みんながなんとなく使ってる「読解力」という言葉。
本書は、その言葉の意味とそれを身につける方法を、認知心理学の視点から分かりやすく考察している一冊です。
大人の学び直し読書を「身につくもの」に変えるための方法を、自身の体験を交えながら考えてみます。
本書ではまず、私たちが目指すべき「読解力」には、3つの目的地があると説明されています。それは「表象構築の読解力」「こころを動かす読解」、そして「批判的読解」です。
なかでも大人の読書にとって興味深いのは、第一の目的地である「表象構築」の深さです。ここには、書いてある内容を頭の中で再現するだけの「テキストベース」のレベルと、自分がすでに知っていることを活用した「状況モデル」のレベルがあるといいます。
そして著者は、この「状況モデル」の重要性について、次のように述べています。
「読んだ内容を後まで覚えておいたり、違う場面で使ったりするためには多くの場合、状況モデルの表象が必要です。特に説明文を読んでその内容を覚えておくだけでなく、その内容を使って問題を解決するためには、知っている内容と結びついていることが重要です。」
引用:『読解力の認知心理学』
いろいろ「本を読んだけどまったく身につかない」という経験を通じて、私はこの状況モデルがうまく構築できていなかったからなのだ、と深く気付かされました。
さらに読み進めるうちに、私は以前読んだ平野啓一郎氏の『本の読み方』で説かれていた「スロー・リーディング」の内容が、目の前の文章とピタリと重なり合うのを感じました。
認知心理学の観点から紹介された読解の方略が、私自身の知識と、カチッと結びついた瞬間でした。
たとえば、本書で語られる「ワーキングメモリ」の話。人間の脳の作業机は決して広くありません。人の名前や新たな出来事など情報が多いほど机の上から情報が溢れ、意味の組み立てが崩壊してしまいます。平野氏の言う「前に戻って、確認する」という行為は、テキストベースの表象を作るうえでも大切なことです。
また、読解の土台となる「語彙力」の大切さも共通しています。基礎となる言葉の意味がわからないと、そもそも何が書いてあるかわからなくなります。面倒でも「辞書をひく」一手間は、次の読書への言葉の意味の蓄積となります。
さらに、読解に必要な「統語的処理」において、語順と助詞が極めて重要であるという指摘は、当たり前のようで見過ごされがちです。
日本語の「が」や「は」といった一文字を雑に読み飛ばすことは、文脈を見失うことにつながります。「人に説明することを前提に読む」という姿勢を持つことで、こうした一文字への注意は劇的に高まります。
そうして語彙を蓄積し、丁寧に読み解く土台を整えたうえで、ひとつのジャンルを集中的に「固め読み」すること。
それによって脳内に知識のつながりが生まれ、やがてそのテーマに対する「自分自身の考え」がだんだんと形を成していく。
そしてある時、「そういうことか!」というひらめきが起こる。それこそが、大人の学び直しにとって最高の瞬間なのだと思います。
本書が教えてくれるのは、そんな読書がもたらす本質的な変化です。
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