【re:】/『もう一度』


200α+2年作戦から数ヶ月後

アメリカ合衆国太平洋側

砂漠地帯上空

 トルコでブッシュ大統領とムヘマジャド大統領が『平和核限定核開発』についての正式な調停にサインしている頃……1機のC−123プロバイダーがアメリカカリフォルニア州砂漠地帯上空を飛行していた……。囚人護送機【コンエアー】だ!

 アメリカエネルギー省第2特殊部隊ダークベレー小佐ジョン・セルズが独断により貫いた【ジャスティス】により……『罪の無い民間人を巻き込む【イラン首都テヘラン空爆】無差別大量殺戮』は回避させられ、開戦したばかりのアメリカイラン戦争は僅か数時間で終結した……。

 が……アメリカ陸軍第82師団選抜空挺隊員達390名の自動策降下の兵士、30名の先遣自由降下の兵士、36名のヘリコプター乗員兵士達、2名の部下のマイクとシブソン……

458人の命と引き換えであった……。   

【命令違反】によりセルズには懲役70年の刑が言い渡された……。囚人護送機【コーンエアー】に乗せられ、向かうはカリフォルニア州であった……。セルズはカリフォルニア州モハベリサイクル矯正センターに収監されることになった。機内で隣の席の【ヤク売人常習犯】チャンクに悩まされていた……。

 キャビンには席が多数設けられ囚人たちが数十人座っていて、通路を太った護送官が監視のために行ったり来たり歩いている……。

「よう~オレはチャンク様だ~ヤクの売人やってたンだけど下手コいちまってなァ~!立ちんぼオンナ達に高く売り付けてたのがバレて~警察にチクられパクられちまったってワケ~ッ!」と聞きもしないのに自己紹介するチャンクだ!
エ~ッヘェヘェヘェヘェェヘェ~ッ!と常に笑い声のチャンクだ!まだ続くらしい……。
「しょ~もねぇ~ムショ暮らし終わった~ら♪また~♪ヤクの売人やって~♪パクられたのは女にチクられて~♪ブチ込まれてる時間~♪暗くさせるぜ?ムショ暮らしの方が多いってヨオ~ッ!ションベンちびらし放題さぁ~♪何ンだかラップんなるなぁ~コンちくしょう♪」とラップ披露だ!
エへッヘェヘェヘェへヘェ~ッ!と笑うチャンクだ!
「……て言うか今回は長くなりそうだってェ~のォ~!懲役145年だってさァ~!スター・ウォーズのヨーダじゃあるめぇ~し!生きてねぇだろッつ~の!」
アッハァハァハハァァハァ~ッ!と1人で勝手にウケて、1人で爆笑しているチャンクだ。
「お~いッ!そこ~!静かにしてろォ~!ぶちのめされてぇかぁ~?」と通路を歩く護送官から注意が飛んだ。トバっちり喰らいそうなセルズだ。
「………………………」完ぺきに迷惑がっているオーラを出してバリヤを張るセルズだ。チャンクを相手にしない。
「そンでぇ~よォ~う!おッさんは何ィ~ヤラカシちまったンダイ?」……
「…………」
「よう~!よう~!よォ~うってのぉ!……この飛行機乗ってるってこたァ~相当~ワルなンだろ~?……教えてくれよう~!」
「…………………」無視するストレス中のセルズだ!
「なぁ~てばよう~(ッ?)」
「黙っててくれねェ~かな~このチンピラが~!【ポォアンクス】!……ハァ~全くよォ~!こンなんばっかりだぜ!……ハァ~!」
「……何ンだってェ~?……よォ~おッさんよう~!今~このチャンク様に【チンピラ~ポォアンクス】つッたよなァ~?ハァ~ン?【チンピラ~ポォアンクス】ってかいッ…!」……セルズを睨むチャンクだ!
 そして、いきなり【もの真似攻撃】が始まった!セルズの声色……というよりセルズそのものズバリの【セルズもの真似】を大声で叫び出した!内容は【太った護送官への苦情】だ!
「…何ンだってェ~よォ~!……デブッてやがッて~!アレじゃ~2人分場所取るゼェ!今~アイツが通るだけで飛行機揺れちゃッてンじゃんよぉ~!」
ガンガンガンガンガンガン!とモノ叩くような足音が、飛行機のエンジン音をかき分けるようにして聞こえて来た!と同時に太った護送官がトンファー棒を手に近づいて来た。そして………
「ウワァ~ッ!」とわざとらしい叫び声を上げて、これまた、わざとらしくつまづいたフリをして、悪意を持ってトンファー棒をセルズの頭に向かわせる護送官であった。
ゴキン!と大きな音がして、セルズの頭蓋骨に、確実に血中カルシウムを吸い寄せたであろう高い電流が発生し、痛みと衝撃が襲った!勿論!護送官にトンファー棒で頭を叩かれたのだ。
「あ~?悪いなぁ~ッ!」と言ってセルズの身体に自分の太った巨体を預けてきた~というより象のような尻で体当たりヒッププッシュだ!重さというよりも、刑務官のズボンの尻から放たれる大便の悪臭に、セルズの鼻腔内神経は徹底的に叩きのめされてしまった。抗議したかったが【口ごたえ】と取られて第2撃を食らってはかなわないために黙るしかなかった……。
(「しかし~臭ッせェ~ケツしてンなァ~ブクブクに肥えたケツだから【Shit】クソして~ろくすっぽ拭いてねぇぞ~クソをケツの無駄肉の間に挟んでんじゃねえか~ッ」)とセルズは思わずブツブツ呟いてしまった………。
 エンジンの騒音の中その呟やきを、しっかり聞き届けた者がいた!キラン!と目を輝かせた!
「しかし~臭ッせェ~ケツしてンなァ~豚みてぇにブクブクに肥えたケツの無駄肉が邪魔してっから、ファック【fucking】なクソ【Shit】して~ろくすっぽ拭いてねぇぞ~クソをケツの無駄肉ン中にしまい込んでんじゃねえか~?」とセルズが大きな声で発した?
「何ィ~?」と振り返り歩いてセルズ近づいて来た刑務官だ!チャンクの【セルズのモノ真似】であった!似すぎている!本人を通り越して【刑務官のズボンの尻の臭さ】を的確かつ強烈にネタにして面白い!
ダハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!と囚人達は大爆笑だ!
ワハハハハハハハハハハァ~ッ!とセルズも思わず爆笑だ!
ブゥ~ン!と風切り音がして、トンファー棒が振られ、向かって来たのをセルズは認識した……。

