ潮時かな……自分もベトナムからタイに渡り……第3国へ……」
「……ジョンハ……わかった……今までありがとう……すぐにに手配する……数日の辛抱だから……建物から一切、外に出ないでくれ……」

北東部地域部隊内国家保衛部保衛室
「【北朝鮮潜入盗撮ジャーナリストの象徴】イ・ジョンハを!何が何ンでも捕まえるンだ!ヤツをおびき出せ!最後の消息は何処だ?行動を全て洗え!写真を提出させろ!」 
 今や【潜入盗撮ジャーナリストの象徴】となったイ・ジョンハ……。金正日の激怒の命令により、国家保衛部は徹底的にイ・ジョンハの周辺を洗った。
『指輪をはめてもらい瞳を輝かせてイ・ジョンハと見つめ合うファン・チョンミ』の写真が国家保衛部から北東部遠隔地域部隊内保衛部に送られた。部隊指揮官コン・ジョンバルは部下に命令だ。徹底調査の結果で『盗撮映像流出役の兵士』はパァ・チュンヒと判明した。
「ファン・チョンミは大学を卒業した後~何処で?……今は何をしている???」
「~現在、清津の【パルポル貿易】で働いております!」
「罠を張ってヤツをおびき出すぞ!まずは~ファン・チョンミに【いいがかり濡れ衣嫌疑】を掛けて保衛所に引っ張って来い!徹底的に痛めつけ拷問しろ!……イパァ・チュンヒを同室させてな!」
「はいッ!」
「ほぉ~……フフフ……なかなか美しい娘だな……イ・ハチュルの倅の愛する女か……」コン・ジョンバルは悪党の顔に嫌らしく薄笑いで、ファン・チョンミの写真を見た。舌なめずりをした。
「…………」部下の兵士は部隊指揮官コン・ジョンバルの異常な性癖拷問を想像して恐怖に身震いした……。

数日後
地域部隊内保衛部に保衛室
【言いがかり濡れ衣嫌疑】に戸惑いながら呼び出されたチョンミ……。仕事をしている~パルポル貿易~は外部からの情報、金銭、輸入、輸出を扱っている。が、保衛室に呼ばれて、身に覚えがない横領と情報漏洩で取り調べを受けていた。いきなりの言いがかり嫌疑を掛けられ暴力を受けた。
キャアァァァァァ~!悲鳴をあげ泣き叫ぶチョンミだ!男の力で殴られたり蹴られたりする生まれて初めて経験する暴力の痛みと恐怖だ……。
「本当に知りません!私は~使い込み~などしていません」泣き叫ぶチョンミだ。
 が、北朝鮮がどのような状況にあるのか、金正日の無能ぶり、北朝鮮国内では知らされてない情報を扱うのも仕事だ。閲覧せずとも目の前に勝手に表示され知ることもできる。イ・ジョンハが『北朝鮮国内の飢え苦しむ人々』のために潜入盗撮取材を続けていたものの、外国での反響が大きく有名になりすぎた……ということも知ることが出来た……。そのことが、いけないというのか?
「なら!何故?データの数字が合わないンだ?このアマァ~ッ!お前が盗んだんだろォ~ッ!さっさと吐けェ~ッ!」と怒鳴り付けながら若い女性の腹部を蹴る保衛室兵士だ。床に転がるチョンミは苦しさを通り越して気が遠くなり始めていた。
 最近、保衛室の取り調べ役兵士になったパ・チュンだ。部屋の隅に仕掛けた隠し撮りビデオカメラが一部始終を捕らえている。命令とは言えチョンミを殴ったが、それ以上は何も出来なかった。もう1人の暴力尋問を黙って見ているしかできなかった。その時だった!
スチャ!と音がして扉が開き入って来た者がいた。
「部隊指揮官にキョンレイ!(敬礼)」パ・チュンヒは叫び敬礼した。もう1人の尋問役兵士もチョンミへの暴力尋問を止めて敬礼だ。手の平を見せて入って来た部隊指揮官コン・ジョンバルだ。
 コン・ジョンバルは部隊指揮官だが、部隊保衛室の直接の権限があるワケではない。が、ジョンバル曰く「地域人民に対し威厳を保つために、部隊指揮官自らが厳しく接する」ことが必要らしい……。
 床に転がるチョンミのスカートがはだけ見せている美しい脚に、ジョンバルはング!と音を立てて生唾を飲み込んだ。ンフゥ~ッ!と荒い鼻息を鳴らし舌なめずりをした。上着のボタンを外しながら言った。
「ハァ……ハァ……ダメじゃないかぁ~優しくしないと……暴力はいけないヨ~優しくしないとねェ~……ハァ……ハァ……出てなさい……ンフゥ~ッ!」と性欲まる出しの興奮の荒い息だ。
「キョンレイ!(敬礼)分かりました!……お……おい!出るぞ!」とパァ・チュンヒに言う兵士だ。

