その昔、まだサックスを吹いていた頃、よくキャノンボール・アダレイを聞いていました。


キャノンボール・アダレイのアルトサックスというと、まずパワフルな音をイメージすると思います。私もそうでした、憧れていたのはあの太い音、押し出しの強さ。

ある時、聴きながら「ん!」と。もしかしてと思い、いち、にー、さん、しー、と拍をとって、「え!」となった。ぴたっと、はまっている。

アルバム『Things Are Getting Better』のタイトル曲。ミルト・ジャクソンのヴァイブのユーモラスなテーマではじまり、そしてスポットライトをあびたようにアダレイのサックスがそれを引き継ぐ。

 

ソロに入り、中盤を過ぎたあたりでパーカー由来の十六分音符のパッセージが始まる。速い。しかし正確に四拍子のグリッドの上に、一音一音がびたっ、びたっとはまっていく。

速いフレーズは音が流れやすい。拍の中に体が乗っていなければ、聴き手には口先だけの演奏に聴こえてしまう。だがアダレイのそれは違った。速さの中に、拍そのものがあった。

ジャズはおのおのが好き勝手にプレイしているようなところもある。それがジャズらしさだと考えるひともいます。だがそれでも音楽が成立するのは、正確な拍があってこそなのだと、この一瞬が教えてくれた。

そこで腑に落ちたことがある。アダレイはニューヨークに出る前、フロリダの高校でバンド指導者をしていた。基礎を教える側にいた人だった。だからかはわからない。それでも、「やっぱり」と思わせる何かがある。

パワフルさに憧れていた頃の自分には、聴こえていなかった音だ。