カリフォルニア州
モハベ演習場滑走路 
 空港に着くと【リサイクル矯正センター】刑務官達が待っていた。顔を腫らしたセルズに刑務官は訊いて来た。
「その腫れた顔はどうした(ッ?)」
「転んだンだよなァ~ッ!」質問を遮りウソをつく【デブ臭さケツ護送官】だ!
「…………………」
「いや!……ジョンセルズ!……キミに訊いているンだ!」
「…………………」
「ジョンセルズ!」
……とその時であった……一台の軍用ハマーがやって来た!車を降りた兵士が、別の刑務官に、何やら書類を見せながら告げている。話が終わると刑務官が近づいて来て告げた。
「ジョンセルズ!……釈放だ!」と刑務官が言った。
 デブ護送官、チャンク、他の囚人達があっけに取られている……。セルズが『どうやら軍人らしい』ことを初めて知る皆だ……。
「自由の身です……」兵士の言葉に頷きながら、デブ護送官を見下ろすようにセルズは言った。
「よお~護送官殿~!手錠を外してくれぇ~!」
シット!……と呟きながらセルズの手錠を外してやるデブ刑務官だ……。もたもたしている。
「残念だなぁ~!一生~ゴミをいじらせてやろうと思ったのにな……ケッ!」と言いながらしぶしぶ手錠を外すデブ刑務官だ……。刑務官が手錠を外すのを待っていた。セルズよ!まさか大人しく済ますワケねぇよなぁ~?
「まぁ~アンタは年齢ギリギリまで護送官やってりゃいいサ……」
「ワット?……何ィッ!」とみるみる顔に血流が集まり真っ赤になり怒りに震え出すデブ護送官だ!
「毎日カスタード入りマフィン何ン個も喰って~ケツに手が回らないくらいブクブク肥えてなぁ~!拭き残しのてめえケツのクソの臭いが漂う飛行機の中でなぁ~年食って行きな!」
「クソ~!ボォ~シット!」トンファー棒を握り、構えるデブ刑務官だ!
 セルズのケンカ売りに、まんまと乗ってしまったデブ刑務官だ。セルズ更に挑発だ!ヤッちまえ!その豚は護送機の中でワザとらしく、つまづいてトンファー棒で叩いて来たンだ!
「ずっと~刑務官やって~ゴミのような人間の囚人達と付き合って、ゴミのような人間になりなァ~!」
「畜生~ッ!ガッデェ~ム!ウオオオオオオオオオオオオォ~ッ!あぐゥッ?」
 トンファー棒をセルズに向かって振っていったデブ刑務官だ!セルズは当たり前のようにかわすと掌底パンチをデブ刑務官の顎に食らわした!
カキャン!と何か歯と歯を噛み合わせる大きな音がした!
ダサァンッ!と大きな音をたてて墜落のデブ巨体だ!自重が仇となり、滑走路地面に強烈に叩きつけられるデブ刑務官だ!滑走路地面に墜落だ!仕返し成功のセルズに迎えの兵士はため息して言った……。
「……ハァ~!…………ジョンセルズ中尉!……たった今から、部隊に復帰です!行きましょうか」
 少し嬉しかった筈のセルズに迎え兵士は言った。【中尉】の階級に少しショックを受けたセルズであった……。ハマーに向かい歩き出す2人だ。
「おぉ~ィ!ちょっと待てよォ~ッ!……【ゴミのような人間】だとォ~ッ?……するってェ~とぉ~ッ!このチャンク様も【ゴミ】だってのかぁ~ッ?」とチャンクがセルズの背に言葉した。
「なかなか~【モノ真似】面白かったゼ……でも周りの迷惑考えてヤレよな!」とセルズはチャンクにも【迷惑】の仕返しらしい……。
「この野郎~ッ!呪ってやるゥ~ッ!背骨を折って【地獄のペナルティ】を与えてやるゥ~!」
 怒り叫ぶチャンクの声を背にハマーに乗り込もうとした時であった!黒い雲がかかりセルズのいるモハベ空港一帯の陽の光を遮った!辺り一面が暗くなッた!
ハマーに乗り込もうとするセルズは、一瞬、驚き空を見上げた。小さいが上空に黒い雲がかかっている。
 チャンクが【モノ真似】を始めた……。人気恐怖映画『チャイルドプレイ』【チャッキーもの真似】らしい……。【呪文】を唱え始めるチャンクだ!
「ア~レンデェンベェラァ~ッ!マ~レンデェ~ンベラァ~!マァ~クアマァ~カァ~マァ~ハァ~アミィカミアワセルコォ~!マァクアマァカァマァハァアミィコォ~!そらぁ~!苦しめェ~!フィヒ~ィフェフェフェフェ~ッ!地獄のペナルティを味わうがよい~!貴様の背骨を砕いてやるう~ッ!エイィ~ッ!」
 ……と【デク人形】の背骨を折る仕草のチャンクだ!信じられないことがおきた!刑務官、囚人達も恐怖し始めた。なンと???????
「ウグワァァァァァァ~ッ!」と手の甲を背中に当て苦しみ始めるセルズだ!
ザワザワと恐怖のざわめきの囚人、刑務官達だ!更に、何ンと?セルズが地面に両膝をついてハマーの開いたドアの内側にもたれかかってしまった!
「フィヒ~ィフェフェフェフェ~ッ!フイヒィヒィヒャアハァ~!苦しめェ~!ウイヒィヒィヒャアハァ~!」と高笑いのチャンクだ!
「ウグワァァァァァァァ~ッ!」
【チャッキー笑いモノ真似】全開ノリノリのチャンク……本作はサイエンスフィクションだから【超能力者】登場?????……ということか?
「フィヒ~ィフェフェフェフェ~ッ!イヒィヒィヒャアハァ~!苦しめェ~!苦しめェ~!イヒィヒィヒャアハァ~ッ!ウィフィヒィヒィハァハハハハハハハァ~ッ!……どうダぁ~ッ!参ったカァ~ッ!」
ヒィヒィヒャアハァ~ッ!ウィフィヒィヒィハァハハハハハハハァ~ッ!と高笑いを続けるチャンクだった。
 が……「ッ?」と驚き高笑いを止めた。セルズ達皆のいる辺りに陽の光が差し始めた。雲が流され去って行ったようだ。すくっと立ち上がり、【チャンクのモノ真似】に付き合うのを止めるセルズだ!
「…………わりと~ファニーマァダファカァ~面白かったゼ!じゃあな!」
何事もなかったようにチャンクに挨拶のセルズだ。
バハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!と大爆笑の囚人、刑務官達だ!
「畜生~ッ!バカにしやがって」と悔しがり叫ぶチャンクを後にハマーは走り去って行く……。
「このチャンク様の呪い~からはァァッ!絶対に逃れられないからなぁ~ッ!……お前の背骨を必ず砕いてやるう~ッ!……いいかぁ~ッ!必ずダァ~ッ!必ずお前の背骨を砕いてやるゥ!覚えてろお~ッ!……クソ~ッ!マァダファコオォ~ッ!」と去って行くハマーを目で追い悔しがり叫び続けるチャンクだった……。