保衛室前廊下
「アァ~シィ~ッ!いやいや~!参ったねェ~ッ!まただよ~ッ!……若い娘の尋問になると~嗅ぎ付けたように現れて【生娘か?】【そうじゃないか?】を調べていくんだよなァ~!」
「『【生娘か?】【そうじゃないか?】』て?……えェ~ッ?」
「無理矢理にだよ……参ったねェ~ッ!アァ~シィ~ッ!いやぁ~ッ!」
キャアァァ~ッ!と保衛所尋問室内からの若い女の悲鳴が廊下中に響き渡った。確かにジョンバルがチョンミに無理矢理調べを始めたらしい様子だ。中からの音で手に取るように分かる。
ガタガタン!と机に何か乗せる音がした!ガタガタン!と机の脚が床を叩く大きな音が響いた!
「キャアァァ~ッ!やめて下さい~ッ!」と机に乗せられ、ジョンバルに両手首を押さえ付けられながらも抗うチョンミらしい……。無理矢理に下腹部を重ねようとしてくるジョンバルに抗うチョンミだが、暴力に抵抗を止めざる負えなくなったようだ……。それ等が手に取るように分かる……というか、部屋の外の兵士達に聞かせての【調べ】に性的興奮が高まる変質的な人間だ。権力を得てオンナが
自由に手に入ると『普通の~』では満足出来ないようだ。
「アァ~ッ!」
「やめてェ~ッ!」
「うるさい~ッ!大人しく受け入れろォ~ッこのムスメがぁ~ッ!えいッ!えいッ!」パチンッ!パチンッ!パチンッ!とジョンバルが怒鳴り付け平手打ちをしてチョンミを大人しくさせているようだ。廊下中にその様子の音が響き渡る。
 無理矢理に下腹部を重ねようとしてくるジョンバルに抗うチョンミだが、暴力に抵抗を止めざる負えなくなったようだ……。それ等が手に取るように分かる……。 
「アァ~ッ!」
「やめてェ~ッ!」
「オォ~ッ!アァ~ッ!オォ~ッ!」と恍惚の叫び声を発し始めたジョンバルだ。
「痛いッ!やめて~ッ!」と何やら痛みを訴え始めたチョンミだ!
「やめてェ~ッ!」
「オォ~ッ!アァ~ッ!オォ~ッ!」と恍惚の叫び声を発し始めたジョンバルだ。
「オォ~ッ!アァ~ッ!オォ~ッ!アァ~ッ!」ジョンパルはまともな人間ではないようだ。
「痛い~ッ!痛い~ッ!アハァ~ッ!アァ~ッ!」
「エェ~ッ!大人しく受け入れてろォ~と言ってるだろうが~ッ!えいッ!えいッ」と叫び共に性的暴行に力がこめて没頭し始めるジョンパルの発する音と獣のような叫び声が廊下に響き渡った。ジョンバルは部下に聞かれて恥ずかしくないのか……? 
 というか、部屋の外の兵士達に聞かせての【調べ】に性的興奮が高まる変質的な人間だ。権力を得てオンナが自由に手に入ると『普通の~』では満足出来ないようだ。
「アァ~ッ!アァ~ッ!」と性的暴行をされて泣き叫ぶチョンミの悲鳴が廊下中に響き渡った。
「アァァァァァァァァァァァァ~ッ!」
「ァァァァァァァァァァァ~ッ」とジョンバルの一際大きな声と共にチョンミの叫び声がした。静かになった保衛室前廊下だ……。
 部屋の隅のパァ・チュンヒの荷物を意識しながらジョンバルは深呼吸しながら言った。
「ふぅ~ッ!アァ~シィ~ッ!……『横領しました』正直に吐くまで……アァ~シィ~ッ!ふぅ~ッ!毎日この部屋で尋問する……何……次からは私の【虜】にしてやるさ……イヒヒヒヒヒィ~ッ!」
「アフゥ~ッ!アァァァァ~ッ!ウゥゥゥゥゥゥゥゥ~ッ!アァァァァ~ン!」
ジョンバルの嫌らしい笑い声とチョンミの泣き声が保衛室前の廊下に響き渡った……。