【核の何でも屋特殊部隊】ダークベレー……アメリカ合衆国エネルギー省第2特殊部隊は、エリート中のエリートである。ダークベレー隊員の体力はオリンピック選手並み、頭脳は博士並み、あらゆる乗り物の操縦をこなす……。文字通り【核の何ンでも屋】的存在であり、大量破壊兵器の捜索、核施設の急襲時技術要員、放射能影響調査、核関連事態時避難誘導……等、核のある場所には何処にでも現れる……。

イラン・イラク戦争(80年9月2日~88年8月20日)

 イスラム教シーア派ホメイニ政権イラン、スンニ派フセイン政権イラク、それぞれの国の政権の支持する宗派の違い、油田地域として石油積み出し場所として輸出の際の輸送ルート要所シャトルアラブ川の使用権をめぐる争いなどが原因の~イランとの8年間に及ぶ【イラン・イラク戦争】は8年間に及び、双方の戦死者は約100万人と推定される。

湾岸戦争90年8月2日~91年2月28日

 イラン・イラク戦争の莫大な戦費調達時債務の返還を隣国クゥエートから求められ、疲弊していたイラクは90年8月2日クゥエートに侵攻した。……8月8日にはサダムフセインにより『クゥエートのイラクへの併合』が発表された……。

国際社会の制裁などを経て、91年1月17日多国籍軍(12ヶ国)はイラクへの空爆を開始した。

空爆では3500人、湾岸戦争全体では10万人の民間人が死亡……犠牲者となっている。
2月24日には地上戦が開始されサウジアラビアに400㎞に渡る戦線が展開された。
2月27日にはクゥエートが解放されイラク軍は敗走し、4月6日には和平条件を規定した国連安保理決議が受諾した

【劣化ウラン】
 劣化ウランとは……採掘された天然ウランには質量数によって分けられる、99.3%のウラン238(ニーサンハチ)と0.7%のウラン235(ニーサンゴォ)が含まれている。ウラン235は核分裂する放射性同位体(元素)であり、原子力発電所(軽水炉…水冷却)で使用する。割合が減らされ235を含まない減損ウラン……ウラン濃縮の際の副産物を【劣化ウラン】という……。

【劣化ウラン弾】とは……劣化ウランの比重は約19であり、鉄の2.5倍、鉛の1.7倍であり、合金化砲弾に使用すると大きな運動エネルギーが得られ、戦車砲の鉄鋼弾や航空機機関砲の弾丸【劣化ウラン弾】として用いられる……。

96-few年某月
イラク市街地
 セルズは湾岸戦争終結から5年後の96-few年某月イラク某市街にいた……。【劣化ウラン弾影響調査】のために放射線測定器【ガイガーカウンター】を持ち、イラクの市街地をオートバイで走り回っていた……。
 湾岸戦争に従軍し帰国した米軍兵士達の中で集団で発生した【湾岸戦争症候群】……。脱毛症、疲労感、痛み、記憶障害、倦怠感、関節痛など一連の症状……そして癌、白血病、奇形児の出生は、やがて、国際社会に知れ渡ることとなる。 96年には国連の調査まで始まることとなる……。そして、米軍の戦闘機機関砲弾の射撃、砲弾の発射で使用した【劣化ウラン弾】の因果関係が疑われ出した…。
 その国連調査の始まるfew年前……『【湾岸戦争症候群】と【劣化ウラン弾】の因果関係』に関してアメリカ軍は、秘密裏に調査を始めていた(架空)……。
 アメリカエネルギー省第2特殊部隊隊員ダークベレーにエリートとして入隊した若き軍曹ジョンセルズは、湾岸戦争終結からfew年後の96-few年某月イラク某市街にいた……。

【劣化ウラン弾影響調査】のために放射線測定器【ガイガーカウンター】を持ち、イラクの市街地をオートバイで走り回っていた……。
「次は……この地域か……」と、調査時に使用する防塵マスクを外すセルズ達だ。仲間の隊員と地図を開き場所を確認するセルズ達だ。次の地域まではしばらく離れている……。
ドゥバババァブゥルルルゥ~ン!とアクセルを回しエンジン音を響かせ、オートバイを走らせるセルズ達……。オートバイを走らせていると、突然不快な埃を吸い込んだ。
オハァッハァン!妙な砂埃を吸い込みセルズは咳き込んだ!いや!砂埃ではない!粉塵だ!横目でチラと見るや、急ブレーキを掛けた。仲間もブレーキを掛けて止まった。
 修繕か何か?をしているのか?建物の壁を電動削岩機で掘っている東洋人と、カメラを持ったイラク人の2人を目にした。壁を見てセルズは青ざめた……。
 壁面には穴が無数に空いている。航空機からの機関砲攻撃の跡……弾痕……と見られる。カメラを持っているということは、ジャーナリストか何か?で【劣化ウラン弾】について探っているということであろう……。
 近くに行くと信じられない程に無防備な格好だ。布マスクにジャパニーズ白色綿軍手……。オートバイから降りて、近づいていくセルズ達だ。
「ヘイ!ユー!お前達はそこで何をしている?」
 足元にバケツがあり、中を覗き込むと驚いた。汚れた30㎜弾頭が十数発入っていた。
「私は日本から来た記者だ!彼は通訳だ!撮影係も頼んでる!これは【劣化ウラン弾】だ!」とカメラを持ったイラク人を指し示しながら言った。
「ここで見つけたのか?」セルズの問いに「劣化ウラン弾だ!」と答える2人のやりとりが始まった。
「ここで見つけたのか?」
「そうだ」
「シット!クソ!」何故?自分達が知らされてない情報を日本人記者が手に入れているのか不愉快になるセルズだ。
「知らなかったのか?」
「この地域までは知らされてなかった」
「アメリカは自国の兵士にも知らせてないのか?驚きだな!」と言いながら日本人記者はガイガーカウンターをバケツにかざした。
ピピピ~!ピピピ~!ピピピ~!と強い【放射線】の反応音が鳴り響いた!傍にいるのは危険なことは明白だ!
「すごい放射線量だ!」と日本人記者は言った。
「それは30㎜機関砲弾頭弾頭だ!劣化ウラン弾だ!触るな!放射線量が強いぞ!……わざわざ掘り出しているのか?アユゥクレィズィ~?バカじゃないのかぁ~ッ!」セルズは慌てて咎めるとともに呆れてしまった。
「なら!……なら!そんな危険なモノを何故?イラクで使ったんだ!戦争は解放のためだったんだろ?これじゃ人々を危険な目にさらしてんじゃないか!」カメラを持ち撮影係であり、通訳が仕事の筈のイラク人が主観を言った。ブルブルと怒りに身体が震えていた……。
 セルズはマニュアル返事を返すしかなかった。『キミの怒りの矛先は私ではない』を相手に示し感情的にさせないためのマニュアル返事だ!
「……そういうことには答えられない……」

96年某月
病院の病室~診察室
 ベッドには泣き続け疲れは果て眠ってしまった妻と、ベッド脇の椅子に憔悴しきった様子で座るセルズがいた……。やがて、ナースが部屋に入って来た。
「ドクターが話があるそうです……来て下さい」
 ナースに付いて行き診察室に入るとドクターが待っていた……。調査しに行ったイラクから帰国後のfew年で妻は2度流産した。妻は検査を受け、セルズ自身も検査を受けた……。ドクターは検査結果を知らせるためにセルズを診察室に呼んだのだった。ドクターは告げた。
「……流産は反復性でも習慣性でもなく、奥さんは不妊症ではありません…奥さんのお身体は正常です……考えられる可能性……としてですが……」と言いながらドクターはセルズを見た……。
「『考えられる可能性』……とは……?」(「オレに問題があるということか?……ハッ?……ま!……まさか?」)とセルズは不安になると共に、思いあたる節に気付いた!ドクターは作業的にセルズに質問をした?セルズを奈落の底に突き落とす質問だ!
「ご主人は……【被ばく】の経験はありますか?……」

200α+2年夏の朝
大韓民国ソウル青瓦台広場
アメリカ合衆国カリフォルニア州モハベ矯正センター(夜)
アメリカ合衆国の各地の市街地スクリーン前
青瓦台上空ティルトローター機操縦席

 世界中の人々が『あの男の登場』を待ちわびている……。セルズ達が命を懸けたジャスティスの2月……その年の夏の朝、全世界が大韓民国(以後~韓国)首都ソウルの~群衆で埋め尽くされた青瓦台広場にテレビ衛星生中継を通じて全世界のテレビ画面に熱い視線が注がれていた!韓国大統領府上空には報道ヘリコプターが飛び回っている。
 中には報道クルーには世界中で一機しかないであろう……航空機メーカーがアメリカ合衆国メジャーテレビ局に特別先行貸し出しした最新鋭ティルトローター機AW609が【ヘリコプターモード】で大韓民国大統領府青瓦台広場上空を旋回している。上昇限界高度7600m最高速度(固定翼機モード)509km/hヘリ巡航速度300km/hの最新鋭ティルトローター機だ!
 アメリカの大手テレビ局YNBテレビの人気美人レポータースー・ミリガンのハイソイメージに合うため、航空機メーカーが宣伝のために~ほぼ無償で貸している。
 つまり、スーは高視聴率級現場に真っ先に駆け付け、特ダネ級ニュースを全世界生中継レポートでばら蒔く!それがAW609の広告となる!スー・ミリガンの能力により、最新鋭ティルトローター機のセレブ受注を手に入れたい航空機メーカーというわけだ!
 広場には韓国大統領や与党重鎮議員達が汗が吹き出ての暑苦しさなどものともせず若く美しい女性を取り巻いている。勿論、『世界中の人々がまちわびている【あの男の登場】』をまちわびているのだった……。
『政治に利用』としているのはミエミエの大統領と重鎮議員達だが、やはり、心からの感動の瞬間を待ちわびていた。取り巻いているミエミエ政治家の脇には【たてまえ上呼ばれた】10人の老若男女がいた。
 世界中から報道カメラクルー達が青瓦台広場に押し寄せている。大群衆を背にした報道カメラクルー達からカメラの被写体となっている若く美しい女性……。韓国大統領府上空には報道ヘリコプターが飛び回っている。
 200α+2年……世界中の『純愛に心を悶えさせたい女子』を虜にしている話題である……。(架空)
いったいがあったのか?200α+2年のことであた。食糧難の北朝鮮……脱北するモノがあとを絶たない……。その中……『罠と知りつつ純愛を貫くために越北(北朝鮮に再密入国)』しようとした男と、『世界中に恥を晒してでも純愛を貫くために脱北』した女……の物語……世界中が話題沸騰中だった!