更に数日後

延辺自治州延吉市内
延吉市内アジアエクスプレス事務所
「お金を下さい……お願いです……行かなければ……」とパァ・チュンヒが流出させた【ファン・チョンミが連日、性的暴行にあっているらしい動画】を見て血相を変えるジョンハだ!
「止めろ!……これは罠だ!……『豆満江を渡り、中国と北朝鮮を自由に行き来して潜入盗撮取材をする~【北朝鮮潜入盗撮ジャーナリストの象徴……イ・ジョンハ】~を何が何ンでも捕まえろ!』と今やキミは~お尋ね者~なンだゾ!公安当局警察隊もキミを捕まえようと豆満江の川岸には目を光らせ始めたンだ!豆満江には近寄らない方がいい!」と部屋の中の事務机に座る豊だ。
「お願いします!……お金を下さい!……チョンミを連れて来たい」
チラ!と手提げ金庫をしまった書庫棚下を見た豊だ。
「ダメだ!……アッ?」
「お金~そこにしまってあるンですね!……お願いします!……お金を下さい!……チョンミを連れて来たい」と【お金のありか】がわかったジョンハだ。書庫棚?近寄るジョンハを止めようとする豊だ!が……。
「ダメだ!……アッ?」
ゴバキッ!と大きな音をさせてジョンハは豊を殴った。
ドダン!と大きな音をさせて豊は床に倒れて失神した。
ガタガタン!と音をさせてジョンハは書庫棚下から手提げ金庫を取り出した。手提げ金庫を抱えるとジョンハは、倒れている豊に言った。
「豊さん……ごめんなさい……」ジョンハは失神して床に倒れている豊に深く頭を下げると部屋を後にした。

その日の夜
 豆満江の川岸から徐々に青々した背の高い草原をかき分け川岸に近づいて行くジョンハだ。川の流れる音が近づいててきた時に(「おや?」)と何かの音に気がつくジョンハであった。
トブトプップッ…………!と遠くから音がする。ヘリコプターのローター音が近づいてくるではないか!強烈な光量のサーチライトでス川岸を真昼の如く照らしている。
ワォアンッ!ワォアン!オォオォン!ワォアン!と大型犬らしい犬か吠えているのが聞こえてきた。
ドゴォドゴォドゴォドゴォドゴォッ!ドゴオドゴドゴォドゴドゴォ~ッ!とヘリコプター爆音を轟かせて接近してきた。
川岸を川に向かい走り出したジョンハだ!川の水の中に逃げ込むしか逃げおおせることは出来ないであろう。
ドゴォドゴォドゴォドゴォドゴォッ!ドゴオドゴドゴォドゴドゴォ~ッ!と、かなりローター音が近づいて来た、その時だった!
ワォアンッ!ワォアン!オォオォン!ワォアン!と大型犬シェパードが3頭現れジョンハの腕や脚に噛みついて来た!
 公安当局警察隊の警察犬だ!すさまじい力で噛み付いてきた警察犬だ!逆らえばバラバラに食いちぎられそうな程にすさまじい力だ!警察犬3頭に地面にねじ伏せられ悲鳴を上げるジョンハだった!
「うぐわぁ~ッ!アァ~ッ!」と叫ぶジョンハと警察犬3頭が、ヘリコプターのサーチライトの強烈な光で照らされ続けている……。
ドゴォドゴォドゴォドゴォドゴォッ!ドゴオドゴドゴォドゴドゴォ~ッ!公安当局のヘリコプターの爆音が真上から強烈な光を浴びせかけている。銃を持った公安当局隊員達がジョンハに近づいて行った!