【脱北者】とは……
 94年7月8日朝鮮民主主義人民共和国(以後~北朝鮮)最高指導者金日成が急死するや、労働党トップ総書記の座に就き権力を掌握した金正日……。彼の政策は専門家曰く【愚作】と……。
 もともと農業に的さない寒冷な気候に位置し食糧自給が出来ず、ソ連の崩壊により、東西冷戦時代にソ連、東欧諸国から受けていた食糧援助が途絶え、食糧配給の管理も破綻し、多くの人が餓死した。
 加えて、93年には大洪水が起きた。また、農作業地にさせるため開墾させたため、山の保水能力が低下し、更なる洪水を引き起こすなど、ことごとく誤った農業政策を指示の金正日であった。
 収穫量の減る農業政策指示の失策……。ルーマニアに起きた独裁政権の崩壊を見て、反乱に怯えた金正日は体制維持最優先の恐怖政治を行った……。
 82年【寧辺原子炉】建設判明……NPT核拡散防止条約に加盟し、IAEAの監視下に入るも、93年1月アメリカの軍事的脅威を理由にNPTから脱退し、05年には核保有宣言をした。06年10月には核実験を行行い、その後6年間で計3回及んでいる。核開発をめぐる国際社会への強硬姿勢は、海外からの食糧支援さえも受け入れられなくさせ、人民達を飢餓に苦しみ続ける状況の国にしてしまった。
 ある脱北した元工作員の話では……『反乱は全て殺せ2400万人が餓死してもよい……100万人の党員がいれば良い……』というのが金正日の言葉である。
 一般人民は食べるに困らなくなると【豊かな暮らし】を求める→体制に不満を持つ……。つまり生きるのに精一杯にしておき、働らかせて【デノミネーション】を行い一般人民から【略奪】する……金一族及び100万人の党員の裕福な生活を保証するため……つまり~体制が維持されれば一般人民の命などどうでも良い……ということである……。
『百姓は生かして殺さず』よりもひどい話だ……
 金正日体制に移行後、94年~98年……戦後(朝鮮戦争)最大規模の飢餓が発生し、最大300万人(推定)が餓死した。95年の大洪水以来、食糧配給は基本的に中断された……。カネのある者は自由市場で食糧を買える。貧しい者は、木の皮、草の根、野草を食べるしかない。
 ミサイル実験1回の費用3億ドルは、全国民1年分の食糧350万トンが買える値段である。
「『人民が食べられず生活出来ないのにミサイル発射実験には何億ドルも掛けて』の他国の声は知っているが……国と民族の尊厳と運命を守り抜いてこそ富強大国の建設が出来るのだ!」と金正日……。
 93年から全期間において飢餓による死亡者が出ている。
『北朝鮮政府の経済政策はの意図的な飢餓テロ』とも表現され、生きて行くために他国に亡命するために、北朝鮮国外に脱出する【脱北者】は98年から増えて200α+2年の時点で脱北者は数十万人に達していると推定されている……。
 38度線は地雷原となっているが越えてくるも兵士も稀にいる。が、脱北者は主に川幅が狭く冬は氷が張る、北東部中朝国境を流れる川~豆満江を渡り中国に入ってくる。
 中朝国境には国境警備兵(貧しい)が多数見張っているので、賄賂を渡したり、夜間に目を盗んで北朝鮮を脱出する。豆満江を渡り延辺朝鮮自治州の朝鮮族に匿ってもらう。
ハンミちゃん一家事件についての写真動画を作りました……

 中国国内で潜伏生活し、一部の者は支援団体の支援を受けて、各国大使館などに逃げ込み保護してもらう。2国関係重視の中国公安当局は、脱北者を不法入国者として拘束し、北朝鮮へ送還する北朝鮮との協定ある……。
 38度線は地雷原となっているのだが越えてくるも兵士も稀にいる。 
 が、脱北者は中国に長く居ずに通過して、東南アジア経由でジャングルなどを進み、ベトナム、タイ、ラオス、ミャンマーなどの公的機関に駆け込み保護され、第3国に亡命を果たす……。
 支援団体が韓国、日本にあり、脱北者に接触している。大使館への駆け込みを準備、ビデオ撮影し海外メディアに提供し世論に訴えている。中国公安当局は中国国内で活動する支援団体を次々に摘発している。ハンミチャン一家駆け込み事件以降、中国国内の大使館等周辺警備は、公安当局から人民解放軍管轄に代わり、事実上~駆け込みによる亡命~は不可能となった……。

200α-4年某月
北朝鮮平壌市内
大学の校庭
 フォークダンスの練習に男女学生達は楽しそうだ!本来なら長期間、日当も交通費も出されずに市民が何万人も動員され、参加しなければならないマスゲームの練習がある時期なのだが……。もはや、人民への祝いの日の配給すら怪しくなってきた北朝鮮……。
「マスゲームの練習などさせてみろ!暴れてやるぞ!」口には出せない市民の不満を、金正日も【今年の市民の我慢の限界】が分かっていた。今年の祝いの日は、爆発寸前にまで高まった人民の体制への不満を『男女の手ふれあい温もり』により和らげようというワケだ。
 イラン~モハ・マヘ・ムヘマジャト大統領の『制裁による疲弊により爆発しそうな国民の不満を和らげるための弱世俗化策……【キューバ・ビールデイ】(前出)』と変わらない……。何万人もの動員に長期間練習させ、時間が無駄にされる苦痛を与える。
 多くの人間が自分の思い通りに動く様を見せつける。独裁者の常套手段パフォーマンス……マスゲーム……の筈であった……。
 今年の祝いの日は【フォークダンス祭】にした金正日であった。マスゲームの練習の動員には不満が溜まって行くであろうが【フォークダンスの練習】は練習させればさせる程『男女の手のふれあい温もり』に不満が和らぐ動員市民であろう。
 学生達はニコニコ笑って次々に男子は女子の、女子は男子が『手の温もり』を味わっていた。大学では女子学生全員と話をしたことがあるワケではない。構内ですれ違ったことがあっても、学部が違えばほとんど知らない女性が男性が多数派だ。
 想像して欲しい……。知らない女性が男性が次々現れて自分と手を握り合い笑顔で見つめあう。次に構内ですれ違ったときには『あ!こないだフォークダンスで!』と声を掛け合い仲良くなれる……。更に親しくなれるキッカケにする事が出来るのだ!
 【お見合い】は双方が【顔写真】を見て『先方と会う日……【お見合い】するか?』決める……。まさしく集団お見合いだ!集団お見合い以外の何ものでもない
!男女学生達が相手を探している状態だ。こんな素敵な時間が存在するなンて夢のような時間だ!
 お!!!……この【夢のような時間】を~祝いの日~には規模が大きく行われる……つまり街の全ての男女に『あ!こないだフォークダンスで!』……と知らない男女が仲良くいうわけだ!
マスゲームの準備の【鞭】で徹底的にストレスを与え、フォークダンスの【飴】で夢のような時間を与える。
 このような【金正日からの贈り物】があったら、不満心などなくなるであろう。フォークダンスなど、第2次成長期が始まる頃には学校での体育授業には無くなる~古き時代のヨキナ~モノなのに……時代が止まったままの北朝鮮には、学生達には、まだあった……。名画『風と共にさりぬ』にもあった……。
名画『風と共に去りぬ』フォークダンス場面
 男女学生達が幸せの絶頂の中……1人だけ笑顔になれない男子学生がいた……。心ここにあらず【集団お見合い】の大チャンスなのに笑顔で相手と見つめ合うことをしない。チラチラ誰か?を目で追っている。同じ学部の恋人のファン・チョンミを探しているのだ。
 男子学生イ・ジョンハ……彼は頭脳明晰で大学ではいつも成績トップ1位か2位争いの優秀な学生で勉強家だった。やっと同じ学部にファン・チョンミという素敵な恋人が出来た。が、あまり話も合わないし、冗談を言う性格ではないジョンハはいつも悩んでいた。
 チョンミの周りには、次々に友達が、男子学生が現れてはチョンミを爆笑させて楽しそうにしている。胸が張り裂けそうな程に痛んだ……。

話は数週間前のジョンハの帰省時にさかのぼる……。
北朝鮮北東部遠隔地部隊地域
ジョンハの実家
 北東部遠隔地域(架空)の権限を持つ指揮官イ・ハチュルの息子、平壌大学学生イ・ジョンハが帰省して母に会った時のことだ。部隊指揮官の厳しい父親は、いつも険しい顔で近寄りがたかった。大学に行かせてくれて父親には感謝しているジョンハだ。
 が、いわゆる【マザコン】気味のジョンハは母親に懐いていた。何ンでも母親に話す青年だった……。母親は背が高くスラリと伸びた長い腕、長い脚の母親であった。知り合った頃、父親から貰った翡翠の指輪をいつもしている長い指の綺麗な手……それ等に釣り合う美しい女性だ……。ファン・チョンミ……そう!ファン・チョンミと何もかもが同じだ……。
「平壌の大学では好きな女の子はいないの?」母親は大体訊く質問だ。
「勿論いるよ……チョンミていうんだ……すごく素敵なコなンだ……見てよ……」と『待ってました』のように胸元から手帳取り出し開いて母親に見せるジョンハだ……。
 ジョンハとファン・チョンミの全身2ショット写真と、チョンミの胸から上の顔写真2枚を、積極的に母親に見せるジョンハだ。
「まあ……かわいらしいコね……」写真の美しい女性を見て母親は目を細めた……。『私の若い頃にそっくり……』思ったからだ。写真のファン・チョンミはジョンハと比較してほぼ自分と同じ身長……。
 やはり、背が高くスラリと伸びた長い腕、長い脚、長い指の綺麗な手の美しい女性だ……。何もかもが若い頃の母親……自分そのものだ!
 母親なら、息子が好きになった女性が自分に似ていたら嬉しいであろう。母親の若い頃の姿……ファン・チョンミ……全く何もかもが同一人物としかいえないくらい似ていた……。
「何ンだか……すごく私に似てるわね……」と嬉しそうな顔で呟いて母親はジョンハを見た。
 が、ん?……と不思議がった……。ジョンハは暗い顔……悩んでいるようだ。
「……どうしたの?」
「見ての通り……すごく美人で素敵だろ……しかも凄く明るくて楽しくて、誰からも好かれる凄くいいコなンだ……いつもチョンミの周りには男女友達の笑顔で溢れているンだ……」
「ははァ~ん!」カガァァァ~ッ!と鼻が出るワケでもないにカァ~ッ!と呆れて咳払いから続けて言った。
「他に男子学生が言い寄ってくる……次から次へと!……だから心配で心配で堪らない!……ソウいうことね」
「…………ハァ~!……」とため息吐きで頷くジョンハだ。
「お前は自分に自信がないていうンだね?」
「はァ~ッ!」
「アイゴォ~ッ!全くゥ~!しょうがない息子だわぁ~!……ヤァ~!おい!イ~!ジョ~ン!ハ~!しっかりしなさい!ファン・チョンミは貴方の恋人なンでしょってこと!」とウジウジ情けない息子に軽くキレる母親だ。
「そうは言うけどオモニ~!そりゃイイさ~!母さんの時は~アボジー~父さんはそりゃ~軍のエリートだからな!自信に満ち溢れてたんだろ~ッ?『私は貴女を幸せにします!それでよろしいですね?』~そんな感じだったンだろ!」
「ボォヤァ~ッ?何ンですってェ~ッ?」キャハハァハハハハハハハハハァァァァァ~ッ!…………アハハハハハハハハハハハハハハハァ~ッ!
「どうしたンだよォ~ッ!僕は真剣に話しているのにオモニ~ッ!母さん!何ンだって笑うンだイ?」
「ハァ~ッ!笑い過ぎてお腹痛い~ッ!ハァ~ッ!バカだねェ~ッ!私の家は軍に商品を納めている父……死んだお前のおじいさんの商売で、品物を納めに部隊に行っていた私に、兵士達は皆がいつもソワソワして、やたら話掛けてくるのよねェ~ッ!」
「オモニ~!まあ~母さんは美人だからね~!母さんはモテモテだったンだね!……すごいナァ~言い寄ってくる兵士の男達を掻き分けて~母さんを!アポジーお父さんはいかにしてオモニ~母さんを射止めたンだい?」
「何ンにも言わないクセに私をチラチラ見ていたわ……すごく気にして……私はわざとらしく言い寄ってくる兵士の冗談にケラケラ大笑いしてたのよ」
「アポジーお父さんは気が気でなかったンだろうね~!でさ~!どうやってオモニ~!母さんを射止めたンだい。アポジーに見初められたンだよね?」
「私はわざとあの人を振り向かせたくて~言い寄ってくる兵士の冗談に大笑いしてたの!」
「え?何?何ンで?話したことないアポジ~父さんを振り向かせたくて???」
「あの人は【特殊中隊の幹部兵士】だったの……軍……つまり……【戦う男の場所】では……男の魅力……つまり人間の価値は何?……」
「【戦う男の場所】……?……男の魅力?……?人間の価値……?」
「~軍~ていう所はね……【戦う男の場所】なの!……で……立派な兵士こそが……魅力ある男!……価値のある人間なの!……笑い話しが出来る人は楽しいわよ……でも……最後には……何ンの価値があるっていうの?」
「……………?」
「楽しく笑い話しが出来て女のコを振り向かせたいなら……」カァ~ァァァ~ッ!と【ペラ軽言い寄り兵士】達を思い出したらしく忌々しそうに、また咳払いをしながら「『街に行って~笑い話やってなさいよ!』ってのォ~ッ!~軍~での男!……人間の価値は……何?」
「軍では……やはり……戦うことに優れた兵士……ていうコト?……はッ?」と……何か?軍人でもないのに何か?当てはまるコトが見つかった?ジョンハは瞳を輝かせた!
「ヤァ~ッ!お~いッ!イ~!ジョ~ン!ハ~ッ!大学では!……男!……人間の価値て何?……いかに勉強で優れているか?でしょう?……貴方は学部で1、2位を争う優秀で勉強家な学生なの!……自信を持ちなさい!」
「わかったよ!オモニ~!母さん!……」
「彼女に!……自分の思っていることをちゃんと伝えなさい!……ちゃんと【形】に現しなさい!」
「それは分かるけど……つまり……でも……【形】にするって言ったって……僕は学生で……」と【自分の懐】に手を当ててウジウジまた悩み出したジョンハをみて母親はイラつきカガァァァ~ッ!……と咳払いをすると言った。
「全くしょうがないわねェ~ッ!」と言いながら母親は自分の右手で自分の左手薬指を掴んだ!