翌日……嫌疑不十分としてファン・チョンミは開放された……。チョンミは思った『もうジョンハには会えない』……愛する男~ジョンハには口が避けても言えない。保衛所で毎日、汚されたとは……。
 舌を噛んで死ねたのに死ななかった。ジョンバルのようなけだもののような者に無理矢理に快楽を味あわされ、舌を噛んで死ねたのに死ななかった。醜く汚されたのは身体だけでなく心もであった……。
 清津の街を歩けば街行く人達が、自分を見てヒソヒソ話をしている。パルポル貿易に着いて理由が分かった……。ジョンバルに汚される前の自分が映った動画が、日本、韓国などアジアの国々のテレビニュース番組で、インターネットの動画配信で全世界中に流されている事を知ってしまった。体制を守るために情報は遮断されている筈なに、インパクトがあるものは北朝鮮の人々にあっという間に広まってしまうのだ。
 流石にフレームアウトしているが、机の上で汚される直前までの動画だった。『ジョンバルの腰から下と、チョンミの美しい脚』が暴れ動く様、頬を叩く音がして、美しい脚の抵抗が無くなり汚される直前までの動画だ。
 パルポル貿易にいたくない……でも北朝鮮で生きていくためには働くしかない……。
 針のむしろのような時間は意外に短かった。日本や韓国などアジアのニュース番組が見られるパルポル貿易で、驚愕のニュースを見てしまった。
『恋人を助け行くために越北しようとした【北朝鮮潜入盗撮ジャーナリストの象徴】イ・ジョンハ~豆満江中国側川岸にて中国公安当局警察隊に拘束される』
 ニュースどチョンミが『汚されたらしい』直前までの動画が流されている事を知ったチョンミだ。醜く汚された自分を救いだすために危険を顧みず越北しようとして拘束された!まだ、ジョンハは~こんな私を愛してくれている~ことを知るチョンミだった。目を大きく見開くと涙が次から次へと沸き零れ出て両頬を流れ伝い顎で大粒の雫となり零れ落ちた。

わずか数週間あとのこだ……

 中朝国境の川に掛かる橋の中央……北朝鮮の軍用車両が、イ・ジョンハを身柄引き渡しのために停車させている。中国の車両が橋に向かったが、すぐに停止した。数分して中国車両はUターンした……。


それから……更に数週間……ことが動くのは早かった……

200α+2年夏の朝
延辺自治州延吉市内
アジアワイドニュース延吉事務所
 国籍様々な6人のフリーのジャーナリスト達によるWebニュース制作会社アジアワイドニュース事務所には、瞳をキラキラ輝かせている6人がいた。感動の瞬間を待ちわびていた。
 韓国人、朝鮮人、中国人、フィリピン人、パキスタン人……そして日本人である岩野豊の6人のフリーのジャーナリスト達によるWebニュース制作会社アジアワイドニュース事務所は、キッカケを作った!……重要な役割の一部になっている。
 脱北者支援団体非政府組織NGOが脱北者を第三国へ亡命させるまでを取材したり、イ・ジョンハのような【北朝鮮潜入盗撮取材】による動画を制作したりしてきた。アジア各国のテレビ局にニュース動画を提供したり、Web配信したりしてきた。今回は、岩野は自分のしてきた仕事が導いた成果に感動していた……。
「我々は必ず北朝鮮を!……必ず変えましょう!……」メンバーの韓国人が言った。
「ええ!必ず!……メディアの力で!」岩野は答えた!
「メディアの力で!」「メディアの力で!」「メディアの力で!」「メディアの力で!」「メディアの力で!」「メディアの力で!」メンバー達が口々に発した。
「我々はNGOと関係が深く……今日のような青瓦台正面広場のような~晴れ舞台に立つワケではないが……」岩野は語り出した……。
「しかし…あの女性…ファン・チョンミ……びっくりシタネ!イ・ジョンハが中国公安当局警察隊に拘束された、数日後の夜には豆満江を渡ってるんだから!凄まじい行動力だよネ!そうして~あんなこと言い出すンだから!」パキスタン人のメンバーが言った。
「そうだヨォ~!オンナのコには苦しいヨオ~!ペペラ~!」フィリピン人のメンバーが言った。
「『イ・ジョンハを助けて下さい!』て!言ってから~驚きのコト~言ってキタネ」中国人メンバーが言った。
「あんなコトになったら……もう死を選ぶよネ……女性には苦しすぎるよ……」朝鮮人メンバーが言った。
「私だったら……同じコトをしたかも知れない……愛する男を助けるためなら……だって!……自分を救い出すために警戒が厳しくなっている豆満江川岸に越北しようとして近づいて公安当局警察隊に拘束されたンじゃない!……ハ!……いけない!……私はジャーナリストだから……どんな立場にも中立じゃなきゃいけないのに……」と唯一の女性である韓国人メンバーが言った。
「キミがファン・チョンミから話を聞いてあげたンだったな……」と岩野が語り出した。
 北東部地域部隊保衛所から解放されたファン・チョンミ……。パルポル貿易で知ることになった、自分が汚されたことが世界中に知れ渡ったこと、イ・ジョンハが自分を救い出すために越北しようとして中国公安当局警察隊に拘束されたこと、あと数週間で北朝鮮に身柄が北朝鮮に渡されるであろうイ・ジョンハ……。
『何ンとしても愛する男~イ・ジョンハを助けたい!』……愛する男のいる女なら思うであろう!
 平壌大学卒業の才女のファン・チョンミは、驚くべき案を切り出してきた!