再び
大学の構内校庭
「休憩時間~ッ!」合図の声が響き渡った。まだまだ踊り足りない男女大学生で満たされた大学の構内校庭では、休憩時間になっていた。フォークダンスは中断され、学生達は散り散りな分かれ離れて行った。男女学生達は『初めて見た動くモノ』に集るヒヨコのようにファン・チョンミに群がって行った!中でも男子学生はピラニアのように集って行った。
キャハハァハハハァ~ッ!ワハハハハハハァ~ッ。早速、冗談軽口に笑い声が響き渡った!イ・ジョンハの近寄り難い雰囲気だった……。いつもなら負け犬のように尻尾を巻いて逃げてくる所だった……が、母親の言葉を思い出していた。
『彼女に!……自分の思っていることをちゃんと伝えなさい!……ちゃんと形に現しなさい!』
チョンミ~ッ!チョンミ~ッ!と叫びながら男女大学生の群れ(【冗談ペラ軽口男子学生ふくむ】)に飛び込み掻き分けて行きチョンミにたどり着いた!
「ジョンハ!何?」
「来てくれるかい?話があるンだ!」
「何ンなの?休憩時間なンだけど~!」
「だから、来てくれ!君に渡したいモノがあるンだ!」
「何?何?洋服?お菓子?」
「いや!……その……違うンだ……その…」と、またウジウジ病再発のジョンハ
だ!
「何?……それは大きいの?……小さいの?……どれ位の大きさ?……これ位の大きさ?」とタイヤの大きさを腕で表現するチョンミに『違う!違う!』と言うジョンハだ!そして、指で~硬貨~くらいのマークを作って大きさを示した提示た。
「これ位なンだ!」
「何ンなの?何をもったい付けてンの?」と意外に鈍感なファン・チョンミだ!
キャアァァァァァァァァ~ッ!ジョンハの~硬貨くらいマーク~を見て悲鳴を上げた女子学生がいた!女子学生は『何?何?』と訊く隣の女子学生複数人に伝えた!
キャアァァァァ~ッ!キャアァァァァ~!女子学生達は悲鳴を上げ始めた!
オオォォォォォォォォォォォォ~ッ!と見ていた男子学生達からもどよめきが上がった
「何ンなの?そんな小さいならここで渡しなさいよ!」
「みんなに見られたくないから~!あっちに行こう!あっちで受け取って欲しいンだ!」
早くしろよォ~ッ!ピュウ~ッ!と囃し立ての口笛が鳴り響いた!カメラを手にする男子学生も!
「何ンなの?……はッ?……嘘?……まさか?本当に?」やっと気付いたかなり鈍感がかわいらしいファン・チョンミだ。
 ジョンハはポケットから小さな布小袋を取り出した。布小袋の中には~母親から貰った『若い頃に母親が父親から貰った翡翠の指輪』入っていることは読者の皆さんなら分かってるであろう……。
北朝鮮北東部遠隔地部隊地域
 北朝鮮の北東端に位置する地域管轄部隊の権限を持つイ・ハチュルはイ・ジョンハの父だ。方針遠隔地域部隊地域はイ・ハチュルが指揮権を持つ軍部隊の地域だ。
 地域南部には日本海に面した港湾都市清津があり栄えている。日露戦争後の引き揚げ基地となったが、その後、清津は日本の求めにより国際港として開港した。第2次世界大戦後ソ連が南下し占領し、日本の統治から解かれた。
 重要な工業港湾都市を南部に抱え発展した地域ではあるが、90年代からは食料危機が発生し続けている……。重要な清津が、そのような状況だから遠隔地域部では、毎年、餓死者が出続け、食料が保証される筈の軍隊でも兵士が栄養失調になり餓死者が出ていた。
 大学生のイ・ジョンハの父イ・ハチュルは北朝鮮遠隔地域の連隊指揮官である。北朝鮮最高指導者であった金日成の死後、体制が金正日に移行してからは平壌から遠い遠隔地部隊では体制への不満が高まっていた。
「少なくとも金日成の時は人民に餓死者が出るなどということはあり得なかった!」
「抗日戦線の英雄金日成国家主席は偉大だ!で……金正日は何ンだ!……何をしてくれてるんだ!」
「あのバカ息子が現れてから『山を切り開き作物を育てよ!』言う通りに、山の木を切り倒して畑にしたら洪水で水びたし!あのボンクラは人民を殺してンじゃないカ!」
「『食糧の配給が軍隊に来ない!』なンて聞いたことがない!」兵士達に餓死者が出る始末だ……。遠隔地部隊の反乱が北朝鮮国内でしばしば発生していた。人民に食べ物の配給もまともに出来ない、軍隊は食わせねばならないのに、兵士にまで餓死者が出ている。
 餓死者が数百万人出ている……勿論、子供達は浮浪児となり物乞いをしたり市場の地面に落ちたモノを食べたりする

多くの人々が飢えと寒さで命をおとした……。
 正義感の強い遠隔地部隊隊長イ・ハチュルの我慢は厳戒に達していた。
「副部隊長コン−ジョンバル!号令を掛ける時が近付いて来たな!!」
「新しい時代を朝鮮半島に開き!祖国統一を実現するには!排除せねばなるまいは~まず!人民が餓死するのが平気でいられる【ボンクラ金正日】だぁ~ッ!シラババァ~!セッケョオァ~ッ!(フザケやがッて~!くそ野郎~ッ!)】」と憤りも露だ!
「その通りです!部隊長!」
「ジョンバル!……【父さん】で良い!必ずクーデターを成功させ、人民が安心して子を産み育てて行ける時代に戻すのだ!偉大なる金日成国家主席のような指導者を!人民が人民のために人民による選挙で最高指導者を選ぶのだ!人々が平等に生きて行ける時代を我が部隊が作るのだ!」
「えぇ~!そうですとも!そうですとも!この懐中時計が新しい朝鮮半島の時を告げる時がやってきましたね……出発まで……もうすぐですね……」とジョンバルは胸元から懐中時計を取り出して、ハチュルに見せた。
ハチュルは心から信頼する義理の息子であり、実娘の夫である部下コン・ジョンバルに向かい笑顔で言った。
「早く孫の顔が見たいな!」
「ワハハハハハハ~!急かさないで下さい……。」と言いながら胸元に懐中時計をしまうジョンバルの右腕の袖からチラリと銀色のバンド……?……が光ったのをハチュルは気がつかなかった。
「もしも?のために……今頃は……妻のユナとイ部隊長の御家族と一緒に外国に向かう飛行機に乗っているでしょう。」
「あぁ~大変だな……だが、そんなに時間かからずまた、戻ってこられるだろう……よし!……出発だ!」
 号令を発するのはジョンバルだ!命令した!ジョンバルは目の前を整列の数千人の歩兵達を指揮するそれぞれ中隊長達に向かい号令を飛ばした!
「部隊!出発!乗車セヨォ~ッ!」と部隊の中隊長全員に向かい叫んだ!
「中隊~乗車ぁ~ッ!」各中隊長が兵士達に向かいさけんだ!
ワァァァァァァァァァァ~ッ!数千人の歩兵が雄叫びを上げた!……まるでハチュルの部下ではなくジョンバルの部下のように雄叫びをあげた!人民を飢え死にさせる【ボンクラ金正日】への怒りを抑えることはもう出来ない!反乱のための部隊車列を平壌に向け出発だ!
 行進中の車列の最前列中隊は特殊中隊だ。特殊中隊指揮官でもあるコン・ジョンバルは軍用車両の助手席に座っていた……。その次に、ハチュルの指揮中隊、迫撃砲中隊、複数の歩兵中隊の車列が並んでいる。
【横流し私服肥やし】の副部隊隊指揮官であり遊撃中隊指揮官コン・ジョンバルは、『バカ正直正義漢』のイ・ハチュルには我慢の限界が来ていた。【私服肥やし部隊指揮権限】を掌握したいがためにイ・ハチュルの娘とユナと一緒になったのだった。当然、子供はつくらなかった。
 権限があれば、横流しに賄賂でカネがいくらでも涌いてくる。カネあれば欲しいモノはなにもンでも手に入る……。オンナも選り取り緑だった。
【はなから陥れるつもりの上官】の娘とその家族の海外脱出計画……。売り飛ばすかの如く……コン・ジョンバル自身が重ねて来た悪事を肩代わりさせた『濡れ衣』を着せて密告した。
 金正日排除クーデターの平壌までの車両百数十台の車列……先頭はジョンバルの指揮する特殊中隊車列だ。
「いいな!計画通やれ!」走る車内、助手席のジョンバルは運転兵士に言う。
「わかりました!」返事をしてハンドルを切り進路変更の運転兵士だ……。
 金正日排除クーデターの車列先頭中隊にあるジョンバルの特殊中隊車列は、道を外れ速度を上げた。同じ頃、指揮中隊の後続の迫撃砲中隊と複数の歩兵中隊車両も別れ道を進んで行った。
 ハチュルの【指揮中隊】が進む道に、1000メートル程離れて沿って走る道を猛スピードで走らせるはジョンバルの中隊車列だ。その後を迫撃砲中隊や、他の歩兵中隊が、やはり猛スピードで追従した。指揮中隊車列は孤立させられた。

第3話-2に続く