ハンミチャン一家事件の時のように国際世論に訴える……というものであった……。


「アタシが保衛所で性的暴行を受け汚されているらしい【泣き叫ぶ動画】【連日性的暴行を受け醜いアタシにさせられ動画】を世界中に配信して下さい!世界中の人達に『北朝鮮で何が起きているか?』知らしめて北朝鮮を変えと~食べられずに死んでいく子供達が出ることのない国にしたい…そう願って命懸けの行動を起こした男が……そんな男が愛してくれてる……アタシが……アタシが……アタシが汚され……ウ!……無理矢理……醜いアタシにさせられて……ウウゥ!アアァ~!」泣き出したファン・チョンミの背中を韓国人女性メンバーが優しく擦った。

「……でも……そんなことをしたら……勿論、貴女には何ンの落ち度もないわヨ……でも……貴女に接する人達は貴女を普通の目で見てくれなくなるかも……しかも悪意に【保存】されたら、貴女はッ?」と韓国人女性メンバーだがチョンミに遮られた。

「世界中の!……世界中の人達に!……国際世論に訴えて助けてもらうしかないデスヨネ!……アタシも領事館に行き警備の兵士に拘束されに行きます……その様子もビデオカメラで撮影して下さい!……配信して全世界に知らしめて下さい!……アタシは……アタシはどうなってもいい!ジョンハを助けて下さい!お願いします!」


 あっという間であった……。

ファン・チョンミがジョンバルから汚されている間の【机】【脚】など【放送コードに触れカット】された【連日の性的暴行を受け無理矢理に醜くされているらしい様子】……そして国際世論に訴えるため【自ら中国の領事館に行き拘束される】の動画が世界中に配信された。凄まじい国際世論が沸き起こった……。

【ハンミチャン一家事件】の時に沸き起こった世界中の人々の声を遥かに凌ぐ凄まじい国際世論となった!

 

 中朝国境の川に掛かる橋の中央……北朝鮮の軍用車両が、イ・ジョンハを身柄引き渡しのために停車させている。中国の車両が橋に差し掛かる寸前に……中国の車両は停止した。監視の者が何か?無線のやり取りを始めた。数分して中国の車両はUターンした……。


 拉北者10名と被害者側家族が抱き合い喜びを噛みしめあっている。
オォ~!オォ~!と喜怒哀楽を爆発させ過ぎて喜び泣きわめいている。各国報道クルー達は拉北者達に集った!フラッシュを浴びせかけて、ビデオカメラを回し続けた! 
 いよいよメインイベントだ!世界中が待ち望んでいる【イ・ジョンハとファン・チョンミの再会&抱きしめ合い場面】だ!

キム・テヨン/Can you hear me?聞こえますか?



第4話-2に続く……